東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

再生の代償は何か

仮面ライダーX』感想・第17話

◆第17話「怖い! 人間が木にされる!!」◆ (監督:山田稔 脚本:村山庄三)
 『V3』途中から『イナズマン(F)』の方に回っていた山田監督が『X』初参加。
 脚本の村山さんは、個人的に『超人バロム・1』第31話「魔人カミゲルゲは悪魔をつくる!!」以来となりましたが、その割に名前が妙に記憶に引っかかるな、と思ったら……後の『ストロンガー』屈指のトンチキ回、


 「ミスター・タイタン。只今、松本先生の体を乗っ取りました」
 「よろしい。で、その学校の秀才は誰だね」
 「ホリ・フミオとかいう小僧が、100点を取っておりますが」

(第6話「先生に化けたクラゲ奇械人!」(監督:内田一作))

 の脚本でした!
 死と隣り合わせで有名な、70年代東映特撮山歩きをしていた一家四人が助けを求めるような声を耳にすると、そこにあったのはゴッドの実験場。姿を見せた怪人アルセイデス(出典がわからず調べたら、ギリシャ神話に登場する森のニンフの複数形との事)の吐き出す人間樹木化ガスを浴びた一家は次々と木に変えられていき、少年一人だけが辛うじて逃げ出す事に。
 途中で追いかけるのが面倒くさくなった怪人は、実験が成功したので遅かれ早かれ日本人は全て木になり地球温暖化対策に役立つサステナブルな存在になるからまあいいや、と引き返そうとするが、ダルマに怒られる。
 「馬鹿者! 実験は失敗だ。体は木に変えられても心は人間のままだ。心も変えられるまで、人間を木に変えるこの計画は延期する」
 アルセイデスはダルマに宿ったゴッド総司令のお叱りを受け、どちらかといえばこれは室長のお仕事な気がしますが、スケジュールの都合なりで出られなかった……? と思ったら、後半には普通に室長が出てくるので、ちょっと困惑。
 ここ以外に総司令のメッセージをねじ込めなかったようではありますが、心まで木にしようとする日本緑化計画は延期となり、人の心が残っているから枯れ木のままなのです。
 心まで木になれば緑の葉が生い茂る筈なのです。
 代わりに目撃者を今日中に消せ、と命令が与えられると工作員をどやしつける怪人には早くも無能の気配が漂い、ギリシャ風甲冑戦士を木目調に仕立てた姿も、今作怪人としてはだいぶ面白みに欠けるデザイン。
 本日は真っ白な格好でバイクを走らせていた敬介が、目撃者の少年を拾うと藤兵衛の店に運び込んで事情を聞き、敬介・少年・藤兵衛の一行は再び山へ。
 ところが問題の人間ツリーは全て消えており、敬介と藤兵衛の目を欺いたゴッドの魔手が少年に迫るが、敬介が奸計を看破。ヒッチハイクで敬介らの後をこっそりついてきたマコ&チコは少年が逃走する手助けをするが、さっくり樹木に変えられてしまい、新レギュラーキャストの使い方としては、随分と大胆(笑)
 アルセイデスと激突するも、少年を人質に取られたXは降伏し、人質を全く無視して暴れ回るのもどうかとは思いますが、敬介は割と、無策のまま降伏して結局は人質ともども窮地に陥るパターンが目立つのは気になるところ。
 武器を捨て変身を解除した敬介は、吊り橋から吊されるとそのロープに火を付けられる凝った処刑にかけられるが、仕掛けに満足したアルセイデスは結果を見ずに引き上げてしまい、馬鹿者ー!
 「おお、アポロガイスト。神敬介は俺が片付けた」
 「なんだとぉ?」
 目撃者の少年を山小屋に運び込んで始末しようとした所に重役出勤の室長が現れると、証拠を見るまで信用しないぞ、と揉めて揃って吊り橋の方へと向かい、なぜ見張りの一人も残さないのか馬鹿者ーーー!
 ……というテープの吹き込まれたダルマを今、ゴッド連絡員が必死に現地へと運んでいる真っ最中です。
 勿論その間に、我らが立花藤兵衛が山小屋に忍び込んで少年を救い出すと、少年の案内で吊り橋へと向かって敬介を助けようとするが、ゴッド一行と鉢合わせ。
 「くそぅ、まだ生きていたのか神敬介」
 火加減を見誤ったXライダー処刑作戦だが、その光景に室長は「おまえにしてはなかなか上出来だ」から「さすがの神敬介も……」ムーヴで悦に入り、とうとうロープが炎で切断されると敬介は真っ逆さまに落下して地面に叩きつけられる……と見せかけてセットアップして山小屋へと飛び込み、
 「Xライダー、生きていたのか」
 にどう切り返すのかに面白さの醍醐味が一つあるのだなと(今回は無言のままバトルに突入)。
 Xは藤兵衛と少年を救出すると、アルセイデスを乗せて逃げた車を追い、Xの容赦ない攻撃にさらされ、怪人を乗せたまま斜面を転落する車。
 東映ヒーロー特撮、バスや大型トラックから自家用車まで、車が斜面や崖を転がり落ちて爆発するシーンは多々ありますが、這々の体で逃げ出した怪人の背後で送迎車が爆発炎上、はなかなか珍しい気がします(笑)
 そこへ走ってきた室長が「馬鹿者ぉ!」からアルセイデスに折檻を加え……まあでも今回は、室長も反省した方が良いのではないかと思います!
 Xライダーがポーズを決め、主題歌インストが流れ出すと、ヒートアップした室長はXライダーに生身で躍りかかり……どうも若干、再生強化手術の副作用で知力が落ちているのでは(笑)
 一当たりの後、アポロチェーンジすると、半ば放置状態だったアルセイデスが割って入って、選手交代。木の蔦の鞭を用いてXライダーを苦しめるアルセイデスだったが、ライダーショックで鞭を焼却されると、空中回転から放たれたライドル脳天割り! によって頭蓋をかち割られて大爆死し、2話連続、ライドルがフィニッシュウェポンとなりました。
 アルセイデスが死ぬと木にされていた人々は無事に元に戻り、走り去るXライダーに皆で手を振って、つづく。
 今作では初めて、長坂・伊上・鈴木以外の脚本家の参加となり、その場合の期待水準はこのぐらい、といった出来。
 サブタイトルほどに人間ツリーの恐怖は煽られずに山中でのバトル主体となりましたが、次回は化け猫で、どうやらしばらくスリラー重視の《怖い!》シリーズに入る模様。
 今作初参加の監督・脚本いずれも、「総司令ミッション」と「室長の横槍」は要件として満たしつつ、ここまでの『X』の流れとはほぼ切り離されたスリラー編をやって欲しいというオーダーに、やや戸惑うところは出たのかもしれず、スリラーを徹底するわけでもなければ、活劇の爆発力も不足しているといった、やや中途半端な内容となりました。