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筋肉vs魔法

仮面ライダーウィザード』感想・第36-37話

(※土曜更新の配信分を含むので、ご留意下さい)

◆第36話「九官鳥は語る」◆ (監督:諸田敏 脚本:石橋大助)
 前回のソラの発言を受け、コヨミについて輪島に相談する晴人だが、輪島さんは別に知識面で役に立たなかった……と思ったら「賢者の石」についての一般的な知識の説明役となり、魔法石の一種では? と推測(ちなみに、「賢者の石」は「石」というけど別に「石」とは限らないとされますが、輪島さんの知識及び今作劇中での推測という事で)。
 かつてコヨミが魔法石を 勝手に持ち出して 拾ってきた森を晴人が思い出していた頃、街で放火事件の聞き込み中に瞬平とバッタリ出会った凛子は、防犯カメラに映っていた怪しい男を発見するが、瞬平とドタバタを繰り広げている内に逃げられてしまい、迫る、懲戒免職の危機。
 ここしばらくは“できる”女刑事みたいなポーズを取っていた凛子さんが瞬平に足を掴まれてギャグ時空の泥沼に引きずり込まれそうになっているとはつゆ知らず、石繋がりをヒントに再び再びループする森の中に入り込んだ晴人は、インフィニティによって力尽くで結界を打ち破り、やはり、魔法より筋肉(あれ?)
 「……お客様かな」
 「……指輪の魔法使い?」
 玄関を破壊して上がり込んできた招かれざる魔法使いは、遂にワイズマン社長と対面し……この世界に『ドラゴンボール』(鳥山明)は存在するのか、ちょっと気になりますね……!
 「俺に教えてくれないかな? サバトの事……コヨミの事……賢者の石の事」
 「無駄な好奇心は時として不幸を招く。時に、真実は知らない方が幸せなんだよ」
 「……答えろ!」
 筋肉で全てを解決しようとするウィザード無限だったが、魔法より筋肉より魔法、とワイズマンは片手一本でインフィニティの動きを封じると、その魔力を吸収して結界の外へと弾き出す凄腕ぶりを見せつけ、晴人、電撃会社訪問、失敗。
 「クビ……クビ……クービぃぃぃ」
 一方、やさぐれ凛子さんは面影堂で周囲に当たり散らし、売り言葉に買い言葉で険悪になった瞬平は放火犯捜しに飛び出し、深刻な晴人パートとコミカルな瞬平パートが合流したところで再び発見される、重要参考人な九官鳥の男。
 「放火魔?!」
 凛子もそれを目撃して瞬平と鉢合わせすると、お互いの最終クールにおける存在感を賭けた醜い足の引っ張り合いを繰り返した末に、火の手を目撃。
 晴人が魔法で消火すると、放火魔?をフリーズバインドするが、突如として現れたファントムが何故か男を逃がしてしまう。
 「まさか……放火魔がゲート?!」
 瞬平が驚愕する中、槍を用いてアクロバットに立ち回るファントムは煙玉で逃走し、現場に残される九官鳥と鳥籠。ドーナッツ屋で休憩中に九官鳥が口にした言葉から、凛子と瞬平はゲート及び放火魔と思われる男の行方をドタバタ追いかけ、遂に発見。
 別行動を取って仁藤と合流していた晴人も使い魔で居場所をキャッチするが、九官鳥がファントムに変身するとその前に立ちふさがり、ソラによるとあくまで、九官鳥に変身する能力を持ったファントム……だそうですが、何ソレ。
 動物に化けて標的の懐に潜り込むと思えば使い方次第ではありそうですが、前回のボギーといい、石橋脚本回のファントムの発想は、妙にスタンド使い寄りに感じます。
 鳥ファントムをビーストに任せたウィザードはグレムリンを尋問しようとするがグールに阻まれた上、今回のゲートはあまりにも気が弱い為、放火犯扱いで逮捕されたらもう絶望?!
 諸田監督が過剰にドタバタさせすぎなところは気になりましたが、魔法使いが超常に立ち向かう一方で、社会的生命の死による絶望に直面しつつあるゲートを凛子と瞬平が担当する振り分けは、面白いアイデア
 ソラに煽られて慌てるウィザードだったが、ワイズマンに魔力を吸われていた事により、増殖できないところから魔力が枯渇して一気に変身解除。
 「……頼む仁藤、おまえはグールで魔力を溜めておけ」
 「おう……任しとけ!」
 倒れた晴人を助けたビーストが剣を振るってグールをまとめて薙ぎ払い、ダブルライダーのコンビ感は格好良く醸成されてきた一方、互いの存在意義を賭けて醜い争いを繰り広げるダブルうるさいの方は、ゲートを守ろうとした瞬平が大暴走。
 凛子を巻き込みゲートを乗せて盗んだパトカーで走り出し、数々のキャラクターを警察がお世話してきた『ウィザード』、とうとう身内から弁解のしようが無い犯罪者が出て最終クールを留置所で過ごす事になる可能性が浮上して俺達に明日がないまま、つづく。

◆第37話「絶望、指名手配」◆ (監督:諸田敏 脚本:石橋大助)
 それにしても、防犯カメラに映っていた重要参考人段階で、「この男は放火魔なのよ!」を当人に向けて連呼する凛子さん、幾らデフォルメされているにしてもだいぶ問題発言で裁判になったら負けそうですが、こうなると過日の取り調べによる自白も、可視化するとまずいような詰め方をして無理矢理追い込んだのではないか疑惑が浮上してきます。
 放火容疑をかけられている九官鳥の男・根本は、気が弱くてネガティブで、
 「なにそのスーパーマイナス思考……」
 と呆れる凛子さんですが、その当人が、なんの証拠も無い内から「おまえが犯人に決まっている!」と一方的に犯罪者扱いしていたわけなので、根本の話を聞こうとする瞬平との対比の為に凛子に道化の役割を当てはめるのが、3クール目も終わろうとする時期のメインキャラへの扱いとしては、随分な仕打ち。
 また、これは今回担当の脚本や演出の責任では無いところがありますが、「ソラの正体が連続殺人鬼と明らかになる」エピソードの直後に、「放火事件の容疑者に対して警察がコントのような対応を取り続ける」エピソードが来てしまったのは、大失策といってよく、温度差によるアクセントを通り越して、リアリティラインが破綻しすぎて物語を読む為のコードが行方不明になっていました。
 さすがに前回の今回で、今回はコメディ調なので警察の対応はギャグ寄りです、と出されても消化に苦しみます。
 調子外れの効果音と、モブ中心にやたら過剰なリアクションに、顔アップでの絶叫が繰り返され、完全に石田監督と負の連鎖反応を引き起こす恐れていたパターンに突入してしまいましたが、
 ・いきなり拳銃を抜く警官
 ・その警官に向けてフォークリフトで廃車を落とす凛子
 ・マンホールから下水道に逃げ込んで排水に巻き込まれる一同
 と、立て続けにバランスを欠いたオーバーな展開が続き、2010年代の諸田監督への苦手意識がまた強まる事に。
 根本の無実を信じる事にした凛子と瞬平の叱咤を受けて根本が前向きに行動を始め、新たな防犯カメラの映像を見つけ出した凛子と瞬平(いやどうしてこれ、警察がチェックしていないのでしょうね……)は、犯人が九官鳥ファントムである事を突き止めると、根本を警察に突き出すと見せかけて九官鳥ファントムを罠にかける事に成功。
 「すっかり騙されたな俺達も」
 慌てて警察署に駆け込んだ晴人と仁藤は、根本をすっかり放火魔だと信じて込んでいたと口にして……ファントム絡みを把握した上でさしたる情報も無いのにゲートを放火魔だと思い込んでいました、はあまりにも適当すぎて、この台詞は全く必要なかった気さえするのですが、ここでも「根本を信じた」瞬平と凛子との対比として、晴人と仁藤に道化の役割を当てており、それしか手札が無いのかと、極めて残念な作劇。
 加えて二人とも、命がかかっているのでひとまずのニュアンスはあったにしても、ゲートを絶望させない為なら連続放火魔(だと思っている)を警察に引き渡さずに逃げ回る事を是としていた事になってしまい、「ゲートの絶望」と「他者への害」を天秤に乗せてしまった時点で、行動がヒーローとして矛盾にまみれてしまう、大きすぎる失着。
 前編時点では、問題に対するキャラの振り分け自体は面白いアイデアだと思ったのですが、今作のルール上、逃亡中にファントムさえ倒せば万事解決ではないわけなので、その問題を解決する方法を主人公が探そうとしないならば、「心が弱くて絶望しやすいゲート」という素材の使用そのものが、『ウィザード』としては根本的な失敗になってしまいました(例えば、晴人も仁藤も見つけられなかったそれを、瞬平が“見つける”とかすれば色々違ったとは思うのですが……)。
 最終クールを前に、凛子と瞬平にスポットを当てた事そのものは良かったのですが、「凛子と瞬平が問題を解決する」事を重視しすぎて、晴人サイドと凛子サイドの根本に対する意識の摺り合わせをせずに進めた事で、絶望を避ける為なら犯罪者の逃亡幇助を良しとしてしまう「矛盾に晴人と仁藤が悩む」事も無いまま、まるでファントムさえ倒せば全て解決するように見せかけて進行する話運びも不誠実で、今作がここまで出来る限り避けてきた床の穴を思い切り踏み抜いた感じ(ゲートを如何にも好感度の上がらないビジュアルにするのも感じ悪いやり口ですし)。
 せめて両サイドが「根本を信じる」事で意志を一つにした上でなら、対ファントムと真相解明に分かれてもそれなりに話がまとまったと思うのですが、これまでの『ウィザード』ではやっていない事、に果敢に挑戦を試みた結果、『ウィザード』ではそれはやらなくて良かった、に直撃したというか。
 ダブルライダーのショータイムにランチタイムでグール軍団とファントムは撃破され、根本の冤罪も晴れて一件落着……かと思いきや、九官鳥の正体が怪物だと知って、根本、絶望……?
 「「えーーー?!」」
 えーーーーー!
 ……まあ、根本にヒビが入ったところでエンゲージして処理するのが最も合理的な解決方法ではあるのですが、「人はなぜ絶望する(しない)のか、そして如何に希望は生まれるのか」をメインテーマにしている作品で、「絶望を克服する新たな繋がりを得たかと思ったが、そんな事はなかった」をオチに使ってはいけないなと、見ているこちらが絶望しそうになって、つづく。