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偉大なるかなタイヤ

超力戦隊オーレンジャー』感想・第35-36話

◆第35話「過激な爆弾野郎」◆ (監督:小笠原猛 脚本:曽田博久)
 皇帝バッカスフンド戦死の報復として、月面基地の全ミサイルを地球に向けて発射するブルドントだったが、オーブロッカーに迎撃されて失敗。更に、突如として宮殿に飛び込んできた謎のミサイルボディによって自身がミサイルにくくりつけられると、地球に向けて発射されてしまう!
 ブルドント付きミサイルに困惑しつつも、これを撃墜したかと思われたオーブロッカーだが、切り離した弾頭が家族連れの乗る乗用車に突き刺さり、少女を救出する為、桃が不発弾の処理を行う事に。
 だが苦難は続き、新たに飛んできた青いミサイルから手足が伸びると、それは紡錘形のボディに顔の付いた人型マシンへと変形。
 「脳天にズキンと来たぜぇ」
 「何者だ?!」
 「宇宙の一匹狼! ボンバー・ザ・グレート!」
 突如として地球に飛来した文字通りの爆弾野郎は、かつてバラノイア乗っ取りを企むも失敗し、処刑寸前に逃亡。バッカスフンドの死を知ってチャンスとばかりに戻ってきたマシン獣(多分、元バラボンバー)であり…………ええとあの……既に本人の口から、バッカスフンドより格下宣言が出されているのは、どう受け止めれば(笑)
 「俺が新しい皇帝になり、宇宙の支配者になるのだーーー!!」
 と公約を掲げるも、バッカスフンド存命中は目の届かないところに隠れて一匹狼を気取っていた小者なわけで、3クール中盤に出てきたニュー悪役としては、あまりにも格が低くて反応に困ります(笑)
 当たり役となった『幽遊白書』の飛影の後、『勇者特急マイトガイン』では主人公・旋風寺舞人を演じ、この後、東映ヒーロー作品の常連怪人声優ともなっていく檜山修之と、今作前年に『機動武闘伝Gガンダム』の主人公ドモン・カッシュで広く名を売り、この後、東映ヒーロー作品の常連なんでも声優になっていく関智一が売れ始めの頃に共演を果たしている点は、後から見ると面白くはあるのですが。
 「燃えるぜ! 熱いぜ火が付くぜ! 爆発だーー!!」
 ボンバー・ザ・グレートはミサイルモードに変形して飛び回り、立ち向かうオーレンジャーは苦戦。更にそこに、早くもボンバーに尻尾を振ったアチャとコチャが巨大バラマンモスを連れて乱入し、皇帝の戦死をきっかけに、バラノイア帝国で実質的なクーデターが勃発。
 オーレンジャーは、桃が爆弾を処理している間に残りメンバーがブロッカーロボで巨大バラマンモスを食い止める事となり、個人用ロボの活躍をエピソードの中心に据えようとするのは今作らしいストーリー展開ですが、肝心のブロッカーロボが立ち回りをして見栄えするデザインとは言い難いのが、苦しいところ。
 また、記号のモチーフを大きく押し出し、スマートな体型とはいえないブロッカーロボで人間を模倣した動きをしようとすればするほど、ロボットらしい魅力が失われるのも問題点となっています。
 エアロビをしたりサッカーをしたり、操縦者と一体感の強いロボを“親しみやすい仲間”として描く方針は一貫している今作、爆弾処理中の自動車を守りながらの戦いでは、個人用×デザインモチーフを重ねる事でより一体化した巨大ロボに、等身大のアクションを実質スライドしているのですが、それがロボットとしての面白さに繋がっているかといえばそうは感じられず、これなら人間のスーツアクションを見せてくれた方が楽しいし、ロボにこだわるなら、人に寄せすぎない“ロボらしさ”を工夫したアクションが欲しかったなと。
 《スーパー戦隊》における、ロボットらしい魅力とは何か? は、中に人が入って動く作り故に矛盾にぶつかりやすく、白倉さんが巨大戦のCGバトルへの移行を早くから志向していたのは、造形面の制約に対する克服も含めて、そういった問題への意識があったのでしょうが、改めて見ると今作、巨大ロボをどう描くのか? に関する挑戦と一つの限界を感じさせます(※恐らくこの当時としては、《勇者》シリーズへの意識があったのだろうとは思われますが)。
 優先順位としては、「合体」を軸に(これはまさに、人間では難しい表現ですし)物語上の“シンボル”性を重視してこそではないか、と思うのですが、そう見ると、そのプロセスにおいてアクション性を個に割り振るのは、あまり巧くないアプローチではあったのかな、と。
 バラマンモスの攻撃を前に、青緑黄のブロックロボは次々と脱落し(特に青緑はほぼ台詞もないままフェードアウト……)、赤ブロックがひたすらガードに徹する中での爆弾処理のサスペンスもいまいち面白くならず、少女の命を材料にした切羽詰まった状況にも拘わらず、マシン獣が片手に「ボンバー・ザ・グレート命」の幟を掴んでいるのも、マイナス。
 《スーパー戦隊》シリーズは総じて“滑稽な怖さ”を企図しているところはありますが、爆発による恐怖と、特に人格が描写されないが派閥の幟を手にしているバラマンモスの滑稽さが特に繋がらず、小手先のギャグが状況の切迫感を損ねているだけの印象。
 カウント残り3秒、桃が爆弾を停止させると、少女と共に脱出に成功。5体揃ったブロッカーロボが超重合体するとバラマンモスを一刀両断し、ボンバーはアチャコチャに当たり散らし、ヒステリアはいずれ寝首を掻いてやると昏く瞳を輝かせるのであった……。

◆第36話「オナラに直撃!!」◆ (監督:小笠原猛 脚本:曽田博久)
 見所は、ブロッカーロボの苦戦をモニターしながら、新兵器投入のチャンスに笑みの押さえきれない三浦。
 妙に気取った仕草と台詞回しで団地のゴミを消化して回るマシン獣・バラスカンク。そこへ飛び蹴りで攻撃を仕掛ける赤だが、バラスカンクのおならを浴びると超力スーツが分解されてしまい、変身解除。
 逃げ足も超一流の隊長が一時逃走すると、月面宮殿には今回もボンバーが突っ込んできてヒステリアとブルドントが吹っ飛び……もしかして、毎回やるのでしょうか、これ(笑)
 「やるかやられるか命を賭けた戦いに、下品も上品もねぇっ!」
 ゴミをエネルギーとした原子分解ガスでこれまで100個の星を滅ぼしてきたとされるバラスカンクが街で大晴れを始め、緑青黄桃が出撃すると、更に赤が復帰。だが高所からの奇襲攻撃は、口からも出るガスに撃墜されてしまい、隊長まさかの、Aパートの内に二連敗。
 「馬鹿め! こっちのほうが正式だ! それほど俺は下品ではない。今までのはほんのご愛敬。隊長のおまえを原子分解してやる」
 はちょっと面白かったバラスカンクに追われた隊長は海へとダイブし、部下と合流。
 そこにミキオ少年らがリアカーを引いて姿を見せると、バラスカンクのエネルギー源になっているゴミを片付けて回り、「さあ、みんなでコンドールマンの歌を唄って、美しい日本を守ろう!」な超力少年隊ムーヴから、なんの寓話的処理も無いストレートなやり取りで環境美化運動が推奨され、曽田先生も、だいぶ苦しくなってきている模様。
 オーレン一同は子供達と一緒にゴミ拾いを始め、そこにリキとドリンも合流。ここ数話の音沙汰なしについて、後付けでもなにか理由を付けるのかと思ったら皆無な上、バッカスフンドについて一言も触れませんでした!!
 子供たちの活動が親世代にも広がっていき、一人一人の意識を変えてバラノイアに立ち向かおう! とする流れは嫌いではありませんが、「フィクションにおける行動に現実へのメッセージを含ませる」寓話ではなく、ロックもソーダも無しに、原液をそのまま出してきたような流れが残念。
 そこにバラスカンクが現れると、ゴミの山に潜んでいた赤が真横から飛び出して、市民の善意は丸ごと囮だァちゃあ! と、国防のジャスティスを執行しようとするが、青いミサイルに吹き飛ばされて、またも奇襲に失敗。
 「俺は戦いのプロだぜ? おまえの作戦ぐらいお見通しだ」
 ボンバー・ザ・グレートが援護に入り、必殺の原子分解ガスを浴びせられるオーレンジャーだが、前に進み出たキング先輩がキングトルネードでリターンする無慈悲すぎる解決から、キングビクトリーフラッシュそしてオーレバズーカのコンボでバラスカンクは消し飛び、大変久々のメイン回だったにも拘わらず、隊長全くいいところ無し。
 オーレンの作戦を失敗させて新たな敵ボンバーの株を上げる調節にしても、そこからキング先輩が力業で解決するので話の起伏もピラミッダーにプレスされてしまい、バッカスフンドの最期には全く関わらず、ボンバーに対して特にコメントもなく、過去要素が全く活かされないまま気分で出てきて隊長を踏み台に使うキング先輩に、物語が完全に振り回されてしまっています。
 「よぉし、タックルボーイの出番だ」
 ブロッカーロボが巨大バラスカンクのガスに苦戦すると、基地の三浦がこんな事もあろうかと用意していた自律稼働の新兵器を送り出し、主題歌をBGMに出前されたのは、巨大なタイヤ……から手足が伸びた新型ロボ・タックルボーイ
 ……いったい何がそこまで三浦をタイヤにこだわらせるのか!
 ……というか、原案を作った超力文明をタイヤにこだわらせたのか!
 タイタンボーイやテトラボーイの系譜に連なる軽量級のタックルボーイは、素早い動きでバラスカンクを翻弄すると連続キックとパンチを叩き込み、ブロッカーロボのセールスポイントが既に上書きされている気がしますが、超重合体したオーブロッカーの手にタイヤモードで収まると、ボウリングの要領でマシン獣めがけて投げつけられて放つ火の玉ボディプレスによって、バラスカンクを爆殺するのであった。
 オーブロッカーの必殺剣を2回しか使っていない状況で、ラグビーかアメフトモチーフの顔にタイヤボディという『ターボレンジャー』感の強い新兵器が投入され、財団Bを後援とした三浦参謀長の地球征服計画が着々と進行していきますが、早くもオーブロッカーを前に押し出すとキングピラミッダーの出しようが限られる正面衝突を引き起こしており、新マシンの投入に次ぐ投入に、そろそろだいぶノりにくくなって参りました。
 ……まあ、キングピラミッダーアルティメットフォーメーションが存在する可能性はゼロでは無いですが。
 エピソードとしてはとにかく、前半の苦戦や奇襲失敗が全く挽回されないままキング先輩が全て解決するクライマックスが酷かったですが、玩具展開・キングレンジャーの扱い・脚本陣の差配……といった、あちこちで逆走やフェンス激突を繰り返す今作諸々のちぐはぐさが処理不能になってきた感が強く、次回――更に何か出てきた。