『仮面ライダーX』感想・第15-16話
◆第15話「ゴッド秘密基地! Xライダー潜入す!!」◆ (監督:折田至 脚本:伊上勝)
前回ラスト、あれだけ大騒ぎしたのに、なんか普通に、OPクレジットにアポロガイストの名前が!(笑)(※とはいえ今回は声の出番も無し)
それから、OPクレジットのフォントが変わったような気がします。
怪しげな老人が運び込んだ総司令ヘッドから指令を受けて、ゴッドの日本基地・アポロンの宮殿に招かれる事になる優秀な外科医・カワカミ。
連絡員は続けて城北大学を訪れるが、そこで女子学生とぶつかって、荷物を取り違えてしまう痛恨のミス!
お陰で総司令の代わりに……ミカンが!!
…………序盤の総司令なら、これはこれで何とかなる、とミカンからメッセージを送れそうでしたが、今回わざわざメッセージフィギュアを運ぶ連絡員の姿を描いていたり、幹部キャラが呪術師ではなく内部監査の男だったり、ゴッド機関は前作よりオカルトとは距離を取ろうとする気配は窺えます。
かくして、女学生2人は謎の火星人のようなフィギュアから流れるゴッド総司令のメッセージを聞いてしまい、大丈夫なのかゴッド。
年に数回は連絡ミスを起こして無駄な死体を海に浮かべていそうですが、女学生2人もまたゴッド連絡員に追われて逃げ出したところを真っ赤なテカテカジャケットの敬介と遭遇し……凄い衣装(笑)
「いいか敬介! 立派な仮面ライダーになるには、時にこのぐらい派手な衣装も着こなせなきゃならん」
「わ……わかりましたオヤジさん!」
みたいなやり取りがあったのかもしれない敬介は、着ているだけで上がるヒーローポイントを貯めつつ女子大生マコとチコを救い、謎の老人は少々間の抜けた連絡員……ではなく、立派な怪人・死神クロノスでした。
王冠をかぶった悪魔めいた風貌に、半身にはドクロの意匠、半身には鎖をぶら下げた非対称ボディで、黒いマントを広げて巨大な鎌を手にした造形は非常に豪華なのですが、人事課が仕事の割り振りを間違えたとしか思えません。
「おのれXライダー、この死神クロノス様が、おまえの首をアポロン宮殿に、捧げてやるー!」
「そのアポロン宮殿とはいったいなんだ?!」
あ、口が滑った。
やたら甲高い声と、任務内容の三下ぽさとは裏腹に、失態を帳消しにしようと刃の部分から炎を噴射するクロノス地獄鎌は格好良く、気迫で負けたXは……バイクを呼んで逃げた。
「クロノス! アポロンの宮殿で会おう!」
だがXライダーは、ヒーロースキル《俺はまだ負けたわけじゃない》を修得していた!
図らずもゴッドに狙われる羽目に陥った女子大生2人は藤兵衛の喫茶店に退避しており、2人が聞いた情報を元に、アポロン宮殿への潜入を試みる敬介……よくわからないまま聞かされた総司令のメッセージをしっかり覚えている2人とか、そもそもその情報が博士に伝わっていない事をゴッドは知っている筈とか、さすがにだいぶ無理が目立ちます。
後、ゲスト悪役の妙な老け演技は、どうしてそうなったのか……こういう役者さんなのかもですが、変装マスクをつけて老人のフリをしている、みたいなメイクに見え、それがどうも話の面白さに繋がっていません(子供を怖がらせる役回りならわかりますが、今回そういう話ではないですし)。
城北大学のミヤモト博士に扮した敬介は首尾良く迎えの車に乗り込むと、人工霧に隠され、地下深くに建設されたゴッドの日本基地・アポロンの宮殿へと乗り込む事に成功し、総司令の厚意により、ゴッド警備員の訓練風景を見学(笑)
続けてゴッド機関の様々な部署の説明を受け、つまるところ今回は、ライダー能力解説の、ゴッド秘密基地バージョンみたいな感じなのでしょうか(笑)
個人的には「人事課」が凄く気になりましたが中は見せてもらえず、総司令のお部屋、のパネルの前で立ち止まった敬介に向けて、レリーフをぺかぺか光らせて語りかけるゴッド総司令。
「後ろの小窓を見たまえ。大変面白いものが見られる。特に、ミヤモト博士にとってな」
「私にとって?」
総司令に言われた通りに部屋の中を覗くと、そこには既に本物のミヤモト博士が立っている、それはそうだ……という展開で、してやったりと思ったら相手も罠を……の伊上メソッドなのですが、さすがに敬介が、万事を自分に都合良く解釈しすぎて間の抜けた事になってしまいました。
「偉大なゴッドはこのアポロン宮殿クラスの基地を世界中に持っている。神敬介、君一人で手向かってどうなると思う」
「叩き潰す! 如何に巨大なコンクリートの堤防でも、蟻の穴から崩れるのだ」
以前にも使っていた変装フィルムを剥がした敬介は正面から啖呵を切り、成り行きはともかく眼差しと台詞回しは実に格好いい。
「気に入った。君のような勇気ある人間をゴッドは望んでいる。ゴッドの最高の地位に君をつける。ゴッドの一員になれ」
会社見学の狙いは、スカウトだった!
「ははははははは……ゴッドの総司令も大した事はないな。たった一人の人間の心も読み取れないのか! 俺がそんな人間に見えるのか!」
ヒーロースキル《高笑い》を発動した敬介は、総司令直々のスカウトを敢然と拒絶し、まずは給与と賞与と休暇の話が先だ!!
……総司令もちょっと、釣る為の餌が曖昧すぎるというか、もう少し具体的かつ現実味のあるラインを出してきて欲しかったです!
メカ涼子とかメカ涼子とかメカ霧子とか。
工作員からの銃撃をセットアップで切り抜けたXは、どんでん返しになっていた総司令の部屋に飛び込むと、落とし穴に落ちた。
なんかもう風見先輩のせいで、ライダーがいきなり穴に落ちるだけでちょっと面白くて困ります。
ゴッド警備員訓練場に着地したエックスは、覆面に様々なユニフォームを身につけた警備員を叩きのめすと、死神クロノスと再び激突。戦いの場は野外へと移り、軽快なアクションで次々に飛び蹴りを放つと、ゴッドくったり工作員が続けざまに宙を舞って崖下へと叩きつけられ、いよいよクロノスと一騎打ち。
地上でライドルスティックと炎の鎌がぶつかり合うと、地下のアポロン宮殿では謎の手術が開始され、果たしてその正体は……気を持たせる為のスローモーションでの戦いが効果的となり、OPクレジットでバレている気のするゴッドの目的が一応謎にされたまま、続く。
……答は直後の次回予告で!!
◆第16話「逆襲アポロガイスト! Xライダー危うし!!」◆ (監督:折田至 脚本:伊上勝)
激闘の末、Xとクロノスは空中で相討ちとなり、Xの肩口に鎌の刃を食い込ませたクロノスは、「俺が勝ったぞぉーー!!」と絶叫するも、Xキックのダメージで首が外れて、ちょっと凄い大爆発。
勝利はするも大ダメージを受けたXは戦闘員の追撃から逃走を余儀なくされ、「前編ラストに引っ張ったバトル(ピンチ)が後編の冒頭であっさり解決する」のは《平成ライダー》でも頻出する東映前後編パターンですが、そこで負ったダメージがしっかり次の展開に繋がってくれたのは良かったところ……この点に関しては00年代以降の《ライダー》でも、問題の解決後は別のシーンに切り替わって“引き”のピンチが後編の展開には全く影響しない、なんて事はままありますし。
宮殿の手術台に横たわっていたのは「アーム爆弾で一緒に死ねぇ!」で弾け飛んだ筈のアポロガイストだと明らかになり、カワカミ・ミヤモト、両博士による黒魔術……ではなく、再生強化改造手術がスタート。
咄嗟に宮殿の中に逃げ込んでいた敬介は、通風口の中に身を隠しながら宮殿内部の様子を探り、地獄の番犬ケルベロスにファイヤー作戦の開始を伝える為、ロッカーから新たな総司令フィギュアが取り出される光景を目撃(笑)
AM9:00――ゴッド総司令の業務は、各部署で認可された作戦に基づき、大量の指令テープを吹き込む事から始まります。
「抜け目の無いゴッドめ……なんとか脱出しなければ」
敬介が通風口を這い回っている内に、アポロガイストの再生強化改造手術は着々と進行し、手術シーンに尺が割かれる事で、Xライダーの対となる“悪の改造人間”、ダークヒーローとしての位置づけを、第14話に続いて強調。
……これはつまり、
「Xライダー、おまえにいい事を教えてやろう。そのアポロガイストの本当の名は、神凱作。おまえの生き別れの……兄」
「……ば、馬鹿な事を言うな!」
「そしてこの私、ゴッド総司令の正体こそ、おまえ達二人の父親――神啓太郎なのだ」
という事なんですね!
総司令も気になるがファイヤー作戦も気になるが手術室も気になる、とうろちょろしていた敬介が血痕からゴッド警備員に居場所を嗅ぎつけられていた頃、手術室では、マスクの真ん中に銀継ぎのようなラインが入り、右手にはサーベル付きのアポロマグナム、左手には模様の豪華になった日輪シールドを身につけ、マントの柄と武装の強化された再生アポロガイストが覚醒。
マスクに関しては再生前のシンプルな方が好きですが(恐らく、割れたものを直したニュアンスも入っているのでしょうが)、全体的にはゴージャス感が増して、格好良くまとまったアップグレード。
「どうかね? 甦った気分は」
「爽やかな気分です」
復活早々、いい声で面白いな……。
「礼を言うなら、カワカミ・ミヤモト両博士に言い給え」
「ゴッドは莫大な研究費をこの博士たちに使っている。やって当然でしょう」
復活早々、いい声で面白いな……。
これがホージーさんだったら、感極まって「いえ、この雰囲気が、いいなぁ……って思っただけです」と、生死の淵を覗いて人格も変わろうというものですが、完全な平常運行により、甦って数秒後に、目の前の人に(なんだこの野郎……)みたいな視線を向けられるのは、もはや才能の領域。
警備員に囲まれた敬介はなんとか(割と雑に)地下宮殿からの脱出に成功するが、そこにかかる大音声。
「神敬介ぇ!」
「……アポロガイスト?!」
「神敬介……そうか、総司令からのプレゼントはおまえだったのか!」
「死んだ筈のおまえが……」
「俺は貴様を殺すまでは何度でも生き返る。貴様にとっては迷惑な相手なのだ!」
復活早々、いい声で面白いな……。
再生アポロガイストは、新装備アポロマグナムの詳細を説明しながら敬介に向けて発砲し、前回に続いて、ノリはゴッドひみつ大図鑑(笑)
「Xライダーに変身しろ! 人間としての貴様ではつまらんのだ!」
しかし敬介はダメージの大きさから変身できず、生身で突っ込んでいくも某キャップばりの日輪シールド投擲技で吹き飛ばされると、更に謎の追加パーツを叩きつけられて、完敗。
一方、敬介を心配する藤兵衛の喫茶店では、前回の女子大生コンビ――マコとチコがバイトを始めており、そこに届く、例の箱(笑)
周囲が暗闇に包まれてゴッド総司令からのミッション伝達が始まると、慌てて客を逃がそうとする藤兵衛だが、客の一人が、
「総司令の命令を聞くまでは、出られない」
と淡々と口にすると怪人ケルベロスに変身するのは意表を突かれて面白い展開となり、つい先日、店内で大量殺人事件が発生したコーヒーショップに居る客が、まともな一般人のわけがありませんでした!!
地獄の番犬ケルベロスは、東京都の全家庭に高圧電流を流し、一瞬にして東京都を火の海にするファイヤー作戦の実行を命じられ、
「その作戦支部を、立花コーヒーショップに設けるのだ」
総司令が、凄く勝手な事を言い出しました。
「聞いた通り。たった今から、立花コーヒーショップは、ゴッドの作戦支部になる」
とうとう藤兵衛の喫茶店がゴッドの下部組織に組み込まれていた頃、敬介はゴッドの牢屋に囚われており、室長、人間体が出てきて良かった。
「傷が治るまで俺は待つ!」
とダークヒーロースキル《悪の美学》を発動してしまった室長が去って行った後、敬介は牢屋からまんまと抜け出すと、総司令人形の運搬係を装って宮殿からの脱出に成功し、前回今回に強調した要素を用いて、これは上手い流れ。
だが、敵もさるものアポロガイスト、敬介の工作をあっさり見破った室長はバイクでその後を負うと、アポロチェーーーンジ!!
敬介はバイクで走行中のポーズから空中セットアップを決め、そのままクルーザーで轢きに行くと、スーパー大回転。
「俺は言った筈だ! Xライダーになった時が貴様の最期の時だと!」
「何回生まれ変わっても、アポロガイストはXライダーの敵では、ない!」
挑発に乗ったアポロガイストのマグナムとシールドがクルーザーに結構な爆風を浴びせるが、もしかするとXライダーより頑丈かもしれないクルーザーにまたがったXは、空中へとジャンプ。
「アポロガイスト! 残念ながらおまえの相手をしている時間が無い。改めて相手になる!」
Xライダーは、ヒーロースキル《おまえの相手はまた今度》を発動するとアポロガイストを置き去りにして喫茶店へと急行し、ファイヤー作戦の発動寸前、支部の中に総司令ヘッドが落ちてくる使い切りぶりが、お洒落。
Xはゴッド総司令を騙ってケルベロスを混乱させると喫茶店に殴り込み、ファイヤー作戦を阻止すると、主題歌バトルに突入。
でんき属性のケルベロスは、Xキックさえエレキガードで無効化するが、ライドルロングポールを用いて距離を詰めさせないまま川に放り込むと、漏電したケルベロスは泡となって消し飛び……まさかの、決まり手:ライドルロングポール。
まさかホイップでもスティックでもなく、ロングポールが決め技になる日が来ようとは。
勝負をつけたXがライドルをベルトに納めて顔を光らせバイクで走り出すと、ナレーションさんが物凄い勢いでまとめに入るパターンでつづき、次回――予告にマコの姿が見えるので、このまま(セミ)レギュラー化でありましょうか。
まあ実際、敬介・藤兵衛・室長、のレギュラー陣は、あまりに男臭いところはあったので、賑やかしキャラの追加は納得ではあります。
前回は総司令ヘッド関連に無理が目立ちましたが、今回はその小道具の使い方が面白く、そこに待望の復活を果たした室長ブーストも加わって面白かったです!
室長、このペースで復活するなら一度爆死する必要がどこにあったのかはちょっと謎ですが、再生アポロガイストも武装が格好いいのでOK。
……それにしても、プロデューサー含めて3年の蓄積があるとはいえ、すっかり伊上作品に染め変えられていて、恐ろしい。