『仮面ライダーウィザード』感想・第34話
◆第34話「人気モデルの裏側」◆ (監督:舞原賢三 脚本:きだつよし)
仁藤攻介はパワーストーンを、瞬平は語学のテキストを、輪島は骨董品の数々を……買ってはいなかったが3人揃って新人モデル・清水千明に夢中で、仁藤がもし序盤から居たら、デート商法に引っかかっていたであろう事は想像に難くありません。
笑顔派の仁藤と黒髪派の瞬平が公園で千明の良いところについて激論をかわしていたところ、ファントムに襲われている女性の悲鳴を聞きつけて、へんーーーーしん!
出典通りに全身に目玉のような模様はついているが、シルエットはイカルス星人なファントム・アルゴスを相手に優位に戦いを進めるビーストだったが、百目フラッシュを受けて逃げられてしまい、助けたゲートの女性は当然噂の、清水千明。
一方、久々登場の国家公安局に木崎から呼び出しを受けた晴人と凛子は、緑の魔法石の出所が判明した事を告げられる。
「そいつがあの魔法石を、我々国安0課に流した」
写真に写っていたのはグレムリンことソラであり、木崎の頼みを引き受けた晴人と凛子は、国安が調べた情報を元に、ソラ/グレムリンの前身である美容師、タキガワ・ソラが勤めていた店を訪問。元同僚らから話を聞いたタキガワ・ソラの印象がグレムリンと酷似している事に引っかかりを覚える晴人だが、そこに現れたのは当のソラ。
「なりきるもなにも、僕はグレムリンじゃないよ」
「どういう意味だ?」
「人の心のまま、ファントムを宿した奴が居るように、人の心のまま、ファントムの姿になった奴が居たって、おかしくないだろ? 僕は今も昔も、タキガワ・ソラのままだよ。だって、人の心を残したまま…………この姿になったのさ」
嘘か真か顔に張り付いたような笑顔を浮かべ続けるソラは自らを、人の姿にファントムの心ではなく、ファントムの姿に人の心を持っている存在だと主張し、物語も折り返しを過ぎたところで、ここまでの基本的なルールに対する、大胆な横紙破り。
……そういえば、グレムリンは二刀を、ハサミのように構えている場面がありました。
「僕だって、望んでこうなったわけじゃない。そういう意味では、君と僕とは、似たもの同士かもしれないね」
魔法石を魔法使いへと流し、ファントムの中で唯一、素体となったゲートの心をそのまま持っていると称するソラが晴人と凛子を翻弄し、個人的にずっと「ファントム人格はどこから来ているのか?」が気になっているのですが、そこへ踏み込む前の準備運動なのか、それとは別の方向へ掘り進むのか。
その頃、ボディガードとして千明の仕事に同行していた仁藤と瞬平は、仕事熱心ではあるが自尊心が強すぎてマネージャーに対しても当たりのきつい千明の姿に、幻想を崩壊させていた。
千明の自分本位な物言いに苛立ちを強める仁藤は、とうとう千明を怒鳴りつけ……う、うーん、もしかすると、“感じ悪い”千明の裏側、についてはもっと多くの場面を撮っていたのが、尺や構成の都合で大幅にカットしたりとかあったのかもしれませんが、仁藤の爆発は、どうも唐突。
さじ加減の難しい要素ではありますが、もう少し仁藤の感情がスムーズに見えるようにしてほしかったところです。
楽屋を飛び出した千明は、遅刻してきたカメラマンに声をかけられて連れ出されるが、そのカメラマンこそがアルゴスであり、襲撃されたところにファルコンマントで飛んでくるビーストは格好良く、戦闘開始。
だが再びの百目フラッシュから反撃を受けたところに、瞬平から連絡を受けた晴人が駆けつけ、バイクで轢いた!
「また邪魔者か?!」
「ファントムの邪魔すんのが趣味なんでね」
二人の魔法使いがアルゴスに立ち向かうのを遠くから見物していたソラだが、物陰に隠れていた千明の、後頭部にひらめキング。
「この子に……手を出すな!」
「あいつ!?」
ウィザードとビーストが、百目ファンネル攻撃からグール軍団に行く手を阻まれ、千明の身に危機が迫ったその時、身を挺してアルゴスの剣から千明を守ったのは、なんとソラ。
手傷を負いながらもアルゴスから千明をかばったソラはバッサリ切られて湖面へと落下し、ウィザードも後を追って水中へと飛び込むと幸いアルゴスは一時退却し、
「どうなってんだいったい……晴人ーーー!」
と、受け手とシンクロするビーストの叫びがこだまして、つづく。
これまで、ファントムとしては例外的に、人間心理への理解度が高かったソラが、「自分の心はタキガワ・ソラのままである」と爆弾発言を行い、晴人がだいぶ混乱するのですが…………ええとうん、どう考えても、これまでの所業を人の心で行っているタキガワ・ソラがアウトなのでは?!
晴人が把握しているだけでも、
・ファントムに殴られて気絶した瞬平と、仁藤祖母の交換を持ちかける。
・瞬平の監禁場所を偽装して、晴人とミサを鉢合わせさせる。
・ベルトを奪って無防備な仁藤を殺害しようとする。
・真由友人を襲撃する。
。ビーストのベルトを盗むように研究員をけしかけ、変身できない仁藤を一方的に攻撃。
……しているわけで、グレムリン/ソラが人間の心を残しているとしても、それは人間の中でも最悪の部類の奴がファントムの姿(力)を得ているだけのような(笑)
フェニックス/ユウゴの際は、対ファントムの経験値が少ない凛子が“ファントムの心”を善意に解釈して破滅的な結果を招きましたが、対して今回は、いいとこ大学生ぐらいの晴人が“人の心”を良い方に信じすぎて陥穽にはまりそうな気配があり、凛子と木崎の配置もそれを膨れ上がらせます。
思えば今作、ファントムの「邪悪」を強調する為と作劇の簡易化の為に“物わかりのいいゲスト”が多く、晴人が“人間の悪意”と対峙するような状況が基本的に無かった上、「人を守ってファントムを倒す」事を自らの使命と課している晴人は人間全般に対して好意的傾向が強いのですが、果たして晴人はちょっと冷静になって回想ムービーを確認する事が出来るのか。
……今作の作風・ソラが担当していた客の何人かが姿を見せなくなっている事・木崎が別口で調査の指示を出している事・ソラが千明の頭髪に注目していた事、を合わせるとだいぶ嫌な予感がするわけなのですが、それはそれで、人の心を持ったファントムをどう処理するのか問題も出そうではあり、次回、格好いいサブタイトルで、果たしてどう転がるのか。
……まあ、トドメはミサが刺せば、問題ない……?