東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

裏を表にする男

仮面ライダーウィザード』感想・第33話

◆第33話「金で買えないモノ」◆ (監督:石田秀範 脚本:石橋大助)
 「ミサちゃんはわからないだろうけど、一度お金に目が眩んだ人間は、なかなか変われない」
 ゲートである事が判明してファントムに襲われ、東京から福井と帰郷する筈だった土屋は、ガソリンスタンドで拾ったタダ券が東京限定だった事に目が眩んで東京に舞い戻ると仁藤に再会。
 できる限り早く東京を離れるように繰り返される土屋だが、福引きを回せば一等賞、道を歩けば報奨金の付いた指名手配犯とぶつかって賞金を手に入れ、開運!
 驚くべき金運の良さにすっかり舞い上がってしまった土屋は、仁藤の言葉に耳を貸さずにまたも豪遊を始めるが、同じ頃、他の5人のゲートもまた、異常なまでの金運の良さに引きずられるようにして東京を離れていなかった事が判明。
 たまたまの天然パーマの男がTVに映っていた事でそれに気付いた晴人と瞬平は男を説き伏せるが、直後、まるで幸運の揺り戻しのように男は次々と災難に見舞われ、倒した筈のファントムがゲートに取り憑いている事に気付いた晴人、霊体?を、蹴り飛ばす(笑)
 「びっくりした~? 死んだ筈のファントムが、また出てきちゃって」
 「グレムリン!」
 「言ったでしょー。彼は死んでからが、本番なんだよ」
 ……誰が確認したのか、それ(笑)
 黒衣の面接官ファントム・ボギーの秘めた能力は、死後に取り憑いた対象の運不運を操る事にあり、グレムリンの指示により、欲に溺れたゲート達に取り憑くと、幸運の絶頂から不幸のどん底に突き落とす事で絶望させようとしていたのだった。
 運不運を操作する能力はウィザードにも効果を及ぼし、次々と襲いかかってくる不幸に翻弄されるウィザードだが、「……大丈夫。この、幸運を呼ぶ、スカーフの、お陰だーーー!」……じゃなかった、バインドによる拘束からファントムを撃破し、搦め手で攻めてくるスタンド攻撃に苦戦するようなバトルでしたが、何か不幸が起こる度に効果音が「ブー」「ブー」鳴るのは、個人的にはやり過ぎに感じて、面白いというよりストレス。
 なお、民俗学者小松和彦先生によると、俗に言われる「ツいている」「ツいていない」とは、元を辿れば、なにがしかの“もの”が「ツいている」事を示す言葉で、民間信仰における「憑き物(つきもの)」との関連性について述べておられ、その見地からはジョーク抜きで割と納得できる能力だったり。
 ウィザードは、使い魔を放って残りのゲートを探すと共に、仁藤にもファントムの隠された能力について説明し、電話番号、ちゃんと交換していた。
 後ちょうど過渡期の頃だったのか、途中登場の仁藤の携帯は、スマホだった。
 土屋を心配してずっと同行していた仁藤は、金運がゲートの能力によるものだと説明するが土屋は聞く耳を持たないどころか、仁藤がひがんでいるのではないかと悪い方向に曲解し……う、うーん……冒頭でソラが「なかなか変われない」と述べていたので意図的な繰り返しなのでしょうが、仁藤と土屋が前回とほぼ同じ揉め方をするのは、面白くならず。
 店を出た土屋を追う仁藤は、土屋が金を渡したチンピラに叩きのめされ、普段見せている身体能力だと何とかなりそうな気もしたのですが、チンピラ3人に囲まれると、普通に勝てませんでした(笑)
 土屋は這いつくばる仁藤に向けて絶縁を宣言し、多分に寓話性の強いエピソードではあるのですが、土屋の豹変度合いも2話連続で極端すぎて、“魅力的な親友”がほぼ台詞だけになってしまっているのも、苦しいところ(前後編どちらか一回だったら飲み込めたと思いますが)。
 一方、増殖タイムを発動したウィザードは四方に散らばり、4体のファントムを一挙に殲滅しようとして次々と不幸に見舞われるおふざけバトルは、上述した効果音への不満もあって、正直げんなり。
  ……結局いずれも、指輪に手が届かないという微妙すぎる描写から力業で倒しますし。
 仁藤との縁を断ち切り、チンピラたちと高級車で爆走していた土屋には、いよいよボギーの運命変転により不幸が襲いかかると、事故を起こしてひっくり返った車から脱出できなくなる窮地に。
 一度は仁藤を引きずり出そうとするも、ガソリン引火の危険を察すると脱兎のごとく逃げ出したチンピラトリオ(一度は助け出そうとしただけ、性根は悪くない人たちなのでは……)の姿に、お金で買える縁の薄さを思い知らされる土屋だが、そこに駆けつけたのは、切られた縁を捨てることなく掴み続けた仁藤攻介。
 「なんでおまえが……おまえ馬鹿か! 俺が何したのかしっかり覚えてねぇのかよおまえ!」
 「忘れたね馬鹿だからさ俺。だがな、親友のピンチを見捨てるような馬鹿じゃねぇんだよ」
 ここの仁藤の台詞は大変良かったのですが、それはそれとしてゲートが絶望する前に爆死しそうになっているので、ファントム的には大失敗なのでは(笑)
 チンピラに見捨てられた土屋にひび割れエフェクトを入れなかったのは、演出上の完全な手落ちとなってしまいました。
 諸共に爆死寸前、仁藤に助け出された土屋は掌返しで改心すると魔法使いに除霊を依頼し、ビーストのキックでも、ファントム外れた(この辺り、狐憑きのイメージが入っていそうでしょうか)。
 「あんた、今までで一番手強い相手だったかもな」
 ウィザードは4属性同時側転キックで勝利を納め、ビーストもハイパー化すると大口ブラスターでボギーを消し飛ばし、やっとファントムを倒せました……6分の1。
 「いただきました……ごっつぁん」
 グレムリンの奇策は二人の魔法使いによって阻まれ、無事に友情を取り戻す仁藤と土屋。
 ボギーの運命変転能力が効果をどこまで絞り込めたのかは不明ですが(幸運は金運に偏っていましたが、不運はそうでも無かったですし)、土屋がボギーに与えられた最大の幸運――そしてボギーにとっての皮肉な不運――は、広い東京に戻ってきてすぐに仁藤と再会できた事であったのかもしれません。
 なんて事をウィザードの重要なモチーフである「裏と表」に繋げて解釈できる辺りは嫌いではないのですが、前後編におけるシチュエーションの繰り返しが面白く感じられなかった事と、演出の方向性が肌に合わず終始ノイズとなって、楽しみづらい前後編でありました。
 次回――物語はいよいよ、“ファントムはどこから来たのか”に触れるのか?