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積まれるロボと積まれない物語

超力戦隊オーレンジャー』感想・第33-34話

◆第33話「5大ロボ大暴れ」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 バラドリルに始まる10体の巨大マシン獣を再生したバッカスフンドは、更に地球内部のマグマから無限のエネルギーを取り出す事に成功すると、そのエネルギーを与えた超マシン獣を誕生させ、始まる強化復刻キャンペーン。
 「これこそ、全知全能を振り絞り、総力を結集した、究極にして最後の作戦だ」
 これ以上の敗北はプライドが許さん、と自ら最終作戦を宣言したバッカスフンドの号令により、次々と再生マシン獣がマグマシャワーで強化されていき、
 「今度という今度こそ、超マシン獣軍団で、一挙に地上を制圧してやる!」
 ……ところにかかるサブタイトルが、無慈悲。
 早速ドリルを下方向に突き出した円盤モードでバラドリルが地上を破壊するスペクタクルシーンからスタートし、第1話のマシン獣の再生強化バージョンが、過ぎ去りし「襲来!!1999」の巨大円盤の見立てになっているのは、お洒落。
 「素敵な夜にこんばんわ。見たかバラノイア帝国の科学力!」
 廃墟と化した街の上空にホログラムを浮かべたバッカスフンドは地球人類に向けて更なる大攻勢を予告し、続けて闇夜に浮かび上がるバラソーサーの巨大な赤い瞳が、レトロフューチャーなタコ型宇宙人の投影にもなっていて“絶望を与える侵略者のモチーフ”として、印象的。
 久々に最序盤の空気が漂い出す中、オーレンジャーの出撃を止めた参謀長は、バラノイアの拠点を叩きつぶさない限り消耗戦に陥るだけだ、と戦況の一挙打開を目論んで、「トロイの木馬」作戦を発動。
 廃墟で息を潜める人々を襲うバラノイア兵をオーレンジャーが叩きのめすと明日への希望を伝えて回り、ここでは迫り来るバラノイアの恐怖に結構な尺が割かれるのですが、なにぶん前回が学校の怪談、前々回がダイエット営業であり、決戦の気運など欠片も存在しなかったので雰囲気作りとしても接続の強引さは否めません。正直、急展開を納得させるというより、浮いた感じに。
 折角バッカスフンドと強い因縁を持ったリキを出したのだから、もう少し組み立てをなんとか出来なかったのかと思うのですが……
 26-27-28 キング登場編:杉村升
 29-30-31 キング登場後の単発回:上原正三
 32 ぶっ飛んだ単発回:杉村升
 33-34 決戦バッカスフンド&新ロボ登場編:曽田博久
 と、いずれも過去シリーズでメインライターを務めた脚本陣の個性がシナジーを起こすことなく、それぞれの持っている作劇法がバッサリと分断されたまま衝突事故を起こしている感じに加え、途中参加・初登板の長石監督も、まだ『オーレン』の空気をどの辺りに定めればいいのか掴めていないような気配が漂います。
 あと正直、廃墟のセットが安っぽくて、もう少しどうにかならなかったものか。
 オーレンジャーは人々を助けると同時に、夜明けと共に「神様のプレゼント」が現れると故意に情報を拡散し、これに乗せられたバラノイアは、地上に現れた巨大な五つの隕石のようなものを、マシン獣再生工場に回収。
 だがそれこそが三浦の仕込んだトロイの木馬であり、内部にオーレンジャーを乗せていた5つの巨石は、人型の記号ロボへと変形する!
 「バッカスフンド! 貴様の野望は、この大洞窟と共に埋め尽くしてやるぜ!」
 個人用の割にはコックピットがやたら広い記号ロボ、系譜としては獣将ファイターの流れを汲んだ、ダイレクトにパイロットと紐付けされた巨大(中型?)ロボとなり、続く『カーレン』まではこの路線が採用される事に。
 「俺達が居る限り、貴様らに勝ち目はない!」
 初期の騙し合いの要素を取り込んだといえる展開から5大ロボ大暴れにより、バッカスフンドが密かに再生マシン獣工場としていた地下大洞窟が崩壊していくと、6体の再生マシン獣はマグマに沈み、皇帝一家も落盤に呑み込まれ……5色のブロッカーロボ(マスクの記号をそのままモチーフに)によるパイロットとシンクロした個別名乗りから、残った4体の巨大マシン獣と、主題歌インストでの巨大戦に突入。
 各色のブロッカーロボは陸海空そして宇宙で次々と再生マシン獣を葬り去っていき、バラミサイラーを追って画面中央を垂直上昇で突っ切っていくレッドブロッカーの姿が、ジニアス黒田にしか見えません(笑)
 地形のバリエーションを付けて、合体前の巨大ロボットのパーツを人型メカとして活躍させる趣向となりましたが、デザイン上の制約からどうしてもアクションが軽快とは言い難く、狙いは理解できるものの、“合体を前提とした個人メカ”を“デザインの制約を受けながら格好良く暴れされる”難しさは、この後それこそ、『ゼンカイジャー』に至っても直面する、シリーズにおける難題といえるでしょうか。
 キングピラミッダーが傷一つ負わない内に新戦力の投入となりましたが、キング先輩は、本人は超いい人ながら行動が彼女の気分次第に左右される為、独自戦力の準備を怠らない点には説得力がありました(笑)
 まさに今現在、地球の危機を完全無視して、家で接待『マリオカート』の真っ最中ですしね!!
 バッカスフンド渾身の再生マシン獣軍団を屠り去ったブロッカーロボが、ジェット噴射で飛び上がると青空に五色の飛行機雲がかかって空軍テイストを特色として打ち出し、帰投する5大マシン、だが……
 「皇帝バッカスフンドの辞書に、敗北という文字はないのだ!」
 煮えたぎるマグマの中にバッカスフンドの咆哮が響き渡って、つづく。

◆第34話「皇帝最後の挑戦」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「儂は不滅だ。そして今日という運命の日を待っていたのだ。全宇宙でただ一つの、この必殺の魔剣。今日こそオーレンジャーの息の根を止めてやる」
 地球に衝突した巨大隕石を利用し、スペースメタルの魔剣を生み出した巨大バッカスフンドが溶岩の底から復活すると、剣玉ロボの一件から約1クール、念願の自分専用ロボを手に入れて早くも調子に乗った裕司がブルーブロッカーで単独出撃し、巨大バッカスフンドと魔剣の前に完敗。
 「あのスペースメタルの剣に勝つには……方法はただ一つ」
 キング先輩に電話する事だ。
 ……じゃなかった、
 「それは、五つのブロッカーロボが合体して繰り出す、必殺剣だ」
 そしてそれを放つには、オーレンジャーが今よりも更なる高みに達する必要がある事を三浦は語る。
 「君たち5人はまだ、最高の境地には達してはいないのだ」
 「……参謀長、どうすればその最高の境地に達する事ができるんですか」
 隊長も参謀長を相手にするとどうも受け身になりがちなのは物足りないところですが、今やるべき事はただ一つ……古式に則り、特訓だ!!
 「この兜を割るんだ!」
 滝をバックに白装束に身を包んだ5人は、日本刀で鋼鉄の兜を叩き割る事を命じられるが、敢えなく失敗。
 「――信じるんだ自分を。そして仲間を。心から信じてやれば、必ずできる」
 落ちた日本刀を高々と掲げた三浦は、アースフォースおじさんとオーラパワーおじさんと妖精おじさんの煮込みのような事を言い出し、戦隊長官の系譜といえば系譜なのですが、三浦の気の狂い方ってそちら方面ではなかったので、どうにも強引。
 曽田さんもずっと書いていれば、超力とは何か? について掘り下げや積み重ねのやりようがもう少しあったと思うのですが、サブの立場もあってかオーレンジャーのパワーソースの深い部分に踏み込めないまま、別のロジックを持ち込んで簡単に処理してしまった感が強くなり、3クール目中盤の大きな転機において、『オーレン』作劇の蛇行運転のツケがまとめて噴出。
 バッカスフンドが街を破壊していく中、5人は兜割りの特訓に励む事になって特訓展開の問題点も顔を出し……超いい人だけど行動の優先順位が彼女の機嫌次第のキング先輩は今、デパ地下で限定シュークリームの列に並んでいるので身動きが取れません!
 この、「追加戦士」と「既存メンバー強化展開」の相性の悪さもまた以後のシリーズ作品でも顔を出しますが(典型的な例では『デカ』)、追加戦士によるアクセントが早くも形骸化しつつある中で、00年代以降にも繋がっていく作劇上の問題点の芽が見えるのは、興味深いところではあります。
 ……それにしても、バッカスフンドとの因縁を強調して登場したリキが、巨大バッカスフンドが大暴れしている中で存在を完全無視は酷すぎますが、キングピラミッダーを時間稼ぎの引き立て役にする事が許されなかったのか、とにもかくにも、1エピソード云々というより、全体構成のちぐはぐさが目立つ事に。
 そんな中、剣玉ロボ回などにも登場したミキオ少年から、たまたまた拾ったスペース隕石の欠片を届けに行くとホットラインで連絡が入り、慌てて止める隊長だが、オーレンジャーの勝利の為に何かをしたい少年は、制止を無視。
 「大丈夫だ、ミキオくん。俺達は、決して負けはしない」
 「僕は、バラノイアなんか怖くないよ」
 さすがに兜割りだけで解決せずに、「ヒーローと少年」の関係性を取り込んだのは巧いところでしたが、助けにいかない選択肢は無いとはいえ、バッカスフンドの破壊シーンを挟んだだけに、特訓を中断して少年の元へ急行するのも、ややちぐはぐな組み立てに。
 バラノイア戦闘員に追われ、傷だらけでマシンガンにも狙われる少年が熱演を見せるが、スペースメタルは吊り橋から川の中へと落下。
 だがその勇気と、信じ抜く心はオーレンジャーの魂を震わせ、オーレンジャーは遂に一心同体の境地に到達すると、5人揃っての兜割りを成功させる。
 破壊の限りを尽くすバッカスフンドめがけて、Rパンチャーと同じ出前システムでブロッカーロボが送り込まれると、空中で発動する超重合体――
 「「「「「完成・オーブロッカー!!」」」」」
 ここまでの展開には色々と問題がありましたが、記号ロボ縦積みの変形合体で誕生するオーブロッカーは文句無しの格好良さで、この興奮をどこへ持っていけばいいのか(笑)
 二刀流を操るオーブロッカーは皇帝バッカスフンドのスペース魔剣を打ち払うと、二刀を合わせて放つ必殺剣により真っ正面から一刀両断し、デザインと台詞回しは好きだった皇帝バッカスフンド、真っ二つになって、あっさり退位。
 新ロボの踏み台となって、ここに地球帰還の夢は潰えるのであった。
 とにかく構成面での難を感じるバッカスフンド退場編でしたが、この話数でこうなるなら、キングレンジャー登場~今回までは、単発回でも最低限の布石は置くなりして一続きの流れが見えるようには作って欲しかったところ……ピラミッダー登場時点で、オーブロッカーの予定が影も形も無かったとはさすがに思えませんし。
 出ても出てこなくてもいいような回で散々暴れ回っていたキング先輩が、肝心のバッカスフンドの大攻勢中に音信不通となり、デパ地下の限定マカロンの列に並んでいる内にバッカスフンドが真っ二つになってしまうに至っては、軽くナイトメアの続きです。
 曽田脚本だと、レッドパンチャー登場編ではもう少し、新ロボと「超力」を関連づけようとしてはいたのですが今回は完全に放棄されており、プロデューサー陣からのオーダーが曖昧なのか、ライター陣の中で「超力」の扱いについて意思疎通が取れている様子が見えないのも混沌に拍車をかけており、オーブロッカーは超格好いいが他は0点、という困ったエピソードになってしまいました。
 次回――更なる混沌を呼ぶ爆弾野郎?!