東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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白と黒と赤

仮面ライダーX』感想・第13-14話

◆第13話「ゴッドラダムスの大予言!」◆ (監督:内田一作 脚本:伊上勝
 夜道で不審者に追われた女性が逃げ込んだ電話ボックスはゴッド殺人スモッグ実験室で、警察に助けを求めた筈が受話器から噴出したガスによって殺害される、なかなかえげつない導入。
 この実験に成功を収めた怪人ユリシーズは、総司令より東京全滅作戦の指揮と同時にXライダーの封じ込めを命じられ、頑張るぞ、と拳を握るユリシーズに暗闇からかかる渋い声。
 「誰だ、貴様?!」
 「……ゴッド秘密警察、第一室長」
 「ん、アポロガイスト!」
 「固くなるな。秘密警察としても、今度の作戦は全面協力の方針だ」
 それはつまり、あまり協力する気の起きない作戦の時もあるという事ですね室長!
 「おお、それは有り難い」
 室長はXライダーの誘き出し役を請け負うと暗闇の中をバイクで走り去り、翌日、敬介の友達と称して、藤兵衛の店でコーヒーを飲んでいた。
 「……ま、こんなものかな」
 室長の評価に不満げな藤兵衛ですが、コーヒーの出来云々よりも、コーヒーを出した途端に、目の前でパイプをふかし始めるのがどうかと思います!
 爽やかウェスタンルックの敬介が来店すると室長はいつの間にか姿を消し、“白い服着てなんだか気障な奴”で理解される室長(笑)
 わざとらしくバイクで走り去る室長を敬介が追いかけていくと、その途中で大仰な杖を振り回して聴衆を集める怪しげな人物を目撃し……その名は、午後3時に東京全滅を予言するゴッドラダムス。
 「逃げよ、逃げよ、東京を捨てて命ある限り逃げよ」
 室長を見失った敬介は怪しい予言者を追うと、倉庫の中に怪しい電話ボックスを発見し、まんまと閉じ込められてガス攻撃を受けるが、床を突き破って脱出に成功すると反撃開始。戦闘中にアポロガイストが介入してユリシーズが逃走し、ゴッドの作戦の手がかりを追う敬介は、予言者と一悶着を起こして死の予言を受けたウエマツ博士の家を訪れると、その窮地を救う。
 「ゴッドの作戦を聞かせてもらおうか」
 「俺は予言した。今日東京は全滅する。それがゴッドの作戦だ」
 ユリシーズは正体を現し、これは完全に、余計な事をやって査定にマイナスを受けるパターンなのでは(笑)
 「邪魔なアポロガイストもおらん。俺が殺してやる!」
 本音の出たユリシーズは作戦指揮そっちのけで敬介へと襲いかかって例の如く例のように優先順位の混乱を来し、ほら総司令があれもこれもワンオペで済ませようとするから!!
 ユリシーズ殺人スモッグを受けたXライダーは、形勢不利を感じると、ライドルロープを用いて逃走。ウエマツ博士もXライダーも仕留め損ねたけど作戦の決行時間が迫ってる! とブラック外食産業ムーヴでアジトへ取って返すユリシーズの後をこっそり追うと、工作員の一人から制服を剥ぎ取ってゴッドの一員になりすまし、相変わらず、セキュリティに難を感じる制服です。
 いよいよ、東京中の電話機から殺人スモッグを噴出させる大規模バイオテロの決行を目前に控えるユリシーズだが、ウエマツ一家の身柄を確保していたアポロガイストが、ゴッドの予言は正確でなくてはいけない、と一家の処刑を命令。変装していたXが進み出てショットガンを受け取るが、それはXを釣り出す罠であり、アポロガイストの“できる男”ムーヴに一杯食わされたXは、一家と共に脱出を図り……あ、落とし穴に落ちた(笑)
 着々と風見先輩の後輩ポイントを溜めていくXライダーは、作戦開始の秒読みを聞くと、ひみつ道具の吸着マグネットを足の裏に張り付けて壁を垂直に歩き始め、先日のライダーショックに続き、どんどん、26の秘密みたいなものが生えてくる体質も継承。
 ……迂闊ポイントを溜めると、特殊能力(装備)がアンロックできる使用なのかもしれません。
 「残念だが、殺人スモッグのバルブは開かないぞ!」
 エックスが落とし穴の壁を歩いて登った事で発生した時空の歪みにより、毒ガス放出は台詞だけで阻止され、伊上脚本のパターンでいえば、落とし穴から脱出したエックスが虚言でユリシーズをおびき寄せて……みたいな流れがあったのかもしれませんが、映像がまとめて端折られた為に、だいぶ意味不明な事に。
 電話回線と結んだガス管も切断したと宣言したXは、主題歌に乗ってユリシーズとクライマックスバトルに突入すると、本日はライドルホイップが大活躍して、時代劇風味の強い殺陣で工作員をグサグサ刺します。
 月桂冠による締め付け攻撃に苦しむXだが、電気ショックでそれを破ると、相討ちを狙ってきたユリシーズをXキックで蹴り飛ばして、大勝利。
 「Xライダー! 秘密警察の第一室長が改めて予言しよう」
 「アポロガイスト!」
 「アポロガイストの名誉にかけて、おまえを殺す!」
 次回――あ、あれ? 室長早くも退職?!

◆第14話「アポロガイストくるい虫地獄」◆ (監督:内田一作 脚本:伊上勝
 古代ギリシャの伝説の虫・くるい虫――その虫に刺された人間は狂気にかられて自らを不死身の戦士と思い込むようになり、今開始される「日本きちがい作戦」。
 「第一室長に報告。発狂のアオタ博士は、タクシーの運転手を絞め殺し、ホソヤマ団地方向に車を暴走中です」
 ゴッドの為にくるい虫を甦らせるも、用済みとして実験台に使われたアオタ博士の犯行がリアル寄りで恐ろしく、狂気のままに暴走するタクシーは小学生の列に突っ込んでいくが、順調にヒーロー体質に染まりつつある敬介がたまたま居合わせた事で被害はゼロ。
 義憤にかられた敬介は暴走タクシーを追跡すると、運転手を引きずり出して気絶させ、アオタの口封じをしようとするゴッドの狙撃手を、膝蹴りで止める室長(笑)
 「アオタはごく自然に殺すのだ。日本きちがい作戦は神敬介にはわからせん!」
 室長の手配により、偽救急隊員がアオタの身柄を回収して救急車の中で毒殺しようとするが、あまりのタイミングの良さを怪しんだ敬介に嗅ぎつけられて失敗に終わり、これはもう、「やるなXライダー」ムーヴをやるしかない!
 「ふふふふふ……さすがだな神敬介!」
 「おまえに褒められると妙な気持ちになる。なぁにこれもゴッド、特におまえとの付き合いを始めたおかげだ。簡単に人間が信用できなくなったんでな!」
 すっかり荒んでしまった敬介は、哀しき人間不信を宣言し、父と恋人の所業の後遺症が深刻です。
 アオタ博士の身柄を巡っての両者の対峙は、ザ・伊上節、で実に切れ味鋭く格好いいやり取り。
 「ゴッドになくとも俺にはある。みすみす殺される人間を残していけるか!」
 「それではやるか」
 「望みとあればお相手しよう」
 「神敬介! アポロガイストは、ゴッド秘密警察・第一室長であると同時に、ゴッドの殺人マシンとも言われている。死んで貰うか! うォォォっ!」
 「たぁぁぁっ!」
 飛び上がった二人は空中でヒラリと変身……はせずに両者バイクにまたがって申し合わせたかのように向かい合い、宿敵の鼓動ゲージが急・上・昇。
 バイクですれ違い様のキックの打ち合い、そして衝突から同時にバイクを飛び降りるとそれぞれアポロチェンジとセットアップを決め、室長に変身コールとポーズが加えられて、完全に、表裏を為す改造人間としての描写が為されると、ショットガンを構えたアポロガイストは……
 「くらえ! アポロショォット!」
 まず、救急車を吹っ飛ばした(笑)
 「卑怯者! とうとう殺したなアポロガイスト
 「今頃気が付いたのか、甘いぞXライダー」
 ヒーローのペースに呑み込まれずにアオタ博士を退職に追い込んだ室長の“できる男”ムーヴが貫かれ、若くまだまだ未熟なヒーローのレベルを引き上げる、一枚上手を行く悪役としてのアポロガイストは、実にはまり役。
 ライドルスティックを引き抜いて一騎打ちに臨むエックスだが、Xキックをシールドで防がれると、爆発炎上中の救急車の陰に隠れるライドル土遁の術で難を逃れ、先日はメモリの初期化によるアップデートから敗北のショックを特訓という名のイニシエーションを通して過去の先輩たちと精神的同一化を図る事で克服しましたが、もう一つ学んだのは、完敗でなければ、それは戦略的撤退と称される事です!
 エックスへの警戒を続けながら、くるい虫を増産するアポロガイストは、その一匹を藤兵衛の喫茶店に放ち、くるい虫の作用により、店内で起きた大量殺人事件の当事者となった立花藤兵衛、逮捕! ……と思ったら、ゴッドの偽警察で残念(残念?)。
 留置場の立花容疑者は、現れたアポロガイストの姿を見ると、
 「おまわりさん! こいつを捕まえろ! こいつはゴッドの秘密警察第一室長だ。日本を狙っている悪の手先だ!」
 と意味不明の供述を繰り返しており……
 「頭の回転の鈍い男だ。まだ気がつかないようだな」
 藤兵衛が捕まったのは、警察は警察でもゴッド秘密警察・東京分署であり、藤兵衛にくるい虫を押しつけ、ぐいと上半身を寄せて拷問する室長が、(恐らく「悪魔の囁き」のニュアンスなのでしょうが)やたらセクシー(笑)
 「簡単な質問なのだが……いいかね? もう二度と正常な人間として生活はできない。神敬介にも会えない。それどころか、グランプリレーサーを育てるのも夢になる」
 「夢でもいい! 俺はその夢を抱いて死んでいく。殺せ! 俺はなにもしゃべりゃせんぞ」
 自由と尊厳を踏みにじる者に決して屈しない矜持で藤兵衛が真っ当に格好いいところを見せ、「夢でもいい! 俺はその夢を抱いて死んでいく」はぐっと来る台詞。
 またここでは、室長が藤兵衛の「私」の部分を揺さぶる事で、正義の為にはしばしばぶっ飛びがちな藤兵衛が、「人間」としての葛藤を覗かせながら、それでもなお拒絶する姿が、ヒーローとは違う立場から、人が悪意に立ち向かう姿を見せる形になったのも、良かったところ。
 「望み通りにしてやる! 狂って死ね! 立花藤兵衛!」
 藤兵衛の首筋にくるい虫が針を突き立てようとするが、間一髪、ライドルロープが虫を払いのけ、X参上。
 「どうしてここが?!」
 「くるい虫の恐ろしさにおまえの部下が白状したのだ」
 「……あの、馬鹿めが!」
 同様の拷問に、耐えた者と耐えられなかった者の鮮やかな対比で藤兵衛の株が上がり、室長の毒づき方が、らしくて素敵(笑)
 ……なお、ヒーローが悪のライバルと類似の拷問を行っている件に関しては、各自、くるい虫を押しつけた工作員の耳元で「あんたにだって家族が居るんだろう?」と低い声で囁く神敬介の図を思い描いて不問に付していただければと思います。
 「Xライダー! ゴッド秘密警察・東京分署に入ったからには、生きて再び外には出さぬ!」
 「この東京分署は、Xライダーが破壊する!」
 ライドルスティックを振り回すXは藤兵衛を救出、くるい虫の巣を爆破する鮮やかな立ち回りを見せ、そして、東京分署に既に火を放っていた(笑)
 ……敵のアジトを爆破するヒーローは山ほど居ますが、突入時点で着火済みのヒーローはなかなか珍しい気がします。
 東京分署はXライダーの卑劣な放火によって壊滅し、Xとアポロガイストは挿入歌をバックにススキ野原で再び一騎打ち。
 Xのライドルスティックとアポロガイストのシールド格闘術が激しくぶつかり合い、切り札のシールド投擲を放つもかわされ、武器を失ったアポロガイストに一気のラッシュが入ると、X必殺キックが直撃してアポロガイストは宙を舞い……しつちょーーー! ……あ、生きてた。
 「Xライダー……俺の負けだ。君は……良きライバルであり好敵手だった。……最後の握手を」
 辛うじて木っ葉微塵に消し飛ぶのは踏みとどまったものの瀕死といってよく、すすだらけの背広を払い、死に際の身だしなみを整えるのが素敵な室長が歩み寄って手を伸ばすと、ついつい手を握り返してしまうX。
 「……アポロガイスト、私も敵に回すのが惜しかった」
 だがその瞬間、キラリと光る室長の目!
 「アーム爆弾で一緒に死ねぇ!」
 わかりやすいほどにわかりきった展開ながら、見た目と声の格好良さと台詞のギャップが素晴らしすぎる最後の足掻き(笑)
 腕に仕込んでいた爆弾を起動した室長はXに組み付いて自爆を図り、アポロガイスト最後の奸計にはまったXライダー爆死……かと思われたが、重傷のアポロガイストをなんとか振りほどいていたXは生還し、
 「敵ながら見事な最期だった」
 の評価でいいのでしょうか(笑)
 第9話で本格登場するや、そのデザインの格好良さと、渋い美声で圧倒的な存在感を放ち、内部監査の男、という立ち位置も大変面白かったアポロガイスト室長、まさかの6話で退場!
 前作のキバ男爵やツバサ大僧正と同様の手法とはいえ、悪役としての賞味期限が切れる前に打ち上げ花火として太く短く大輪の花を咲かせ(さよこーーーー!)たともいえますが(ノイズは気にしないで下さい)、怪人の姿も人間の姿もインパクト抜群、敬介/Xと互いを引き立てる芝居の攻防、あくまで監査役なので作戦が失敗してもあまり格が落ちないし適度に見せ場を確保できる都合の良い立ち位置、と揃って、むしろライバルキャラとしてはこれから本格化の気配も漂わせていただけに、この急展開は勿体なさを感じます。
 特に、レギュラー悪の幹部をどう描くのかについて、エピソード単位の作戦指揮権とは別に、独自権限で作戦に介入して監査や修正を行う(たまに駄目な方向に影響を及ぼす)、という立ち位置は非常に良いアイデアだっただけに、それが6話で使い切られてしまったのは惜しまれるところ。
 ……まあ次回、ゴッド秘密警察・静岡分署を率いる第二室長・ヘルメスガイストとかが出てくるかもしれませんが。
 振り返り企画の集計前に今回までを見ていたら、年末ランキングの悪役部門1位はアポロガイスト室長が躍り出ていたと思われ、そういう意味でも予想外のタイミングでの退場でしたが、前後を見回しても、黒魔術とかで軽々しく幹部クラスが甦る時代なので、ゴッド機関のオカルト力に期待しておきたいと思います!
 局長の早期退場は残念でしたが、テンポのいい展開に、対峙する敬介とアポロガイストの台詞回しの格好良さ、そこに藤兵衛の格好良さも加わって、満足度の高い一本でした。
 「アーム爆弾で一緒に死ねぇ!」
 は、年末ギリギリに飛び込んできて、大変心に残る台詞に(笑)
 次回――果たして藤兵衛の喫茶店は営業再開する事が出来るのか? 仮に再開したところで客足は戻るのか?! またまた新展開? で、赤いテカテカジャケットの敬介に迫る死神の鎌が、炎を噴いていてやたら格好いい。