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それもまた神への道なのか

仮面ライダーX』感想・第12話

◆第12話「超能力少女をさらえ!」◆ (監督:折田至 脚本:鈴木生朗)
 ユリ・ゲラーの来日などによる超能力ブームの真っ最中、TVでは超能力少女の特集番組が組まれ、コーヒーショップ・コル(藤兵衛の店)には今話題のスプーンを曲げる念力少年が特別出演し、お化け屋敷のようなギミックでミッションを発令する総司令は、噂の超能力少女……ではなく、少女の父であり、超能力研究の世界的権威であるカワムラ博士をゴッドに協力させろと命じ、間違ってはいないが本題でもない、一ひねりの入ったサブタイトル詐欺(笑)
 ヤギ要素が、獅子の頭部から真っ正面に突き出した一本角のツッパリスタイルで表現されるのが面白いデザインの獣人キマイラーが少女とその母をさらうと、室長は真っ正面からカワムラ博士の家を訪れて人質の存在とタイムリミットを告げるマフィアムーヴ。
 たまたま室長を見かけた敬介はその後を追うがアポロガイストの迎撃を受け、更に迫り来る獣人キマイラー
 ゴッド弓兵部隊が敬介の行く手を阻み、新演出で空中セットアップする敬介だが、アーチャー工作員は蹴散らすもキマイラーの炎にあぶられて生死不明となり……その頃、超能力少女はスプーン曲げの要領で南京錠を外していた(笑)
 「相手は超能力者だ! 見張りもせんとは何事だ!」
 少女の逃走を見とがめた室長はキマイラを叱責すると、マイナス査定がGODポイントカードの裏面一杯になったので退職処分! と銃を向けるが、エックスを倒したので査定の見直しを……と命乞いされ、バイクの練習コースで敬介を待つ藤兵衛の元を訪れる室長……しつちょーーーーー(笑)
 一度、藤兵衛と接触させておく意味合いもあったのでしょうが、自らの足で事実関係の確認に向かう室長のフットワークが面白すぎます。
 「神敬介は、現れませんか?」
 「いやー、俺も待っとる所なんだ」
 「……キマイラの話も満更嘘ではないか」
 「ところで、あんた誰? 敬介の知り合いかね?」
 「知り合いだったと言うべきでしょうかね」
 とにかく渋い美声の為、なにを言っても3割増しぐらい格好良く聞こえるのがズルい室長が走り去ると、包帯を巻いた敬介が物陰から顔を出し、カワムラ博士と接触する為にやられたフリをしていたと説明。
 妻子に会わせてほしい、と願う博士はキマイラーによって連れ去られるが、既に藤兵衛から発信器を預かっており、その向かった先は……
 「ここは私の研究所じゃないか」
 「ふふふははは、灯台もと暗し。おまえの妻や子は、この地下室に閉じ込めてある」
 …………狙いをつけた博士の研究所の地下にゴッド機関がこっそりアジトを建設していたのか、もともと博士の研究所に人を閉じ込めておくのに具合がいい地下室が存在していたのか、後者の可能性が否定しきれないのが『X』日本。
 再会を果たした一家三人だが、ゴッド機関への忠誠の証明としてサイボーグ手術を強要され、監禁場所の扉を開けると隣にサイボーグ処置室があるので、いつの間にか作られたゴッドのアジトだった可能性の方が高そうですが、カワムラ博士が研究の成果を試す為に密かに実の娘を改造したりはしていません! 濡れ衣です!
 涼子が死の間際に余計な設定を付け加えた為にサイボーグにされそうになるカワムラ一家だが、少女が敬介の接近を感知し、実に見事な超能力少女ぶり。
 その言葉の通り、空中セットアップしたXはクルーザージャンプで宙を舞い、主題歌インストをバックに研究所へとX突撃。博士一家を救出すると、工作員の突き出す槍を利用して3人まとめて投げ飛ばすアクションが格好良く、それをスイッチとして、投げ槍部隊を見上げたところで、セタップ! セタップ! セタップ! と主題歌がボーカル入りに切り替わるのも、鮮やかな流れ。
 前回とは打って変わったテンポの良いバトルとなり、ライドルホイップが次々と工作員をX字に切り裂く一方、逃げる博士一家に迫る工作員は藤兵衛が蹴散らし、主題歌をバックに、工作員とたっぷり立ち回りを見せる藤兵衛(笑)
 そして、藤兵衛が車に戻り切らない内に、結構な勢いでアクセルを踏み込む博士(笑)
 不屈の戦士・立花藤兵衛が徐々に切れ味を取り戻していく中、エックスは残るキマイラーにロングポールからの棒高跳びキックを連続で浴びせ、カメラをかなり対象に寄せての映像と細かいカット割りがスピード感を高めます。
 追い詰められたキマイラーは、ゴッド忍法・炎壁の術でセキュリティを固めるが、池に飛び込んで一時的に火炎耐性を身につけたXにより高熱の結界を突破され、渾身のXキックによって自らの爆炎の中に散るのであった。
 予告とサブタイトルからてっきり「超能力少女」が主題になるのかと思っていたら、さらわれる事はさらわれるが目的はその父親の方というトンボ返りを見せ、しかも“血縁としての人質”なので、時事ネタ以外に少女が超能力少女である必然性はストーリーの中では特に無い、というのが意外性満載の一本(笑)
 とはいえ、少女がテレパシーで敬介に助けを求めてくる、とかするとだいたい面白くなくなるパターンなので、スパイ物の要素を入れつつ罠の仕掛け合いに持ち込む《仮面ライダー》らしさに持っていって良かったと思いますが、その代償として、「さらわれた妻子の元へ向かおうとする車の中で両サイドをゴッド戦闘工作員に挟まれながらいきなり煙草をふかし始めるカワムラ博士」という、演技にしても人間性に悪印象を抱かせる映像が誕生してしまい(シーン切り替わるまで、敬介の変装かと思ったぐらい)……博士は秘密の地下施設で娘を超能力者に改造なんかしていない! これは西側の陰謀だ!
 実在スプーン曲げ少年にやたら尺を割き(その割に映像は全く真に迫っていない……)、時流に乗っかった企画回といっていい作りながら、クライマックスのアクションが冴えるなど割とまとまりが良かったですが、次回も流行り物に飛びついていくスタイルで――ゴ、ゴッドラダムス!?
 ……なお今回一番面白かったのは、「凄いぞスプーン曲げ!」と紹介される敬介が、指先一つでスプーンを粉砕できそうなところ。