『超力戦隊オーレンジャー』感想・第27-28話
◆第27話「キング颯爽登場」◆ (監督:小林義明 脚本:杉村升)
サディスティックな悪女役が実にはまる天祭揚子さん演じるケリスが鞭を鳴らすと、バラゴブリンがドリンへと牙を向けるが、黒い疾風として現れたリキがドリンを救い、オーレンジャーも合流。
「バラノイア! よくも僕の大事なドリンを!」
怒りのリキは、負け犬は大人しく星へ還れ! とバッカスフンドに向けて宣言すると、顔に王のマークが輝く、黒地に金アーマーの新戦士、キングレンジャーへと超力変身。
「うろたえるな! こうなる事は先刻承知だ。キングレンジャー! 勝負はこれからだ!」
「行くぞ、マシン獣!」
月面から戦いを見つめるバッカスフンドが何やら企む中、キングレンジャーはカンフー……というか、ブルース・リー丸出しの立ち回りで次々と戦闘員を蹴散らしていき、ジークンドーは、超古代からあったんだ!
オーレンジャーが呆然と見つめる中、6億年ぶりの拳で骨を砕く感触にエキサイトする黒は、第1話のオーレッド百人組み手を意図的にリフレインしたと思わせる戦闘員15人抜きを決め、途中に入る、ワイヤーアクションでの飛び蹴りはかなりの格好良さ。
「あいつ滅茶苦茶強いぞ!」
ここで5人が完全にギャラリーと化してしまうのは、だいぶなんだかな感でありますが、黒はキングスティックを取り出すと、撃破スコアを更に追加。
「うぉりゃあ! うぁちゃー! あいやーーー!」
りんどう湖ファミリー牧場の悪夢の後、夏の間に剣玉とかお祭り男とかビッグバン掃除機とか色々ありましたが、バトル重視の作風もあり、シンプルに、凄い超古代戦士がやってきた! というアクションは爽快です。
バラゴブリンが飛び道具を放って参戦すると、青黄桃が手も足も出なかったバラゴブリンは、スティックの開閉ギミックから放つキングビクトリーフラッシュで、瞬殺。
巨大化エネルギーが注入されて、大きくなったバラゴブリンを目にしたキングレンジャーの、
「バラノイアめ、6億年の間に、ちょっとした力を身につけたな!」
は今聞くと変な面白さが発生しており、ようやく出番が来た、と超力モビルが出動。
大先輩にいいところを見せようとするオーロボだが、バラゴブリンにはクラウンソードが通じず、出前召喚されたRパンチャーのガトリングも傷を負わせる事の出来ないまま蹴散らされると、踏み潰されそうになったキング先輩が召喚したのは、別荘代わりの超次元ピラミッド――その正体は、超古代要塞キングピラミッダー!
「出動! キングピラミッダー!」
キング先輩が乗り込むとピラミッダーは土煙をあげて大地を走り出し、いきなりのスーパーバーンウェーブで無慈悲にバラゴブリンを瞬殺し、凄い勢いで、超力戦隊の存在が、無意味になりそうです。
6億年の時を超えてやってきた古代超力拳法の使い手の元に、仲間っぽい雰囲気を出して駆け寄るオーレンジャー、「久々に娑婆に出てきたら、超力の看板に泥塗りやがって(ぺっ)」と無様な戦いを罵られて罰走を命じられないかドキドキしましたが、
「ありがとうオーレンジャー! ドリンが危ないところを助けてくれて!」
あ、この先輩、いい人だな……。
「いい気になるなリキ。おまえはまんまと罠にはまったのだ」
だがその時、ケリスがマシン獣の姿になると、月面からの指示で即座に巨大化。不意打ちを受けた黒は、バラケリスのへそから伸びた布に囚われると体内に吸収され、身柄を月面基地へとさらわれてしまう。
「地球は我がマシン獣たちのふるさとだ。必ずオーレンジャーを倒し、この手に取り戻してみせる!」
更新された基本設定に基づき、これは侵略ではなく地球帰還作戦なのだ、とMのレコンギスタを唱えるバッカスフンドはキングレンジャーを利用してオーレンジャーを壊滅させると宣言。
ドリンが超力基地に保護される一方、塾帰りの女の子を誘拐する謎のマシン獣が出現し……ドリンの面影を求めるマシン獣……? というミスディレクションなのですが、直球の変質者が誕生してしまって少々困った感じに。
出撃したオーレンジャーは、バラバキュームのような体型で、どこかキングレンジャーに似た色味とマークのマシン獣と遭遇し、高笑いしながら現れるケリス。
「そのマシン獣は、確かにリキよ。死にかけたリキを改造して、マシン獣・バラキングにしたのよ!」
微妙にコウモリの意匠が入っている為、今、私の脳内に「その剣を持っていれば、おまえを殺す事になる。おまえを殺せば、おまえを愛している事になる。俺に愛などあってはならぬ」と某キングの面白理論が浮かんでいて困ります。
「今のリキは、知能もなにもない、ただの獰猛なだけのマシン獣よ。二度とリキは元へは戻れない。諦めるのね。あははははは!」
バラキングが適当にオーレンジャーを蹴散らして姿を消すと、デリカシー皆無の三浦が「なに?! リキを改造してバラキングにした?!」と叫んだ事でドリンは基地を飛び出していってしまい、凄い勢いで走っていくドリンがリキの名を叫んで、つづく。
前半に追加戦士のデビュー戦がド派手に描かれた後、6億年の時間があったのだ! とバッカスフンドの罠が発動し、後半は最強の味方かと思ったら最強の敵だった?! と状況が逆転してつづく、やや変則的な構成。
とはいえそのトリックが、戦いに葛藤を加えたり、オーレンジャーの株を回復させる機能を果たすかといえばそうでもないのですが……次回――圧倒的・箱。
◆第28話「見よ奇跡の要塞」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升)
バラキングとキングレンジャーのモーションを解析する超力基地だが、同一個体であるかどうかの結論は出せず仕舞い。
「……やむをえまい。バラキングがリキであろうとなかろうと……見つけ次第倒すんだ」
さらわれた子供達を救う為にも手ぬるい事は言っていられないと参謀長は決断を下し、超力戦隊はやると決めたらやるし、ドリンは「リキを信じる」一点だしで、バラキングがキングレンジャーを模した事による葛藤と選択は開始数秒でさくっと処理され、バラキングがバラキングである事の意味は、登場時と引きのインパクトというだけに。
隊長と樹里は湖を見つめてたそがれるドリンの元を訪れ……ここは普通に、基地の敷地の中なのでしょうか(笑)
リキを信じ続けるドリンの元には小鳥が集まり、足下には花が咲き、大自然に愛されるドリンと超力との関係性が示唆されると共にヒロイン力がブーストされ、それを見守る隊長たちが、なんかもう、すっかり骨抜きにされていて怖い。
目を覚まして隊長! 目の前に居るそれは多分、人間の深層心理になんらかの波動を投射して、自分たちを守らせようとする生物なのよ!
バラキングに捕らえられた少女たちは、動物と合成してブルドントのペットに……と猟奇な仕打ちが予告され、そのコレクションの中にドリンを、と繰り出される戦闘機部隊。
隊長と樹里はドリンを守って超力変身するが、戦いのさなか、リキの波動を感じ取ったドリンは無謀にも一人で走り出し、結構な、トラブルメーカーです。
リキの行動原理そのもののドリンですが、出てくるや否や“超力を浴びた登場人物はみんなドリン大好き”になってしまったのはややノりにくいところで、視聴者が好感を持つ為の仕掛けは別に欲しかったところ。……まあそこは尺の都合で圧縮して、“誰もが好感を抱く可憐な少女”みたいな扱いなのでしょうが、三浦が余計な事を言った為に、色々と余計な事を考えてしまいます(笑)
合流してドリンを追ったオーレンジャーの、バイク×ナパームから、バラキングとすれ違いざまにバイクに乗ったままパンチ! は格好良く、巨大化したバラ女王様に立ち向かうオーロボだが、あっさりと黄金の檻に閉じ込められてしまい、すっかりいいところなし。
一方、いずこともしれない暗黒の世界を彷徨っていたリキは、バラ女王様の体内に吸収された際に一緒に巻き込まれたパクの案内により謎空間からの脱出に成功し、何故か、地球の地割れの中から飛び出してきた(笑)
復活したキング先輩はバラキングを瞬殺し、勢いが完全に、白い鳥人です。
巨大バラキングの攻撃を受けたキング先輩はピラミッダーを召喚すると、まずはピラミッドビームでオーロボを檻から解放し、ドリンはともかく、キング先輩は、超いい人。
ロボの操縦を部下に任せた隊長が、囚われの少女たちを助けに向かって隊長だけは個別で見せ場を確保され、レッドパンチャー、ゴー!
キング先輩が腕組みして後方から見つめる中、しばらくオーロボ&Rパンチャーvs女王様&キング、のマッチアップが展開すると、3台の超力ロボに突如としてリキのマークが浮かび上がり、三つのマークが並んだ時に発動するキャリアフォーメーション。
『オーレン』必殺:とにかく「虹色クリスタルスカイ」流せばどうにかなるメソッドから、足場の伸びたキングピラミッダーにオーロボとRパンチャーが搭載され、怒濤の集中砲火でバラキングが弾け飛ぶと、更に続けてバトルフォーメーションが発動。
立ち上がって顔の出てきたピラミッダーの内部に超力モビルが収納されると、Rパンチャーが背中に乗って誕生する――あまりにも巨大な箱。
「よし、行くぞぉっ!!」
「OK!」
バラ女王様の二倍はあろうかという超巨大要塞ロボが完成すると、スーパーレジェンドビームがマシン獣をあっさり消し飛ばし、6億年分の真理――デカいは強いを見せつけるのであった。
「これからどうするんだ?」
「勿論バラノイアと戦うさ」
ある意味、古代超力文明の歪みが生んだ被害者の側面もありそうなリキとドリンは、時空を越えた現代での戦いを宣言するが、リキはあくまでも「ドリンを守るナイト」としての一線を引き、国際空軍の指揮下に入って6人目のオーレンジャーとなる事は拒否。
それも踏まえてかデビュー戦での下駄の高さが凄かったですが、独立した友軍の位置づけとなったリキは、ドリンの命令で兎を探す羽目となり、ドリンはどうやら、可憐だがちょっとお転婆なところもあるお姫様(お嬢様)といった位置づけにしたいようで、それに振り回されるキング先輩は超いい人だけど彼女が絡むとな……の雰囲気が漂いつつ、
「これからも頼むぜ、キングピラミッダー」
と、隊長がいつもの見上げカットで締めて、つづく。
第19話~第25話までとはガラリと空気が変わって、終始シリアスに展開した追加戦士登場編。
『ジュウレンジャー』から続けて4作目となった追加戦士ですが(『カクレンジャー』はやや特殊な扱いでしたが……)、『ジュウレンジャー』を彷彿とさせる背景を持った『ダイレンジャー』的少年戦士が3号要塞ロボをひっさげて参戦し、前回感想のコメントで電子レンジマンさんからご指摘いただいたように、「オーレンサイドが全く持っていなかったバラノイアとの因縁を一手に引き受け、折り返し地点で劇中に構築した」のは、新しい活用法。
その新造した設定が上手くはまるかは今後の物語次第ですが……キング先輩は改めて見たら超いい人だったので、今後の活躍に期待したいです。
今回の目玉といえる、〔グレートタイタン×(スーパー)ターボビルダー×究極大獣神〕といった風情のキングピラミッダー、放映当時は、路線修正への不満に加えて、そんなに立て続けにメカを増やさなくても……と引き気味になった記憶があるのですが、約30年後の現在、80年代後半~90年代前半のシリーズ作品を一通り見た・強化展開ラッシュに慣れた・再見なのでストーリーの起伏にそこまで引っかかりが無い視点で見ると、初の2号ロボ登場となった『フラッシュマン』から約10年、戦隊ロボ強化の歩みの中間決算としては、これ以上なく納得できる造形と到達点でありました(笑)
箱は正義だ!!
物語としては、巨大バラキングもバラケリスも、通常フォームのスーパーバーンウェーブで消し飛ばせたようにしか思えない為、超古代と現在、時代を超えた戦士の繋がりが勝利を呼んだ! みたいにならなかったのは残念でしたが。
次回――本当に再登場してしまう辺名おじさん。予告は再び夏休み時空に呑み込まれ、あまりにもアップダウンの激しい超力戦隊の明日はどっちだ?!