東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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狂気に輝くJとP

仮面ライダーX』感想・第7話

◆第7話「恐怖の天才人間計画!」◆ (監督:折田至 脚本:長坂秀佳
 まるで翼のように、白い布を体に巻いた少年少女たちが、次々と高所から地面に飛び降りては死亡していく衝撃映像でスタート。
 「……これで23人目だ! 23人もの小中学生が飛び降りをやった。しかもなんの理由もなくだ!」
 不条理で不穏な事件に憤る藤兵衛にどやされた敬介は、死んだ父親の面影を重ねた事を口にして、父性的存在の転換作業が行われると、調査に乗り出す2人だが……
 「飛べるのだ! 飛べるのだあや子! その白い服さえ着れば、おまえは自由に空を飛べるのだ!」
 事件の背後には、ゴッド怪人・鳥人イカルスの暗躍があり、飛び降りを止めようとして無惨に殺害される中年男性。
 「俺の邪魔をする者は、死あるのみ。さあ、飛べ!」
 そして少女も自ら地面に叩きつけられて新たな犠牲者が生まれ、24人の少年少女を抹殺したイカルスに下された新たな指令は、天才人間の研究をしていた大門寺博士を絶望の淵に追い込み、ゴッドの組織に引きずり込む事!
 「大門寺博士といえば、この10年、密かに天才人間の研究を続けてきていた」
 「死んだ親父から聞いています。並の人間の、十倍の頭脳と体力、そして、正義の心を持つ少年少女を作り出す研究」
 正義の! 心を! 人為的に作るな!!
 やはり、この日本は世界地図上から消さねばならぬののか。
 死んだあや子は博士の娘であり、既に藤兵衛の事を「おやっさん」呼びになっている敬介が大門寺博士に事情を聞くと、これまでの被害者は皆、天才人間計画の過程で作り出された薬を飲んでいた事が判明する。
 「大門寺博士、それじゃまさか……」
 「私もそれを心配している。子供たちの謎の死が、私の薬の、副作用によるものではないかと」
 い、いや貴方、なんでそんな平静なの?!
 被害者たちの共通点について警察に連絡している節も無ければ、わずかな自責の念さえ感じているようにも見えず、敢えて言えば「自分が少年少女らの死の原因を作った可能性」ではなく、「この事件がスキャンダラスに取り上げられて研究が行き詰まる可能性」だけを心配しているようにしか思えないのですが、薬の被験者で生き残っているのは現在、博士のもう一人の娘・冬子のみ。
 「こうなると、冬子は、成人するまで生きていて、くれるかどうか」
 い、いや貴方だから、なんでそんな他人事っぽいの?!
 どう見ても既に博士の心はぶっ壊れており(恐らく10年以上前から)、ゴッド機関の魔手によりノイローゼや絶望に落とす領域を既に飛び越えて太陽に呑み込まれているのですが、狂気の基準値が、高い、高すぎるよX……!
 「大門寺博士、そんな事はさせやしません」
 博士の気の触れっぷりはともかく、死をばらまく悪意を止めようとする敬介の宣言は格好良く、イカルスと工作員に冬子がさらわれそうになると、セットアップ!
 名乗りに続いて顔面がすっごく光る新演出からXライダーはライドルを振るい、握りの変形スイッチがアップで映ってわかりやすく描写されると(正直、演出としてはワンテンポ悪くなりましたが……)、イカルス毒霧をライドル風車により反射。
 イカルスが撤退すると、冬子は霧子に助けられており、「涼子は、私の姉です」と生き別れの姉妹である事を打ち明けた霧子は、「姉は、今でもあなたの婚約者」と敬介には理解に苦しむ弁護をして姿を消すのであった。
 敬介と共に工作員に立ち向かっていた博士の助手が負傷するが、勿論それは怪人イカルスの偽装工作であり、Xライダー、そして大門寺博士の抹殺指令が追加される、ゴッド機関、いつものパターン。
 空中から敬介に爆弾を投げつけたイカルスが、山中の寂れた神社にお参りすると、お堂が開いて中からマネキン人形が出てくるのはインパクト抜群の演出で、ゴッド総司令の登場シーンで色々工夫を凝らしているのは、今作の面白みの一つとなっています。
 大門寺博士はいつの間にかゴッド機関のスカウトを断っており、精神的打撃を与えて弱ったところを悪の道に勧誘する方針そのものは説得力があったのですが、標的の気が既に狂っていたので通用しませんでした!
 神教授の一件もそうですが、ゴッド機関は、規格外の頭脳を欲しがる一方で、アプローチが常識に縛られすぎているのでは(笑)
 大門寺博士抹殺を敬介に邪魔されたイカルスは冬子を狙って飛び去り、今更、冬子一人を殺したところで嫌がらせ以外の意味は無いのですが、危機また危機が目的化して、優先順位の転倒が起こるのは伊上脚本でもままあり、時代の作劇ではありましょうか。
 イカルスは冬子に催眠術をかけて死へと誘導し、線路へ向けて飛び降り寸前、それを救った霧子、そして救おうとしていた涼子がバッタリ再会。敬介がバイクで走ってくると涼子はすぐに姿を消し、新技のポールダンス回転キックで工作員を蹴散らしたXは、イカルスと激突。
 翼を投げつけてくる飛び道具デスウイングをはたき落とすも、空中からの攻撃に苦しむXだったが、ライドロープで足を引っかけて地面に叩き落とすと、Xキック!
 後を追ってきた冬子の姿に気付いたXは、イカルスの正体が、冬子が慕っていた博士の助手である真実を隠蔽する為、イカルスを大空高く放り投げて爆殺すると冬子には優しい嘘をつくが、イカルス爆殺の際に地面に落ちたペンダントを見た冬子は、真実を悟って涙をこぼすのであった……。
 博士は天才人間計画の中止を敬介に告げ、よくよくサブタイトルを確認すると「恐怖の天才人間計画」なので、大門寺博士をXキックせずに済んだ事に胸をなで下ろしながら、バイクで走り去る敬介であった。
 「やはり人間は、自然にしておくべきだ。つくづくそれがわかってね」
 「そうして下さい。…………改造人間は俺を最後にしたいものだ」
 去り際にぼそっと呟く敬介が、「天才人間」を「改造人間」と認識していた事が明らかにされ……それでは皆様ご唱和ください、
 正義の! 心を! 人為的に作るな!!
 パイロット版以来となる長坂脚本、とにかく大門寺博士の弾けぶりが凄かったですが、結果としては、既に投薬されてしまった24人の少年少女の犠牲は伴ってしまったものの、“密かに”進められていた天才人間計画をゴッド機関が阻止した事になり、果たして全世界の敵は、ゴッドなのか、日本なのか(多分両方)。Xライダーの戦いは続く!
 次回――サブタイトルの意味不明ぶりが凄い(笑)