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筋肉一筋三十年

仮面ライダーウィザード』感想・第25話

◆第25話「命の選択」◆ (監督:舞原賢三 脚本:香村純子)
 見所は、刑事ものっぽいBGMで、晴人とバディっぽく瞬平救出作戦に向かう凛子さん……あ、なんか不注意で音たてた。
 「瞬平くんの命と、お婆ちゃんの命……そんなの選べるわけないじゃない!」
 「面白がってんだ、あいつ」
 グレムリンの陰湿な性格がウィザードサイドでも共有されると、仁藤祖母は孫の命を救う為にファントムになるつもりだった、と前回の行動の真意がアバンタイトルの内に明らかにされ、頭をかきむしる仁藤。
 「私はもう充分に長生きしました。攻介、私を連れて行きなさい」
 厳しいだけだと思っていた祖母の態度に仁藤が大混乱する一方、仁藤がこっそり仕込んでいた使い魔カメラにより、瞬平の監禁場所が判明。瞬平救出に向かう晴人と凛子だがそれはソラによる偽装工作で、潰れたボウリング場でミサとばったり遭遇する晴人と凛子…………ええと、ボウリング、されていたのですか?
 「引っかかった引っかかった!」
 「やられた……」
 「どうしてここがわかったのか知らないけど、私の時間を邪魔するなんていい度胸ね」
 割とお怒りのメデューサ一人ボウリングは、貴重なストレス解消の時間です!
 黄ザードとメデューサが激突し、ボウリング場の中、というのはなかなか面白いロケーション。案の定、ボールよろしくレーンを滑った黄ザードはピンをなぎ倒し……ボールの回収も、ピンを並べるのも、頭の蛇でやっていたのでしょうか、メデューサ
 ウィザードがランドドラゴン(ずっと黄色は「グランド」だと思っていました……!)に変身して爪と杖がぶつかり合うと、そこにソラが現れて両者を嘲弄し、ウィザードではなく、むしろソラを追うメデューサ(笑)
 途中から現れたトリックスターが、初期から居る比較的真面目な実力者のペースを乱して足下を掬うパターンはあまり好きではないので、出来ればグレムリンには最終的にきついお仕置きを受けてほしいですが、それはそれとして、ユウゴとは違う相方の登場でミサ/メデューサの描写に広がりが出ているのは、手堅い作り。
 「この私を利用するとは……いい度胸ね」
 憩いのひとときを邪魔され、未だかつて無いお怒りモードを見せるミサが目を光らせると周囲で立て続けに爆発が起こるが、パルクールアクションでそれを回避したソラは詭弁で煙に巻き、グレムリンは現時点では、ウィザードよりもメデューサに倒されてほしくなってきました(笑)
 「……馬鹿か俺! 大馬鹿か! ちょっと素直んなりゃわかるだろ!」
 一方、自分の為に命を捨てる事を辞さない祖母の言葉に、祖母が昔から自分を心配してくれていた事を仁藤は噛み締め、第三者(特に主人公)の言葉からではなく、仁藤が自分でその“気付き”に至ってくれたのは第二の主人公ポジションとして良かったところで、仁藤は改めて祖母と向かい合う。
 「なのに今死なれたら…………俺が絶望する」
 「馬鹿だねぇ……。……おまえが、私の為に人様を犠牲にするような子なら、それこそ、このお婆ちゃんが絶望しますよ」
 「……祖母ちゃん……」
 「覚悟をしなさい攻介! おまえだって、瞬平くんを、見捨てたくはないでしょ」
 ……まあ、物語を劇的にするには、仁藤と瞬平の間の繋がりが弱い難はありますが(弱いから見捨てられる人間とは描かれていない上で)、フレイムドラゴン登場編の晴人に続き、ここで肉親との絡み、他者からの想いへの“気付き”に基づく人間的成長を通して、仁藤にきちっと落差のある芝居をさせて、こういった部分の丁寧さは、今作の好感の持てるところです。
 翌日――仁藤と祖母はソラに指定された場所に赴くと、ベルトも外せと指示されて、人質交換。
 「今ここで壊してあげるよ。心の支えを。つまり……あなたのお孫さんをね」
 そう、間合いの外からの攻撃なら、大胸筋で可能! と、鍛え上げた筋肉から放たれる謎のタイガー飛び道具が起こす爆発に無防備な仁藤はさらされ、そもそも死ぬ覚悟を決めている人が、死への恐怖でゲートを生み出すほど絶望できるだろうか……という点もきっちり拾われ、ひたすらいやらしく人間心理の弱みを突いてくるグレムリン
 「魔法の使えない魔法使いは、虫けら以下だね!」
 ところが、タイガーにばっさり切られたと思われた仁藤は無数の赤い羽毛になって姿を消し、グレムリンの足下から飛び出してきた晴人が格好良く生身で飛び蹴りを浴びせて人質を救出するとベルトも回収。
 そして羽毛の仁藤は不死鳥のごとく甦り、前回の指輪交換アクシデントを布石として、ビーストの指輪を使って、晴人が仁藤に魔法をかけていた事が明かされる。
 「まさにピンチはチャンス! だったな」
 指輪の使用に関しては布石がありましたが、ファルコン魔法を晴人が使うと空蝉の術が発動するのは実質“突然の奇跡”になってしまい、魔法の“何でもあり”感を減じる為に日常シーンで魔法の効果を先に見せておく今作序盤からのスタイルとも噛み合わず、人質問題の解決法が上手く繋がらなかったのは、惜しかったところ(香村さんは割と工夫するタイプなので、ハードル上がっていたのもありますが)。
 「おめえらなんかに、祖母ちゃんの命も瞬平の命も、渡すわけねぇだろ」
 「あーー、グレムリンだっけ? 昨日の借りは返したぜ。魔法使いが化かし合いに負けるわけにはいかないからな」
 「だったら力でねじ伏せてやる」
 は、今回のちょっと好きな台詞(笑)
 「……力でも負ける気はねぇな」
 二人の魔法使いは肩を並べ、同時にドライバーオン。
 「――変身」 「へんーーーしん!」
 「さあ、ショータイムだ」 「ランチタイムだ!」
 ウィザードとグレムリン、ビーストとワータイガーがマッチアップし、正面からのパワー対決の末、ワータイガーに炸裂する、キン肉バスター(笑)
 ……宇都宮P繋がりで、後のパトレン2号/陽川咲也の役者さんが、『キン肉マン』大好きだったな、と思い出してみたり。
 俺は、スタイリッシュ担当だから……! と、筋肉担当をビーストに譲ろうとする動きを見せるウィザードだが、二刀流を操るグレムリンの変則的な動きに翻弄され、廃車置き場で結構派手な大爆発。
 途中でマッチアップを交代するのも面白いアクセントとなり、ウィザードは、ぼうぼうぼうからタイマースタート。相も変わらず奇天烈な増殖タイムが始まり、まだちょっとこの映像に慣れません(笑)
 4ドラゴンの連続攻撃を受けたワータイガーの劣勢を見たグレムリンは、目くらましの範囲攻撃を放つと、ワータイガーを見捨てて撤収。最後は、飛び膝蹴りからの連続攻撃を決めたビーストが前転ライダーキックでワータイガーを葬り、ごっつぁん。
 ……アンダーワールド以外での、ビーストの必殺ライダーキックは初、でしょうか。
 面影堂では時ならぬ折り紙ブームとなり、仁藤は祖母を福井まで送っていき、子供の頃に貰ったお守りをまだ持っていた事が明かされるちょっといい話で締めて、つづく。
 基本的に人の話を聞かず、物事を早合点して自分のペースで進めていく仁藤が“ちゃんと生きる”事を選べたのは、“ちゃんと育てられていた”からだと肉付けされ……現在だと、世相の変化からこうは描きにくそうというか、恐らく“ちゃんと育てられていない”けど“ちゃんと生きる”事はできる、という形になっていきそうではありますが、
 「おまえが、私の為に人様を犠牲にするような子なら、それこそ、このお婆ちゃんが絶望しますよ」
 は、仁藤攻介という男の本質に触れるようで、良い台詞でありました。
 次回――新たな逮捕者。