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妄想の海ですぎのこ村への愛を叫んだ赤木

非公認戦隊アキバレンジャー』感想・第12話

◆第12話「最痛回 さらば妄想戦隊」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久
 「てか、おじさん、さっきから奴奴言ってるけど、誰なのかわかってるの?」
 「察しは付いている。番組外現実の黒幕――それは、オープニングの一番最初に、名前がクレジットされる人物だ」


原作:八手三郎

 いやははははははははは!! ラスボス、そっちか(笑)
 《スーパー戦隊》の特質を存分に生かしつつ、“意外な真犯人”ではあるが視聴者に常にその存在が示されてきたフェアネスも満たした上で、実在の人物に誰も被害が出なくて、これは完璧すぎる着地。
 遡れば第1話の感想で


 原作:八手三郎
 って、出てしまいました。

 と書いており、結果としては既にその時から術中にはまっていた事に(笑)
 犯人は読者だ、とか、犯人は作者だ、とか、個人的にはどちらかといえば白ける率が高いのですが、名指しされた「八手三郎」そのものが虚構の存在であるのが絶妙で――つまり更にその外側の現実が示唆されているとも、「八手三郎」自体、赤木らが作り出してしまった可能性があるともいえる――これは参りました(笑)
 「そうか! 原作者、八手三郎!」
 「そう。それが、黒幕の正体だ!」
 この世界の真実に辿り着いた赤木は更に、その恐るべき目的を指摘する。
 「八手三郎はこの世界は……この番組を打ち切りにする気だ!」
 帝国アジトでは、もはや文芸設定を無視した最終回フラグが進められており、デリューナイトは自らリミッターを外す強化改造を志願。
 「……よかろう。最終フォームに改造してやろう」
 最終決戦が途中経過を大幅にスキップして発生していく中、神ともいえる存在との戦いを覚悟した赤木が、八手三郎の魔の手からこの世界を救う為に考えた対抗手段……それは
 「スポンサーだ」
 「「「スポンサー?」」」
 「みんなでスポンサーを探すんだ。それもどう考えたって1年や2年じゃ終わらせるつもりの無いスポンサーをな! そうすれば、ドラマ制作者として、すぐには終われない筈だ!」
 ……じゃなかった、
 「伏線だ」
 「「「伏線?」」」
 「みんなで伏線を張りまくるんだ。それもどう考えたって1回や2回じゃ回収できないような伏線をな! そうすれば、ドラマ制作者として、すぐには終われない筈だ!」
 「すぐには終われない伏線って……なに?」
 一同悩める中、ゆめりあがひらめキーングすると、突然こずこずに愛の告白(笑)
 現実と非現実の境界が曖昧な世界観で、この“現実”とは何か? に切り込んでくるアプローチは好きな一方、それが丸々虚構の世界でした、まで行くとちょっと好みから外れるところがあり前回はいまいちノれなかったのですが……そこから明かされる黒幕の正体、そして対抗手段の一ひねりは面白く、またそれが、戦う敵は変わったが、“物語のルール”で戦う赤木信夫として、『アキバレンジャー』の最初から最後まで一貫したのは、お見事。
 青柳は三ヶ月後の大会への決意を語り、作品世界の延命を図る面々だが、神の手の介入により、こずこずはゆめりあの告白を受け入れ、青柳の前には負傷したライバルが現れて引退を宣言。
 「一気に伏線が回収されちゃった……」
 「恐ろしい……これが、八手三郎の力……」
 ……なんだか、制作スタッフが全ての罪を、架空原作者になすりつけているようにも見えます。
 赤木は、無理めのさやかさんとの恋愛ならどうだ、と自身の想いを番組延命に捧げてみるが、既にそれは神の手の中のフラグに過ぎず、アメリカに向かう機内で見た劇場版『サンバルカン』にはまって特撮ヒーローに目覚めたさやかは日本に急遽帰国して赤木に戦隊ブートキャンプの教官就任を求め、次々と歪められていく人々の運命。
 一方、「制作者の都合で、存在を左右されるのはもう嫌!」とドクターZを気絶させたマルシーナは、改造手術台に横たわるデリューナイトを機能停止させる事で最終回フラグを回避しようとするが、目覚めたナイトに反撃を受けてドクターZともども凶弾に倒れ、最終回フラグをますます進めてしまう。
 「……この番組の延命策、もうやめましょう」
 たとえ無情の打ち切りで最終回となり、ぐだぐだかつ非公認のまま終わる事になったとしても、番組制作者に逆らい続けた末に歴史から抹消されるよりマシではないか? と提案する葉加瀬だが、赤木はそれを敢然と拒否。
 「……いいじゃないか、それでも。八手三郎は、いままでのどんな公認様のラスボスも絶対かなわない、超強力な敵だ。でも、この世界が番組だっていうなら、見ている人間も居る筈だろ? もし俺みたいな痛いオタクがそんな番組見てたら、歴史から消されても、絶対忘れる事は無い。だから怖くない」
 赤木は大変いい笑顔を浮かべ、たとえ歴史(数字)に残らなくても、誰かの記憶に残っているならそれは無意味な事ではない、と第4の壁を越えて物語と受け手の双方が肯定されると同時に、「目指せ公認」を目標に戦ってきた赤木が、その執着から解放される綺麗な着地点へと到達。
 「最後まで足掻き続けようぜ!」
 「赤木さん……!」
 「非公認は、非公認らしくニャ」
 そしてその「見ている人間」を劇中人物が自覚する事により「“自覚的に”見ている」視聴者に対して番組側から視線を向けると、そんな視聴者の為に無軌道を貫く事をもってして非公認らしさと位置づけ、水面に浮かぶ泡沫のように、生まれては消え、消えてはまた生まれる“物語”の一つからの感謝の気持ちを表わす事で、良い子は見ちゃダメな戦隊パロディとして一定の落とし前をつけると、ここから先はメタパロディをやれるところまでやってみようといった具合で、計算尽くのぐだぐだへと突入(笑)
 今作直近の公認戦隊『海賊戦隊ゴーカイジャー』は、子供時代のヒーローがいつか忘れられていく事を前提として、「忘れられても構わない」と「忘れられてほしくない」、二つの相反するテーマを内包し続けていた物語――このせめぎ合いこそが『ゴーカイ』の真骨頂であったと思うのですが、その辺りをまとめたいと考えて幾年月――だと個人的には認識しているのですが、それに対して今作はストレートに「子供時代のヒーローを忘れていない人々」へ向けた物語になっている辺りも、裏『ゴーカイジャー』だなと思ってみたり。
 正直前回、赤木が「番組の登場人物」の自覚をもってその証明を始めた辺りから、今作のメタ度合いをどう受け止めるか当惑していたのですが、感想の分解作業を通して、『アキバレンジャー』という作品に付けた落とし前のポイントは自分なりに納得できたので、この後は、宴の終わりに全員泥酔している、みたいなものかなーと(笑)
 非公認らしい戦いを貫く事を決めたアキバレンジャーだが、最終回の足音はひたひたと迫り、さやかを人質に取ったデリューナイトが、アキバレンジャーとの決着を要求。
 「……駄目だ。今行けば敵の、八手三郎の思うつぼだ」
 みすみす敵の最終回フラグには乗りたくない、が、かといって思い人も見捨てられない……悩んだ末に赤木は「さやかを助けた上で真面目なライバルキャラをのらりくらりとかわして因縁の戦いの引き延ばしを狙うぞ」作戦を立て、例の倉庫に向かったアキバレンジャーはシンボルカラーを背負っての名乗りを決め(皆それぞれ、延命ネタも用意)、
 「「「非公認戦隊! アキバレンジャー!!」」」
 格好いい名乗りとは裏腹に、ひたすら状況を有耶無耶にしようとするアキバレンジャーに対し、ひたすら決着をつけようとするナイトは、必殺のフラグを連続投下。
 「これはハンデだ。ここを突けば俺を倒せるぞ?」
 「くそ~~~、なんて挑発だ。乗りたい、乗って勝ちたぁい!」
 メンタル的に追い詰められながらも、決闘は6ヶ月後の約束で言い逃げしようとするアキバレンジャーだが、怒りのデリューナイトが追いすがるその時、横からの銃弾でナイトを倒したのは……今度こそ正気を取り戻し甦ったドクターZ!
 「私は気付いた……大いなる意思に操られていた事を。だが、奴の思い通りには、ならない。……アキバレンジャー! 戦いはまだまだ、これからだ!!」
 「望むところだァ!」
 「またぬるい戦いの日々が、続きそうな予感にゃー」
 マルシーナと共に現れたドクターZの“わかってる”発言にアキバレンジャー喝采を上げ、今作、「既存のヒーロー作品を踏まえてひねりを加えたコミカルな作風」「序盤に泣かせの効いた話を入れてくる」「終盤にメタ要素が盛り込まれる」構成には、超光戦士シャンゼリオンを思い起こしていたのですが(こちらは露骨なパロディ作品というわけではないですが)、「“戦い”もやがて愛すべき“日常”と化していく」のもアプローチは違えども『シャンゼリオン』していて、『シャンゼリオン』と『ドンブラザーズ』の間に『アキバレンジャー』があったのだな、と今更ながらに発見。
 番組打ち切りに対する完全逆転が果たされた……かと思ったその時、再び介入を受けたドクターZは、帝国科学の粋を結集した巨大ロボの召喚を宣言し、出現する大怪球ズキューン……じゃなかった、ブーメランタイタン。
 機能停止した筈のデリューナイトも峰打ちだった事になって復活するとタイタンに乗り込み、とうとう始まってしまう、これまでと規模の違いすぎる大破壊。
 なお、ブーメランタイタンには少々、今作キャラデザイナーさとうけいいちさんの参加していたアニメ『THE ビッグオー』のメガデウス風味を感じるのですが、『ビッグオー』もメタ要素のある作品だったのは、偶然なのかどうなのか。
 だがしかし、アキバレンジャーには、巨大ロボが無いのだ!
 これではそもそも最終決戦が成立しない! かに思われたが、萌える……じゃなかった、燃える街に人々の悲鳴が響き渡る時、それに応えるかのように現れた痛車が、凄く不自然に……巨大化した。
 50メートルクラスの巨大ロボに搭乗し、背後で流れるテーマ曲。
 夢のシチュエーションと最終回の狭間で揺れ動くアキバレッドだが、覚悟を決めるとアキバミサイルで……自爆するところで流れ出す主題歌(笑)
 「すまない、イタッシャーロボ!」
 衝撃の最期を遂げる巨大ロボだが、それはそれとしてブーメランタイタンの脅威の前にアキバレッドが一足先に個人的な最終回を迎えそうになったその時、イエローが投げた空き缶がラッキーヒットすると、それを起点に奇跡のような連続コンボが発生してタイタンとナイトは大爆発に沈んでしまい、出鱈目なシーンなのですが、自身の放ったブーメランが次々とボディに突き刺さったタイタンが崩れ落ち、最後に首がポーンと飛ぶCGが、割と格好いい(笑) 
 飛んできた頭に潰されそうになったドクターZはなんとか助ける赤だが、感動的な音楽とスローモーションで駆け寄ってきた人々に囲まれてしまい、その輪から一人歩み去る、ドクターZ……。
 感動のラストシーンを回避する為に逃げ出した赤木たちがひみつきちに戻ると、そこでは改心したドクターZが葉加瀬に謝罪し、父娘の和解が描かれようとしていたが、番組存続の為、自身を押し殺して父背中を向ける葉加瀬に対し、
 「葉加瀬、ここは抱き合おうよ」
 と促す赤木は格好良かったです。
 まあ葉加瀬には、父と抱き合う前に平手打ちの一発ぐらいは決めて欲しかったですが(笑)
 「まだ、戦いは続くんだ……あいつが残ってる」
 そして赤木たちは、ステマ乙を再建して代表に就任したマルシーナとの戦いに赴き、あと6ヶ月ぐらいはぬるーく戦おうと正義と悪の談合バトルが始まって、激しい格闘アクションをバックに流れ出すスタッフロール。
 かくして妄想の海に浮かぶ街・秋葉原を巡る戦いはまだまだ続くのだ……と思われたがしかし、突如として、浮上してくるエンドマーク。
 浮かかび上がるオワリの三文字を破壊しようと、アキバレンジャーステマ乙は呉越同舟・一致団結して抵抗を見せるが、何者かの巨大な手が伸びると、番組を強・制・終・了。
 最終的には辻褄合わせもご都合主義もパロディの素材とすると、カオスが全てを呑み込んでの幕となり――妄想の海に生まれる原初の混沌、それは終わり、けれど始まり……かもしれない。
 次回――『アキバレンジャー』反省会で待つのは何か?!
 いやホント何。