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全てを焼き尽くすもの

仮面ライダーウィザード』感想・第23話

◆第23話「決戦」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:きだつよし)
 「さあ、フィナーレといくか」
 炎の翼を広げ、ウィザードを焼き魔法使いにしたフェニックスは、どこまでも憎々しい決め台詞の盗用で、明日から俺は不死身の魔法使い様だ! と退職スラッシュを決めようとするが、あくまでも食欲の為に、という名目で現れたビーストがショルダーアタックを決め、その隙に緑になったウィザードは凛子を救出して逃走。
 翼を広げて後を追おうとするフェニックスをカメレオンの舌で引きずり下ろす、「逃げんじゃねぇ」二連発は上手くはまり、宿敵強奪を狙うビーストだったが、ダイスの出目が大変悪く、焼きカメレオン出来上がり。
 ビーストのスロットソードはダイス目で威力が変わる見た目通りのギャンブル武器と明らかになり……まあ、こういう武器を作る人なら、説明書無しに危険な魔法のベルトを放置しておいた上で、後世の迂闊な人の為に、チュートリアル(そして泥沼へ)としてのエネミー兼エネルギー源ぐらいはニヤニヤしながら仕掛けておきそうな気がしてきました!
 「うーん……ビーストまで現れるなんて。ま、これはこれで面白いか!」
 倉庫の外では、誰も見ていないのに大爆発にオーバーなリアクションを行うソラが笑顔を浮かべ、ファントムとしての姿を見せる前から、絶妙ないやらしさ。
 フェニックスがウィザードあぶり出しの為に街で無差別爆撃を始めて大変盛り上げてくる一方、緊急搬送された凛子は命に別状が無いがしばらく安静となり、ソファに腰を沈める失意の晴人の前に現れたのは、木崎。
 「随分酷い顔をしてるな」
 「……俺のせいで……俺のせいで凛子ちゃんが」
 「……そうだ。おまえのせいだ。ファントムから人を守れるのは魔法使いだけ。そう言ったのはおまえだ。おまえが巻き込んだ人間すら守れないとはな。聞いて呆れる」
 木崎は、恐らく本心では、信頼の裏返しともいえる叱咤の言葉を浴びせると去って行き……「ヒーロー」を名乗った者の責任を問われる晴人ですが、木崎さんの出力回路も大概ねじれていて大変です。
 倉庫の大爆発からなんとか逃れていた仁藤は、街を破壊して回るフェニックスに再戦を挑み……フェニックスの破壊行為を見過ごせないところもありつつ、キマイラを宿すビースト視覚的には、肉汁滴るサーロインステーキみたいに見えているのかもしれません(笑)
 「またてめぇか。てめぇなんかお呼びじゃねぇんだよ」
 「呼ばれなくても現れるのが、俺のいいところだ」
 ……その台詞回しは、


 「しつこいわね、あなたも」
 「そこがいいところですよ、俺の」
(『仮面ライダーアギト』)

 葦原さんのストーカー行為を思い出すのでやめてあげて下さい!
 フェニックスはビーストにグールをけしかけると、ウィザードへの一騎打ちの伝言を残して飛び去り、ビースト、とりあえず前菜は消化(たまに食べさせないと、ぽっくり逝きますからね……)。
 病院では、意識を取り戻した凛子に晴人が謝罪し、凛子は凛子で、仕事の悩み相談気分でフェニックスに大量の薪をくべてしまった事情を説明。
 面影堂に晴人が戻ると、その心身の状態に気を遣ってフェニックスからの伝言に皆が口をつぐみ、総じて今回の瞬平の、余り物感が、凄い。
 ……基本はコメディリリーフの位置づけなので、本筋がシリアスな時ほどボケる事を求められはするのですが、仁藤がボケの位置を埋めてしまった為に、顔芸からのツッコミ担当となっており、なまじ本人は真面目なつもりなのが割と感じの悪いノイズになっていて(「なに馬鹿な事を言ってるんですか」みたいなのが愛嬌にはならないキャラなので、瞬平)、瞬平の居場所探しの道は、まだまだ険しい。
 その夜、かつて凛子にこぼした「怖いんだよ……俺が。誰かが居なくなるのが、俺の前から消えるのが。俺の前で死なれるのが……怖くて怖くてたまらないんだよ」という自身の抱える根源的恐怖心を揺さぶられ、打ちひしがれる晴人の元を訪れたのは、コヨミ。
 「……魔法使い失格だ……俺」
 「え?」
 「自分が最後の希望だとか……ふっ……偉そうなこと言って、凛子ちゃんをあんな目に……」
 「……晴人。……過ぎた事を悔やむよりも、今を受け入れて前に進むんじゃなかったの?」
 失意のヒーローから、かつて受け取った言葉を返す事で、晴人とコヨミの関係がくるっと回って繋がり、コヨミちゃん、出番はそこそこながら、正ヒロインの圧倒的貫禄。
 「…………そうだな」
 絶望を希望に変え、それを明日へ繋げるものとして立ち上がった晴人は、翌朝、仁義を切りに仁藤の下へ。
 「魔法使いってのは諦めが悪くてね」
 「は?」
 「諦めない限り、希望は消えない。……――俺は最後の希望だからな」
 今作における「魔法使い」は徹底して「ヒーロー」の言い換えになっていますが(そのものの名を直接出さない表現へのこだわりは、ある意味、『ゴーカイ』とは正反対のアプローチ)、“希望”の名の元に、どこまでもヒーローであろうとする晴人の意を汲んだ仁藤はわざとらしいリアクションでフェニックスとの戦いを晴人に譲り、メインテーマと共に、訪れる朝、決戦の時。
 一連の流れが出撃前夜として描かれ、仁藤にも筋を通した晴人、実質的に一度“死んでいる”のもありますが、あまりにも“今を生きる”事と“希望である”事が直結かつ徹底しすぎていて――それが晴人にとっての“存在の意味”になりすぎているのが、自分以外の魔法使いである仁藤攻介/ビーストに向き合いきれない理由の一端でもありそう――、何かの拍子に心が折れたらそのまま廃人まっしぐらな雰囲気は、引き続き不安。
 「今度こそ、心置きなく遊べそうだぜ!」
 「ああ。だがお前と遊ぶのは、今日で終わりだ」
 「あァ?」
 「……凛子ちゃんの思いを踏みにじったおまえを、絶対に許さない」
 「ハっ……いいツラしてんじゃねぇか。望むところだ」
 「――変身」
 晴人は初手からフレイムドラゴンに変身し、ぶつかり合う赤と朱。
 「楽しいな! やっぱ戦いはこうでなくっちゃな!」
 今回はさっくりドラゴンタイマーを起動したウィザードは分裂開始するが、一斉エレメント攻撃さえ耐え抜いたフェニックスにまとめてはじき飛ばされ、不死鳥の炎はその勢いを増すばかり。
 「手品はこれで終わりか? だったら諦めて、さっさと地獄に行きな」
 「俺は諦めが悪くてね」
 だが魔法使いは決して諦めない――再びファイナルタイムを起動したウィザードは、4属性ドラゴンの力を一つの体に宿す切り札、《オールドラゴン》を発動する!
 「全ての魔力を一つに。これが最後の希望だ!」
 分裂ウィザードが殲滅モードを同時発現したドラゴンフォーメーションに対し、一人のウィザードが頭・翼・尾・爪を纏ったオールドラゴン、回転アクション重視のウィザードとしては、上下左右に出っ張りが生じた異質のフォームにして、人のフォルムから異形のフォルムへとより近づいたのが、なにやら意味深。
 「これで、一人、完成した」
 そして、それをこっそり見ていた白ガル宅配便社長が、人柱みたいなこと言い出したーーー!!
 ……所が個人的に今回のハイライトで、この後、フェニックスとのCG空中戦は、残務処理みたいになって、あまり盛り上がれず。
 ・前回はドラゴンタイム使わず
 ・今回はさっくりドラゴンタイム
 ・いきなりの新フォーメーション
 の流れは、どうにも劇的な積み重ねに欠けて戦いに綾が無く、《オールドラゴン》というジャンプに向けた、ホップ・ステップの構築を失敗した印象。
 発動後の台詞は格好いいのですが、《オールドラゴン》=「これが最後の希望だ!」の説得力と盛り上がりが弱くなってしまいました。
 序盤から登場し、一度はウィザードを完膚なきまでに叩きのめすと、着実に悪役としての面白さを積み上げてきたフェニックスと、およそ物語の折り返し地点で雌雄を決する構成そのものは、4話構成でフェニックスの怪物性を念押しで示した事も効いて盛り上がったのですが、その最後の最後、詰めの所で急ブレーキがかかってしまったのは、フェニックスがいい悪役になっていただけに、非常に残念でした。
 激しい炎の撃ち合いの末、マジカルスクリュークローでフェニックスを貫いたADウィザードは、「永遠に死と再生を繰り返せ」と、エレメントエンジン4段式加速ロケットキックでフェニックスを派手に打ち上げ、まさかの大気圏突破、から太陽へ、で不死身のファントムを攻略。
 「――おまえに、フィナーレは無い」
 出撃前夜の流れで強調されていた朝日を「凶器」に用い、空を見上げて締めの台詞は格好良かったですが、フェニックス、再生する度に魔力を増大させて強くなる筈なので、いずれ太陽さえ呑み込んだソル・フェニックスと化して『ウィザード』世界の地球が滅びそうで、ちょっと心配になります(笑)
 ……まあ、魔法的産物(?)なので、より上位の法則(天体の運行)には勝てないのかもですが。或いは、真空中には魔力の素が存在しないのか。
 上述したように、オールドラゴン発動が決着への最後の加速にならず、むしろ失速してしまったのが残念でしたが、長かったフェニックスとの戦いに決着を付けた晴人が、退院した凛子と前々回に使われた港で会話をかわすのは、間接的にはフジタ・ユウゴの墓参ともいえ、良い演出でした。
 ミサの前には、幹部が退職して人手不足なのでは? とソラが姿を現すとグレムリンの正体を見せて不気味に笑い、神話幻想生物のモチーフとしては格が低めの印象ながら、現代の人類社会にとっては致命的存在、なのが上手いところを突いてきたなと納得。