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タイムリー&タイムリー

超力戦隊オーレンジャー』感想・第23-24話

◆第23話「最後の水着…」◆ (監督:辻野正人 脚本:井上敏樹
 「「夏だ! 海だ! 青春だ!!」」
 超力戦隊は一同揃って休暇で海へと繰り出し、さっそく遠泳を始めようとする隊長に逆らい、海といえばナンパだ、と双眼鏡を取り出して水着の女性を物色する昌平が声をかけた相手は樹里と桃……という定番のネタで始まる夏の海回。……ロケ日の天候が、ちょっと微妙だった模様。
 一方、バラノイア月面基地では、ブルドントとバッカスフンドが地球の雑誌モデルに鼻の下を伸ばしており、地球侵攻作戦を実行に移してより約半年、橋頭堡と目論む日本侵攻作戦が遅滞したまま、だいぶ地球の文化に脳を侵略されつつあります。
 「自分たちの弱さ醜さを洋服で隠す人間ども、おまえたちの愚かなその習性を、利用してやる」
 だらしない父と息子に怒り心頭のヒステリアは、煌びやかに着飾るなど堕落だ、と雑誌を千切り捨てるとマシン獣・バラクローズを地球に送り込み、“人”と“マシン”の違いから作戦を発案するのはきっちり『オーレン』した上で、「布」の意味から蚕モチーフと思われるデザインがちょっと面白い。
 バラクローズは、メンバーがシャワーを浴びている間にその衣服にこっそりメタリックウェーブを浴びせ、シャワーを終えて服に袖を通した途端、まずは男性陣3人がメタリック衣服の効果により、バラクローズの意のままに動くメタリック人間と化してしまう!
 メタリックウェーブの照射を逃れた樹里と桃だったが、隊長たちがまんまと洗脳されてしまう緊急事態に隙を突かれて桃も脱落し、夏の軽いお笑い回みたいな導入だったのに、割と本格的に地球の危機だった。
 バラノイア側の最適解は、このまま隊長を先頭に超力基地に突貫を仕掛ける、だった気はしますが、この後の戦闘シーンを見てもメタリック人間になると知力・戦闘力双方にマイナス補正が入る様子は有り。なお見た目はバラノイア戦闘員モデルと思われますが、シンプルな鉄アーマー+顔に化粧ちょっとは、『特捜ロボ ジャンパーソン』のギルド-ネオギルドの戦闘サイボーグも思い出させ、ままありますが、普段は出来ない悪役演技が、4人とも大変楽しそう。
 アクション重視の今作だけに、メタリック人間としての戦闘シーンが結構多く、今回に関しては、悪役として暴れるのと、メインで暴れるのと、現場ではどちらが楽しかったのか(笑)
 一人残った樹里は、超力ブレスを奪われながらも辛くも逃走すると、水着姿のままランボースタイルで完全武装し、国際空軍では、休暇先に銃火器を持ち込むのは常識です。
 水着も多分、防弾防刃仕様です。
 それはそれとして、この衣装で山中を走り回るのは細かい生傷が絶えなさそうで、ようやく巡ってきた初の単独メイン回でだいぶ過酷な撮影になっていますが、戦闘員を携帯式超力機関銃で撃破すると、挿入歌をバックに、洗脳されたメンバーを一人ずつ撃退していく趣向で展開。
 昌平の動きを敵のネット攻撃を利用して封じ、裕司は逆さづりのブービートラップから悶絶レベルの蹴りを胸に叩き込み、中国武術による近接戦闘から目つぶしを仕掛けてきた桃はガス弾で 始末し 行動不能に追い込み、単調にならないように工夫しながら矢継ぎ早のアクションが繰り出されるのですが、基本がエリート軍人なので日常の延長線上になってしまい、そこまでぶっ飛んだ面白さに繋がらないのが、全員忍者だと忍者アクションが一般化してしまう、忍者戦隊問題に通じる難しさを感じます。
 また今作の場合、個人アクションへのフォーカスについては既に怪物的存在が先行しているのも、工夫は見せたが跳ねるまでいかない要因になってしまったかな、と。
 両親がメタリック人間になってしまったらしく、山に逃げ込んでいた少年を拾った樹里は少年を背負いながらの山中突破を目指し、正直、この少年は居なくても成立した要素かとは思うのですが、少年に優しく接する姿に加え、気絶させたメンバーに対する扱いもいちいち丁寧(除く桃)で、ルックス及び「ぎゃーぎゃーぎゃぎゃーうるさい女!」できつめのイメージが先行してしまっていたのか、実際の樹里は「思いやりとパワーを兼ね備えた女性」なのだと強調しようとする意識は感じます(姉、というか女将属性……?)。
 洗脳された同僚4人中3人を撃破し、バラクローズのアンテナ破壊へと急ぐ樹里だが、水の中から、ボスキャラ出現(笑)
 「お願い! 眼を覚まして隊長! あなたは誰よりも強い人の筈よ!」
 こんな時でもフォローを入れられる隊長だが、密かに光線を浴びせられていた少年の妨害もあり、崖上で追い詰められた樹里は、手榴弾を放って、海へとダイブ。
 ……洗脳されているとはいえ“隊長を負かさない”為に、バトルを有耶無耶にする少年の妨害が必要だったと考えると、樹里のイメージ戦略も兼ねた一石二鳥の仕掛け、ではあったのかも。
 気絶した少年をベンチに寝かせた樹里は、近くのシャワー室で女性がシャワー中な事に気付くとこっそり中へと入り込み……
 「正義の為、地球の為……ちょっとお借りします」
 ヒーローによる窃盗行為が個人的にタイムリーすぎて(※『非公認戦隊アキバレンジャー』第9話のネタと被った)ステマ乙の妄想による歴史の捏造を疑いたくなるレベルでしたが……え、ええとこれはあれです! そう、「徴発」(特に軍が民間の所有物を強制的に取り立てる事)! 「徴発」です!
 借り物のワンピース姿になった樹里は、戦線復帰したメタル同僚4人に囲まれるとバラクローズのメタル光線を浴びるが、即座に上着を脱いでこれに対処。再び放たれるビームを水着に浴びるが、実は水着の下にも水着を着込んでおり、これぞまさしく超力殺法「最後の水着…」とサブタイトルも回収すると、バラクローズの不意を突いてアンテナを破壊し、洗脳効果の解除に成功する。
 この辺り、従来の諸作と比べても負けず劣らずのソルジャーぶりですが、上述したように「エリート軍人」属性が土台にあるのが、もう一つドカンと跳ねない要因になっている印象。
 例えば今作同様の公務員戦隊である後の『デカレンジャー』では、メンバーそれぞれの特技(捜査パート上の役割)を明確にして差別化を図り、実質公務員戦隊だった三千年戦士『ギンガマン』では、アースの属性・チーム内の役割分担とビジュアルの紐付けの強化・横の関係性の掘り下げ、といった辺りで、土台になっている職業に基づく“戦士としての精神性”とは別にキャラクターの肉付けを図っており、恐らくは『ダイレンジャー』の挑戦を踏まえて、『カー』『メガ』辺りから明確にこの、チーム内の役割分担をより重視し、現代的な作劇に繋がる“キャラ付け”へ切り込んでいくのですが、その前夜の作品であると同時に、総員「軍人戦隊」の難しさ――当時『オーレン』がぶつかっていた壁の一つ――が見えるような気がします。
 ついでに更に近年の公務員戦隊でいうと、パトレンジャーはそもそもルパンレンジャーという対になる存在が居る上で、未熟で性格軽めのメンバーを一人加える事で、チーム内にも濃淡をつけていたのだな、と。
 樹里の奮戦でメタル洗脳が解除されると、5人並んで超力変身!(奪った樹里のブレスだけでも、月面基地に郵送していれば……!)
 いきなりの新技・超力ダイナマイトアタック(オーラを纏いながら体当たりしていくよくあるアレ)が炸裂し、バラクローズは大爆死からの巨大化。まずは5人乗りのオーロボでぶつかるが、糸攻撃を受けてピンチになるとパンチャーが出前され、自動操縦の顔面ビームによる支援爆撃でマシン獣が怯んだ隙に隊長はRパンチャーのコックピットへと転送。
 ガトリングで痛めつけると、メインだった黄の土偶バルカンでの追い打ちから、超砲撃合体による必殺技で瞬殺し、今のところ完全に固定砲台のバスターオーレンジャーロボは、果たして歩く事は出来るのか?!
 かくして、割と今作史上トップレベルだった気のする地球の危機は防がれ、4人は樹里に平謝り。
 「気にしない気にしない。みんなが悪いんじゃないんだから」
 戦隊によっては、焼けた砂の上で正座して平伏から殺人スパイクの刑の上、「俺達は戦士だ」を3000回復唱させられるところでしたが、樹里が器の大きいところを見せ、終始、樹里への手厚いフォローを感じるエピソード(笑)
 サザン?をバックに、休暇をやり直そうぜ、と5人が海ではしゃいで、つづく。

◆第24話「笑う懐かし男!!」◆ (監督:辻野正人 脚本:高久進
 前回が水着だったので今回は浴衣、と夏休みを利用して生まれ育った下町に帰る桃だが、そこに忍び寄る怪しい大礼服の男。
 昔なじみの駄菓子屋に桃が顔を出すと、神社の境内で紙芝居を始めた怪しげな男に水飴を貰った子供たちが豹変。「「バラノイア帝国ばんざーい!」」の声と共に桃たちに爆竹を投げつけると、紙芝居屋に扮していた大礼服の男がほくそ笑み……前回は樹里が三変化ぐらいしたので、今回は、髭の中年男性が七変化します!
 ……あれ?
 子供たちを追う桃の前に現れた大礼服の男がベーゴマを回すと桃はレトロ空間に飲み込まれ、正体を現す自称バラノイア帝国最強のマシン獣、バラカッカ……閣下……(笑)
 アキバレッドいうところの撮影所回に、バラ閣下による多羅尾伴内ネタが盛り込まれ、「レトロ」をキーワードにして、ベーゴマ、メンコ、紙芝居、セピアカラーの丹下左膳鞍馬天狗、と……そういえば少し前に剣玉ロボ回がありましたが、もしかして当時、昭和レトロブームなどあったりしたのでしょうか。
 髪引っ張りからのローキックという地味に嫌な子供攻撃を受けた桃は、駄菓子屋のお婆ちゃんに変装したバラ閣下の罠にはまり、釜ゆで危機一髪! と吊られるが、隊長たちに助けられたお婆ちゃんの説教に丸め込まれたバラ閣下が釜ゆでを中止。
 ……突然、人間に擬態したマシン獣が個人を標的とした作戦を始め、そのバラ閣下人間体がやたらとフィーチャーをされる、幾ら路線修正の流れが見えるにしても、一気に『ダイレン』『カクレン』を思わせる変態怪人路線へと飛躍した末、「心を持たないマシン獣」が、ゲストに説教されている内に心がある気がしてきてしまう、完全な脱線事故
 夏のバラエティ回にしても、コミカルを意図したギャグが作品の土台を踏み外して真っ逆さまに転落していく、大変悪いパターンになってしまいました。
 アチャコチャが出てきて焚き付けるとバラ閣下は正気を取り戻し、主題歌バトルへ突入。隊長の超力ライザーからピンクが個人必殺技を叩き込んでトドメはローラーで轢殺し、今回はモアイキャノンが火を噴くと、バスター瞬殺。
 平和を取り戻した下町では、隊長たちも浴衣姿で紙芝居を始め、ほのぼのオチで、つづく。
 前回に続いて、夏休みの気楽な単発エピソードの形を取って、定番のバラエティ要素を盛り込みながら後回しになりがちな女性メンバーのメイン回でしたが、海だ水着だ青春だがまがりなりにもバラノイア的な発想に基づく作戦によって超力戦隊が思わぬ危機に陥ったのに比べると、前作-前々作の怪人路線がいきなりスライドされてきて、面食らう一本。
 作品としての舵取りを見失い中の気配が激しく伝わってきますが、次回――
 「果たしてオーレンジャーは、こんな変な奴とどう戦うのか?」
 「オーレバズーカだ!」
 予告の編集が大変鬼畜な事になっていますが、次回も、夏のコスプレキャンペーンでお届けしたいと思います。