東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

Mスキー粒子と赤い新星

非公認戦隊アキバレンジャー』感想・第10話

◆第10話「悲痛なるZの呪い――そして新章へ」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久
 葉加瀬は赤木たちに、マルシーナを始め父の描いたデザイン画を見せ、現在の葵とはだいぶ離れた、リアル路線の葵のイラストを目の当たりにする3人。
 ドクターZとして娘の前に姿を現した葉加瀬父は、中学生にして博士号を取得した天才であり、順調な研究生活と妻子に恵まれた人生を送っていたが、高校時代に目覚めたアニメーターへの夢を捨てきれず、研究の道を捨て、イラスト制作に没頭。
 離婚も経験したものの、その努力と才能が認められて、『ズキューン葵』(旧企画)のキャラクターデザインに抜擢されるのだが、あまりにも個人的煩悩をデザインワークにぶつけすぎた結果、制作会社と衝突して降板。企画そのものもお蔵入りになった末、“使いにくいデザイナー”の烙印を押されて、業界から干されてしまったのだった。
 娘の養育費支払いの為にやむなく研究の道に戻った葉加瀬父は、その有り余る才能により幸か不幸か、未知の素粒子が充満した並行世界と、そこに存在するイメージを実体化する素粒子・モエシニスキー粒子を発見。
 それこそが、赤木らが萌え萌えズキューンを通してアキバレンジャーを実体化させた世界の正体であり……現実と妄想の境目が崩れ始めた現状に説明をつける怒濤の辻褄合わせなのですが、「物語に辻褄を合わせる為に持ち込まれるSFぽい造語」そのものが一種のパロディとして成立している、アクロバット飛行(笑)
 如何なる運命の悪戯か、大学卒業後、声優となるも鳴かず飛ばずだった葉加瀬博世は、キャラクターデザインをリファインされた『ズキューン葵』(新企画バージョン)の主演の座を射止め、その打ち上げパーティの日……葉加瀬への贈り物として届けられたのが、3基の萌え萌えズキューン。
 音信不通だった父親が自分を気に懸けてくれたと喜んだ葉加瀬は、添えられた手紙の言葉を信じ、萌え萌えズキューンを用いて正義を為そうとしたのだが……
 「でも……実際は、自分のとんでもない妄想を、現実にしたいだけだった」
 自身の娘といえる葵のデザインを無断で変更された事に怒り狂った博士父は、『ズキューン葵』と、『ズキューン葵』を愛するファン、そして『ズキューン葵』を尊ぶ世界の象徴としての秋葉原に怨念を向け……つまり、鬼頭はるか別ルートみたいな人だった。
 ――全世界に告げる。全世界に告げる。『ズキューン葵』に萌える、全ての者たちに告げる。今、10年前の借りを返す時が来た。これは、ステマ乙の名の下に行う復讐である。私を切り捨てたアニメ界への復讐である! そして、その鉄槌を下すのが、この大怪球ズキューーーーーーン!!
 制作会社の方針で覆面声優だった葉加瀬と『ズキューン葵』の関係、それにまつわるドクターZの悲しき誕生秘話を知った赤木らは、割とドライな反応を示す青柳&萌黄と、この(妄想の)力で悪を倒さなければならない、と盛り上がる赤木との間でまたも意見が割れていたところ、なんだか物凄く正統派ヒーローぽい好青年が、トラックに轢かれそうになっていた子犬を助ける場面を目撃。
 見覚えのある顔と聞き覚えのある芸名だな……と思ったら、演じる高木心平さんは、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』で深見レツ/ゲキブルー役だった高木万平さんの双子の弟という事で、『ゲキレン』にも、鏡の中のレツ役でゲスト出演(今回後半で指摘あり)。
 いちいち仕草がキザな昭和テイスト爽やかイケメンと出会った直後、赤木たちに襲いかかったのは、ドクターZが新たに招聘した、ステマ乙の専務取締役・デリューナイト
 「こいつの力なら、葵を信奉する、堕落した秋葉原の街を、地獄に変えてくれる」
 自らのデザインした、本当の『ズキューン葵』を取り戻すべくドクターZは妄想で現実を侵食していき、《スーパー戦隊》で矢尾一樹さんといえば、個人的にはアシュ西の長・オウガ(『轟轟戦隊ボウケンジャー』)なのですが、ペンダントを貰って(あいつ……俺のこと好きなんじゃねぇの?)と一人で盛り上がっていた幼なじみが異種族と結婚。その息子に逆恨みを晴らす為、呪われた幻影の世界で愛する幼なじみの姿に扮し、むしゃぶりつくように息子を押し倒し、手を繋いで砂漠を歩き、薔薇の花を生け、手料理を振る舞い、独りにしないでと腕の中に飛び込むなど数々の熱演を繰り広げ……うん、大体、赤木とドクターZと同じフォルダでしたね!
 「私の指命は、妄想オタを抹殺する事!」
 「だったら、おまえのボスを真っ先に抹殺しろってんだ!」
 は、とても鮮やかな返し(笑)
 「社長の想いは妄想ではない。……崇高な理想だ」
 だがデリューナイトは動ぜず上司を擁護し、その言行がかんに障ったのか、劇場版『ズキューン葵』を守る為にも、青柳と萌黄もステマ乙との戦いを決意すると、現実世界での重妄想に成功。
 しかし、既に赤木らの妄想の範囲を超え、普通に強いナイトは萌えマグナムさえ弾き返し、同時刻、葉加瀬の首筋に浮かぶサソリ型のアザ。
 「モエモエズキューンを使えば葉加瀬博世は苦しみ、遂には重大な呪いに冒されるのだ」
 ラスボスの登場と共に葉加瀬のヒロイン力がズキューーーンと上昇していく一方、ドクターZはマルシーナに、ステマ乙の係長たちのリストラを命令。
 その言葉に愕然とし、ドクターZを「お父様」と呼ぶ事を拒否されて唇を噛むマルシーナに、なにやら反抗と自立のフラグが立ち始め、妄想から現実へと飛び出したマルシーナが、今度は“親の手を離れた作品”として造物主に対して「自己」を主張し始めるのではないか……と随分と面白い立ち位置になって参りました。
 ダイソレタキャノンさえも破られて完敗を喫したアキバレンジャーは、悪役名物・「もっと苦しめてじわじわ殺せ!」により、格下ーズ扱いを受けて壊滅は免れ、ひみつきちへ。
 激痛に襲われた葉加瀬は落ち着きを取り戻していたが、そこに現れた昭和テイスト爽やかイケメンにより、恐るべき真実が明らかになる。
 「わかりやすくいえば……呪い」
 『ズキューン葵』打ち上げパーティの日、父からの手紙に仕込まれていたサソリの呪いが葉加瀬にはかけられており、萌え萌えズキューンを使えば使うほど、その呪いは葉加瀬を蝕んだ上に、遂にはその声を失わせてしまうのであった。
 堕落した『ズキューン葵』に憎しみを向け、思い描いた理想の葵の為なら、実の娘の声さえ奪おうと陰湿な呪いをかけていた葉加瀬父が現時点では救いようのない外道になっておりますが(あまりに酷いので、もう一ひねり入るのではないかと疑うレベル……悪徳業界人ぽい人主導による、覆面声優問題があるといえばありますし)、ズキューンシステムには不備が……あった!
 Zの呪いについて語る爽やかイケメンの正体は、葉加瀬父を追っていたインターポールの特命刑事であり、どさくさ紛れに、もはや元ネタがなんでもありになってきつつありませんか。
 CIAの開発した呪いメーターをひみつきちに持ち込んだ特命刑事――都筑タクマは続けて、自分が葉加瀬にとって腹違いの弟となる事を明かし、前回に続き、怒濤の新情報が押し寄せる中、更に更に、ペンタゴンが赤木をスカウト……?!
 …………いや、あなた方、ここ最近も、2回続けて電話で騙されてませんでしたか?!
 基本、思い込みの激しい人たちなので、嘘か真かペンタゴンからの電話を信じ切ると、スカウトに応えて今よりでっかい男になるべきか、ステマ乙に狙われる秋葉原を守る為に戦い続けるべきなのか……悩める赤木だが、女性陣がひらめキング。
 背中にトランペットを背負ったタクマがひみつきちへと再び現れ……どさくさ紛れに、もはや元ネタがなんでもありになってきつつありませんか。
 真っ赤なジャケットに身を包んだ爽やかイケメン様ご来店を待ちわびて、いそいそと支度する女性陣の姿に、29歳独身実家暮らし(ただし、庭付き一戸建てだった)で親に抱き枕を捨てられそうになる男が残酷な格差を見せつけられる中、トランペットを吹き鳴らすタクマが新アキバレッドに指命されて、つづく。
 新章にふさわしく登場した新キャラ、昭和ヒーロー風味のカリカチュアにして、ストレートな『キカイダー01』主人公イチロー兄さんのパロディを乗せてきたのですが、そういえば『超光戦士シャンゼリオン』のヒーローパロディ回でも主人公にトランペットを吹かせていたので、荒川さんの中の木下健さんは、イチロー兄さんがお好きなのでしょうか。……もしかすると2010年代、ギターを背負ってバイクに乗せるのは、なにか法律に触れるのかもですが(笑)
 セオリーでいえば、如何にも胡散臭い都筑タクマ、穿った見方をすれば、イチロー兄さんのパロディ=“作られた存在”を示す布石とも取れますが、果たしてこの赤い新星は、経営難のひみつきち(※EDの葉加瀬談)を救う、勝利のフラグを立てる事は出来るのか?
 アキバレンジャーステマ乙、両陣営が着々と新体制に移行していく中、次回――あぶれ加減の二人が急接近?!