東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

獣を宿し、人は生きる

仮面ライダーウィザード』感想・第19-20話

◆第19話「今日の命、明日の命」◆ (監督:諸田敏 脚本:きだつよし)
 「どけ!」「おまえがどけよ!」「どけぃ!」
 ウィザード、ビースト、ダイバーファントム、三つ巴で争っている内にゲートの男性が逃げ出すと、ビーストはファルコンウィングを広げて男性の身柄をかっさらい、俺が預かるからなぁ!! と叫びながら飛び去るその姿は、完全に、悪役の所業(笑)
 「あのマヨネーズ……!」
 ドーナッツの魔法使いは吐き捨て、今回からOP映像に仁藤/ビーストが加わり、ここまでの劇中とは対照的にシリアスな表情で独り歩くその背後の壁に、キマイラのシルエットが浮かび上がるのが、滅茶苦茶格好いい……!
 今作OPで繰り返し描かれる交差と裏表のモチーフは、晴人/ウィザードと、反対に体を向けながら、すれ違いざまに足を止めて互いに視線をやる形となり、本編でまだ打ち解けていないキャラがOP/EDなどではやたら馴染んでいる、といったパターンを回避しつつ、仁藤の背負った重い宿命を感じさせながら、仁藤の「別の顔」を抜き出すのが痺れる見せ方で、追加キャラによるOPのマイナーチェンジとしては、これまで見た中でもベストクラスかも。
 ノリの軽い茶髪の青年ファントムに押しつけられた魔宝石を持ってコヨミが面影堂に戻ってきた頃、ちゃんとキャンプ場にテントを張っていた仁藤は、ゲートの男性・及川にマヨネーズ料理をご馳走して大宇宙明日のパンツ教団へ勧誘していたが、ゲートやファントムについての会話は当然全く噛み合わず、割と我の強い及川の帰宅に伴って、及川家を訪れる。
 前回の演出と室内の雰囲気からそんな気配ありましたが、及川妻は既に死去しており、及川が話しかけていたのは、壁にかかった妻の絵。
 「妻が死んでから私は、絵が描けなくなった。今の私にはもう、何もない。その絵と話す事だけが……私の生きる希望なんだ」
 一方、凛子の聞き込みでゲートの所在と素性を把握した晴人一行が及川家にカチコミをかけると誘拐犯の身柄を確保し、警察手帳、便利。
 「ゲートの命は、今危ないんだ」
 「え?」
 「明日の命より――まずは今日の命だ」
 ようやく、ゲートとファントムの関係について仁藤に説明する機会を得た晴人は、とにかくゲートを守る、仁藤の事は後で考える、と宣言。
 仁藤にはかなりストレートに、「自分の命の為なら他者を害してもいいのか?」という命題が突きつけられれ(突き詰めれば「食べる」とは、そういった行為ではありますが)、自分の命は大事だが、他者の犠牲の上に「生きる」のも後味が悪い――それはきっと、自分らしく「生きる」事ではない――と苦悩する仁藤は、人と獣の間で揺れ動く。
 庭に大の字に転がっていた仁藤に荷物を運んだ凛子は、晴人が命がけで戦っている事を伝え……こういう役割も回ってこない瞬平はと思ったら、仁藤は仁藤で大変な境遇なのではとフォローを入れ、ゲートを守ると宣言した晴人も心中複雑。
 ひとまず、晴人さんを燃料電池にする事は可能なのかどうかが気になりますが、キマイラが偏食の可能性と、映像的に晴人さんが断固拒否する可能性。
 ――「目の前のファントムを食べれば今日は生きられるかもね。でも新たなファントムが生まれない限り、いずれ貴方の明日はなくなるわ」
 あちらもこちらも悩ましい状況で仁藤はミサの言葉を思い出し、「誰かの今日」と「自分の明日」が天秤にかけられた状況で、前回今回が上手く台詞で繋がりました。
 及川の身柄は大事な絵と一緒に面影堂で預かる事になり、壁から外したキャンパスの裏に封筒を発見した晴人は晴人で、仁藤の背負ったものにどう向き合うのか悩ましい表情を見せるが、ファントムは待ってくれない。
 住宅街をアクアラング姿で練り歩くなど徹底した日常からの乖離ぶりが、これはこれで面白くなってきたダイバーファントムは公園の噴水(笑)で晴人たちを待ち受けており(左肩に爬虫類ぽい顔がついている事に、ここで気付きました)、本日もやらかしウィザードが囮に引っかかると、フライングダイバーパンチが無残に絵を破壊し、崩れ落ちる及川。
 「いいぞ、いいぞ、ファントムを産み出せ~」
 ダイバーファントムがミッション達成の喜悦に踊るその瞬間、ファントムが生まれれば自身にも理がある(と吹き込まれている)仁藤が力強く飛び蹴りを炸裂させるのが、ちょっと遅れたものの、仁藤の「選択」を行動のみで劇的に示してみせて、会心
 「何しに来た?」
 「明日の命より、今日の命だったな」
 「……フッ」
 「とりあえず、明日の事を今日は考えない事にした。今日は今日を、ちゃんと、生きる。明日の事は――それからだ」
 一見ただただアホほどポジティブのようでいて、仁藤攻介にとっての「生きる」とは何か? への視線と思考が(無意識かもしれませんが)しっかりと織り込まれていて、仁藤の好感度が一気に上がるシーンとなりました。
 「さあ……ランチタイムだ」
 「フッ、召し上がれ」
 たとえ明日死ぬのだとしても、胸を張って今日を生きる為に二人の魔法使いがスッキリ並び、挿入歌に乗せてバトルが始まる一方、背後では及川のピキピキが始まり、牛だけ……「バッファロー」なの……?(笑)
 ビーストはグールをまとめて消化吸収すると及川の元に駆けつけ、ファントムに足止めされているウィザードに代わって、及川のアンダーワールドへと突入。
 一方、マジカルドリル頭突きを浴びせるも反撃を受けたウィザードは、コヨミ特急便から受け取った新作の指輪を用いると、もう何言ってるのかよくわからないベルトの音声に乗せて、第4のドラゴンフォーム・グランドドラゴンウィザードへとチェンジ。
 そんなウィザードの勝利を祈って戦いを間近で見守るポジションにスムーズに収まるコヨミちゃんのヒロイン力に戦慄していると、その背後の木の上には、ピーターパン男(仮名)の姿が。
 「4つのエレメントを全て進化した。もう、戻れないよね。さあて、どうなるのかな」
 元より白ガル宅配便の時点から胡散臭さ全開だったウィザードの強化ですが、なにやら怪しげな思惑が見え隠れ。
 ……今作の時点でだいぶギリギリですが、この“手に入れた強化アイテム(装備)は出自を深く考えずに使ってみる”傾向は、平成ライダー》作劇の悪習となり、やがて死者も出す事に。
 元より、敵味方の能力が繋がっている《仮面ライダー》では陥りがちではあり、今作以前の作品でも例はあると思いますが、引っかかりの目立ち始める端緒ぐらいの時期でありましょうか(次がなにしろ『鎧武』ですし……)。今作の場合は、晴人が常に心理的に切羽詰まり気味なのと、制作担当の輪島がフィーリングオンリーの人でブレーキが無い事を理由付けとはしておりますが、当初は警戒していたコヨミちゃんも段々と雑な対応になっており、慣れって怖い。
 「さあ――ショータイムだ」
 背後の視線を知らず、GDの力を引き出したウィザードは、重力攻撃でダイバーファントムを押しつぶすと、殲滅モードは竜の爪を両手に装備し、力業でファントムを滅殺。
 ビジュアル的にはモグラですが……「土竜」だからいいのか……?
 一方、アンダーワールドのビーストは、分離合体を駆使する巨大コウモリムカデファントムに苦戦するが、ピンチはチャンスとキマイラを召喚すると、全方位ビームからキマイラ大口アタックでごくんと平らげ、並行して描かれた二人の魔法使いの戦闘は、共に勝利で幕を閉じるのであった。
 ゲートのファントム化は阻止したものの、大事な絵は二度と取り戻せない状況をどうするのか……と思ったら、ここで晴人が見つけた手紙が役に立ち、亡き妻の遺した「新しい絵を一杯描いて」くれる事が「私の希望」のメッセージを受け取った及川は、新たな希望を得る事で明日を生きる気力を取り戻し、非常に綺麗に着地。
 それこそ一度“聖夜の奇跡”を経ている事で、失ったものを簡単に取り戻す魔法は(基本的に)存在しないが、人の想いが人を救う事はある、と示せたのも、美しくまとまり、今作ここまでのきだ脚本回では、一番良かったです。
 いただいたコメントによりますと、放映当時は2話完結形式がマンネリ気味との評価を受ける面があったようですが、その後の作品で、どんどん印象の薄くなっていく各話怪人や、1話に収めようとしてのインスタント解決などを見せられていると、ゲストの問題への対峙と、強化フォーム(など)の劇的な描写を両立させるには、前後編の余裕がやはり欲しいなと思うところ。
 勿論これは、約10年後に週2話ずつの配信ペースで視聴している環境の違いは大きく、突き詰めれば作品スタイルへの好みの問題ではあり、シリーズが長期化すれば、内部で変化を付ける(が生まれる)のもまた必要な事だとは思いますが、今のところ『ウィザード』、前後編形式を用いつつ、ヒーローの「葛藤」「選択」「差し伸べる手」に意識の強いスタイルが、気持ちよく見られる作品になっています。
 「……来てくれて助かった」
 「……別に。俺は責任を取っただけだ」
 ダイバーファントムを食べ損ねたせいで他人に危害が及ぶのを防いだだけだ、と一線は引き続ける仁藤に対し、瞬平の発案により、エンゲージしてキマイラ倒せば解決するのでは? と指輪をはめる寸前までいくが、シチュエーションがトラウマになりそう、と寸前に拒否した仁藤は、晴人を一方的に「我が永遠のライバル」認定しながら去って行き、軽快なBGMで、つづく。

◆第20話「近づく真相」◆ (監督:石田秀範 脚本:香村純子)
 冒頭、激しい暴風雨にあおられる仁藤の姿がコミカルに描かれ、石田、くどすぎる時の石田……。
 仁藤がなんとか屋台のラーメン屋に腰を落ち着けると、その背後で色々と転がっており、石田、くどすぎる時の石田……。
 ワイズマンには出撃を止められ、派手に暴れる機会が無い事に苛立ちを強めるユウゴは、焼き鳥屋の近くで荒れると、紙くずのようにポイポイ放り投げられる酔客たちが完全にギャグで処理され、石田、くどすぎる時の石田……。
 通りがかった凛子が雨中で咆哮をあげるユウゴとすれ違う場面はさすがにギャグ無しで描かれましたが、アバンタイトル約3分半、苦手な時の石田成分が背脂5倍増しで、既に胸焼け。
 笑いのツボは個人差が大きい点も含めて、私にとっての石田秀範は、演出が好みに合う時と合わない時が両極端なのですが、監督好みのアク強めのモブがしつこく存在感を出してくる焼き鳥屋のシーンは、正直げんなり。
 ……だがしかし、これは今回の、ほんの序の口でしか無かったのです。
 乱闘事件の重要参考人として凛子がユウゴを追う一方、晴人と瞬平は指揮者ファントムに襲われていたゲートの女を救い、とにかくこのゲストが、うるさい。
 やたら陽気でハイテンション、他者と繋がりを持ち、自分が周囲に嫌われていない事を常に確認していないと不安定になる女が、急に友人から無視されたり手荒く扱われるようになるのが、実はゲートを絶望させようとする指揮者ファントム・ベルゼバブの能力によるものだった……と途中で判明するのは面白い仕掛けだったのですが、その落差を強調する為に、ひたすらゲストも周囲も騒がしいのが、辛い。
 孤独に追い込まれていくゲストに優しく寄り添おうとする瞬平も、ベルゼバブの能力に操られてゲストを突き飛ばすと、最後は愛する夫からも拒絶を受け、ゲストが精神的に追い詰められていく流れは香村脚本回らしいゲートのえげつなさが光るのですが、とにかく、事あるごとに感情的に叫び散らすゲストがやかましすぎて、視聴が苦痛レベル。
 世に得意な人が居るのかはともかく、私、急にわぁっと大声で叫ばれるのが物凄く苦手なので、終始ストレスを感じ続けながら見るという、内容云々とは別のところで厳しいエピソードになっていました。
 ゲートが絶望寸前、助けに駆けつけた晴人は、エキサイトマッスルウィザードでグール軍団を蹴散らし、筋肉大好き。
 仁藤も駆けつけてビーストへと変身すると、FDウィザードは、ドラゴンフォームを前にしても余裕を崩さないベルゼバブ(胸の模様が、蠅の複眼にも音響スピーカーにも見えるのが秀逸)と剣を交えるが、大物悪魔の名を持つベルゼバブの時空操作魔法により、ビーストへとフレンドリーファイアを繰り返してしまう。
 「その程度の魔力じゃ、このベルゼバブ様には通用しないんだよ!」
 これまでとは段違いの力を見せるベルゼバブの前にFDウィザードが苦境に陥る一方、今回は完全に別行動を通す凛子は、傷害事件の目撃証言を集めていく内に、花屋で働いていた青年フジタ・ユウゴに辿り着き、フェニックス/ユウゴを生みだしたゲートと思われる、爽やか花屋さんの姿から、心臓を抉るようなダメージが……!
 映画監督回で描かれたファントム素体問題を布石として、似合う世界観は『北斗の拳』なフェニックス/ユウゴとは、見た目以外は似ても似つかぬフジタ・ユウゴの描写がぐっさりと突き刺さってきます。
 「俺は暴れるしか脳がないんじゃない! 暴れたいだけだ!」
 「だったら見返してやる事ね。ちゃーんと頭を使った作戦で」
 素敵な名言をミサに一蹴されたユウゴは、フジタ・ユウゴの足跡を追う凛子の姿を目にし、フジタ・ユウゴの住んでいたアパートを訪れる凛子だが……騒がしいゲストに振り回され加減の晴人と、傷害事件を捜査する凛子パートを並行して進め、単独行動の凛子が重要参考人を追う内に思わぬ形で幹部格ファントムへと近づいていく流れは面白かったのですが、とにかく上述の理由でひたすらストレスフルになってしまい、次回はもう少し、静かだと良いのですが……。
 次回――なんだか、面妖な画が(笑)
 ふ、増えた?