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真っ赤な闘魂レッドパンチャー

超力戦隊オーレンジャー』感想・第19-20話

◆第19話「新ロボ赤い衝撃」◆ (監督:小笠原猛 脚本:曽田博久)
 いきなり巨大化状態で出てきたバラビルダーの引き起こす大規模停電を食い止めるべく、開幕から巨大戦でスタート。
 ちょっとゴルリン(『地球戦隊ファイブマン』)ぽいデザインのバラビルダーは、オーロボの攻撃を受ける度に自動的に強化されていき……つまり、筋肉は真理。
 鍛えれば鍛えるほど不思議な力を発揮するバラビルダーを相手に、一気に勝負を付けようとクラウンソードで切り刻むオーロボだが、いきなりバッカスフンドが白旗を揚げて降参を宣言すると、追随したビルダーも土下座外交で和解を求めるが、もちろん罠。
 地中から伸ばされた尻尾の奇襲によりエネルギーを吸収されたオーロボは、クラウンソードへし折られ、鍛え上げた筋肉の前に完敗を喫してしまう。
 「ハーッハハハハハハハハハハハ……!! 遂に恨み重なるオーレンジャーロボを倒したぞ!」
 呵々大笑する皇帝バッカスフンド、序盤からコミカルな描写はありますし、劣勢で手段を選ばなくなってきたと捉えるにしても、“マシンを統べる者”としてのプライドの高さこそがキャラクターの軸足だったので、ケチな時間稼ぎの為に陣頭指揮での白旗宣言は、あまりにもアイデンティティを破壊しすぎて、消化しにくい描写になってしまいました。
 同じ卑劣な手段を用いるにしても、自身が負けたフリをするような作戦を選ぶのは、一気にキャラを崩しすぎたかなと。
 オーレンジャーは命からがら基地へと帰投するが、オーロボの損傷は激しく、修理の目処もつかない。どうすればバラビルダーに立ち向かう事ができるのか……妙にむっつりとした参謀長に助言を求める隊長だが、突如として腕のストレージクリスタルが光を放つと、レーダーが基地の外部に巨大な超力の反応を検知する。
 「でかい……とてつもなくでかい。いったいなにがあるんだ」
 反応を追い、とある山中に辿り着いた隊長は、三浦がオーレンジャーロボに先駆けて完成させていた、もう一体の巨大ロボ――レッドパンチャーが谷底に眠っている事を知る。
 ……だがそれは2年前、国際空軍に所属していた桐野少尉を死に追いやった、呪われたロボットなのだった。
 亡き桐野の妹・美雪から、「兄さんを殺したロボットを掘り出さないで下さい」と告げられた吾郎が山荘で美雪から事情を聞いていると、そこに参謀長以下のメンバーも勢揃いし、〔一号ロボが敗北し、別ルートで完成済みだった巨大ロボの存在が浮上するが、それは関係者の死を背負った忌まわしい存在だった〕という骨子がそのままなので、恐らく『光戦隊マスクマン』第21話「霧の谷の黒い影」(監督:長石多可男 脚本:曽田博久)が、今回のエピソードのベース。
 「今こそ真実を話そう」
 三浦は一同に向け、2年前――地球侵略を目論むバラノイアの偵察部隊の存在を確認した桐野少尉が、血気に逸り独断で未完成のレッドパンチャーを起動。キャットウォークを派手に破壊しながら出撃するも、制御を失った末に暴走状態のまま谷底に転落し、その際にコックピットから投げ出された桐野少尉は不幸にも事故死した……と随分と都合のいい“真実”を語って、自責の念と謝罪の言葉を重ね、果たしてこの証言は、どこまで信用していいのでしょうか(笑)
 「……しかし、俺達にはレッドパンチャーしかない」
 隊長は、参謀長がその存在を 隠蔽 封印していたレッドパンチャーの再起動を求めると、返す刀で美雪を説得。
 「美雪ちゃん、わかってくれ。今の俺の気持ちは、君の兄さんと同じなんだ」
 このやり取りをコチャが耳にしてバラビルダーがレッドパンチャー破壊に送り込まれ、引き続きフットワークの軽いバッカスフンドが襲撃を指揮する中、隊長の乗り込んだレッドパンチャーが地中から復活するのは、格好いい映像。
 顔からしてオーレッド専用機な赤い衝撃は、オーレ! ポーズを取ったところまでは良かったものの、完全な暴れ馬。
 隊長を持ってしてもコントロールできないまま(そもそも、未完成状態で2年間、土中にあった機体ですしね……)バラビルダーの攻撃を受けると、電撃を受けて気を失った赤の前に、死んだ桐野少尉の姿が浮かび上がる。
 「さあ、オーレッド、一緒に行こう」
 ……た、魂抜けてるーーー?!(笑)
 隊長の魂は桐野に導かれて岸の向こう側……ではなく守るべき大地の姿を次々と目にし、オーレンジャーロボ初登場回に続き、“超力とは地球そのものと繋がった力”である事が確認されて、隊長が目を覚ますと、地下の遺跡から注ぎ込まれた追い超力によってレッドパンチャーは再起。
 「行くぞ、レッドパンチャー」
 これが、文字通りに血も涙も無い鋼のマシンに対する、地球の命とそれを守る力だ! とバラビルダーに怒濤の反撃を浴びせたレッドパンチャーは、近接格闘系マシン、と見せてパンチャーガトリング!! の飛び道具でバラビルダーを瞬殺し、封印兵器とはいえ、5体合体ロボで倒せなかった強敵を、隊長一人乗りロボで倒してしまう、トンデモ展開で、つづく。
 率直なところ、〔1号ロボの敗北から2号ロボの登場を前後編で描く〕でもなく〔前話で敗北した1号ロボに変わって2号ロボが登場する〕でもなく、〔いきなり1号ロボが敗北するが2号ロボが完封勝利を収める〕を1話に詰め込むのに無理がありすぎて、桐野妹の心情の変化も、桐野少尉の存在感も、作品テーゼとの接続も、全てが雑。
 今回はどうしても、『マスクマン』第21話を意識しながら見てしまったので、比較して生じた物足りなさも影響しているかとは思いますが……『マスクマン』第21話の場合、2号ロボの開発者は長官ポジションの亡き親友であり、突然の新戦力を長官の掘り下げに繋げて物語の中に落とし込みつつ、傷ついた少女の心を溶かす要素を盛り込む事で2号ロボの復活に上手くドラマ性を与えていたのですが、それに比べると今回は、桐野妹の扱いがあまりにおざなり。
 開口一番「あなたは鬼です! ……父さんを殺したロボットを、甦らせようなんて」みたいなインパクトもありませんでしたし。
 その為、三浦の心情も、桐野の存在も、全ての糸が空中でバラバラにほどけてしまってクライマックスの劇的さに繋がらず、過去作から持ってきた使い勝手のいいハンコをペタペタ押していったような作りの、なんとも残念な出来になってしまいました(……なお、『マスクマン』第21話の出来が良かったかといえば、後半で崩れるのでそうでもなかったりするのはご愛敬ですが、少なくとも切れ味や連動の工夫はあったので)。
 系譜としては、龍星王や獣将ファイターの路線に位置するであろうレッドパンチャー、次回、いきなり敗北?!

◆第20話「鉄拳100連発!!」◆ (監督:小笠原猛 脚本:曽田博久)
 ブルドントは対レッドパンチャー用にマシン獣バラボクサーを作り出し、ボクシングスタイルの使い手であるオーグリーンと一騎打ちさせる事で、その必殺フライングパンチを学習。
 さっそく巨大化したバラボクサーに対してレッドパンチャー出撃が要請されると、超力基地から、尻尾の生えたメタル忍者ばりに砲台で撃ち出されたレッドパンチャーがスピン回転しながら到着するのは、シンプルに格好いい描写。
 ボクサーを攻め立てるパンチャーだったが、目つぶしから凶器攻撃、更に緑より学習したフライングパンチを受けて、登場2話目にしてKO負けを経験してしまう。
 「すまん。俺がフライングパンチを使わなければ、こんな事にならなかったのに……!」
 「自分を責めるな。もし俺が昌平と同じ立場だったら、やはり同じ事をしただろう」
 そして、一刀の元に葬り去っただろう。
 昌平は旧知のボクシングジムを訪れるが、禁断の必殺拳だったフライングパンチを使った事からトレーナーの老人に追い返され、何故かそれを把握していたバラノイアの諜報能力が、相変わらす恐るべき精度です(笑)
 対バラボクサーの為、隊長が昌平からボクシングを学ぶと、口では文句を言いながらも内心では昌平が心配でたまらないトレーナーが指導役を代わり、更なる殺人拳を身につけていく隊長。
 地球を守るエリート軍人戦隊であるオーレンジャーが、パトロールするでも基地に詰めているわけでもなく、仲間のトレーニングに外野からやいのやいのと声援を送っているのはどうなの感はありますが、前回今回とどうも、善悪両サイドの描写に路線修正の気配が見え隠れ。
 特訓はやがて、修理の終わったオーレンジャーロボとレッドパンチャーのスパーリングに移行し、画としてはコミカル寄りになっていますが、懐古的作風の一方で、巨大ロボに色々やらせようとする試みが見られるのは今作の面白いポイントです。
 フライングパンチの反動で砕けた拳を強化修復したバラボクサーと、操縦者がボクシングを身につけたレッドパンチャーが再戦のリングに立つが、再びのダーティ目つぶしから、敵セコンドの爆破工作で追い詰められるレッドパンチャー。だが地上に残っていたメンバーがバラノイアサイドに肉弾戦を行使して地獄リング発生装置の破壊に成功し、骨折で変身不能になった昌平は冒頭に、隊長はずっと、残りメンバーはクライマックスのサポートと、見せ場の配分に工夫があったのは、良かったところ。 
 「昌平、見ていてくれ。おまえ譲りのパンチを」
 リング消滅によりロープ際の窮地を脱したレッドパンチャーは反撃に転じると、バラボクサーの放つフライングパンチのガードから、挿入歌に乗せて怒濤の連続パンチを叩き込み、最後は必殺マグナパンチャーでマシン獣を粉砕するのであった。
 隊長と昌平ががっちり握手をかわすと、特に何もしていない参謀長がそれっぽくまとめ、一同が見上げるレッドパンチャーの後頭部に、なんか顔があるぞ……? でつづく。