東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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夢はゴールド、舞台はグレー

非公認戦隊アキバレンジャー』感想・第5-6話

◆第5話「イタイタ☆イエローママ」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:香村純子)
 ある日、赤木がひみつきちを訪れると、萌黄が宇宙と交信していた。
 「今日は、ママが地球に降臨するピピ」
 これは、上京してきた親に素性を隠さねばならないパターンだ! と一人で盛り上がる赤木は青柳と共に萌黄の住まいへ突撃した結果、29歳独身実家ぐらしで親に抱き枕を捨てられそうになる男として更なるスティグマを刻まれた末、デリカシー皆無のゴミ男として部屋から叩き出されてしまう。
 「ゆめりあの好きな人は、次元の向こうにしか、存在しないピピ」
 「2次元や2.5次元か。やはりな」
 めげない懲りない多分根本的な問題点がわかっていない赤木は、これは見合い話パターンだと再び一人で盛り上がり、内容は奇天烈ながら、思い込みの激しいキャラクターが空回りして騒動を引き起こすパターンとして、ある種の入れ子構造――「パターン」を語るキャラが別の「パターン」を演じている――になっているのが、メタパロディとして上手い作り(余談ですが、「2.5次元」という言葉は、ここ数年ぐらいに生まれた言葉だと思っていたので、既に存在していた事にちょっと驚き)。
 助平心は持つが純情でもある赤木は、偽装彼氏役はさやかさんに申し訳が立たない、と一人勝手に苦悩するが、そうこうしている内に萌黄宅に現れた母・山田雅子は、完全に、萌黄ゆめりあのグレードアップ版だった。
 萌黄の本名は「山田優子」であり、個人的にずっと首をひねっていた「(CN)」=「コスプレネーム」と判明すると、元有名コスプレイヤーの萌黄母を加えた一同はアキバ巡りに繰り出し、割とディープな世界に連れ込まれるが、意外と順応する青柳。
 母子に気を遣い、思い出の店の前でそっと別れた赤木と青柳は、秋葉原の裏通りにひしめく大量のホストクラブを目撃すると、飛び込んだ店内には、マルシーナにより再生された歌舞伎町チョウの姿が!
 「秋葉原に店舗を増やし、歌舞伎町のようにするのが、俺達の新しい シノギ 野望だ」
 再生怪人など二人で充分! と戦いを挑む赤と青だが、予想外の強さを見せる歌舞伎町チョウに苦戦。途中参戦した黄も変身解除級のダメージを受け、絶体絶命のその時――飛び込んできた山田雅子が体当たりで娘を守ると、萌黄の落としたもえもえずっきゅーんを用いてイエローに変身する、凄まじい展開(笑)
 「魅惑の、熟女レイヤー・アキバイエロー!」
 キレキレの名乗りを見せた母イエローは、ミス・アメリカ仕込みのダンスと、“バブルを知っている女”の貫禄を見せて、歌舞伎町チョウを圧倒。
 つまりこれは、親への手紙に出鱈目書いていたメンバーが仲間を巻き込んで右往左往する話でも、親から見合いを強制されて大大混乱が巻き起こる話でもなく、悪の存在を知った親が「肥後バッテン流弓術・岬与一郎、天に代わって、成敗いたぁす!」してしまうパターンだ、と赤木が納得すると、歌舞伎町チョウに大打撃を与えた山田雅子のパスを受けて、萌黄は再びイエローに変身。
 主題歌をバックにヒーロー反撃のターンとなり、黄のキックを皮切りにして、赤と青が“大それた力”を用いて歌舞伎町チョウを拘束すると、イエローを合体バズーカ代わりにするメイン回スペシャルフォーメーションの必殺ショットにより、物凄い綺麗な形でフィニッシュ(笑)
 これを見ると、当時『ゴーバス』に不満を抱いた層が今作に盛り上がっていたという話も納得です……(『ゴーバス』特に序盤は、“新しい事”をやろうとする試みはともかく、それが既存シリーズの持つ“面白さ”以外や以上を引き出すのにだいぶ苦戦していたので)。
 「私、ママの子供で良かった。生んでくれて、ありがとう」
 戦いが終わると3人は萌黄の部屋から一歩も外に出ておらず……実は萌黄母が5年前に事故で他界していた事が明らかに。
 萌黄は毎年、自身の誕生日には、亡き母親と約束していた秋葉原巡りの空想にふけっていたのだが、その想いと、萌黄母を出迎えようとする赤木と青柳の気持ちが同調した結果、チャイムの音をトリガーにして、母親が部屋を訪れたところから重妄想が展開していたのだった。
 母親の性格を知っている筈の萌黄が母の姿に「なんで」と口にしてしばらく静かだったのも、赤木も知らない間にホスト関係の店が増殖しているのも、萌黄母について検索をかけた後の葉加瀬の態度も、母親がイエローに変身できるのも、全ては重妄想世界の出来事であったとして筋が通ると共に、「私、ママの子供で良かった。生んでくれて、ありがとう」と、幾分唐突で綺麗するぎイエローの言葉は、生前に伝えられなかった言葉だったからこそ、とまとめて、ちょっとずつの違和感を一本の線で美しく整えてみせる、鮮やかな着地。
 誕生日エピソードとしても綺麗に収まり、そう、「誕生日っていうのは改めて命の大切さを考える為にある」(ジン/『超新星フラッシュマン』)のです!
 今作の基本構造の孕む、“信用しきれない語り手”の引き起こす“虚実の転換”は、受け手を「騙す」事だけを目的化した安易な叙述トリックに陥ってしまう危険性を常に抱えているのですが、エピソードの大半を「実は妄想でした」とオとす大技を、パワフル母のトンデモエピソードと見せて“ちょっといい話”に着地させるアクロバットによって叙述トリックの悪印象を和らげる用い方も、落とし穴回避の技術に長けた香村さんらしい目配りで、総合的に、ぐうの音も出ない出来映え。
 鬼畜責め → コスプレ妄想 → からのツイストも効果的で、いやこれは参りました。
 また、何を見せて、何を見せないのか、の取捨選択が巧みで種明かしを効果的にする演出も冴え、これまで見た鈴村展弘監督の演出作品では、一番好きかも。
 加えて、山田雅子を演じた松本梨香さんがやたらなはまり具合で好演を見せて、キャスティングも上手く噛み合った一本でした。
 ……あと、そこはかとなく葉加瀬にフォローが入っているというか、てっきり「人の心が無い」枠だと思っていたのですが、親子の情を解す心は持っているのだな、と(笑)
 この作品コンセプトでここまで出してくるか! と唸らされる、お見事な秀逸回でした。
 次回――新堀和男、登場。

◆第6話「はばたけ大御所! 妄想撮影所の痛い罠」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久
 公認様との共演、声優ネタ、に続いて、スーツアクターにスポットを当ててくるのがファン心のくすぐり方を心得た作りですが、サブタイトルの「大御所」には新堀さんだけではなく、荒川さん(上原正三フォロワー)がしれっと、上原正三大先生も含めている気がしてなりません。
 葉加瀬と店員が萌黄の同人誌のネタ出しに協力する一方、東映東京撮影所宛の荷物を配達できると大喜びの赤木は、聖地巡礼に青柳を巻き込むが、気分転換中にぼったくりダフ屋を見かけた萌黄が重妄想してしまい、配達に向かおうとしていた赤木と青柳も参戦する事に。
 「舞台で演出家がそこにあると言ったら、無くてもあるのよ」
 ステマ怪人・下北沢ホヤの得意とする舞台空間に引きずり込まれたアキバレンジャーは、舞台演劇の作法にペースを狂わされ、《スーパー戦隊》の文脈で戦ってきたアキバレンジャーが、勝手の違う舞台演劇のルールに主導権を奪われて苦戦するのは、今作ならではになりつつ、見せ方含めて実に面白いアイデア
 ……灰皿が飛んできたり、若干、演劇界のグレーゾーンに触れるネタが入っていそうでドキドキしますが(笑)
 アキバレンジャーは完敗を喫して重妄想が解除され、仕事を再開する赤木。東映東京撮影所にカーレン主題歌でフルアクセル到着すると、青柳を丸め込んだ赤木は撮影所内部を勝手に見学し始め……よく見るカーブ&傾斜のある場所は「大森坂」というそうで、そこで興奮するのは、ちょっとわかります(笑)
 下北沢ホヤへの敗北に屈辱やるかたない青柳は、殺陣の練習をしていた新堀和男を目撃するとアクション指導を頼み込み、赤木そっちのけの修行編。
 萌黄が再び重妄想を展開すると、新堀からの教えを胸に、高みを目指して学び、変わる、とアキバブルーが凝った開脚名乗りを決め、下北沢ホヤとの再戦に挑むアキバレンジャーは、舞台の上でカチンコを鳴らす事で、戦いのルールを強制変更。
 「もー、なんなのよこれ~」
 「ここは東映妄想撮影所だ」
 「馬鹿な! テストの答案であんなこと出来る筈が!」
 「ばーか。公認様の話には、撮影所編てのがあり、リミットのない妄想力が炸裂する事が! よく、ある」
 ……あ、ある?(笑)
 怪人の能力により、不条理な場所移動や、悪夢的な襲撃が繰り返されるエピソードは確かにしばしばありますが、それが特に「撮影所」に絡められるパターンはあまり覚えが無いのですが……撮影所を扱ったエピソードではなく、東映撮影所内部のセットなどを多用する、という意味合いで「○○回(パターン)」よりも更にメタ的な「撮影所編」という言い回しがあるのでしょうか。
 『ハリケン』にあった気がするので0では無いでしょうが、赤木も実例を出しませんし……どちらかというと荒川さんが、上原大先生(及び《宇宙刑事》)オマージュをねじ込もうとしているような(笑)
 下北沢ホヤが教室の窓から飛び出そうとすると場所移動から虚無僧装束のアキバレンジャーが登場。更に、新堀キャラ代表として、主題歌に乗ってレッドホークが応援に駆けつけ、公式の素材の使い方が、ひたすら豪華。
 スクリーン越しに飛んでくる銃弾のお約束を浴びたホヤとの雪辱戦に挑む青の、必殺・カメラワークで当たったように見える攻撃! が炸裂すると、照明を破壊して得意の暗がりでの戦いに持ち込もうとするホヤであったが、新堀和男との修行で心眼を身につけていた青の敵ではなく、敗走。
 空を飛んで逃げるホヤは、レッドホークから託された“大それた力”によって宙を舞うアキバレッドが空中で轢き殺し、ここにアキバレンジャーは勝利を収めるのであった。
 一方、身を隠していたロッカーから出てきたマルシーナが、教室に掲示されていた、子供たちの描いた(という設定の)絵の中に、「はかせひろよ」のものを見つけると背後になにやら不思議な時空の扉が開き……。
 「私、決めました。頑張って、公認目指します」
 現実では、新堀和男との出会いにより、《スーパー戦隊》の中にある武の心を知った青柳が、目指せ公認活動に対して前向きになり……よし、まずは目の前のその男の口を封じよう。
 ところが、そこになんと主に赤木の生んだ妄想である筈のステマ乙幹部マルシーナが姿を現すと、挨拶から瞬間退場……は出来ずにタクシーを止めて亀有へと走り去り、一同愕然。
 私利私欲から勝手に荷物を持ち出していた赤木は同僚にはたかれて妄想継続中は一応否定され、思わぬ大きな謎を残して、つづく。
 次回――現実の秋葉原は妄想の秋葉原に侵食されてしまうのか? この世はいずれパチンと弾けて消えるあぶくのような夢でしかないのか? 真実を求め、戦え! 僕らの、イタッシャーロボ!!