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青春爆発マヨラー

仮面ライダーウィザード』感想・第17話

◆第17話「もう一人の魔法使い」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:きだつよし)
 「……あの男」
 「ゲートか?!」
 「ほう、面白そうな奴だな」
 道にばったり倒れた金髪の男にミサが目を留めたところにワイズマンが現れ、劇中初の現場視察となったワイズマン社長、日の光の下に出てきた事でようやく既視感の正体に気付いたのですが……フリーザ様だ。
 「……あの男の中身を、拝んでみたいものだな」
 ワイズマン社長が直々に昆虫系のファントムにミッションを与える一方、
 「このままじゃ本当に餓死しちまう……だがしかし、ピンチとチャンスは表と裏。こういう時こそ、必ずいい事がある」
 道に倒れていた青年は笑顔で起き上がっており、情動と行動のせわしない男の正体は……「俺、専用」のマヨネーズを持ち歩く、重度のマヨラーだった。
 喫茶店でフランクフルトを食べていたマヨラーがグールに襲われたところを晴人が銃撃で助けに入るが、男は目前に迫る異形のグールよりも地面に転がったフランクフルトの事を気にする変わった性格の持ち主で、
 「悪い。後でおごるよ」
 とちゃんと弁償を請け負うのは、地味に晴人のいいところだと思います(笑)
 グールを蹴散らしたウィザードの連続攻撃を受けた虫ファントムは一時撤収……と見せかけて、背中に隠した尻尾から猛毒を撃ち込むトリックプレイがクリティカルヒット
 「油断は禁物という言葉を知らないのかね」
 昭和に遡れば落とし穴大好きな風見志郎先輩など大物がいますが、《平成》の中では多分、結構なやらかし系ですからね……!
 「さすがは魔法使い。私の猛毒でもすぐには死なないようだねェ」
 「毒……だと」
 「折角だから、君が生き延びられるか占ってあげましょう」
 虫ファントムは人間の占い師の姿となるとタロットをめくって死神のカードを晴人に突きつけ、先日の諏訪太朗さんや、今回の赤星昇一郎などが登場すると、それだけでなんとなくポイントが加算されます。
 「残念ですねェ~~~。君の命は、絶・望・的・です」
 指輪の魔法使いにトドメを刺さなかった件について、前後からブラック上司たちに圧をかけられるファントム占い師だが、社長直々に指名を受けた余裕を見せると改めて標的の元へと向かい……食事にこだわり続ける金髪のマヨラーは、瞬平からドーナッツをおごられて機嫌を直し、マヨネーズを、盛っていた。
 「マヨネーズは、世界で一番偉大な食いもんだ」
 晴人が毒に倒れた連絡が凛子たちにももたらされる一方、飢餓感を訴え続け、ひたすら自分の理解だけで話を進める、陽性だがコミュニケーション能力の破綻したマヨラーの前にはファントム占い師が姿を見せるが、何を言ってもあっけらかんと笑い飛ばし、口を開けば自分解釈で話を進めるマヨラーとまともな会話が成立せず……いずれもう少し話を聞く(というか他人と周波数を合わせる)スキルを会得するかもしれませんが、凄く、描写のさじ加減が難しそうなキャラ(笑)
 「俺にとっちゃ絶望も希望になっちまうんだなこれが。はっはっは!」
 ピンチはチャンスだチェンジマンなので、困っているけど困らない、とひたすらチャンネルの合わないマヨラーにペースをかき乱されるファントム占い師、その接触を使い魔カメラで知った晴人は、猛毒に侵されながらも「ファントムを倒せるのは、俺しか居ないから」と悲壮な決意で戦いを挑むと、占い師は虫ファントムへと変貌。
 それを見たマヨラーは危機感を抱くどころか何故か大喜びし、互いのやり取りが噛み合わないまま、その前に立とうとする晴人。
 「話の途中で」
 「変身!」
 「すんじゃねえよ!」
 は大変面白かったです(笑)
 ところが晴人は魔力不足で変身できず、グール軍団も喚び出されて絶体絶命のその時、ウィザードのものとはデザイン違いの指輪(より玩具っぽい感じ)を取り出した男は、バックル部分が門の形のドライバーをオン。
 「へんーーーしん!」
 天に向かって高々と掲げた指輪を用いて門を開くと、中には獅子の頭が収められており、L・I・O・N!
 「俺の名は仁藤攻介。魔法使い――ビーストだ!」
 黒地のボディに金アーマーとマスクの新たな魔法使いが姿を現し、2年前にライオンヘッドのフォーム(『オーズ』のラトラータ)があったのでどうしても彷彿とさせますが、それも意識してか、たてがみ控えめの代わりに左肩にライオンモチーフの頭飾りが付いているデザイン。
 「さあ……食事の時間だ!」
 獣=引きずりアクションは避けたかったのか、細かな足技を駆使しつつ、グールを地面に叩きつけるに留めたビーストは、ドライバーから細身の剣を取り出すと、次々と切り伏せたグールを魔力に変換してドライバーから吸収し、そもそも冒頭からずっと「食事」についての意思疎通が噛み合っていなかった事が明らかに。
 残る占いファントムを前にしたビーストは、カメレオンの指輪を用いると、体の右半身にカメレオンマントを纏う新機軸で、ひらりん成分ブースト。
 左肩のパーツがごてっとしてはいるものの、全体的には妙につるっとしていたので、今作らしい要素が加わって、ちょっとホッとしました(笑)
 「さあ、大人しく俺に食われろ」
 アクロバットな動きでファントムを翻弄すると、更にマントの力で透明化して一方的に攻撃を浴びせるビーストは、外野の晴人のアドバイスが逆に隙を生んで猛毒を受ける事になるが、ドルフィンマントを装着すると、自分と晴人の状態異常をまとめて回復。
 冒頭、晴人が瞬平に向けて「怪我や病気を治す魔法なんて無い」と告げていたのが伏線となり、実際あると出鱈目レベルでかなり便利すぎるのですが、ファントムを倒したら晴人が毒から適当に快復する作劇を避けると共に、目の前で苦しんでいる者が居たら助けの手は差し伸べる人物だと圧縮して示せたのは、良かったところ。
 虫ファントムの切り札を封じて精神的にも完全な優位に立ったビーストは、トドメを刺すべくファルコンマントを装着し……装備やフォームのモチーフとしては珍しめの印象な「ドルフィン」が出てきた時点で、んん……? とは思いましたが、もうこれは完全に、『超獣戦隊ライブマン』では?
 「さあ、メインディッシュだ」
 ビーストソードの柄がスロットマシンのドラム風に回転すると、必殺ファルコン乱舞により撃破した虫ファントムの魔力を、ビーストはドライバーを通していただきます。
 「ごっつぁん!」
 食事が終わると両手を合わせ、今作に登場するライダーは、ところどころで妙に丁寧なのが、好感度を上げます。
 「おまえ……ファントムの魔力を食ってるのか?」
 「おまえだってそうだろ」
 「は?」
 心底から首をひねる晴人に対して、基本的に人の話を全く聞かないビーストは、晴人が食事を横取りしようとしたと誤解したまま飛び去っていき、何もかも理解不能のまま、河川敷に取り残される、晴人たち。
 「なんなん、ですか……?」
 「……あの魔法使い?」
 「…………てんでわからない」
 ワイズマンいわく“古の魔法使い”の出現が物語を派手に爆撃し、倒した敵のエネルギーを得ないと生命維持が出来ないアイデアは古今に類例が色々ありそうですが、果たして晴人は、これまで説明&自覚が無かっただけなのか、それとも何か特別な存在なのか、陽性の新キャラと全体的にコミカルな味付けながら、かなりきなくさい要素が急浮上。
 今回、虫ファントムから「魔力が上がっている」と言及されたり、以前からのドーナッツに関する偏食など、やや不穏な気配を帯びて参りました。
 映画監督回におけるリザードマンの「化け物の仲間」発言や、今回のビーストの反応からすると、どうやら“魔法使い”一般においては常識のようですが、ウィザードが決して“世界でただ一人の魔法使い”ではなかった事も明らかになり、戦いが新たな局面を迎える事になって、つづく。
 パイロット版の中澤監督に合わせたい都合などあったのかもですが、色々と謎を提出しつつも新レギュラーの登場エピソードを1話にまとめたのは、活躍と決着までをスッキリ見せられて、良い構成でした。
 とりあえず白い宝石頭さんは、早急に、面影堂まで説明書の郵送をお願いします。
 食欲爆発ニューカマー・仁藤攻介(名前の漢字がなかなか凄い)、ひとまずこのコミュニケーション崩壊キャラが香村脚本だとどう調理されるのか気になりますが、ドルフィンマントの効果が規格外なのは(まあ後々、適度に弱体化されるかもですが)、モチーフが『ライブマン』のブルードルフィン=岬めぐみならば、聖女級ヒロインなので、仕方がないと思いました(笑)
 ビーストの指輪(マント)は、「カメレオン」も含めると「ン」縛りの可能性もありそうですが、そうすると、「バイソン」はいけるけど、「サイ(ライノス)」はいけない……あ、でも、「コロン(さん)」はいける。