東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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その風車は誰のために回るのか

仮面ライダーV3』感想・第49-50話

◆第49話「銃声一発! 風見志郎倒る!!」◆ (監督:内田一作 脚本:長石多可男
 結城丈二を狙うデストロン怪人の弾丸が、結城をかばった風見志郎に突き刺さり、弾丸を頭部に受けて意識朦朧とした志郎が、デストロン印の特殊弾の作用によって改造人間としてのパワーを制御できなくなってしまう、ちょっと面白い切り口。
 その頃、とある田舎娘が家出同然に上京し……1973年末頃の新宿副都心の映像が、結構衝撃的。
 時代としては、戦後復興の一環としての新宿副都心計画により、淀橋浄水場の移転に続き、1971年に京王プラザホテルが建設されて後に続く高層ビル群の皮切りとなったそうで、田舎娘の主観で大きく映されているのが、そのホテルでありましょうか。
 ちなみに、新宿×長石多可男といえば、『超光戦士シャンゼリオン』ですね!
 ふんわか行こうよふんわか、と言っている場合ではないヨロイ元帥が、映画館の看板裏に作られたアジトからこの田舎娘を利用しようと思いつくと、志郎に凶弾を撃ち込んだ怪人カメレオン(瞳の中心がずっとグルグル回っているのが凄く怖いのですが、なんかもう、名前が怪人の名前になっていないのは何故)は、超絶怪しい黒服の紳士に変身して田舎娘に近づき、物品で懐柔。
 (改造人間である俺に、改造人間であるこの俺に……力のコントールが出来なくなるよう……)
 社会性を保持していく為の砦を失ったに等しい志郎は、半ば錯乱状態で街を走っていたところを、あっさりデストロンに取り込まれた田舎娘にはめられて逮捕され……もしかして、仮面ライダー史上初の逮捕者でしょうか(笑)
 (果たして、本郷猛と一文字隼人に逮捕歴はあるのか)
 留置場で体育座りする志郎だが、警察は既にデストロンの手に落ちており、カメレオンとヨロイ元帥に挟まれると変身V3。
 「君は変身した。これが君の最期だ」
 だがそれもまたヨロイ元帥の手の平の上であり、特殊弾の効果により全エネルギーを強制放出させられたV3は、ガックリと倒れてデストロンに囚われの身となってしまう……まあ、「君の最期」とか「くたばれ」とか言っていた割には、逆タイフーン自爆みたいな具合に盛大に爆発するわけでもなく、この期に及んで気絶した風見志郎をのんびりと牢屋に閉じ込めていたりするので、弾丸の性能の割にはどうも手ぬるすぎて盛り上がりが弱くなり、話の都合も大きいにせよ〔暴走風見志郎〕と〔悪に染まる田舎娘〕二本立てによる、やりたい要素がバッティング。
 「デストロンは、あたしに大きな夢と希望を与えてくれたわ」
 デストロンに就職し、牢番に立った田舎娘との会話を挟んで、ライダーマンが志郎救出の為にデストロンのアジトへと潜入し、この当時だとスパイ物の文脈なのでしょうが、ロープアームがステルス潜入に利用されたりするのは、ライダーマンの特徴が活きて面白いスパイスになっています。こうした、場に合わせたガジェットの使用というのも、《平成ライダー》に繋がっていく要素の一つであるな、と。
 結城に救出された志郎は、パワー調整を兼ねて部屋でおもむろにギターを奏で始めるが、やはり弦が切れてしまい、フラフラと外に出たところを、藤兵衛と再会。
 “怪物”と“英雄”の紙一重の性質に改めて焦点が当たると、ではそれを分かつものとは「その辛さは、正義を守る辛さなんだ」と置かれ、己を制御しようとして生じる苦しみは、正義を為そうとするが故なのだ、と真ヒロイン・立花藤兵衛の励ましを受けて息を吹き返す志郎だが、戻ってきた結城は、ちょっと怒っていた(笑)
 今回の志郎、終始暗い表情で、終始フラフラとしていて完全に困った人なのですが、まあ、力の制御を捨てた英雄は鬼となって山中に籠もるか人の世に仇を為して討たれるかしかないので、その前段階とはいえるでしょうか。
 「俺は……死ぬわけにはいかないんだ。……俺の体は、自分だけのものじゃない。日本中の、いや、世界中の人々の幸せがかかってるんだ」
 “公の正義”を背負い直した志郎を直す為にはデストロンのアジトの設備を利用するしかなく、図らずも誕生の経緯をなぞる事になる志郎は、結城と共に決死の潜入を決断。
 街で見かけた田舎娘の後を追ってアジトの場所を探ろうとした志郎と結城は狙い澄ましたかのように罠にはまり、囮として切り捨てられる田舎娘の姿をもって、デストロンの悪がまざまざと見せつけられると、3人まとめてぺっしゃんこの危機に。
 志郎が命がけの変身で罠を打ち破ると、デストロンの手術室を借用して特殊弾の摘出に成功し、結城丈二の技術がヒーロー風見志郎を救うのは、一種の禊ぎの機能を果たしているともいえるのかも。
 3人がアジトを脱出すると、画面がぐっと明るくなって、追っ手に対して変身V3! 怪人はカメレオンらしく擬態能力を見せるがあっさり見破ったV3の顔面パンチから錐揉みキックが炸裂。
 「これからが本当の勝負だ。カメレオンの底力を、見せてやる」
 だが、《食いしばり》スキルを発動してHP1で踏ん張ったカメレオンは夕陽をバックにまさかの逃走に成功し、1話限りの怪人ではないなら尚更、「虹色カメレオン」とか、それらしい名前を付けて欲しかったです(笑)
 恐らく、次のエピソードとの連続性云々というより、この2話は着ぐるみ一体で回す前提、であったのでしょうが。
 ナレーション「風見志郎、改造人間。暗躍するデストロンが居る限り、彼には、帰る心のふるさとはない」
 デストロンから無事に足抜けした田舎娘は、風見志郎と握手をかわして帰郷。
 夢を抱いて上京してきた田舎娘が悪い仕事に引きずり込まれるのは、経緯の描写こそ極端でしたが、実際の社会問題が背景にあったのではないかと思われ、冒頭に(ストーリー上の意味は薄く)新宿副都心の光景が挟み込まれるのも、“高度経済成長のひずみ”をトータルで意識させる仕掛けであったのかなと。
 〔力を制御できなくなる風見志郎〕×〔社会のひずみを悪用するデストロン〕の組み合わせは、1エピソードの内容としては欲張りすぎて軸移動が激しくなりましたが、助監督脚本という事で、その時やりたい事を詰め込んで削ぎ落としきれなかった感じでありましょうか。

◆第50話「小さな友情」◆ (監督:内田一作 脚本:平山公夫)
 アジトへ生還したカメレオンは強化手術を受け、長い舌を伸ばして標的の血を吸う能力を持つ吸血カメレオンへと進化すると、公園の子供達を襲ってデストロンの下僕に変えてしまう。
 その光景を目撃した少年は学校の先生に訴えるが相手にされず、両親の居ない孤独な少年の吹くハーモニカの調べに口笛を乗せる風見志郎……今日のその超絶地味な服装はいったい。
 少年から借りたハーモニカを吹く志郎は亡き妹の事を思い出して涙をこぼし、オーダーがあったのか自発的なものだったのかはわかりませんが、前回今回の助監督脚本は、どちらも物語の基本要素を拾い直す意識が見える感じ。
 デストロンは、新改造人間製造計画の為に大量の子供の血を集めようとしており、吸血カメレオンに血を吸われた子供たちは、デストロンの為に血を集める吸血鬼と化すのであった!
 「今度こそ、私の命に懸けて、ラーイダーV3を地獄へ送り込んでやります」
 目撃者として狙われる少年はデストロンにさらわれ、少年を担ぎ上げる戦闘員の皆さんが、妙に楽しげ。
 少年を人質にされ窮地に陥る風見志郎は、結城の助けで形勢逆転し、変身V3! 前回より強化された空間擬態能力に苦しむV3は吸血カメレオンに逃げられ、結城&少年と合流すると、結城は少年の頭を撫でて去って行き、同志として共にデストロンと戦うが、あくまで一定の距離は取るスタイルを堅持。
 「……結城」
 「あの人、風見さんの友達?」
 「……ん、あ。……ああ。そうだよ」
 コートの襟を立て、ちょっとハードボイルドに浸りながら独り去って行く結城の背中と、その距離を詰められない志郎の姿が描かれた後は、今作ままあるパターンで、「子供の血を集める」のと「目撃者の少年を消す」との「ついでにそれを利用してV3を倒す」を全部まとめてやろうとするデストロンが自ら作戦の破綻を引き起こし、吸血カメレオンに炸裂する、少年の《投石》!
 風見志郎は大変久々の海落ちによる擬似的な死のイニシエーションを果たすとV3に変身し、序盤はちょっとあやふやな印象でしたが、今回は特に、顔見知りの前では変身しないスタイルを徹底。
 チョップを浴びせた吸血カメレオンの大事な舌を引きちぎったV3は、続けて力任せに舌を引っこ抜く鬼畜責めから、弱ったただのカメレオンにV3フル回転キックを叩き込み、今度こそカメレオンは泡を吐いて溶け去るのであった。
 少年の孤立も解消されて大団円となり、少年ゲストの孤独に寄り添うささやかな友情、というオーソドックな内容の一本。
 何かそういう縛りがあったのかもしれませんが、子供吸血鬼軍団は、反撃できない点こそ厄介なものの、大人相手では非力すぎてほとんど足止めにもならない(先生さえ隙間から逃げ出す)のは緊迫感が薄く、これが前半ならばともかく、物語最終盤としては物足りないギミックとなってしまいました。
 48-49-50話と、作品最終盤の勢いを削いでしまった感がどうにもありますが、次回――ライダー4号は君だ!!