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公認様フルブラスト

 昨日まで公式youtubeで配信していて、慌てて見た『デカ』劇場版。

特捜戦隊デカレンジャー THE MOVIE』感想

◆『特捜戦隊デカレンジャー THE MOVIE フルブラスト・アクション』◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久
 「金色の雪……見事な威力だ」
 海岸線を真っ白な服の少女たちが楽しげに歩くちょっと幻想的な導入が、黄金の粒子を浴びて機械の体と化す少女たちと市街地を蹂躙していく巨大メカの暴威により引き裂かれ――


 S.P.D――スペシャルポリス・デカレンジャー
 燃えるハートでクールに戦う5人の刑事達。


 ナレーション「デカレンジャーは今、地球に侵入した、特別指定凶悪犯の宇宙艇を追っていた」
 で始まる、2004年9月11日公開の、『特捜戦隊デカレンジャー』劇場版。
 タイミングとしては、デカブレイクが地球署にトば……赴任して既存レギュラーとの絡みが一通り終わってから過去のトラウマを乗り越えて一区切りがついた直後にして、スワットモード登場の前夜。
 そんなわけで、まだ真エリートの気配を残留させていたデカブレイクが……デカブレイクが、活躍した……!
 「その金バッジ……てめぇ!」
 「無法な悪を迎え撃ち、恐怖の闇をぶち破る! 夜明けの刑事! デカブレイク!!」
 アクセルブローで大暴れしたブレイクは、機械生命体の悪党三人組が地球に運び込もうとしていたアタッシュケースを回収し、残った3人組を囲むデカレンジャーだが、何者かの介入により逃走を許してしまう。地球署で確認されたアタッシュケースの中に入っていたのは、レスリー星で研究されていた細菌が突然変異を起こして誕生した病原菌。テツが原因不明の通信途絶状態にあるレスリー星に派遣される一方、バンたちは逃げた三人組の行方を手分けして追い、聞き込みシーンがEDテーマをバックに描かれて、バンとジャスミンがエイリアン酒場に辿り着くと、中ではいさお星人がライブ中、というのは味のある接続。
 バンは、いさお星人の後にステージに立ったニューフェイスの歌姫の姿に、ぽーーーっと呆けて立ち尽くし…………そういえば、そういう奴でした(笑)
 バンに接触してきた“ちょっとだけ時間を止める能力”を持つ歌姫の正体は、音信不通状態のレスリー星からやってきた、潜入捜査中のスペシャルポリス・マリーであり、この辺りちょっとノワール風味のドラマ性を入れたかったようですが、全体が駆け足すぎる為にもう一つ効果的に機能せず。
 機械生命体3人組と、それを束ねるリーダーヤクザ(演:遠藤憲一)――犯罪集団ガスドリンカーズの目的は、対象を機械奴隷化する黄金のウィルスと、そのワクチンをセットにして地球でアブレラに売りさばく事であり、レスリー星は既に壊滅状態にある事を……誰かテツに連絡してあげて?
 ……いや、見えないところで連絡されているのかもしれませんが、この後のテツの動きを見ていると、放置されていたのではないか疑惑も少々。
 「……まぶしいよね、彼。……私には、まぶしすぎて」
 訳あり風のマリーはウメコとのバスタイムで励まされるが、思い詰めた様子でスワンの研究室からウィルスを強奪。センちゃんのシンキングタイム、ジャスミンのリーディング能力が次々と駆使されて、本編同様のスピード捜査でマリーの後を追うデカレンジャーは、マリーが奪取したウィルスと、ドリンカーズの持つワクチンを交換しようとしている取引の現場へと踏み込む。
 「はははははは。こいつは俺と取引するしかなかったのさ。スペシャルポリスとして俺達に負けた時からな」
 圧倒的暴力、それが大体、『デカレン』宇宙のルール。
 「だからって……だからってそんなんでいいのかよ! 君の正義はどこ行っちまったんだよ?!」
 レスリー星を守れなかったマリーは、レスリー星の人々を治療するワクチンを手に入れる為にドリンカーズの手駒とされており、余計な邪魔が入って方針変更したドリンクヤクザにウィルスを撃ち込まれたマリーは、1時間後に発症すると地球全土に金色のウィルスを撒き散らす細菌兵器にされてしまう。
 「なんならおまえら、このワクチン、100億ボーンで売ってやろうか?」
 今作の悪役は基本、遠藤憲一さんの芝居頼りなのですが、この台詞は非常に感じ悪くて良かったです。
 ドリンカーズが高笑いしながら去って行く中、デカレン一同はマリーに駆け寄り、スペシャルポリス不覚悟を悔い、銃を手に介錯を求めるマリーに対し、バンは必ずワクチンを手に入れると宣言。
 「だから……死んだりしたら許さないぜ」
 「……なに?」
 「止めたんだ。君の……哀しみの時間だけをね」
 マリーの“ちょっとだけ時間を止める能力”のポーズを真似てみせるバン………………熱い、非公認の資質を感じます。
 マリーをマーフィーに預けた5人はドリンカーズの後を追い、さあ、SPDらしく、暴力の時間だ!(『デカレン』は、悪の経済支配vs法に基づく暴力、の物語なので……たぶん)
 貴様ら犯罪者にふさわしいのは、100億は100億でも、100億発の鉛玉じゃぁぁ!!
 「「「「「エマージェンシー! デカレンジャー!!」」」」
 背後に派手な爆発を背負った揃い踏みからジャッジメントタイムで、判決は、デリート許可。
 ここまで特に見せ場の無かった青い人は、バイクアクションからのジャンプ撃ち、更に曲芸狙撃でスナイパースキルを披露してドリンカーピラニアを撃破。
 ツインカムエンジェルスはコンビネーションアタックからツインカムラブリーキックを放って、ドリンカーサソリを撃破。
 緑はドリンカートカゲを力業で葬り去り、物凄い勢いで犯罪者どもの墓標が刻まれていくのが、この宇宙のジャスティス。
 ここで個別戦闘で撃破する都合もあったのでしょうが、ヘルズ三兄妹の焼き直しめいたドリンカートリオが、緒戦でブレイクに圧倒されたところに始まってただのチンピラでしかなく、驚異感皆無の敵だったのは、バトルの盛り上がりの面からも残念だったところ。
 赤とドリンカードクロは銃剣道に二つの流派あり、と二丁拳銃を撃ち合うが、目から怪光線を受けた赤が窮地に追い込まれたその時、ヘリに乗って一番ヤバい人がズバッと参上。
 「ボス!」
 「間一髪だったな、バン!」
 ……本編でもちょっと問題は出ていましたが、赤の扱いは、それでいいのか(笑)
 「百鬼夜行をぶった切る! 地獄の番犬! デカマスター!」
 乱入したデカマスターは、ドクロの放ったイガグリ先生の担当となると3体のイガグリを瞬殺し、格好いいは正義!
 「俺はマリーを救うまでは、負けるわけにはいかないんだー!」
 デカマスターの踏み台にされかけるもドクロを追撃し、煩悩が妄想に火を付けたデカレッドは主題歌ブーストで勝利のフラグを立てると、二丁Dマグナムの連射を叩き込んで大勝利を収め……私はこの映画を、非公認の間に見て、いいタイミングだったのか、悪いタイミングだったのか(笑)
 ドリンカーズをデリートし、回収したワクチンをマスターに託したデカレンジャーだが、しぶとく生きていたドクロは転移装置を使ってレスリー星へと一時撤収すると、レスリー星に残していた怪獣ロボを起動。
 デカレンジャーは残された転移装置を利用してレスリー星へと追い込みをかけると、惑星をまたいでの巨大戦がスタートするのは劇場版らしいスケール感となり、歴代でも結構好きなデカレンジャーロボ、久々に見ましたがやはり格好いい。これは多分、足太ロボットの魅力。
 「知ってるか? 俺にも時間が止められる」
 「なに?!」
 「おまえたちの生きる時間をな」
 だが、怪獣タンクとの撃ち合いに負けて吹き飛ばされたデカロボ絶対絶命のその時、多分みんな存在を忘れていたデカブレイクが見た事のないマシンで助けに入り、その名をブラストバギー。
 劇場版スペシャルな特捜武装で銃部分とシールド部分に分離したバギーがデカロボの右腕と左腕に取り付けられ、
 「「「「「「デカレンジャーロボ・フルブラストカスタム!!」」」」」」
 とタイトル回収。
 対して、惑星制圧に使用した自動操縦の量産型怪獣タンクを大量に繰り出してくるドリンカードクロだが……
 「ナンセンス」「ノープロブレム」「ま、やりますか」
 血に飢えた宇宙警察の反応は大変軽く、三つ醜い宇宙の悪は、宇宙統一規格で消毒だーーー!!
 と100億発の銃弾が降り注ぎ……まあここだけでも、デカレン』らしい満足感は得られました(笑)
 最後は、シールドを用いた固定砲台モードで放たれたフルブラストがタンクロボの列とドリンカードクロをまとめて貫き、これにて一件、コンプリート。
 ――しばらく後、地球。
 バンとは固い握手をかわしたマリーは、復興任務でレスリー星へ戻る直前、ちょっとだけ時間を止めるとバンの胸にスペースマリーゴールドの花を差して頬に軽く口づけをして笑顔を向け、割とでたらめな時間停止能力が、ほぼほぼ劇場版らしいゲストヒロインとの軽いロマンスでのみ活用されるのは、徹底されたところでありました(笑)
 醜いジェラシーファイヤーを燃やす相棒@断固拒否とバンが取っ組み合いを演じてオチが付き、本編のおまけコーナーを意識した形式か、ボスとスワンさんが劇場で映画を見ていました、とちょっとメタな形で、一部の熱烈な需要に応えるいちゃいちゃが放り込まれて、メンバー歌唱のEDで、幕。
 ED含めて約39分、尺としては本編2話分に少し足りないぐらいで、ストーリー展開にもっと凝ろうと思えば凝れたとは思うのですが、TV本編と同時進行で撮影するスケジュール上の都合もあってか、クライマックスの「エマージェンシー!」から怪獣戦車の撃破までに割かれた尺が約14分。
 実質、本編1話強に14分のバトルがついてきたという作りとなっており、劇場版らしい大仕掛けである事件の発端の後は、歌姫にぽーーっとしたバンとゲストヒロインとの 妄想 ロマンスを基軸にしたストーリー展開が、ひねりも起伏もほとんど無しに終始駆け足だったのは、物足りなさは感じた部分。
 特に悪役については、リーダーのドクロを役者の芝居で印象づける以外は最初から味付け放棄といった作りでしたが、『デカレン』の場合、本編に統一された悪の組織が無い=劇場版で何をやっても本編組織の格を下げる心配が無い特性があったので、もう少し“乗り越える脅威としての悪”を強烈に描いてほしかったところはあり、そこは残念でした。
 基本的に、20年後に単独で見るのと、劇場で二本立てで見るのとではだいぶ感触が違う作品でしょうし(二本立てにおける制作上の位置づけもあるでしょうし)、視聴において一定の割り切りは必要なのでしょうが、そういう点では、駆け足のストーリーの中に、「相棒って言うな!」・バスタイム・シンキングタイム・超能力、とメンバーそれぞれの代表的個性を入れる事で『デカレン』らしさが成立するのは、改めて今作の強みと感じる一本でした。
 そして最後はハッピートリガーが、大宇宙のジャスティス。
 映画としてはその、“キャラの強さ”である程度押し通せる故にこそ雑になってしまった部分は良し悪しでしたが……締めに『デカレン』界のリーサルウェポン、スワンさんの「ドゥギー」が放り込まれ、ボスとスワンさんが久しぶりにゆっくり二人映画を見られたので、これにて一件コンプリート!!