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復讐の名は

超力戦隊オーレンジャー』感想・第15話

◆第15話「友よ 熱く眠れ!!」◆ (監督:佛田洋 脚本:井上敏樹
 「もっともっとペースを上げろぉ! 出来損ないはぶっ潰せ! マシンエリートだけが、我が帝国で生きる事が出来るのだぁ!!」
 皇帝バッカスフンドが戦闘員増産の陣頭指揮に立つ陰で、価値を失った兵隊の残骸が次々と積み上げられていく帝国のスクラップ置き場で今、廃棄されたマシンのパーツが独りでに結合していき、新たな命が生まれようとしていた。
 「俺はバリカンだ。最高のバリカンだ。人間どもに教えてやる。俺に刈れない頭などない事を!」
 その名を、バラバリ…………すみません、やり直します。大変反省しています。
 (※同期の『重甲ビーファイター』に、再生能力を持った自爆怪人に、燃えないゴミの中にあったバリカンの怨念が取り憑いて大暴れする第27話「甦るトラ刈り魂」(監督:坂本太郎 脚本:扇澤延男)という怪作があるのですが、終盤には「マシンは死なない」をテーマにしたエピソードもあり、扇澤さんはもしかすると『オーレン』を気に入っていたのかもなどと思ってみたり)
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 「もっともっとペースを上げろぉ! 出来損ないはぶっ潰せ! マシンエリートだけが、我が帝国で生きる事が出来るのだぁ!!」
 皇帝バッカスフンドが戦闘員増産の陣頭指揮に立つ陰で、価値を失った兵隊の残骸が次々と積み上げられていく帝国のスクラップ置き場で今、廃棄されたマシンのパーツが独りでに結合していき、新たな命が生まれようとしていた。
 「なせ捨てた? なぜ殺した?!」
 無価値の烙印を押されて処分されたマシンの怨念が集って生み出された復讐者――その名を、バラリベンジャー。
 「俺は貴様が捨てた数多くのスクラップから生まれた! マシン達の怨念が俺を作った!」
 声もデザインも大変格好いいバラリベンジャーは皇帝に復讐の槍を向けるが、陛下、体型の割に強かった。
 寸胴体型を活かしたバラノイアマーシャルアーツの回転攻撃に手も足も出ないリベンジャーは月面から叩き落とされ、怨嗟の声をあげながら、地球へと落下する……。
 その頃、一人寂しく後楽園ゆうえんちでオフを過ごしていた裕司は、捨て犬と心の傷を舐め合っていたところ、緊急要請を受けて出撃。
 なんとか地球に着陸し、打倒バッカスフンドの為のエネルギーを手に入れようとするリベンジャーは、超力戦隊の包囲を受けて逃走すると、車に轢かれそうになった捨て犬を助けるいい人ムーヴ。
 犬を探していた裕司に向け、あくまで敵はバッカスフンドのみ、と宣言したリベンジャーが、十字砲火を受けながらも一切反撃しない姿を見た裕司は、傷ついたリベンジャーを助けると、ストレージクリスタルで超力を注入。
 「……助けたのか、俺を……」
 これが隊長だったら「相当の大物と見た。第一級のスパイだ」と、ほあちゃぁぁぁ! してしまうところでしたが、メンバーの中では最も“子供に近い目線”と置かれている(高身長なので、どうもビジュアルとは合わないのですが……)裕司は純粋にリベンジャーを信じ、共通の敵を見据える。
 「俺の敵はバッカスフンド一人。他の者は傷つけぬ。それが、俺の誇りだ」
 「――戦おうぜ、一緒に」
 裕司とリベンジャーはがっちり握手をかわし、某ライダーマンさんに比べると、だいぶ素直で良かった!
 「友情ごっこはそこまでです! スクラップ野郎、バッカスフンド様の命により、おまえに名前を与えましょう! お前は、バラリベンジャー!」
 だがそこにアチャ率いるバラノイア軍が姿を現し、名も無き廃棄物に、尖兵としての利用価値を認めた時に初めて「名前」を与えるのが、大変えげつない。
 図らずもバラノイア帝国にとっての「価値」を認められたリベンジャーだが当然それを拒否し、リベンジャー抹殺の陣頭指揮を買って出たアチャが、喋りも振る舞いも今回は大変邪悪。
 バラノイア帝国をオール着ぐるみとし、大平透さん・肝付兼太さんといったベテランを起用した時点で、特にこのお二人の喋りの技は活用していく方針だったのかとは思うのですが、名優の味が濃厚に染み渡ります。
 背中を預けて共に戦うも、多勢に無勢で窮地に陥る青とリベンジャーだが……あ、隊長が飛んできた(笑)
 強烈な飛び蹴りが包囲網を切り裂き、なんかもう隊長は、部下のメイン回の存在が許せない人みたいになりつつあります(笑)
 残り3人も合流して形勢逆転かと思われたその時、凄まじい爆発と雷鳴を巻き起こしながら皇帝バッカスフンドが降臨し、目から黄色が消えていて、超怖い。
 もともと、面白怖いバッカスフンドのデザインですが、黒い瞳で遊園地の狂ったアトラクション感が激増すると、本日は絶好調の皇帝陛下がその力を見せつけ、アチャはリベンジャーに洗脳回路を取り付ける。
 回路に抵抗し、バッカスフンドに一太刀浴びせるリベンジャーだったが、コントローラーの出力を上げられて、完全に暴走。オーレンジャーへと猛然と襲いかかると、割り切り早く銃を向ける隊長(笑)
 隊長を制止し、なんとか友を正気に戻そうとする青だが、望まぬ傀儡とされたバラリベンジャーの槍に貫かれると、説得を断念。
 (おまえの誇り……俺が、この俺が守ってやる!)
 反撃のパンチに合わせて「虹色クリスタルスカイ」が流れ出すと、毎度ながら問答無用の格好良さですが、青の葛藤から決断は、昭和ヒーロー的割り切りからのアップデートにして(前段の赤は意図的に対比に置かれた部分もあるのかなと)、「情念」を大事にする井上脚本らしいスイッチとなって、鮮やかにまとまりました。
 覚悟の青が連続で必殺技を叩き込むと、バラリベンジャーが弱ったところで、ジャイアントローラー投下。
 「隊長! 自分にやらせて下さい!」
 「駄目だ。危険すぎる」
 やはり、危険なのか。
 「しかし! 隊長! ……あいつだけは! 俺に!」
 青の思いを汲み取った隊長はローラー搭乗を承認し、青が乗り込んで、アタック!
 映像的には、ただタイヤの中に入ってスイッチを押すだけに見えたジャイアントローラーですが、完璧に扱うには超力とか運動神経とか特訓とか色々と必要だったらしく、リベンジャーを轢殺後にはじき出されるように宙を舞った青は、着地失敗して地面に叩きつけられると、変身解除級のダメージと共に全身の苦痛に身をよじり……どうなっているのジャイアントローラー。
 どうなっているの隊長。
 「何を悲しむ……おまえ達は正しい事をしたんだ。俺の誇りを、守ってくれた。…………俺の魂は、おまえ達と共にある。いつか、おまえ達がバッカスフンドを倒すまで」
 「――ああ、必ず」
 「俺は……スクラップから、生まれた。そして今、スクラップに還る……」
 瀕死のリベンジャーは自らの足で地球のスクラップ置き場まで辿り着くと、凄絶に爆発……するのではなく、足下に寄ってきた犬を撫でていた手が不意に止まると、指先から体を構成していたパーツが外れていき、最後はボディが左右に割れるようにして人型が崩壊するのは、大変インパクトのあるラストシーンとなりました。
 前作で本編監督デビューした佛田監督、冒頭のリベンジャー誕生シーンからバッカスフンド降臨、そして散華するリベンジャーまで、大変気合いの入った映像で、シナリオもはまった好篇。
 なお、当時助監督だった竹本昇氏のXポストによると、台本ではいつも通りに隊長が轢き殺したのを監督判断でブルーに乗せ替えてシーンを追加したとの事(同時に巨大戦はオミット)。
 非常にラストが引き締まって素晴らしい判断だったと思いますが、井上敏樹ぐらい経験値があると逆に、乗せ替えするとローラーの横に立つレッドを新規で撮らないといけなくなる可能性が思い浮かんで、簡単に「ブルー乗せて」とは書けないみたいな事もあるのかもしれないなどとは思ってみたり。
 まあそれは想像でしかないのですが、現場の判断含めて、脚本と演出のキャッチボールが上手く行っているかどうかは大きいな、と改めて思ったところです。