東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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君の青春はどこに埋めればいいのか

仮面ライダーV3』感想・第45-46話

◆第45話「デストロンのXマスプレゼント」◆ (監督:折田至 脚本:鈴木生朗)
 だがなシゲルよ……クレジットから削られるのはおまえだ!
 2話連続で出番の無かった姉に代わって、奮闘していたシゲルくんに非常の通告!
 華やかなクリスマスに彩られる街を、石焼き芋の屋台を手伝って歩く少年に、サンタから渡される怪しいチラシ。楽しげなクリスマスの音楽に乗せて、チラシに指定された幸運の家へと向かっていく少年だが…………そこはなんか、新人類帝国のアジトとかありそうだった。
 建物の中には既に十数人の少年が集まっており、そこに現れると、選ばれた子供たちに素晴らしい幸運を差し上げましょう、とサンタが最初に袋から取り出したのは……バナナ。
 「これを食べて今日から皆さんはデストロンの仲間になるのです」
 ……せめて、食べてから、勧誘して。
 内心、この作戦面倒くさいな……と思っていたのか、拙速な勧誘で少年たちの不興を買ったサンタはブラックサンタに早変わり。戦闘員もなだれ込んでくると、優秀な子供たちを集めてデストロンの幹部を養成するプロジェクトが発表されるが、少年ライダー隊はいつも皆を見ている。
 その場に居たライダー隊のメンバーが本部に緊急連絡を送ると、毎度の事ながらおっとり刀で純子さんが藤兵衛と入れ替わり、「緊急」なのだからまずは話を聞けば良いと思うのですが、組織の上下関係は絶対であり、少年ライダー隊は死ぬ。死ぬために我々は存在する。だが仮面ライダーは永遠である。つまり―――貴様らも永遠である!
 現状への理解が足りない少年たちへの見せしめとして同志メンバーが折檻を受けて永遠になろうとしたその時――普通に警官が入ってきた(笑)
 少年たちを救おうと、警棒で戦闘員を叩きのめす優秀な警官だったが、ブラックサンタを追いかけようとすると、クビにドリルが突き刺さって煙のように溶けてしまうショックシーンの犠牲となり……この辺りを、脳内で佐久間ケン最後の勇姿に変換しておくと、丁度良いかもしれません。
  先行した佐久間が連絡を絶ち 緊急連絡の発信源付近へと向かった志郎は幸運の家へと入り込むが、既にそこは無人で、床には誰も着る者のない 佐久間のシャツとインターポールバッジが! 警官の制服と手錠が!
 「お待ちしてましたよ、風見志郎さん」
 背後からブラックサンタが登場して戦闘員と立ち回りとなり、頭に巨大な角を突けた怪人サイタンクの攻撃で建物の外へと弾き飛ばされた志郎は、変身V3!
 最近お気に入りのV3パンチがサイタンクの大胸筋に軽々と跳ね返されると、V3フルキックさえ通用せず、V3はサイタンクの装甲とパワーに大苦戦。
 (これは……大変な相手だ)
 序盤、苦戦に次ぐ苦戦が常態化しすぎて、ドクトル・ゲー登場の辺りではピンチ感が演出しづらい問題が発生していた『V3』ですが、2~3クール目は比較的安定した戦いぶりを見せていた事もあり、前回のカメに今回のサイと、終盤の強敵として説得力が出るようになっているのは、戦いの起伏として非常に良いところ。
 サイタンクのパワーに圧倒され、手も足も出ないままのV3はジャイアントスイングにより凄まじい勢いで吹き飛んでいき、それを満足げに見つめるヨロイ元帥。
 一方、黒コートに身を包み、人目を忍ぶように歩く結城丈二は、面識のあった焼き芋屋の少年が行方知れずと聞くと問題のチラシを受け取り、そこにデストロンのマークを発見。
 デストロンでは、たとえ使い捨ての配布用チラシだとしても、本部の許可印が無い書類は作戦には使用できません!
 (さすがは僕の愛するデストロン。いつもながら事務処理に隙が無い……)と思ったのか思わないのか、古巣(心は現役)の関与を知って少年を捜し回る結城だが、その前にブラックサンタが現れると、子供たちの解放を交換条件として、V3抹殺作戦への協力を持ちかけられる。
 ヨロイ元帥マジ性格悪いぜ! と怒りに拳を震わせるも即答を避けた結城は、ブラックサンタがマンホールの下へ姿を消すのを見て後を追い、デストロンの幹部養成キャンプへの侵入に成功。
 そこではさらわれた少年たちが、やたらぴっちりしたコスチュームでど派手にナパームの洗礼を浴びており、幹部に必要なのは、体力……!
 なお、訓練服がやたらぴっちりしているのは、将来幹部になった暁にデストロンファッション部が用意する、奇抜な、もとい、オリジナリティ溢れるお洒落な衣装を着こなす精神力を今から鍛えておく為です。
 「たとえ貴様がライダーマンになっても、俺とは勝負にもならん」
 少年達を逃がそうとするもサイタンクに軽くあしらわれた結城は、立花スポーツ店を訪れると「黙って一緒に来てくれ」と風見志郎を促し、果たして結城はどちらの道を選んだのか……二人はバイクでススキ野原を駆けるが、 佐久間を失い静かな怒りを燃やす 志郎は途中でバイクを停めると、結城の思惑を詰問する。
 「言ってみたまえ。あの立花スポーツに行けば、俺に会えると、誰が言った? 君がそれを知る筈がない!」
 …………大変格好つけているところ恐縮ですが、それ、デストロンでは常識では……?
 前回も結城、立花スポーツ近くで志郎を出待ちして尾行していましたし……。
 「風見! 勝負しろ!」
 「結城……君はやっぱりデストロンの……」
 「勝負だ!」
 「君はただのデストロンとは違うと思っていた。……それは俺の間違いだというのか?!」
 「言うな! 俺だってこんな事はしたくない。しかし、あの子たちを救う道はこれしかないのだ!」
 子供たちを救う為、V3抹殺を覚悟する結城だが、 佐久間に続いて、共にデストロンと戦える可能性を持った同志を失いたくない 志郎は、あくまでその説得を試みる。
 「結城……目を覚ませ! デストロンは本当に、悪い組織だ。……君のような男の居るところではない!」
 「言うな。デストロンの悪口を言うな……デストロンの悪口を、言うなぁ!」
 「馬鹿! 目を覚ますんだ! 君はデストロンを錯覚してる!」
 「……違う。……違う……違う!!」
 デストロンの存在を肯定しながら、志郎にしつこく組み付こうとする結城、ここまで来ると、デストロンに親の命でも救われたのだろうか、といった感じですが、大学在学中に勧誘を受けて、デストロンに捧げた青春ぐらいは送っていそう。
 ……劇中では全く描写の無い部分ではあり、作戦に必要な人材は強引に拉致監禁スタイルが目立つデストロンですが、組織の背景としてそういった、優秀な学生の引き込みというのは意識されているとは思われ(今も昔も社会問題かとは思われ)、特にここでの結城の態度には、学生運動の熱狂と収束、の投影も見て取れますが、寓意としてはかえってクローズになってしまうので今作ではそれを表に出さないような話運びに終始しており、同期の『イナズマンF』における先鋭化とは対照的。
 僕がデストロンの為に幾つのデートを断ったと思ってるんだ風見ぃ!
 それは君の生真面目さが生んだ錯覚だ結城ぃ!
 志郎の鉄拳制裁から泥臭い掴み合いとなるが、非情なスペック差によって投げ飛ばされた結城は、ライダーマンへとメットオン。
 ススキ野原でポーズを取るのが格好よく、本格的なライダーバトルに……なるのかと思いきや、貴様など変身する必要もない、とばかり、生身のままライダーマンを待ち受ける風見志郎。
 このまま変身せずに素手でボコボコにされたら見ていて涙が止まらなくなりそうでしたが、さすがに腕力勝負で勝ったライダーマンはスイングアームで鉄球を振り回し、《説得》コマンドを繰り返す志郎を追い詰めていく。
 頑なに足抜けを拒むライダーマンに追い回されている内に、沸々と怒りゲージがたぎってきた志郎は、 佐久間の無念を晴らさねばならぬと 堪忍袋の緒がプチンと切れると、必殺足場崩しキックで間合いを取って、変身V3!
 EDインストに乗せて今度こそ真っ正面からライダーバトルとなり(恐らくはこれをスムーズに成立させる為の「ライダーマン」でもあり)、今見ると、約30年後への萌芽が既に見えて驚きです。
 アタッチメントを交換してV3に立ち向かうライダーマンは辛うじてロープデスマッチに持ち込むが、無情なスペック差によりブルドーザーに叩きつけられたところで、山肌を揺るがせてサイタンクがV3を強襲すると、V3マッハキックを平然と受け止めて投げ返した!(かなり衝撃のシーン)
 だったらこれだ! とハリケーンで真っ正面から轢き殺そうとするV3だが、それさえも受け止められ、強い! 強いぞサイタンク!
 それを見ていたライダーマンがロープアームをひっかけてV3の自由を奪うと、ライダーマンの乗り込んだブルドーザーをサイタンクが後ろから手で押す謎のコンビ技が発動し(映像が変な面白さ)、とうどうブルドーザーと崖の間に挟まれてしまうV3……
 ナレーション「恐るべきサイタンクの怪力によって、ブルドーザーに押し潰されたV3。デストロンに捕まえられた少年たちの、運命は?!」
 もがくV3はくったりしてしまい、つづく。
 ED曲はようやく正しいクレジットになり、映像は確かによく見ると、キバ一族とかと戦っていました。
 元々、サブライター陣では最も信頼できる鈴木脚本ですが、風見志郎と結城丈二の問答には苦しいところもあったものの(これはもう仕方ない)前回の勢いを殺さず、なかなか面白かったです。
 次回――果たして二人のライダーは、その手を結ぶ事が出来るのか?!

◆第46話「ライダーマンよどこへゆく?」◆ (監督:折田至 脚本:鈴木生朗)
 V3抹殺作戦への協力を終え、サイタンクの案内で電撃戦隊ばりに激しすぎる幹部育成キャンプを訪れた結城は、役に立たない奴隷が処刑される光景に衝撃を受け、独裁理想国家の綺麗な面だけ見ていた男、みたいな具合に。
 古巣が古巣だけに強引さはどうしても付きまといますが(開発の成果や外の事には興味の薄い研究バカだったのか……?)、結城丈二の元々の立ち位置をジリジリとずらしながら、一定の時間をかけて意識の変化を描いていってくれているのは、ライダーマン編の良いところ。
 だが結城はサイタンクの裏切りを受けてアジト内部に閉じ込められ、当然そこに姿を見せるヨロイ元帥。
 「ふふふふふふふふふふ……」
 「ヨロイ元帥!」
 「結城丈二。ラーイダーV3を倒すのに、協力をしてくれたそうだな」
 「うるさい! 貴様の顔なんか見たくない」
 それはまあ、作戦の指揮官は出てくるだろう、という感じですが、どうも結城の言う「ヨロイ元帥は悪い奴だが……」は、組織の汚れ仕事を担う暗部担当だから、性格がねじ曲がっているのも、あんな衣装なのも、仕方ない……どこまで酷い事をやっているのかはよく知らないが、組織の理想の為にああいう人材も必要なのだろう……みたいなニュアンスだったらしく、普段からそういう視点で接していたのだとしたら、それはヨロイ元帥の方でもストレスが蓄積されていそうです。
 「デストロンは、科学の力で、人間のユートピアを作るんじゃなかったのか」
 反逆者との約束とか守る必要ないでしょ、と突き放された結城は青春を捧げてきたデストロンの理想を訴えるが鼻で嗤われ、迫り来るトゲ付きの壁!
 「待て! 首領と話をさせろ! 俺は反逆者ではない!」
 この期に及んで話せばわかってもらえると結城に思われている首領、失敗したら即処刑! と権力を振り回す事も少なく、理性的な振る舞いも度々見せてはいましたが、一体全体どれだけ、“話のわかる大人”ムーヴで人心を掌握してきたのか(笑)
 ……まあ、結城みたいな人材を相手にする時は、知性の輝きに満ちあふれた理想主義者の老人、みたいな影武者を仕立てていたりするのかもですが。
 面談の要求は当然撥ね付けられ、絶体絶命、進退窮まった結城は、自分の命はどうなってもいいから子供たちだけは家族の元へ返してやってほしいと懇願。
 無自覚に大量殺人に関与していた疑いは消えないものの、救いようのない極悪人ではないと描かれてきた結城が再び切羽詰まった時――ある意味では、もう一度死んだ時――、「殺す! 絶対に殺してやるぞヨロイ元帥……!」と憎悪をたぎらせるのではなく、(恐らく本人にも無意識に)より優先して救いたい存在の名を出す事をもって、個人の復讐を離れ、もっと大きな事に目覚める結城丈二の第二の転向が描かれるのは、前編の描写も活きて、なかなか説得力のある流れとなりました。
 「幾らでも泣き言を並べるがいい。念仏代わりに、聞いてやる」
 「ヨロイ元帥……貴様という奴は……!」
 その結城と対比する事でヨロイ元帥の存在感も引き立ち、いよいよ全身穴だらけの寸前、逆ダブルタイフーンの術でブルドーザを押しのけて脱出に成功したV3がアジトへと突入してきた事で、処刑は中断。
 「なぜ俺を助ける……」
 「君は仲間だからだ」
 「……仲間?」
 V3は子供達と結城を救い出し、デストロンの幹部育成キャンプはひとまず壊滅。だが今度は焼き芋少年の祖父と姉が囚われ、少年の身柄も狙われたところで藤兵衛と純子を助けに入ったのはライダーマン
 「こいつは俺がやる! こいつは俺にやらせてくれ!」
 「待て! 君一人で勝てる相手か!」
 強敵サイタンクを前に、すぐさま息がピッタリとはいかない二人だが、ライダーマンがロープを引っかけたところにV3が蹴りつけると、なんとなくタッグ攻撃のような雰囲気は漂い、しかしサイタンクの突進の前に苦戦するV3は、石塔投げの下敷きにされたところをライダーマンに助けられて二人揃ってすごすごと逃げ出し、vsサイタンク、約10分ぶり3回目の完敗を喫する!
 ナレーション「結城丈二の世界は、今音を立てて崩れていった。彼の愛したデストロンは、まさに、憎むべきものだったのだ。そして、その時、仮面ライダーV3は、まさに、愛の救世主だった」
 血まみれの志郎が負傷を焼きごて治療する一方、心の爆破跡を外堀から埋められた結城丈二は独自にデストロンを追い、少年の祖父と姉は、手鎖で結構むごたらしい責めを受けていた。
 どこまでも外道なヨロイ元帥は、孫娘を人質に解放した祖父を立花スポーツ店に送り込むと風見志郎への手紙を届けさせ、HPが回復するよりも前にV3を仕留める為の策を張り巡らせる。
 ……しかしなんかもう、純子さんのリアクションが完全に、風見志郎=V3……(笑)
 そこのところで手紙の文面には「志郎」とも「V3」とも明記されていないのは、敵ながらヨロイ元帥からのさりげない気遣いを感じます。
 (気持ちはわかるぞV3……我々も一応、「秘密組織」を名乗っているからな。だが正直なところ、目撃者を全て消すには予算が足りん、予算が足りんのだ……!)
 浮世の人情が複雑に交差する中、呼び出しの場所へ向かおうとする志郎を押しとどめた結城は、デストロンからの正式な足抜けを宣言すると、償いの為にも自分が代わりに行くと頼み込むが志郎に強行突破され、アジトへ乗り込んだ志郎はヨロイ元帥とご対面。
 「約束通り、この娘は帰してやる。ただし……貴様の息の根を止めてからな」
 拘束された志郎はポンコツ人間への脳改造をほどこされそうになるが、医療班に紛れ込んでいた結城によって救出され、相変わらず、セキュリティ面で不安の多い制服です。
 「ヨロイ元帥! 今こそ貴様に思い知らせてやる! 覚悟しろ!」
 仇敵を前に結城はメットオンし、デザイン・能力・精神のいずれも“仮面ライダー未満”を宿命づけられているライダーマンですが、変身シーンはいずれも気を遣われて劇的に描かれており、何をもって“格好いい”を見せるのかへの目配りが窺えます。
 ヨロイ元帥はサイタンクを呼び出して撤収し、志郎も変身。ライダーマンが少女を救出している間に今回もサイタンクのパワーの前に苦戦を強いられるV3だが、ひらりひらりと飛び回りながら頭突きをかわすと巴投げ。
 高所から落下したサイタンクの角めがけて放たれた、追い打ちのピンポイントV3キックがクリティカルすると、角を失ったサイタンクの動きをライダーマンがロープアームで阻害したところにV3きりもみキックを叩き込むタッグ攻撃で、とうとう強敵サイタンクを撃破するのであった。
 焼き芋屋の一家は日常を取り戻すと、志郎は結城から預かったとクリスマスプレゼントを渡して去って行き、姉弟そろって豹(チーター?)のぬいぐるみを贈る結城はやはり、デストロンで間違った青春を燃やしてしまった研究バカなのかもしれません。
 次回――偽ライダーマンとは意表を突かれましたが、予告とサブタイトルが全く合っていなくて気になります(笑)