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カマクビカメは静かに暮らしたい

仮面ライダーV3』感想・第43話

◆第43話「敵か味方か? 謎のライダーマン」◆ (監督:内田一作 脚本:伊上勝
 第43話にしてOP映像が変更されて、V3と戦闘員のオフロードバイク戦が中心のものとなり、改めての新展開は、ヨロイ元帥と5人の大幹部による、デストロン裁判でスタート。
 カ学グループの結城丈二が裏切り者として死刑宣告を受け、判決がタロットカードで示されるのがお洒落で、結城が連行されようとすると助手がかばうのは、悪の組織なりの人間関係を見せて面白いところ。
 「裏切り行為だって?! 僕はデストロンの為に一生懸命働いてきた」
 「そうだ! これは結城さんを陥れる罠だ!」
 果たして結城丈二の所属するのは、毒ガス作戦などでそれなりに成果を上げている「化学」班の方なのか、ぽんこつ集団疑惑の濃厚な「科学」班の方なのか……正直後者なら、実質的な裏切り者として処分されても、よくある見せしめとして仕方ない気はします(笑)
 役者さんの風貌に一人称「僕」で、思想的にデストロンの為に働くながらもなんだか実直そうな青年カ学者の雰囲気が出ているのが巧い掴みとなり、首領は話せばわかってくれる筈、と大人しく引っ立てられた結城は、いきなりの逆さ吊り。
 弁明の機会も与えられないまま硫酸のプールの上に逆さ吊りにされた結城は、これがヨロイ元帥による謀略だと気付き、デストロンカ学班のナンバーワンであり部下からの信望も集める結城が、いずれ自分の立場をおびやかすと考えたヨロイ元帥による根回しによって判決が私され、4クール目に入ったところで悪の組織内部の派閥争いが物凄く生々しいレベルで描かれる切り口は、インパクト大。
 「俺の地位が危うくならん内に、貴様を消す」
 「くそ……ヨロイ元帥、貴様!」
 「デストロンは貴様を必要と認めないのだ! ……まず、腕から溶かす」
 最高幹部の権限を、組織全体よりも自身の利の為に用いるヨロイ元帥の性質が強調されると共に、結城丈二との敵対関係という明確な因縁が発生した事でぐっとキャラとしての厚みが増し、見た目以外の存在感が弱かったデストロン大幹部陣の弱点も補強。
 やはりキャラクターが活きるかどうかは、関係性だな、と唸らされます。
 硫酸プールで右腕を溶かされる結城だが、助手たちが助けに駆けつけると、戦闘員が一人プールに突き落とされ(むごい……)、デストロン名物・基地自爆による混乱の隙を突いて、大量の脱走事件が発生。
 3人の助手により地下道に運び込まれた重体の結城は、生き延びる為に自らの改造手術を求め、「瀕死の重傷を負って身内から改造手術を受ける」体裁が、志郎のそれと重ねられる形に。
 「この腕に、密かに開発していた、アタッチメントを装備できるように、手術をしてくれ……」
 …………あ、あれ? この人、組織の予算を、私的な開発に流用していた……?
 「ですが結城さん! 例のアタッチメントは、人体実験も済んでおりません!」
 「危険が伴います!」
 「かまわん! …………どうせ一度は殺されかけた命だ。手術は失敗して元々……何をためらってるんだ! 僕の頼みだ……死にはしない、大丈夫だ。……生き抜いて、ヨロイ元帥に復讐せずにはおかん」
 かくして、「(臨)死と再生」の通過儀礼と、「復讐」という行動原理が与えられた結城丈二は、新たなる「ヒーロー」の資格を得ると助手たちによる緊急手術を受け、失った右腕の代わりに人造アームを接続。
 手術は成功するも意識を失った結城の為、助手の一人・カタギリは看護師である妹に連絡を取るが、既にヨロイ元帥はその監視に手を回しており、電話を受けて病院を出る女を見つめる怪しい白衣の男は怪人……ではなく藤兵衛で、ナチュラルに病院に潜入していました(笑)
 (やっぱりそうか)
 女を追うデストロンの車に気付いた藤兵衛は、謎の呟きと共に本部に連絡を取り、なぜカタギリ妹を張っていたのかは結局わからずじまいなのですが、デストロン関係の事件を追う内に失踪したカタギリの存在に気付き、その身内を監視(ないしガード)していたといったところでしょうか。
 妹は、しばらく見ない内に白衣の下にちょっと変なコスチュームを身につけるようになった兄と再会するが、そこに結城の行方を追うデストロン戦闘員が現れ、妹を逃がした兄が怪人カマクビカメに投げ落とされた後、妹を助けたのは、黒革ジャケットに身を包んだ風見志郎。
 だが看護師を逃がしたのも束の間、志郎は子カメ爆弾の直撃に倒れ、看護師の後を追って結城一味の潜伏場所に辿り着いた鎌首カメの長く伸ばした首が、茂みの中から飛び出してくるのは、なかなか衝撃のシーン。
 「殺し屋め!」
 「死んでも結城さんは守るぞ!
 「望みどおり殺してやる!」
 ちょっと情けない見た目かと思いきや、自律移動で標的を追尾し、狭い隙間からも自在に入り込む子カメ爆弾が割と優秀。
 「結城さーーん!」
 「我々の仇をー!」
 2人の助手はデストロンガスを浴びて炎上し、地下道の奥に看護師と眠ったままの結城丈二を追い詰めた鎌首カメだがその時――!
 意識不明の結城に被せられていたと思われたフードの下から姿を見せたのは、青地の口出しマスクに赤い瞳で黄色いマフラーをなびかせた、新たな仮面の戦士。
 「ああ?! ライダーV3!」
 「ふふふふふ……」
 「ん、ライダーV3と違うな。貴様なにものだ!」
 「復讐の、鬼だ」
 「なんだとぉ?」
 話の中心を風見志郎ではなく脱走した結城一味に置く事により、デストロンに追い詰められていく流れにこれまでに無い緊迫感があった流れから、謎の戦士の登場は綺麗にはまり、言い放つ一言も格好いい。
 ただそこから、
 「カマクビカメ、俺の力を知らんな?」
 と啖呵を切って行うマスク姿での記念すべきファーストアクションが、
 「床に、電流を流してやる!」(切れた電線を水につける)
 なのは、本当にそれで良かったのでしょうか(笑)
 ……まあ結果的には、後から見ると某後輩を彷彿とさせる変な面白さは出ましたが。
 鎌首カメがひるんだ隙に、パワーアームで鉄格子を切断した復讐の鬼は看護師と共に地上に脱出すると、続けてロープアームで鉄橋の上へと移動し、人造アームのアタッチメント機能を披露。
 「戦闘員ども! 帰ってヨロイ元帥に伝えろ! 俺はかならずヨロイ元帥の息の根を止めてやるとな」
 さらばだデストロンの諸君! ふはははははは!! を華麗に決めたかと思われた復讐の鬼だが、その前に立ちはだかる鎌首カメ。
 「貴様の仮面をはいでやる! 逃げ道はない」
 「――私が逃がす!」
 ……台詞そのものは格好いいというよりやや間抜けなのですが、タイミングの良さと高いところに仁王立ちの迫力で押し切る、我らがV3(笑)
 ホッパーでカメの後を追っていたV3は、事情はよくわからないままカメと戦って二人を逃がし、怪人の首伸び攻撃は面白いアクション。両者は線路上で激しい攻防を繰り広げるが、海に投げ込まれたカメはこれ幸いと逃走し、見事にやらかした志郎は、藤兵衛、そして藤兵衛が拾っていた瀕死のカタギリと出会い、デストロンに追われる謎の変な仮面と出会った事を語る。
 「その人物の目的は……復讐です」
 カタギリは、ヨロイ元帥のアジトの場所を書き記すと「頼む……妹を……」と言葉を遺して力尽き、デストロンに対する新たな復讐の鬼の誕生と共に、かつて風見志郎が守れなかったものの存在が浮かび上がるのは、巧い流れ。
 そして青いジャケットに身を包んだ結城は、カタギリ妹と別れてヨロイ元帥のアジトへと向かっていき……前身と転身の動機はともかく、今回は完全にニューヒーロー誕生の文脈で描かれているのですが、独り歩く結城の姿を3段ズームで見せるのが、超格好いい。
 そのデザインから、一時期(《平成ライダー》で色々トンデモライダーが出てくる以前)はネタ枠の常連だったイメージの強いライダーマンですが、少なくとも、ここまでの結城丈二は、かなり格好いい見せ方。
 ナレーション「結城丈二は、このマスクを付ける事によって、ライダーマンとなり、手術した腕が連動し、アタッチメントを操る事ができるのである」
 バイクに収納していたマスクをかぶって結城はライダーマンへと変身し、部分改造による、人間と仮面ライダー(改造人間)の中間的存在という事を示したデザインでありましょうが、マスクにV3よりもよほど強調されたVの意匠が取りこまれた結果、目と目の間からV字の下の部分が飛び出して鼻を覆っているのが、まあどうしても“格好いい”とは言い難い変身後ではあり……想起する昆虫はどうしても、ですし。
 「ヨロイ元帥、ライダーマンが結城丈二に代わって復讐に来た!」
 結城丈二改めライダーマンは、タグボートに偽装されたヨロイ元帥のアジトへ乗り込んでいくが潜んでいたカメの不意打ちを受け、二対一で痛めつけられると、早くもテンション急降下。
 「ヨロイ元帥を目の前にして、残念だ」
 元帥には姿を消され、目前には子カメ爆弾が迫り、V3がアジトへとバイクを走らせる中、追い詰められたライダーマンデストロンガスを前身に浴びてしまう。
 復讐に燃えるニューヒーローとして登場した筈が、ラスト1分でヒロイン度が爆発的上昇したライダーマンは、果たしてライダーV3にとって、敵になるか、味方になるか?!
 たぶん今、最も立場を脅かされそうなのは純子さんだ!!
 EDは映像(怪人大盤振る舞いの感じからすると劇場版とかでしょうか?)と共に歌も変更され、子門真人によるストレートなヒーローソングとなった……のに、クレジットが変わっていない。
 第36話以来となる伊上先生脚本で、6話分のチャージをしての新展開。
 「復讐の、鬼だ」
 「床に、電流を流してやる!」
 「――私が逃がす!」
 の切れ味が、実にいい時の伊上脚本でしたが、今作第1話を下敷きにしたデストロン版アレンジといえる新ライダー登場回で、Aパートの大半をライダーマン誕生の経緯に用いつつ、緊張感を保ちながら謎の戦士の誕生がテンポ良く描かれ、大変面白かったです。6話分のチャージの甲斐あり、流用脚本による失速を補うだけの盛り上がり。
 鎌首カメの見せ方なども面白く、今まで見た、内田監督演出作品の中でも、一番好きかも。
 次回――急転直下の真ヒロイン争い、一番面白くなるのは誰だ?!