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魔法使いは約束をする

仮面ライダーウィザード』感想・第11話

◆第11話「守り抜く約束」◆ (監督:諸田敏 脚本:きだつよし)
 「力を使いこなせるかどうかは手にする人の心の持ちよう。力を手にするにはそれ相応の覚悟が要りますよ」
 民間人を拉致監禁してでも、ファントムと戦う為に魔法の力を欲し、指輪を求める木崎だが……そもそも魔法の指輪は、魔法使いにしか使えない事実を突きつけられてしまう。
 直己を連れて移動した国安はグール軍団の襲撃を受け、第1話でも描かれましたが、ウィザードにとってはスタイリッシュアクションの添え物でしかないグールに武装した警官が手も足も出ず、戦闘員ポジションと民間人の戦力差はかなり大きめ。
 木崎はグール軍団の袋だたきに遭ったところをウィザードに助けられるが、そこに不死身のファントム・フェニックスが雪辱戦に登場し、パーカーのフードを被りっぱなしだった直己が囮とわかると撤収。
 「おい、囮を使うなんてどういうつもりだ」
 「……直己くんを守る為だ」
 「だからって、他の誰かを危険にさらしてもいいってもんでもないだろ」
 「直己くんを守る為なら手段は選ばん! ……たとえ俺が死んでも、直己くんだけは、直己くんだけは絶対に……」
 木崎は木崎で、組織の指揮官としてはだいぶ私情入りまくりですが、直己父も国安所属だったので、木崎以外の部下からも相当に慕われていた人物だったのではありましょうか。
 「どうしてそこまで?」
 「それが約束だからだ」
 グールに痛めつけられてちょっと生死の境を彷徨った事で心のネジが緩んでしまったのか(ここはちょっと楽にやりすぎたところで、もう少し、木崎が晴人の“人間性”を認めるくだりが欲しかったところ)、だいぶ口の軽くなった木崎は、半年前の経緯を明かす。
 半年前――多発する失踪事件を追っていた直己父と木崎は、一連の失踪事件に関わる可能性のある魔宝石を入手すると共に、人外の怪物・ファントムの存在を確認。
 その監視中たまたま、次に狙われる標的が直己だと知った直己父は、木崎に直己の安全を託してガーゴイルに挑むが還らぬ人となり、直己の事を思うがゆえに、木崎は何を言われようと真相を隠したまま直己を守ろうとしていたのだった。
 だが、密かに移送される筈だった直己は、囮作戦を読んでいたメデューサが待機させていたガーゴイルに襲われ、そろそろ、メデューサさんの衣装が寒そう。
 「威勢がいいのは、親父そっくり」
 「え?」
 念のために居残りしていた凛子が、使い魔をガーゴイルにけしかけると直己を連れて逃げようとするが失敗し、ガーゴイルは半年前の真相を直己に語る。
 「つまり、お前の親父が死んだのは、ズバリ、おまえのせいって事っス」
 ……なぜ、ズバリ正解ゴーオンブルー。
 自分のせいで父親が死んだ、と絶望に崩れ落ちる直己のゲートが開きそうになると、駆けつけたウィザードが時間が無いのでぼうぼうぼう、は強化フォーム使用の巧い理由付けとなり、Dウィザードは二丁拳銃の連射で石化を砕くと、殲滅モードから火炎放射で消し飛ばし、ガーゴイルをオーバーキル。
 「駄目だ……直己くんがファントムに……」
 「――諦めるな! まだ俺が居る」
 「……頼む」
 「ああ。約束する。俺が最後の希望だ」
 Dウィザードは直己のアンダーワールドへと入り込んで久方ぶりのCGバトルとなり、解除したドラゴンとバイクで合体すると、さっくりドラゴンバイクキックでフィニッシュし、この技は好きです(笑)
 「これで直己はゲートじゃなくなった。もう襲われる心配はない」
 ここに言及されたのは初めてな気がしますが、ファントムのなりかけとして形を持った魔力の塊をウィザードが消し飛ばした事で潜在的な魔力を失った、という事なのか、特撮ヒーロー作品でままある、一度敵を退けても狙われる理由が無くならない問題を、解決。
 ……まあ、アンダーワールド戦をしていない人は……? とはなりますが……。
 とにかく、木崎にとって私情挟みまくりの事件は解決を迎え、再び、直己父の殉職現場にワインと花を供える木崎の元を、パンツ一丁まで情報公開体質の晴人から半年前の真相を聞いた直己が訪れる。
 「晴人さんに助けて貰って、新しい希望も出来ました」
 「……希望?」
 「俺……国安に入ろうと思います。そして、人を守りたいです。父さんや……木崎さんみたいに」
 出しゃばり魔法使い野郎のお節介で木崎と直己は和解し、全ての矢印が晴人(ウィザード)に向くばかりでなしに、希望にはこういう繋がり方もあると示してくれたラストは、良かったです。
 輪島は無事に釈放され、コヨミと瞬平の出番、ラストの面影堂だけ。
 木崎もウィザードの存在を認めると、国安で使おうとしていた魔宝石を輪島経由で晴人に預け、完全な協力体制が構築されるかはともかく、木崎の軟化により、晴人と国安の関係は、黙認要経過観察ぐらいの案配に。
 国安0課は、再登場してすぐに関係改善の方向性となって、そこは今作における一要素ではあるが全体の主題では無い、という事なのでしょうが……それだけに木崎の「直己を守れるのは晴人しかいないと認める」事と「晴人を“化け物”ではなく“人間”と受け止める」のは、別々の段取りを踏んで描いてほしかったところ。
 後者に関しては、実はそこまで考えが変わっていなくてもう一度触れる可能性もありますが、前者を優先しすぎて後者がなし崩し気味になってしまったのは、ピアニスト回における「コヨミの抱える秘密と晴人との関係を明らかにする」のと「凛子と瞬平に対してガードの下がるコヨミ」を一つにまとめてしまって後者が雑になったのと同じ失敗をしており、諸田×きだで座組が一緒なのも、作劇の目線の部分でやや気になります。
 その点が前編の盛り上がりからは物足りない部分となりましたが、晴人と方向性は違うし手法は強引だが(半年前の事件を引きずっている部分もあるのでしょうが)、根は真摯な人である木崎の掘り下げ自体は、良かったです。再登場してもしなくても成り立つキャラではありますが、ドーナツ屋あたりでバッタリ出会ってほしい(笑)
 次回――逆襲のちちんぷいぷい