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激突・見せつけたい魔法使いvs隠したいメガネ

仮面ライダーウィザード』感想・第10話

◆第10話「国家安全局0課」◆ (監督:諸田敏 脚本:きだつよし)
 「死と再生を繰り返す不死身の体で良かったわね」
 Dウィザードに焼き尽くされたかにみえたフェニックスが灰から甦る姿が描かれ、果たしてちゃんと、生き返る度に強くなれるサイヤ人体質なのか! それとも単に残機が複数あるラッキークローバー体質なのか!
 「あいつを倒すまで、何度でも甦ってやるよ」
 「それって何度もやられるって事?」
 「うるせぇ!」
 メデューサさんの反応は薄味だ!!
 その頃、国家安全局0課を指揮する木崎の元には、困った魔法使いニューモードの盗撮写真が、大量に集められていた(提供:白い魔法使い(かもしれない))。
 「とうとう本性を現したか」
 率直に、「本性を現した」というほどDウィザードがファントムらしく見えるかと言われれば、そうは思えないのですが…………ああ! Dウィザード殲滅モードで胸からドラゴンを生やしたのは、より異形に近づける為、という狙いもあったのでしょうか。そう考えると、回転アクションの関係で縦軸にすっきりまとめられたウィザードに、敢えて前後方向の出っ張りを追加した事に納得。
 「操真晴人はファントムなんでしょうか?」
 「可能性は充分ある」
 「なら彼はなぜ人を守るんです? ……敵なのか味方なのか……」
 「……なんにせよ、奴が化け物である事には変わりない」
 “悪魔の力を宿して戦う変身ヒーロー”を主人公に据え、「改造人間テーゼ」の本歌取りにはかなりストレートな今作ですが、改めて外部の視点から“異形のヒーロー”性にフォーカスすると、なにやら巨大な魔宝石を手に入れた国家安全局は、晴人不在のタイミングを見計らって木崎自らを先頭に面影堂へと乗り込んでいき、輪島に指輪の作成を依頼。
 「よく知らない人に指輪を作るのはやめにしてるんですよ~。いや前にね、どでかい失敗をやらかした事がありましてね」
 晴人がファントム大量発生儀式に巻き込まれて生き残り、白い魔法使いからドライバーとコヨミををぽいっとされてから、指輪を頼りに輪島の元を訪れるまでに何があったのか、はまだ描かれていないのですが、そのミッシングリンクの示唆なのか、或いは他に何かやらかしているのか……首を縦に振らない輪島に対して木崎は強権を発動し、輪島、逮捕。
 サポートキャラさえ国家権力に連行されていく《平成ライダー》砂漠が広がりを見せる一方、パトロールに出ていた晴人はファントム出現の連絡を受けて、バイクで走りながら変身。
 今回は自分で名乗ってくれたファントム・ガーゴイル(頭の位置の低いデザインは、意識的にDウィザード殲滅モードにフォルムを近づけた……?)が、標的を死の恐怖で雑に絶望させようとしているところに駆けつけると、ガーゴイルはその名にふさわしく石化能力を発動。
 硬化したガーゴイルにはウィザードの筋力ではダメージを通せず、防御重視のファントム……かと思っていたら、ジャンプ・空中石化・押しつぶし、の必殺コンボは、石化能力の使い方として面白かったです。
 思わぬ攻撃で身動き取れなくなったウィザードだが、黄ザードになると地のエレメントの力を纏い、大地の実り、米こそパワー! とみなぎるマッスルボディで石化ガーゴイルを持ち上げ、魔法使いの基本は、筋力……!
 「こう見えても意外と力持ちなのっス」
 ……ガーゴイルの喋りに合わせる黄ザード、本人の自意識はわかりませんが、今のところ君のイメージは、華麗に魔法を駆使する知性派ヒーロー、とかではなく、プロレス好きの肉体派魔法使いだからな。
 近頃のラノベ風にいうと、
 『魔法使いに転生した俺、魔力より筋力が高いので関節技で無双します』
 だぞ。
 追い打ちのビッグ平手をかわしてガーゴイルが逃走すると、晴人はゲートの少年・片山直己から事情を聞き、少年が人捜しの為に秋田から上京してきたばかりだと知る。
 その訪ね人の名は――国家安全局0課所属・木崎。
 輪島が拉致されたと聞いて国家安全局に乗り込んでいった凛子が木崎ともめているところに、木崎を訪ねた晴人と直己も姿を見せ……国家安全局、存在自体が極秘の部署かと思ったらそういう事でもなく、スポーツ庁とかこども庁ぐらいの感覚で、(0課の活動内容はともかく)国民に普通に認知はされている模様。
 直己がさっそく木崎に食ってかかると、木崎は晴人に怒りの矛先を向け、全く事情がわからないまま、初めて会ったばかりの相手と元カレの痴話喧嘩に巻き込まれた男、みたいになる晴人(笑)
 どうやら木崎は直己がゲートだと知っている様子で、高圧的に秋田に帰そうとする木崎の言を撥ね付けた直己は輪島不在の面影堂を訪れ、死んだ父親が国安所属の木崎の先輩であり、木崎が直己にとって良き兄のような存在であった事を語る。
 ところが、半年前に父親が殉職した後、木崎は直己を東京から遠ざけると、まるで人が変わったような態度で接するようになり、明らかに様子のおかしい木崎が何かを隠しているのでは……といぶかしむ直己は、父の死の真相について問いただそうと決意の上京をし……良い悪いとは別に、今回が香村脚本だったら、この時点で晴人が事の背景に概ね辿り着いた上で、視聴者とそれを共有する形で構成しそう(笑)
 翌日、輪島の軟禁がそれなりの待遇で続く中、直己に関して木崎に確認に向かう晴人だが、ファントムから人々を守ろうとする想いは近いものがありながら、パンツ一丁で大通りを全力疾走しつつも本質的に他人を戦いに巻き込む事を厭う晴人と、帽子・サングラス・マスク・ロングコートの完全装備で路地裏を一歩一歩進みながら組織の力を行使しようとする木崎は相性最悪で建設的な話し合いにならず、かなり明確に、「飛び抜けた個である故に怪物に近づいてしまうヒーロー」と「気高き魂を持った凡人たちの組織」の象徴になっている二人ですが、果たして、がっちりと手を取り合う日は来るのかどうか。
 ……凛子とか実は、「気高き魂を持った凡人」でありつつ「怪物的なヒーロー」を人間として受け入れられる人なのですが、残念ながら両者を仲介する代わりに、「そうだ、木崎は怪しい!」と直己少年を煽っていましたね!
 ……まあ、責任者は辛いよ、という立場にある木崎さんの性格にも若干以上に難はあるわけですが。 
 脱衣主義の魔法使いと、秘密主義のメガネが火花を散らす中、面影堂を一人で抜け出した直己が半年前の事件現場へと潜り込み、父親が殉職した場所に酒と花が供えられている事に気付くが、そこに現れるガーゴイル、そして国安とウィザード。
 「ホント迷惑な出しゃばり野郎だ」
 「ああ。それが俺のキャッチフレーズだ」
 直己を守って晴人はウィザードに変身し、今ステータス画面の〔称号〕欄が「出しゃばり半裸魔法使い」になっていますが、本当にそれでいいのか。
 「さあ、ショータイムだ」
 ウイザードは挿入歌に乗せて、グールを相手に、グルグルキック&キック。
 前回が序盤の集大成と言える新フォームお披露目バトルでしたが、とにかく今作は「作品の特徴付けとしてのバトル」に力が入っており、勿論、シリーズどの作品もアクションの重要性は高いのですが、前後の作品と見比べても、「何よりもバトルこそが作品の軸であり最大の武器」を自覚的にやっている感じがあります。
 究極、物語が多少蛇行しても、このバトルがあれば『ウィザード』は成立する、ぐらいの勢いに見えますが、実際それでアクションが非常に見栄えして格好いいのは、今作の強み。
 またもガーゴイルに攻撃を無効化されたウィザードは、防御を越える火力だ! とドラゴン発動。巨大化した剣で強引に石化を砕くと、再生産された大量のグールもマジカルブレストファイヤーで焼き払い……これはもう、木崎さんから危険人物認定されても仕方ない気がしてきました。
 焼き損ねたガーゴイルは逃走し、木崎が直己から「父さんを見捨てて逃げたのでは」と糾弾を受けて、つづく。
 半年前の事件を軸に直己と木崎のすれ違いが描かれつつ、ミスディレクションを懲らすのではなく、責任感が強く汚れ役を厭わない精神性の持ち主が不器用な立ち回りから誤解をこじらせているのが一目瞭然のわかりやすい作りの前編で、予告カットで口から血を垂らしているメガネが既に格好いい(笑)