東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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されば魔法使いは竜と踊る

仮面ライダーウィザード』感想・第9話

◆第9話「ドラゴンの叫び」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
 ウィザード完封負けはコヨミの水晶玉で配信されており、その映像を見て晴人の元へ急ぐ凛子と、少年に付き添って病院に向かっている瞬平は、巧い使い分けに。
 瀕死の土左衛門かと思われた晴人だが、川の中でドラゴンの咆哮とともに瞳が紅く光ると自力で岸まで辿り着いたところを凛子に拾われ……果たして、今を生きる魔法使いは、絶望を希望に変えてフェニックスを打ち破る事ができるのか――。
 ドラゴンの声が大友龍三郎さんだーーー!(好き)
 「さすがはワイズマンね」
 その頃、何故か少年の家に上がり込んだメデューサさんは、リビングのソファに足を組んでふんぞり返っていた(笑)
 首尾良く少年からファントムが誕生すれば、一般ファントムのものは私の物……という理屈なのかもしれませんが、考えてみると、両親が死亡して少年(ファントム)だけ生き残る形になった場合、ファントムとして人間社会に潜伏するにしても社会的制約が厳しそうですが、そんな時の為に、弁護士なファントムとか資産家のファントムとかも確保しているのでしょうかワイズマン。
 組織(?)の福利厚生と税金対策はバッチリだ!
 さすがはワイズマン!
 「……あなたの性格をよくわかってる」
 そこへ庭から窓ガラスを破ってフェニックスが入ってくると机の上のプラモの箱を踏みつぶしていくのが痛烈にして秀逸で、〔窓ガラスを割る → 土足で机の上を歩く → 置かれていたものを潰す〕と、フェニックスのガラの悪さが鮮やかに集約(笑)
 「あの赤いファントム……今までの奴とはレベルが違った」
 満身創痍で面影堂に伸びていた晴人は、ゲートを絶望させる為のファントムの次の狙いは少年の父親だと気付くが一歩遅く、父親の乗った車に炸裂する、フェニックス回し蹴り。
 走行中の乗用車を軽々とひっくり返すフェニックスのパワーは今回もインパクトが強く、父親を痛めつけている所に飛来した緑ザードは、枯渇寸前のMPで腕を伸ばして父親を回収すると逃げの一手に徹し、瞬平の陣取る病院に辿り着くが、そのまま気絶。
 「こんな事だろうと思った。あなたは詰めが甘いのよ」
 怒り狂うフェニックスの元に現れたメデューサは、ひっくり返った車の上に優雅に腰掛けており、今回だけでやたらと面白ポイントを稼いでいきます(笑)
 メデューサにけしかけられ、病室を直接襲撃するフェニックスにより、少年の目前で両親の首がまとめてへし折られ、ゲートの全身に無数のヒビ割れが……のショッキングシーンはさすがに晴人の見ていた悪夢で、慌てて病室へ向かった晴人はその場の光景に、かつての自分の姿を思い出す。
 「おまえが諦めちゃ駄目だ。おまえは、お父さんとお母さんの希望なんだ! だから、おまえが希望を捨てるな!」
 「……晴人」
 「……大丈夫。お前の希望は――俺が守ってやる」
 よその家のお子さんに呪いを拡散してはまずいのでは……と思ったところから鮮やかにヒーロー回収する晴人だが、無理を止めようと追いすがる凛子に対して、珍しく感情を露わに見せる。
 「怖いんだよ……俺が。誰かが居なくなるのが、俺の前から消えるのが。俺の前で死なれるのが……怖くて怖くてたまらないんだよ」
 ここで晴人が、命を賭けて“誰か”を守ろうとするのは、何より自分自身が喪失を経験したくないからだ、と本音をこぼすのは、“守るべき者の前で虚勢を張るヒーロー”と“仲間と認めた相手に内心を語る人間的部分”の落差が効いて、巧い流れに。
 また、決してグールやファントムと正面から戦えるわけではないけれど、凛子の事は“いっぱしの戦士の魂を持った人物”として認めている事がハッキリとし……やったぜ凛子さん! 瞬平との格差がだいぶ開きました。
 「……晴人くん」
 「……凛子ちゃん、なんか思いつかない? あいつに勝つ方法。……やっぱ厳しいのかな。……俺のへなちょこな魔力じゃ」
 かつてない危機に希望への道筋を見いだせず、俯いて弱音を漏らす晴人だが、そこに届けられたのは、輪島が完成させた、出所不明の魔宝石により作られた新たな指輪。
 「この指輪なら……ドラゴンの力を引き出せるかもしれない」
 残された最後の希望として、コヨミいわく「嫌な感じのする魔宝石」を受け渡すシーンが印象的に描かれ、ドラゴンはこれまでアンダーワールドの中でだけ力を振るえた、晴人の中のファントムと判明。
 「勝てる可能性が1%でもあるなら……俺はそれに賭ける」
 フェニックスが現実でも病院を強襲すると、晴人はリスクを承知でその指輪を使う事を決断し、今回はとにく、随所で晴人の台詞がびしばし決まるのが、如何にも香村脚本。
 病院の廊下でフェニックスと対峙した晴人はウィザードに変身すると、できたての指輪を使おうとするが……ERROR。
 ……これがファイズギアだったら、物凄い勢いで後方に海老反りで吹き飛んで背後にある柱に頭をぶつけるところでしたね!
 認証失敗で切り札使用不能のウィザードに対し、フェニックスはチンピラムーヴでの打撃からドロップキックを炸裂させ、危うしファントムプロレス統一王座ベルト。
 「そのキラキラ目障りな頭、俺の手で、直々に砕いてやる」
 処刑宣言と共にフェニックスが迫り来る中、繰り返し指輪を読み込ませていたウィザードは、不意に自身のアンダーワールドの中に入り込むと、両親を目の前で失った病室の記憶を前に、ドラゴン晴人と対面。
 「懐かしいだろ? ――絶望の時だ」
 「……そうだな。でも、それだけじゃない。俺が父さんと母さんから、希望を貰った時でもある」
 「フッ……相変わらずしぶとい奴だ」
 ちゃんと性格の悪かったドラゴンに対して、「希望」とは、“継承されていく”ものだと置かれ(メタ的にはこれは、「ヒーローの魂」といった扱いかなと)、予断は許しませんがひとまず、晴人にとっての「呪い」化を回避。
 「――俺に力を貸せ、ドラゴン」
 「フッフ……確かにその指輪を使えば、現実でオレの力を使えるようになる。だがそれはおまえが絶望に近づくという事だぞ」
 「わかってないなぁ、ドラゴン」
 「なに?」
 「おまえの力も、俺の希望だ」
 「このオレが希望だと? …………はっはっははは……面白い。ならばどこまで耐えられるか試しててやる。思う存分オレの力を使うがいい」
 ファントムを狩るファントムの力――絶望と希望の合わせ鏡が改造人間テーゼに繋げて描かれ、今回、内面の力の象徴と直接対話をした事で、なんだかちょっと、人外バディものの雰囲気が出てきました(笑) CV担当の大友龍三郎さんが好きなので、ドラゴンにはまた登場してほしいところです(あと今回は、晴人の役者さんもぐっと色々な表情を見せてきて良かった)。
 フェニックスパンチがキラキラ目障りな頭をアスファルトに向けて投げつけたトマトみたいにする寸前、アンダーワールドでの労使交渉の成功により、ドラゴンの指輪が起動。
 ボウ・ボウ・ボウボウボウ! し、胸にドラゴンの顔の意匠が取り込まれ、真っ赤なコートをひらめかせるドラゴンウィザードが誕生すると、それを胡散臭すぎる、白い魔法使いが見ていた。
 「……進化したか」
 どうやらシロガル宅配便の送り主だったらしい、こちらも宝石頭の白い魔法使い、リスキーなマジックアイテムを、まるでそれを使わざるを得ない状況に追い込まれるのを予見したかのように送りつけてきて成果を確認しにくる辺り、ブラッドスターク師匠の先輩筋としか思えず、いきなりラスボス候補の大本命に急浮上しました(真顔)。
 「――さあ、ショータイムだ」
 受け流しスキルとキック力の強化されたDウィザードは、フェニックスの攻撃をいなし、蹴り飛ばし、更に握手ブレード二刀流を発動。
 「嘘だ! このオレが、魔法使いごときにぃ!」
 「言っただろ。ここでおまえを倒すって」
 Dウィザードは、前回は全く勝負にならなかったフェニックスを相手に暴力の化身とさえいえる力を振るうと、互角どころか圧倒的優位のまま戦いを進め、残虐非道な恐るべき強敵への完敗 → リスクのある新装備の入手 → 内面の試練を乗り越えて新たなる力を発動! の綺麗な流れから、高岩成二さん熟練の立ち回りも含めて、新フォーム初登場バトルの盛り上がりとしては、120点の出来。
 特にフェニックスを、ただ力が強いだけではなく、インパクト抜群な親狙いにより外道極まりない極悪ファントムとして印象づけた事で、下駄を履かせたい新フォームの逆転勝利が多少やりすぎなぐらいで丁度良いバランスになったのは、お見事。
 また、どこからともなくやってきたマジックアイテムで即パワーアップしてしまわずに、晴人の掘り下げと繋げたのも、巧い構成となりました。
 これまで反応の無かった指輪をドラゴンの力でアンロックすると宙にふんわり浮かび、炎のドラゴンがぐるぐる回って……ウィザードの胸から生えた。
 ま、まあ確かに、ドラゴンの顔模様がついていたところではあるのですが、それでいいのか、と思ったドラゴン頭が火を噴くと、フェニックスの放った炎をあっさりと飲み込む超高熱のブレスが放たれ、丸焼きフェニックスによりDウィザードは起死回生の完全試合でフィナーレを飾るのであった。……正直、単純にデザインとしては基本フォームの方が好きです(笑)
 ――ところが数日後、消し炭になったかと思われたフェニックスはフェニックスだけにフェニックスして、つづく。
 晴人の背景と行動原理、ヒーローとしての虚勢の部分と、晴人なりのエゴが掘り下げられてのパワーアップ編でしたが、新フォームデビュー戦の踏み台としては充分以上に役割を果たしてくれた一方、むしろこの前後編でぐっとキャラが立ってきたフェニックスが、それっきりで片付けられなかったのは嬉しかったところ。
 ……後はまあ、再生するとちゃんと強化されるのか、それとも命が沢山あるだけなのかが重要なところですが、最初に当たる幹部キャラにしても妙に簡素なデザインからも、今後に進化の可能性がありそうでしょうか。
 主人公の掘り下げとパワーアップに、悪役サイドのキャラ付け強化、そして晴人が弱音を吐く事により周囲の“仲間”の存在も形になる盛りだくさんのエピソードで、以後の作品でも好相性を見せる中澤×香村が、見事な収め方でした。
 次回――現代異能アクションでは一種の定番すぎて、どこまで本気で物語に関わってくるのか読みにくかった国家安全局0課にしっかりスポットを当ててくれるようで、期待。