『超力戦隊オーレンジャー』感想・第9-10話
◆第9話「突然!! 裏切り者」◆ (監督:辻野正人 脚本:井上敏樹)
オーレンジャーロボの圧倒的な力に驕り、パトロールをさぼってブティックに立ち寄った樹里と桃のファッションショーから開幕し、試着を繰り返した二人が最終的に選んだ服が被って火花を散らす緊急事態に、バラノイアの襲撃が重なる本物の緊急事態。
サソリ型のマシン獣・バラダーツがコミカルな調子で毒矢の腕前を披露すると、思わず油断した男3人が毒矢を受けて全身が機械のようにサビていくマシン毒に倒れ、残された樹里と桃が奮闘を見せる女性コンビ回ですが、見所は、桃黄がコンビネーション攻撃でマシン獣を倒すのかと思ったら、横から出てきて秘剣・超力ライザーでフィニッシュを持っていく隊長。
80年代戦隊的要素の一環として、前作中盤以降のサスケを更に押し進める形で(評判が良かったのでしょうか?)、初回から完璧超人型ヒーローとして大暴れする隊長ですが、あまりのプッシュぶりに、目が点になります(笑)
「ぶははははははははは……! はーっはははははは……! オーレンジャーロボが如何に強かろうが、操縦するオーレンジャーが居なければ、がらくたも同然」
前回のプロミネンス帰還が相当ショックだったのか、既にオーレンジャーロボに正攻法で勝つ事を諦めていたバッカスフンドの作戦が見事にはまり、戦力の大半(隊長)を欠きながら、バラダーツに立ち向かう樹里と桃。
余裕を見せるバラダーツは、体内に収納された解毒剤を見せて2人を挑発し、派手な階段落ちを見せたピンクが変身解除に追い込まれると、自ら変身を解いた樹里は、自身が生き残る為に降伏を宣言。バラノイアに寝返りバラダーツに取り入ろうとするが、その真意は勿論、解毒剤の入手にあり……
予告の時点で、ん? と思ったのですが、「男性メンバーが毒に倒れ、女性メンバーが裏切り者を演じて、まんまと解毒剤を入手(しようと)する」プロットは恐らく、『高速戦隊ターボレンジャー』第20話「暴魔族 はるな」(監督:東條昭平 脚本:井上敏樹)がベース。
女性メンバー2人体制に合わせたアレンジなど、随所に手は入れられていますが、自ら毒を受けて解毒剤を手に入れるくだりは(定番とはいえ)ほぼそのままですし、漆黒のライダースーツに身を包んだ樹里が桃に携行バズーカを撃ち込むシーンなどは、演出サイドによるオマージュかなと。
モアイ成分も…………ロボットにありました。
「確かに貰ったわよ、解毒剤。お馬鹿さん」
樹里は全て芝居だった事を明かし、偽装裏切りによる身内バトルは、その茶番感をどこまで減らせるかが勝負だと思うのですが、その点では樹里の裏切りが唐突すぎて、樹里vs桃に盛り上がりが生じなかったのは残念だったものの、そこからバラダーツが投げた解毒剤も真っ赤な偽物だったという一ひねり。
すると今度は桃が、参謀長が自力で開発した解毒剤で3人は復帰した! と宣言したところに男衆が駆けつけ、バラダーツが悔し紛れに放り捨てた解毒剤をゲット。
復帰したと思われた男衆は精巧なホログラム映像であり、罠また罠また罠また罠、の打ち合いがくしくも伊上脚本を彷彿とさせた事で、『ターボレンジャー』第20話×サブライター仕事で何度か書いている身内バトル×伊上メソッド、の井上ヒストリーみたいな事に(笑)
そこからEDインストに乗せて大事なアイテムパス合戦となり、樹里×桃の息の合ったコンビネーションが炸裂……というより、インターセプトから40ヤード独走を決めるアチャの見せ場(笑)
5人揃って隊長がバラダーツを撃破すると、おっきくなってねエネルギーが注入され、土偶ヘッドとモアイヘッドが火を噴き、トドメはクラウンソードで巨大戦はフィニッシュ。
女性2人の買い物に延々と付き合わされる男衆、の定番のオチで、つづく。
杉村戦隊としては初の、女性メンバー2人体制となった今作、まずはビジュアル面での差を取っかかりにアプローチしてきましたが、「それぞれの作戦を個性と繋げる」には「ダブルメインとする事でスポットの光量が足りない」ので無理が生じ、では「ダブルメインである事を活かす」のかと思えば「バラバラだった2人の行動が一つにシンクロする」ような事もなく、冴えない出来。
或いは何かこの当時、思うところでもあったのか、樹里の仕掛けたトラップが実質無意味に終わった後、それとは全く別個の桃のトラップが事態を解決に導く辺りなど、「トラップそれ自体が目的化していく」伊上脚本の手法に近いとは感じたところです(絶好調時の伊上脚本は、それを「有無を言わさぬ活劇としての面白さ」で飲み込ませてしまうわけですが)。
◆第10話「参上 泥棒だヨン」◆ (監督:辻野正人 脚本:上原正三)
前年、『ブルースワット』にスポット参加していた上原正三大先生が、なんと『太陽戦隊サンバルカン』以来14年ぶりとなる《スーパー戦隊》に参加し、オーレンジャーの武装全てを解析して無効化するマシン獣・バラハッカーが出現。
バッカスフンドに刎ねられたアチャの首がコチャにくっついて「「合体」」にサブタイトルがかかるのが秀逸で、前回はちょっとコミカルに振りすぎた感じはありましたが、辻野監督が随所で見せる遊び心は個人的に好き。
一度はハッカーを撃退するオーレンジャーだが、マシン獣の真の狙いは、超力モビルのデータを改ざんしてオーロボを合体不能に陥れる事にあった。
しょせんパスワードなど時間稼ぎ、と割り切っている三浦は、
「いよいよの時は、自爆」
……じゃなかった
「いよいよの時は、新兵器……」
と口にしたところで銀行から異常事態の通報が入り、オンラインハッキングに対して現場の銀行に向かうのが95年という感じ(笑)
バラハッカーは、次々とハッキングを仕掛ける事で街を混乱させてオーレンジャーの目を引きつけつつ、本命である超力モビルのデータに迫り、その報告に気をよくしたバッカスフンドはヒステリアとウィンナ・ワルツに乗せて踊り出し、そこは、地球の文化なのか(笑)
だが、ハッカーが辿り着いた超力モビルのデータはオーレンジャーの用意した罠であり、データセンターに誘い込んだハッカーと再戦開始。
ネットワークを介した頭脳戦を表現するのが難しかったのか、オーレンジャーは陽動に騙されていなかったぞ! と自己申告で片付けられるのは物足りないところでしたが、どうやら前作に続いて、確固たる参謀ポジションが不在(というか、一番偉い人が参謀ポジション兼任で、兵隊は与えられた任務に忠実なマシンであれば良いのです)。
演出サイドで流行っていたのか、第1話のドリルに続いてチェーンソーがFPS視点でオーレッドに迫り、『ウインスペクター』っぽい爆発でエレベーターシャフトが吹き飛び、建物の外に叩き出されたオーレンジャーはビッグバンバスターを放つが、それさえも防がれてしまう。
絶体絶命の危機に陥ったその時――
「よーし、いよいよ新兵器の威力を試す時だ!」
ものは試しで投入される噂の新兵器。
「了解! バラハッカー、とっておきの超力兵器で、貴様のバリアを木っ葉微塵に砕いてやる!」
超力モビルを召喚すると、スカイフェニックスから新兵器ジャイアントローラーが投下され、その名の通りの巨大なタイヤに隊長が一人で乗り込んでいくと、余った4人は発射装置の周囲で仁王立ちし…………あ、いや、超力チャージ中のガード役といえば理屈は通る気もしますが、しますが……放映当時も思いましたが、どうしてこの仕様?!
……まあ、玩具ありきだったのはわかりますが、どうして《スーパー戦隊》に一人乗り兵器の玩具を投入しようと思ったのか、気分はドンブラザーズ。
「ジャイアントローラー・シュート!」
……ドン・モモを思い出したら、ちょっと時代を先取りしすぎただけの気もしてきたジャイアントローラー、つまりはジャイアント神輿が起動すると、全くスクラム感のない巨大タイヤが物凄いスピードで地面を爆走してバラハッカーをざっくりと轢き殺し、隊長一人だけ、強化が《平成ライダー》ぽいペース(笑)
哀れな轢死体と化したバラハッカーが巨大化すると、今回は牛ヘッドの頭突きとピラミッドヘッドの重力光線で、オーロボの能力は手堅く見せながら、クラウンファイナルクラッシュ!
バッカスフンドは頭から火を噴いて錯乱し、オーレンジャーは恐るべき敵を退けるのであった。
次回――1クールの間にあって良かった昌平回。