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鉄骨の錬金術師

仮面ライダーガッチャード』感想・第3話

◆第3話「ブシドー、見つけたり。」◆ (監督:山口恭平 脚本:長谷川圭一
 他人の幸せを嫉み、通り魔に堕ちようとしていた男がキノコケミーと融合してキノコマルガムとなり、てっきり共通かと思っていたミイラボディがちょっとアレンジされて、キノコの傘を帽子に見立てた形で頭上に指をかけているのが、お洒落。
 宝太郎が初登校した錬金術アカデミーでは、タブレットで喋る男と関西弁の女が同級生として登場し、ひたすら声が大きくてテンションの高い宝太郎に対し、どこまでも平熱で接するミナト先生は宝太郎に武士道ケミーを預けると、生徒たちにケミー回収の任務を与えて送り出し……やはり先生は、都合のいい兵隊を手元に確保しておきたかっただけなのでは。
 「よろしくで、ござる!」
 そして宝太郎、渾身の挨拶ギャグ、滑る。
 解放されたケミーは、宝太郎以外にもアカデミーの面々が回収を進めており、ガントレットのような装備でケミーを封印したりケミーの力を扱う事ができる描写は、仮面ライダー以外の活躍の場の確保としても、ケミーに直接的に触れる機会が増える点でも、良かったところ。
 「ケミーがまたマルガムに……こんなのケミーが望む事じゃない!」
 ホッパー1に引きずられてキノコマルガムと遭遇した宝太郎は、さっそく素材に武士道カードを使ってみようとするだが、その「ござる」語尾、馬鹿にしてるよね? と具現化した日本刀で斬りかかられ……まあ概ね、自業自得だと思います。
 慌ててスチームホッパーでやり直すと、笑い胞子を回避しつつバッタワープキックを放つがキノコ傘で打撃無効され、痺れ胞子の直撃を受けて変身解除で倒れ、第3話にして早くも初の完敗、をヤクザファッションの男が見ていた。
 「仮面ライダーは特別な力だ。ケミーの力を何倍にも引き出せる。……だが、それもまた、使い方一つだ」
 不祥事ーーー始末書ーーー減給ーーーの前にもみ消しーーーーーと宝太郎を拾ってアカデミアで治療を施したミナト先生は、存外と先生らしいところを見せ……まあ、ほとんど何も知識を与えないまま、戦場に送り出しているのはミナト先生なのですが、駒には余計な知識は必要ないですからね!
 体調の回復した宝太郎は、改めて「武士道」を理解しようと剣道場で木刀を振るい始め……つまり、これは特訓です。
 だがそこに現れる…………明らかにカタギの人が関わってはいけない配色の男。
 「見ていたぞ。おまえの無様な戦い」
 「……錬金術師?」
 「おまえが仮面ライダーに選ばれたのは何かの間違いだ。間違いは即座に正さねばならない。……そのドライバーを俺に渡せ」
 明らかに面倒くさそうな人だが、道場にはちゃんと、素足で入ってきていた!
 3ポイント!
 「……嫌です。渡しません」
 「……そういうところだ。自分の実力も、自分が何者かもわかっていない」
 額に手を当てた男は、壁にかけられた木刀に手を伸ばすと、
 「俺の美学に反するが……」
 振り向きざまに問答無用で不意打ちした(笑)
 美学で自滅する人とか、美学を言い訳に働かない人とか、美学がありそうでない人とか色々居ましたが、美学を見せる前に自分から道に捨てる人は、新しいな……!
 「言葉が通じない奴には、力で教えるしかないだろ」
 ファッションだけではなく理屈もヤクザだった男は木刀を振り回して宝太郎を一方的に打ち据え……えー、あー……盛り上がっているところ大変申し訳ないのですが、実力の差を見せつけたいなら、せめて錬金術を使うべきなのでは……?
 「俺は見たいんだ!」
 「……見たい?」
 「未来を……人とケミーが一緒に自由に生きられる未来を! その為に俺は仮面ライダーになった!」
 山賊からドライバーを守ろうとする宝太郎の中では、事の因果が逆転し、まあ、だいぶ思い込みの強い性格のようですし、理不尽な暴力に曝されて木刀で何度か殴られたショックで物事の前後が混乱を来しても仕方なくはあるかもしれません。
 それはそれとして、宝太郎のケミーへの過剰な思い入れの理由が、今のところ劇中で宝太郎だけが理解・主張し、視聴者にも見えない“ケミーの気持ち”に対する好意的な解釈のみ(全て主人公の内部だけで処理されている)なのは、主人公の感情の爆発に、大変ノリにくい部分。
 ……なんというかちょっとこう、「ヒューマギアは夢のマシン」を思い出しますが、『ゼロワン』が、それがある程度、地に足の付いた発言の世界観なのかと思っていたら話が進むほどに主人公の足が地面から離れていったのに対して、今作の場合は、宝太郎の足が全く地面についていない所から始まっているので、アプローチそのものは逆ではありますが。
 裏を返せば、現在の宝太郎の言行の根拠と説得力が、後期・飛電或人ぐらいなので、こう転がしていくのならもう少し、パイロット版の内にホッパー1との繋がりに焦点を当てて、劇中人物たちは理解できないが視聴者は宝太郎の言動に頷けるように描いてほしかったところです。……一応、回想シーンを入れて補強しようとしてはいるのですが、むしろその回想シーンが、そんなケミーに思い入れを抱くような場面だった……? みたいになっているので(笑)
 企図しているところは、周囲からどんなに無理と笑われようとも大きな(子供みたいな)夢に突き進む主人公、といったものなのかもですが、「劇中で理解を得られない」のと「視聴者がついていけない」は別物なので、立ち上がりとしては、そこのボタンのかけ方で丁寧さを欠いてしまった印象。
 「ケミーは生きてる! 心だってある! 道具なんかじゃない!」
 「寝言は寝てから言え!」
 宝太郎を守ろうと、強盗に突っかかっていたホッパー1が木刀の餌食にされそうになると、身を挺してホッパー1をかばい「ケミーは仲間」を実証してみせた宝太郎は、起死回生の錬金フライングヘッドバットを叩き込み、錬金術の基本も、体力……!
 この一撃が武士道ケミーの高評価を得ると、「笑えないジョークだ」と捨て台詞を残して山賊まがいのヤクザは去って行き、キノコマルガムと戦うりんね&ミナトの元に駆けつけた宝太郎は、武士道とスケボーを悪魔合体させた、真っ赤な鎧の天晴れスケボーフォームへと変身。
 斬撃属性でキノコの傘を切断すると竜巻ライダーキックでキノコを撃破し、新武装の弓矢が『鎧武』の追加装備っぽいのは、鎧武者繋がりで狙ったデザインでありましょうか。
 キノコケミーをカードに封印するガッチャードだが、直後、りんねの背後に身を潜めていた潜水艦マルガムが出現。宝太郎・ミナト・りんねは海フィールドにより行動不能に陥り、迫り来る潜水艦からりんねの危機を救ったのは、一発の銃弾。
 「やはりケミー回収に派遣されたか――黒鋼スパナ」
 クレジットでわかってはいましたが、凄い名前のその男は、宝太郎からドライバーを強奪しようと暴力行為に及び、今も多分、宝太郎の後をつけてきていたヤクザ配色の山賊。
 「大切なのは――美学」
 ……貴方さっきそれ、主人公との初顔合わせの直後に道に捨てましたけどね!
 「鉄鋼!」
 巨大スパナ剣にカードをガチャコン、とはめた男は、半人半機といった風情で邪悪な容貌の仮面の戦士へと姿を変え、あくまでも「“仮面ライダー”ではない」という事で、独自の変身コールを持った、《メタルヒーロー》的なアプローチに。
 「なんだおまえ? 人の純愛を邪魔しやがって!」
 「純愛だと? 笑えないジョークだ」
 を決め台詞にしたい模様の仮面ヤクザは、更なるカードを用いて左腕をショベルモードにすると、マルガムの放った魚雷を一撃粉砕。
 「美学なき者は――この、ヴァルバラドが消し去る」
 既にボロ雑巾のようになって道ばたに転がっている「美学」については不安しかないですが、〔重装甲寄りのフォルム・全身に機械油風味の汚れ塗装・左半分にスパナのモチーフを取り込みつつ邪悪なマスク〕と、ヴァルバラドのデザインは大変格好良く、活躍に期待したいところで、つづく。
 第3話にして、新フォームに新戦士登場、といつもの忙しい感じになってきましたが、現在一番気になっているのは、アカデミーにおけるケミーの位置づけ。
 第2話りんね
 「10年前、錬金アカデミーで管理していた、101体のケミーを盗んで、姿を消した」
 を素直に受け止めると、
 「10年間、アカデミーはケミーを所有していなかった」
 になると思うのですが、その割にはアカデミーの学生がケミーをごく普通に扱っているのは凄く引っかかるところで、ドライバーおじさんが盗んだ101体はオリジナルで、ケミーカードの複製品が流通しているという事なのか、或いは盗んだケミー以外にも沢山ケミーが存在しているという事なのか。
 ケミーの設定上は、10年の間に新しいケミーが生まれていてもおかしくはないのですが(これはその内、出てきそう)、ヴァルバラドにしても、肝心のケミーカードが存在しないのにシステムだけ開発されていたの……?(120年前の錬成人間を参考に10年以上前から存在していたのかもですし、関西支部には別のケミーストックがあるのかもですが……)とか、ケミー周りのあやふやさが、あちらこちらで細かい引っかかりを生んでしまっています。
 これは、宝太郎が入り込んだ“錬金術師たちの日常”を描く前に、ケミー回収ミッションに突入してしまった事に原因の一部があり、宝太郎のケミーに対する思い入れ過剰が掴みにくいのも、“錬金術師たちの日常”における“ケミーとの関係性”を駆け足でしか見せていないので対比が巧く成立していない為なのですが、第3-4話でそこをゆっくり描いて次の波乱に繋げる……という作劇が出来ない現行《ライダー》シリーズの難しさを感じるところです。
 また、「10年間、アカデミーはケミーを所有していなかった」とすると、そもそも若手の錬金術師たちは“日常”にケミーが居なかったので、関係性と呼べるほど関わった経験がない事になり…………あ、あれ? けっこう巨大な、設計ミスが発生している……?
 10年の空白を念頭において、そこの対比を明確にして主人公に強烈なアンチテーゼをぶつけさせようとすると、スパナさん若くても30歳ぐらいでないとバランスが取れない事になってしまうわけですが……実はミナト先生と同窓だったりするのか、或いは5歳ぐらいからアカデミーに通っていた天才少年なのか……宝太郎に対する怒りの見せ方からすると、過去にケミー絡みのトラウマ持ちっぽくはありますが。
 なんにせよ、割と巨大な“10年の空白”を例外処理で埋めようとすると「101体」という数字の意味が薄れるし、いやその101体が現存しているケミーの総数です、にこだわると、実は錬金術師の皆さん、言うほどケミーに触れていない、となるしで、果たしてその辺りの辻褄を、合わせる事が出来るのやらどうやら。