東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

フィナーレは三角締めで

仮面ライダーウィザード』感想・第7-8話

◆第7話「思い出を買うために」◆ (監督:舞原賢三 脚本:香村純子)
 瞬平と輪島とドーナツ屋の店員は駄目男トライアングルの絆を手に入れ、意外と出番が多いのに、「ドーナツ屋の店員」は、いつまで「ドーナツ屋の店員」なのでしょうか。
 一方、晴人から愛美が詐欺師であったと説明を受けた資産家の青年・山形は、愛美がただ身勝手なだけの詐欺師だったならば、怪物に襲われた時に逃げ遅れた自分に手を伸ばす必要は無かった筈……と自分がいいカモであった事を認めながらも、愛美の中にある真心を信じると告げ、前回の行動が巧い伏線に。
 「だから、僕は信じます。彼女には、お金が必要な何か事情があったんだって」
 (まだよ……こんな事で諦めるわけにはいかない。絶対に)
 そして、警察の追求を逃れる為に東京を離れようとする愛美は自宅でソムリエファントムの襲撃を受け、安アパートの壁に、磨き抜かれた釣り竿もとい美麗な衣装の数々が並んでいるのが、愛美の置かれたいびつな状況を示していて秀逸。
 ファントムはウィザードにより撃退されるが愛美はまたも姿を消し……部屋に残されていた写真などから、愛美が、一軒の家を買おうとしていた事が明らかになる。
 それはかつて幼い愛美が暮らし、父親が詐欺に遭って失った屋敷であり、それに伴う一家離散を経験し、その家を心の拠り所としながら懸命に生きていた愛美は、家が売りに出されると知ってなんとしても手に入れなければ……と犯罪に手を染めていたのだった。
 「俺やあんただけじゃない。他にも沢山居るよ。……家族を失った人」
 辛く哀しい過去を、誰かを傷つけていい理由にさせない為に、晴人は自らの過去の一端を明かすと、愛美をなんとか幸せだった過去の記憶から解放しようとし、前回が割とギャグ多めだったのは後編とのバランスを考えていたのか、今回は終始シリアスで、関係者の過去も重め。
 主人公の姿勢も含め、立ち上がりここまでのところ、指輪や魔法といったギミックの派手さとは裏腹に、割とストイックな仮面ライダーという印象ですが、そうなると瞬平は、70年代的なコメディリリーフに近い、やや過剰なキャラ付けをする事で全体のバランスを取ろうとしていたのかな、というのは見えてきます。
 「あんたの希望は、俺が守る」
 愛美の心の支えを知ったソムリエファントムが家に放火すると絶望に崩れ落ちそうになる愛美だが、晴人はいきなりすいすいすいで青ザードへと変身するとあっという間に家を消火し、凄いぞ魔法使い。
 「俺が言いたいのは、過去ばっかり見て、今を捨てんなってこと」
 ピアノ回に続いて、晴人の基本スタンスが固められ(これを、コヨミ→ゲート、晴人→ゲート、と主体を変えて言わせたのは巧妙に)、OPナレーションの「今を生きる魔法使い」が、「現代に生きる魔法使い」と「“今”を生きようとする操真晴人」のダブルミーニングになっていたのは、お洒落。
 「指輪の魔法使い! どこまで邪魔する気ですか!」
 「……どこまでもに、決まってるだろ」
 は大変格好良く、今回お気に入りの台詞。
 「……そうよねぇ……ここにはもう……誰も居ないのよね」
 家族写真を手に取った愛美は涙をこぼすと、過去にすがりついていた自分から“今”へと一歩を踏み出し、ここは『電王』踏まえたスタッフと役者さんの信頼関係の見える芝居でしたが、(毎度CGバトルを出来ない事情もあるとはいえ)絶望に繋がる破壊行為が為された後も、ウィザード(晴人)の言葉がゲートの開放を踏みとどまらせるパターンを一つやっておけたのも、良かったところ。
 今回もソムリエミサイルを受けたウィザードは、ファントムを頭上に持ち上げた体勢から力一杯投げ飛ばし、突然、プロレス路線になる魔法使いの基本は筋力……!
 地中に潜ったファントムによる匂いマーキングからの奇襲攻撃に苦しむウィザードだが、調子に乗ったソムリエが嗅覚を自慢すると、青ザードから黄ザードに変わってビッグモグラ叩きの術から、サブミッションで強制指輪装着してのおなら魔法により大ダメージを与え、“組み技使いの魔法使い”路線は、ライダーバトルとしての新味もあって、今後も期待したいポイント。
 あまりの悪臭に危うくファントムを生みそうになったソムリエファントムが逃げ出したところを、側転からのウィザードリルキックでフィナーレが飾られ、警察に出頭してやり直す事を晴人に告げる愛美だが、そこに凛子が連れてきたのは山形。
 愛美の心根の良さを信じる山形は、思い出の家を買い取り、いつか愛美が買い戻しに来る日まで所持している事を約束し……だいぶ甘めのスイートエンド。
 まあ愛美が詐欺に手を染めたのは、家が売りに出されると知ってからなようなので、余罪はさして無さそうですが。
 ラストにちょっと融通を利かせていいところを見せた凛子さんからは、たとえコヨミちゃんと同じフォルダには入れなくとも、最低限、瞬平と同じフォルダに放り込まれる事は回避してみせる……! という力強い意思を感じます。
 いざという時は、輪島を瞬平と同じフォルダに叩き込んでやればいいや、と考えています。
 「ノームがしくじったようね」
 最後の最後でファントム名がようやく出されて、激昂するフェニックスの姿で、つづく。……「地中」と「嗅覚」の繋がりがわからなくて首をひねっていたのですが、素体となった人間の能力ベース、という感じの模様。

◆第8話「新たな魔宝石」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
 見所は、
 「凛子が警察に捕まった」
 のコヨミちゃん表情と口調(笑)
 隙あらば警察さえも警察に捕まる平成ライダー砂漠、チベットからの小包……もとい、謎の白いガルーダが面影堂に新しい魔宝石を配達していき、送り主不明の怪しいブツをさっそく指輪にしようと作業を始める輪島。
 前回とは違うタイプの詐欺かもしれないけれど、大丈夫か、輪島。
 まあ、晴人とコヨミを家に住まわせ、やっている事は大体、“70年代ドラマに出てくる昭和の金持ち”なので、骨董屋は道楽でしょうか、輪島。
 そんな怪しい魔宝石にコヨミが不吉な気配を感じる中、瞬平と似たファッションの少年がグールに襲われ、ダッシュ変身からスムーズに殺陣に移行すると、壁蹴りジャンプアクションを真上からのカメラで撮る流れが大変格好いいのですが、クレジットの「アクション監督:石垣広文」を見る度に、振り袖姿のシュヴァルツ(『重甲ビーファイター』)が脳裏にちらついて困ります。
 未成年の保護者にゲートとファントムについて説明するのは、一歩間違えると改めて警察を呼ばれそうだな……と思っていると、少年の母親が晴人と旧知で話はトントン拍子に進み、留置場行き(7話ぶり2回目)にならなくて良かった!
 そして、少年時代に両親を交通事故で失っていた晴人の過去が描かれ……
 「忘れないで、晴人。あなたは……お父さんとお母さんの、希望よ」
 「僕が、希望?」
 「そうだ。晴人が生きててくれる事が、俺達の、希望だ。今までも……これからも」
 ここは脚本家も連続でむしろ今回の為の布石だったようですが、前回触れられた晴人の家族について溜めずに明らかにされるのは、実に『ウィザード』らしいペース。
 「……俺は父さんと母さんの――最後の希望だからね」
 幼い子供を残していく両親の「子供に生きていてほしい」という願いが、残された晴人にとっては「自分の死は両親の完全なる死でもあるから、生きていなくてはならない」想いとなって、晴人の精神を支えると共に縛ってもいるかもしれない事が示唆され、両親の死を背負い続ける言葉を、笑顔で晴人が口にするのが、なかなかの辛さ。
 この「希望」が何を意味する言葉になるのかは今後の物語次第といった気配ですが、誰かの「希望」であり続ける事は、現状あまり明るいばかりのニュアンスに思えないというか、究極の自己犠牲であるのかもしれないと、そんな風にも感じられます。
 となると、いずれ晴人が、晴人自身の「希望」を見つけ出す物語になっていくのかな……という気もしますが、まあ私の、「祝福というより呪い」趣味が出てますね!(笑)
 ゲートの少年は両親に反発しており、面影堂で一時預かりする事になると、
 「お母さんはおまえの事が心配だから、俺に預けたんだ。俺がお母さんの知り合いで――俺が魔法使いだから」
 と、子供の気持ちにも寄り添い、窓からの光を背に諭す晴人の姿が大変格好良く、今のところ全方位に隙が少ない一方、やはりどこか、自分は「魔法使い(ヒーロー)」であると言い聞かせているような節は見えるところで、これは今のところ今作における「ヒーロー」とは何か、にも直結する形に。
 一方、指輪の魔法使いの存在にストレスを溜めるフェニックスは、直接行動の許可を直談判し、これまで名前だけだったファントム上司――ワイズマンが、カーテン越しに初登場(シルエットはベッドに寝ている人間で、声は古川登志夫)。
 出撃許可を受け、ワイズマンより策を与えられたフェニックスは、少年を絶望させる為に少年の母に重傷を負わせ、あまりにもえげつない行動で晴人と初顔合わせ。
 「お望み通り、俺が遊んでやるよ」
 「おう。楽しませてもらうぜ」
 炎の大剣を取り出したフェニックスは、赤ザードの炎も、青ザードの水流も通用せず、ただの粗暴な暴れん坊ではなかった実力を見せつけてウィザードを圧倒し、ウィザードは川に落とされて、つづく。
 謎の宝石配達、明かされる晴人の少年期、子供担当に収まる瞬平、からゲストを容赦なく巻き込んだ凶悪な展開は幹部出馬にふさわしい衝撃でしたが、1クール持たずに基本4属性が役立たずになってしまわないかはちょっと不安です(笑)
 後、コヨミ・凛子・瞬平、の扱いが、ローテーション形式みたいになっているのは、作劇としてはやや気になるところ。まあ、そのぐらい思い切ってフォーマット化してしまった方が、脚本は書きやすくなりそうではありますが。
 次回――竜の魔法使い、誕生。