東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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ツバサよあれがパリの灯だ

仮面ライダーV3』感想・第39-40話

◆第39話「人喰い植物バショウガンの恐怖!!」◆ (監督:内田一作 脚本:海堂肇)
 貧しくもつつましく暮らす姉弟の姉が、食肉植物カエンバショウに擬態した怪人バショウガンによって地中にさらわれ……ツ、ツバサは?!
 ここに来て初見の脚本家でしたが、別名義の香りがするな……と思って確認してみたところ、企画・プロデュースを務める、阿部征司と平山亮の共同筆名との事。
 今作前半にも幾つか作例の見える、貧しくも清く生きる事が“美”にして“善”であり、それを踏みにじるものこそ“悪”である、というフォーマットで話は進み、この時代の“泣かせ”のドラマが、今見ると入りにくい内容。
 また、子役へのスポットが強いのですが、姉の失踪に悲しむ少年の泣き声をBGMに、志郎のモノローグを延々と聞かされるのは、テンポも悪くてだいぶ辛い。志郎の内心に触れながら、少年の姉を救い出してみせる! と盛り上がりを作ろうとしていくのですが、それをやるなら“姉”ではなく“妹”だったのでは……? と、基本設定とセオリーのキャラ配置もいまいち噛み合わない事に。
 そしてなにより……
 少年姉の行方を捜す志郎の前にデストロン妨害工作に現れると、戦闘員は蔦のムチを振り回し、だ、だから、ツバサは……?!
 が、全編を通して気になって仕方がありません(笑)
 デストロンのアジトで目を覚ました少年姉の前では、トラブルで名乗り損ねたツバサ大僧正が「植物人間バショウガン」と明言しており、ツバサはー?!
 消えてしまった翼の行方はインターポールの佐久間ケンに追ってもらうとして、大僧正は、バショウガンの毒液と高圧電流の組み合わせにより捕らえた人間を縮小し、改造人間の素体として保存しておく計画を進めており、小型化された人間がビーカーの中に詰められているのは、悪夢的映像。
 大僧正は少年姉の目の前で縮小実験を実演し、既に一般市民複数で成功しているのに、どうしてまたわざわざ戦闘員で実験を……? と思ったら、電流を流すと戦闘員の肉体が縮小されて服の中身がしぼんでいく、のは面白い映像でしたが……縮小された市民の皆さん、服、来てるような……と思ったら、
 「……死んだか」
 失敗したぞ(笑)
 目の前で無残な実験失敗を見せつけられた少年姉が、明朝の実験決行を宣告された頃、立花家に匿われた少年は悪夢にうなされており、この時代の特撮に時折ある、ゲスト女性の苦悶の表情などの大写しを繰り返す話法で進行するのも、ちょっと辛い。
 目を覚ました少年を気遣っていた一同が、不審な物音に気付いて様子を見に行くと、満面の笑みを浮かべた志郎は、隣の部屋に戦闘員を転がしていた。
 そして、小学生の子供が見ている前で、肋骨に肘を叩き込んだ。
 お茶の間に流せない拷問シーンはスキップされると、志郎は聞き出したアジトへと突入して少年姉をはじめ縮小された人々を無事に解放し、怪人が戦闘員の口封じに間に合わず、ヒーローとすれ違っている間にアジトが弾け飛んでいるミラクル(笑)
 志郎と入れ違いになったバショウガンはようやく戦闘員を抹殺すると、もののついでに藤兵衛らを襲おうとするが、暗闇の中で緑の瞳を輝かせる微妙な演出でV3が駆けつけ、激突。
 ツバサ軍団としてのアイデンティティに謎の多いバショウガンですが、明るいところに出てくると、頭部に触角めいたパーツがあったり、微妙にフォルムが蛾っぽいといえば、ぽいのか……?
 V3スカイキックが炸裂するとバショウガンは溶けて消え、姉弟は無事に再会。
 (いいもんだな…………姉弟か)
 亡き家族に思いを馳せながら志郎は夕陽の沈む海を見つめ。
 ナレーション「今日もまた、一つの愛を救ったV3。しかし彼には、愛し合う親や兄妹も居ない。だからこそ、だからこそ彼は、一つで多くの愛を救おうと、明日の戦いへの決意を固めるのだった」
 いつもとだいぶトーンの違うナレーション(喋り方もゆっくり)で締め、志郎の内面に触れながら、そもそもの動機付けを現在のヒーロー活動と結びつける切り口には面白みがあったものの、なにぶん、およそ3クールすっ飛ばしていた要素なので、そこに触れるには触れるなりの段取りが必要であり、全体的に唐突で、ノりにくい内容でありました。

◆第40話「必殺! V3マッハキック!!」◆ (監督:内田一作 脚本:海堂肇)
 これで4話連続、OPのクレジットからも名前の消えた佐久間は、ひっそりパリに帰ったと思って安心していいのでしょうか。
 首都圏の団地で頻発する奇っ怪な蒸発事件の影には、「ヒマラヤの悪夢」と名付けられたビールスに耐えられるかどうかを試す為、団地の人間に次々とウィルスを打ち込んで回る怪人・死人コウモリの姿があった!
 今回は新聞配達をしながら学校へ通う二人きりの兄弟が描かれ、赤黒い皮膚と長い舌が気持ち悪い死人コウモリにより、ビールスを打ち込まれてしまった兄は、不幸中の幸いでウィルスには耐えたものの、デストロンの命令に忠実な有毒戦闘員へと変貌してしまう。
 様子のおかしい兄を尾行した弟とシゲルは、深夜に蛾を貪り喰う兄の姿を目撃。デストロンに始末されかけたところをV3が助けに来るが、そのV3は死人コウモリの必殺技、高速回転からの逆さ落としにより、下で見守っていた少年を巻き込んで完敗を喫する衝撃の展開。
 ツバサ大僧正は、首都圏各地の団地にコウモリビールスを持った有毒戦闘員を配置し、一斉に暴動を起こさせる作戦を首領にプレゼンし、
 「今度失敗すれば死だ。わかっているな」
 「死?」
 と呟いたところで背後の扉が開くと、差し込んだ光の中に新たな大幹部のシルエットが浮かび上がるのは、大変格好いい演出。
 墜落したV3、の直撃はやはりまずいと思ったのか、墜落したV3、がぶつかって倒れた木の下敷きとなり、危篤状態の少年に生きる力を与えようと、打倒・死人コウモリの為にやることは一つ……特訓だ!!
 かつてない強敵怪人を前に弱気を見せて藤兵衛に平手打ちを受けた志郎は、死人コウモリを打ち破る技を開発するべく満身創痍の体で孤独な特訓に挑み、最終的には藤兵衛のエールを受けて、空中での新たな姿勢制御のスキルを修得。
 「デストロン! 風見志郎だ! 出てこい!」
 立ち乗り変身を決めたV3は、死人コウモリをおびき寄せる為に戦闘員を闇討ちして屍山血河が築き……じゃなかった、自らの血液を川に流し、まんまと誘い出された死人コウモリと激突。
 久々の豆鉄砲キックを防がれ、再び空中で高速回転から投げ飛ばされるV3だが、特訓で鍛えた三半規管(多分、内部プラグラムがアップデートされた)により空中での姿勢制御に成功すると、その回転を逆に利用してブーメランのように舞い戻って放つV3マッハキック! を死人コウモリに叩き込む……が、サブタイトルにもなっているのに、倒せなかった(笑)
 粘る死人コウモリの作り出した地割れに飲み込まれると不気味な地下洞穴での戦いとなるも、すぐに外に出てしまってあまり意味はなく、V3の追撃を受けた死人コウモリは、マッハキックを受けた時に羽が折れていた事を自己申告して地面に倒れ、ツバサ大僧正の正体を曝す。
 「デストロン首領よ、永遠に栄えあれ……」
 死にかけの昆虫のように地面でジタバタしていた大僧正は、自ら準備していた棺の中に入ると爆死を遂げ…………う、うーん……どうにもパッとしないまま最期を迎えてしまいました。
 どうしてもキバ一族の二番煎じになる構成も難しかったのかもですが、一族怪人のフォーマットさえ貫けず、結局、ツバサ軍団で一番インパクトがあったのは、先鋒のコンドル怪僧だったという事に(笑)
 キャラクターのみならずバトルのキレも悪く、マッハキック後の地上戦とか明らかに余計なのですが、折角作った洞穴セットの使いどころが無くなってしまい、余った尺を埋めるのに使ったら、戦いの流れがちぐはぐになったりしてしまったのでしょうか。
 前回今回と「喪った家族の事を想う志郎」「強敵を前に弱気を見せる志郎」と、ヒーローの内面に触れるアプローチを見せたのですが、果たして4クール目でそれが跳ねる事はあるのか……次回――4人目の大幹部登場!!