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死と再生の筺

仮面ライダーガッチャード』感想・第2話

◆第2話「追跡、錬金、スケボーズ!」◆ (監督:田崎竜太 脚本:長谷川圭一/内田裕基)
 錬金術によって生まれた奇跡のモンスター、ケミー。ケミーカードの封印が解き放たれた時、一人の少年に運命が託された――

 前回までのあらすじ、は音楽もナレーションも明るい雰囲気で進み、困ったドライバーおじさんの名前もメタ情報として公表。
 OPは、映像も曲調もこれまた明るく爽やか路線で、基本的な今作の方向性を示していそう。
 映像を見ると、日常の学園と神秘の錬金アカデミー、九堂りんねに倣って主人公も二足のわらじを履く形になるようですが、現代文明の象徴がスマホ錬金術の象徴がケミーカードで現されている、といった感じで、やたらとごついアーマーを身につけたセカンドライダーと、その変身者らしき男も最初から登場。
 「俺は錬金術師であり、錬金アカデミーの指導教員だ」
 前髪オープンしたミナト先生は素性を明かすと、ほぼほぼ誘導尋問で主人公・宝太郎を錬金アカデミーに勧誘し……非常事態に便利な手駒を増やそうとしているようにしか見えないのですが。
 それがおまえのガッチャなんじゃないの? と先生にノせられた宝太郎はほいほいとついていくと、前回りんねが入った謎の扉がアカデミーの入り口であったと判明し、背景事情も特に気にしないまま錬金術の施設にかぶりつく宝太郎。
 この後、写真の顔が見えない宝太郎父は、自分で建てた食堂を捨てて夢を追いかけて放浪の旅へと飛び出し、母はそんな父親が素敵と受け入れると残された食堂を経営しながら息子を育てている事が明らかになり、主人公一家は、えー…………キ……キ……奇矯路線。
 なかなか振り切れた家族設定を持ち込んできましたが、やるからには作風として徹底的に貫きつつ活かしてほしいところです。やはり、中途半端に正気に戻るのが一番良くないと思うので。
 アカデミーでは、ドライバーについて宝太郎に問いただしたりんねが、“知らないおじさん”の心当たりを口にする。
 「裏切り者――10年前、錬金アカデミーで管理していた、101体のケミーを盗んで、姿を消した……だから、裏切り者」
 前回のあらすじやキャストクレジットで特に隠されていないドライバーおじさんの正体は、なにやら訳ありのりんね父である事が回想でハッキリとし、かつて存在したとされる英雄――暁の錬金術師――の活躍を描いた絵本が登場するなど、割とオーソドックスな要素を置いていく路線。
 前回も思いましたが、《平成ライダー》20年あまりの積み重ねを活用しつつ、ここ数年の《仮面ライダー》が囚われていた“ややこしさ”みたいなものから一度離れたい、みたいな意識がなんとなく感じられます(勿論、全く見当違いの可能性はありますが)。
 その結果なのかどうか、知らないおじさんから貰った変な箱で仮面ライダーになった事を平然と語る主人公が、改めてだいぶキ……キ……奇矯な人格になりましたが、ヒーローの狂気自体は大好物なので、面白い狂気になってほしいところ。
 宝太郎が、先生から出された入学試験の課題に悩んでいた頃、錬金フラッシュを受けて記憶操作をされたメガネ友人は、スケボーケミーが憑依したスケボーが自在に動き回る超常的な光景を目撃。持ち主の少年を乗せた錬金スケボーは次々と華麗なトリックを決めて夢一杯……な光景が描かれるが、そこに通りすがった強盗犯の悪意の影響を受けると、スケボー怪物に変貌してしまう。
 「そもそも、錬金術ってなんなの?」
 「――無から有を、死から生を産み出す術」
 今更な疑問を抱いた宝太郎の疑問に答えて、りんね(だいぶ親切)は無機物に仮初めの生命を与える錬金術を実演してみせ、問題となっているケミーは、本来は長続きしない錬金術が大当たりして、無生物が本当の生き物になってしまった存在だと語る。
 「ケミーは世の秩序を乱す。人に取り憑いたりもする」
 その言葉の通り、暴走したスケボーケミーは雑な強盗の放出する悪意を飲み込んで融合を果たし、ミイラ素体共通のスケボー怪人が誕生――その名を、マルガム。
 前回の幹部変身は特別な扱いとなったマルガム、素体共通にマスク&アーマー装着は近年の怪人トレンドですが、“生と死の中間的存在”にして“内部に人間を封じているともいえる”ミイラモチーフは、秀逸な素体デザイン。
 「でも危険なのは奴らだけじゃない。この世界には、悪意を持つ人間は幾らでも居る」
 りんねの語りに続いて、スケボーマルガムによる現金輸送車の襲撃が描かれ、ケミーに関する基本設定とマルガム誕生を並行して描く事により、画面に変化を持たせて単調にならないようにしつつ、“この世界で実際に起きている事”として説明と事象を繋げて双方に説得力を与えたのは、手堅くも鮮やかな演出でした。
 「だから、私たち錬金術師の一族は、ケミーをカードに封印してきた。この世界の秩序を守るために」
 そもそもケミーを産み出したのは錬金術との事なので随分とマッチポンプに聞こえますが、秩序を守る為の活動の一つ、といったニュアンスでありましょうか。
 一般人視点だと、今のところ錬金術師の存在が一方的に世界の秩序を乱している感じなので、早めに基本的な活動内容には触れてほしいところ。
 「……封印するしか手はないのかな?」
 「……え?」
 宝太郎が、外から風を吹かせる者として、まだ思いつきレベルの一石を投じる中、マルガムサーチャー機能を発揮したホッパー1に引っ張られる形で二人はスケボー怪人と遭遇し、スケボーに乗るスケボーマルガムは面白かったです(笑)
 マンホールで素体の動きを封じてケミーとの分離に成功するりんねだったが、強盗の悪意の方が強く失敗。
 「おまえの中のスケボーくんはただ楽しく走りたいんだよ。その願いを歪めるのは許せない!」
 宝太郎は、ケミーの感情に共感し、ケミーの為に怒れる事を行動原理としてガッチャードに変身するとスケボーマルガムと激突。
 左腕のカードデッキから呼びかけてきたカマキリと踊り子を使用して特殊攻撃を放つも逃げられてしまうが、そこにバイクケミーにまたがったミナト先生がわざとらしく現れ、ミナト先生は今のところ、微妙に格好つけた曲者路線ですが……まあなんか色々な意味で、ちょっと少女マンガ系の造形には感じます(笑)
 「一ノ瀬には、ケミーの気持ちが、わかるみたいだな」
 ミナト先生から補足が入ると、免許持っているのか割と不安なガッチャードは金ぴかのバイクにまたがってスケボーを追いかけ、バイクアクションからカマキリ連射、そして怪奇バッタワープキックでフィニッシュ。
 ケミーとは何かを丁寧に説明する一方で、ケミーを人間の悪意から分離する手段については説明ゼロのまま、中身人間に思い切り必殺キックをぶち込むのは必要な段取りをだいぶ飛ばしてしまった印象となりましたが……それよりなにより、解放されたと思って喜んだ次の瞬間、あっさりとカードに封印されたケミーの気持ちを、30文字以内で答えなさい(句読点含む)。
 融合の解けた強盗はその場に倒れたところを警察に捕まり、宝太郎はケミーを土下座説得する裏技でテストに合格し、青い錬金術師の指輪を手に入れる。
 「先生、希望する進路、大物錬金術師、て書いといてよ」
 一応、前回の進路調査とも繋げられましたが、主人公の行動原理を補強する背景や心情が掘り下げられるよりも、主人公は、目の前のワクワクするものに飛びつく実質小学生男子となり、ほぼほぼ、カブトムシすげーーみたいなノリ。
 視聴層を意識した意図的なものだとは思われますが、現状、そこに「マルガムとの戦い」が絡む点に関しては、どうも宝太郎、“自分の命の扱いが軽い”節があり、追いかけたい夢の為ならばそれ以外の優先順位が著しく下がるところが父親譲り、とされている感。
 「俺は、錬金術師になったら、全てのケミーと仲間になって、一緒に、自由に生きる――未来を」
 と、それはそれで危なそうな事を言い出すと(今のところケミー、生じた本能に忠実というか、「楽しく走る」為なら周囲の安全への配慮があるのかとか疑問なので……)、ルール遵守を旨とするりんねとは、対立はしないもそれぞれのやり方で、を確認しあうが、そんな二人を、職質待ったなしの巨大鈍器を手にした青年が見ていた。
 「錬金術師もどきが仮面ライダーだと……笑えないジョークだ」
 黒地に紫の襟のアカデミージャケットに紫と銀のネクタイを合わせたファッションセンスがヤ……緑の指輪をはめた男が姿を見せて、つづく。
 配色といい役者さんの顔立ちといい、“大きくなったステイシー”みたいな雰囲気の新キャラ、次回、「ケミーは道具」「ケミーは仲間」と、わかりやすい構図の対立になりそうですが、ここまで登場したメインキャラの中では一番顔が好きそうな感じなので、楽しみにしたいところ。
 色々と危うそうな部分はありつつ、今回、好感が持てたのは、ケミーが取り憑いたスケボーでミラクルトリックを決めて夢一杯、のシーンの存在。そしてその後の成り行きによって、「善意と悪意」「夢と悪夢」といった対比が劇中に印象的に盛り込まれた事。
 そして今作世界における錬金術は、「無から有」「死から生」に関わる技術と置かれ、言ってみれば宝太郎はドライバーを利用して変身する度に、錬金術の秘儀によってドライバーの中で「死と再生」のイニシエーションを行っていると位置づけられそうですが、「死と再生」のメタファーとしての改造人間手術の本歌取りをドライバーの中で繰り返しつつ、象徴的に対比される幾つかの要素を物語の中に織り込んでいるのは意図的な配置だと思うので、それらの点が有機的に繋がってくると私好みの物語になりそうで、期待。
 その一方、「カードに封印」した時点で「管理している」扱いなのかもですが、りんねの屈折と父娘の訣別に関係する他、アカデミーにとってはかなり重要そうなケミーカードを、宝太郎に預けて丸投げしている点についてはだいぶわからない事になっており、とりあえず、上層部への報告をねじ曲げたり、ミナト先生が好き勝手やっていそう……な事は伝わってきます。
 狂気を宿した爽快路線で走り抜けられるか、地雷に足を取られて転倒誘爆するか、立ち上がりだいぶスレスレのラインを走り出した印象ですが、きっとホッパー1が融合進化を繰り返して、頼れる八頭身の昆虫戦士・ホッパー8(CV:稲田徹)になる日が来ると信じています!
 「ほぉぉっぱぁぁぁぁ――変身!」