東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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あばよキバ、よろしくツバサ

仮面ライダーV3』感想・第35-36話

◆第35話「キバ男爵 最後の変身」◆ (監督:内田一作 脚本:伊上勝
 あまり長居されても困るといえば困るのですが、第33-34話は純粋な客演回だったという事なのか、なんの言及もなくダブルライダー先輩が居なくなり、そもそもの標的だった筈のキバ男爵、まだ倒していないんですけど先輩ぃ?!
 日本で飲み屋のツケでも溜まっていたのか、本郷と一文字がそそくさと姿を消した後、デストロンの秘密作戦を掴んだ、という男からの情報が公衆電話からライダー隊本部にもたらされるが、男は吸血マンモスの襲撃を受けると青ざめた顔でドロドロに溶け去り、残されたのは小さな鍵が一つだけ。
 現場を訪れた志郎は鍵を入手するが、キバ一族最後の一員・吸血マンモスの攻撃を受け、長い鼻を用いた首締めにより大ピンチ。
 「風見志郎、貴様を変身できぬまま、なぶり殺しにしてやる!」
 志郎が窮地に陥ったその時、駆けつけた佐久間が吸血マンモスの後頭部に角材を叩きつけ…………ダメージは、特に無かった。
 これが藤兵衛だったら多少のダメージは与えそうなところでしたが、志郎は鍵をパスした佐久間を逃げさせると、一瞬、優先順位の判断に悩んだKマンモスの隙をついて鼻をふりほどき、体の良い囮に使われる佐久間。
 逃げた佐久間の前には戦闘員が立ちはだかり、ダブルライダー客演回では出番の無かった佐久間、相変わらず気の抜けた炭酸水のような喋りで聞いているこちらの腰が抜けそうになります。
 吸血マンモスも姿を見せ、佐久間の命が風前にかき消えそうになったところにV3が現れると、本物の鍵は渡していない発言がブラフかどうかは不明ですが、包み隠さず囮に使われていた佐久間はV3によって救出され、少年ライダー隊に関わった以上、仮面ライダーの為に死に、仮面ライダーを永遠とする事で生きるのです。
 入手した鍵で開けたコインロッカーの中には複数の大物政治家の写真が収められており、キバ男爵はその誘拐と改造による日本頭脳改造作戦をもくろんでいた!
 ここから、3人の政治家の身柄を巡って志郎とキバ男爵の攻防が繰り広げられ、キバ男爵のラストバトルということでか派手な爆発シーンが連発。
 呪術を用いた脳改造手術のシーンは意味はともかく面白く、敵地に潜入するも、狭い牢屋の中で次々と戦闘員に襲われて変身を妨害される志郎だが(相変わらずデストロンの戦闘員は優秀!)、牢屋の中で飛び上がると、パイプに足を引っかけての空中逆さ変身の離れ業に成功。
 手術室にハリケーンで乗り込むと囚われの政治家たちを解放したV3は、キバ男爵の変身した吸血マンモスと激突。大地を揺らし、牙からミサイルを放ち、長い鼻を振り回す吸血マンモスに苦戦するが、最後はその鼻をもいだところにV3回転三段キックを浴びせ、勝利を収めるのであった。
 「キバ一族、遂に滅ぶ……キバ一族の火よ、消えよう……」
 変身の解けたキバ男爵は爆炎と共に弾け飛び、キバ一族、登場から5話で、全滅。
 実質的に、ダブルライダー復活を盛り上げる為の添え物として消費された大幹部となりましたが、牙と呪術にこだわったスタイルで軍団としての個性を出し、ダブルライダーが警戒する相手として格もキープし、結果としては賞味期限が切れる前に太く短い打ち上げ花火として散るのが巧くはまった形になりました。
 今ほど強化イベントの無い当時の作劇としては起伏が弱くなるのは仕方ない部分はあるものの、ドクトル・ゲーが案外と特徴の無いままダラダラと居座る形になってしまっていたので、“登場から退場まで”が実質一連のイベント回、という作りは悪くない切り口になったように思います。
 スミロドーンのキババイクと、ドクロイノシシの両脇に牙を抱えてチャージアタック! は印象深い映像となりましたし、割と嫌いではない大幹部。
 惜しむらくは、もっとタキシード男爵様を、推していただきたかった(笑)
 「ライダーV3、聞け!」
 「デストロンの首領!」
 「キバ一族は滅びた。だがキバ一族以上に、凶悪なる集団が、やがておまえの前に姿を見せる。その名はツバサ大僧正が率いる、ツバサ軍団」
 浜の真砂は尽きるとも、世にデストロンの種は尽きまじ! と首領が新たな大幹部の出現を予告して、つづく。

◆第36話「空の魔人 ツバサ軍団」◆ (監督:内田一作 脚本:伊上勝
 「チベットのマンジ教の教祖として恐れられるツバサ大僧正、私は大いに期待しているのだ」
 「ツバサ大僧正の、ツバサ軍団は、世界に恐れるもののない最強軍団」
 黒衣に赤影マスクを身につけた新たな大幹部が来日し、売り文句からは後の『大鉄人17』における、“東南アジアの暗黒街を仕切る伝説の黒幕にして、バラモン密教を操る、謎の怪僧”ブラック・タイガーを思い出して不安を誘いますが、前回のキバ一族に続き、世界各地の魔術集団を傘下に収めているデストロンの強大さを示す表現であり、デストロン会系ツバサ組といったところでありましょうか。
 ……これをもっとローカルにすると、『快傑ズバット』になるのだな、と(笑)
 東京上空に現れた、怪鳥の大群を追う志郎と佐久間の前に謎の怪僧が姿を見せる一方、デストロンへの協力を拒否した会社社長が、「南アメリカインカ帝国の遺跡から、空を飛んで日本に来た」設定の怪人・火焔コンドルの放つ、インカの呪われた火に焼き殺され、脇腹から後ろ足が飛び出しているのが、鳥型怪人としては面白いデザイン。
 続いて原子科学研究所の所長宅を狙う火焔コンドルだが、シゲルの話を聞いて不審を抱いた志郎が書斎の暗闇に隠れており、風見志郎、いいタイミングで高笑いしながら現れる為なら、割となんでもする男。
 「貴様はぁっ!」
 「そう、風見志郎だ」
 空を飛んで逃げるKコンドルを追うV3だが、V3ホッパーを使用している時は視覚と連動しているシステムの弱点を突かれ、妨害電波を受けて視界にノイズが入ったところを後方からの奇襲により空中高くから放り落とされるのは、ツバサ怪人が巧妙な攻撃。
 真っ逆さまに地上に叩きつけられたV3は更に火焔攻撃を受けて変身解除の完敗を喫し、空を自由に飛ぶツバサ軍団への対策を迫られる。
 「ライダーV3も、空中戦にもつれ込めば、ツバサ軍団の敵ではありません」
 「さすがだツバサ大僧正。日本占領作戦の網を、どんどん広げるのだ」
 V3の死体を探すコンドル怪僧が現場で血の跡を発見する一方、志郎はおやっさんを呼び出し……そう、特訓だ!!
 「オヤジさん……頼みがあります。空を飛ぶトレーニングを、お願いしたいんですが」
 「……空を飛ぶだと? ……おまえ、気でも狂ったのか?!」
 負傷した志郎の頭の具合と体の具合を同時に心配する藤兵衛だが、志郎はツバサ軍団に立ち向かう為の特訓を諦めようとはしない。
 「自分の体考えてみろ!」
 「オヤジさん! …………怪我は治るかもしれない。しかし、デストロンのツバサ軍団に狙われる人たちは、二度と生き返ってはこないんですよ! オヤジさん……!」
 「…………それほどの強敵か」
 困難な戦いに挑む理由と信念を口にする志郎と、そんな志郎をじっと見返す藤兵衛の眼差しと返しが大変格好よく、序盤にあっさり公のヒーローに飛躍していた志郎が、改めてなんの為に戦うのかを口にするのも痺れるのですが、無茶と無茶がぶつかり合って道理が消し飛んだ結果、なんか普通に、空を飛べるトレーニングが可能なような事になっています。
 つまり、
 「心を鍛える地の修行……心を空にする。すなわち! あれじゃ!」
 「……雲」
 「空をゆく雲の心。それが会得できれば、天は自ずから開けてくる」
 ですね!
 「……やろう。デストロンに出来るものがおまえに出来ない筈がない」
 かくしてV3は鉄塔に昇るとそこからのジャンプを繰り返し、筋肉とメンタルの強ささえあれば気合いで空も飛べる筈! という理論と実践が、まるっきり『コンドールマン』(1975)と被っているのですが!!(笑)
 V3が色々な意味で自身の限界を突破しようとしていた頃、妙に存在感を出すコンドル怪僧はスポーツ店に姿を見せ、尾行を提唱した純子から「ケンちゃん」呼ばわりで留守番に置いていかれる佐久間……冒頭では志郎と一緒に怪鳥を追っていたものの、その後は全く同行を求められず、特訓の手伝いにも呼ばれない佐久間……ものの弾みで非業の死を遂げる前に(そうなると私もちょっと気まずいので)パリへ帰ろう、佐久間。
 ……劇中での扱いが「色々あってデストロンの存在を知った、志郎の大学の後輩」みたいな扱いなので、本人も、「インターポールのデストロンハンター」だった事を忘れている可能性はありますが。
 尾行してきた純子とシゲルを捕らえたコンドル怪僧は、「V3の隠れ家」情報を人質解放の交換条件に藤兵衛を呼び出し、それは今、通信機で会話している場所では……? と思ったのですが、ここでは、負傷したV3が体を休めている(とデストロンが考えている)セーフハウスの場所、という事でありましょうか。
 「さあ、ライダーV3は、どこにいる!?」
 「ここだ!」
 で、V3が蒸気機関車の先頭部分(煙室、というらしい)をパカッと開けて飛び出してくるのは面白く、純子とシゲルを解放したV3は、再びKコンドルと激突。
 空を舞うKコンドルに対して特訓の成果を見せようとするも火焔攻撃で撃墜されるV3だったが、再び空中へと飛ぶと、召喚したハリケーンを踏み台にした空中二段ジャンプにより、怪人の攻撃をかわしながら頭上を取ると、V3スカイパンチ!
 思わぬ一撃を叩き込まれて落下していくKコンドルに追い打ちのV3スカイキックが突き刺さるとトドメとなり、「空を飛ぶ」の定義づけはさておき、筋肉×精神力×機転! による逆転劇と二段攻撃は綺麗に決まり、全体的にアクションの工夫が光る一本でした。
 新たな敵軍団の特性を取り上げ、「空中戦」にフィーチャーしながら志郎/V3の信念を描く構成も面白かったです。
 火焔コンドルを撃破されたツバサ大僧正はV3に対する憎しみの炎を燃やし、つづく。