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月と太陽と魔法使い

仮面ライダーウィザード』感想・第1-2話

◆第1話「指輪の魔法使い」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:きだつよし)
 「かつて魔法は科学と並ぶ学問であった。しかし文明の進歩と共に、魔法はいつしか忘れ去られた……時は流れ――現代。科学では解明できない恐怖を魔法で振り払う一人の男がいた。人は彼を、魔法使い・ウィザードと呼ぶ」

 『ディケイド』以後の《平成ライダー》としては、『W』『オーズ』『フォーゼ』に続く4作目となる今作、『W』『オーズ』が《仮面ライダー》の再定義と「ヒーロー作品」の再構築を志向していたと思われる後に、次のフェーズの《仮面ライダー》を模索していた時期の作品、という印象ですが、信号機の上でドーナッツを頬張る派手なシャツと真っ赤なズボンの青年が、使い魔の話を聞いて異空間からバイク召喚をする、異能の存在の明示からスタート。
 その頃、通報を受けて倉庫に突入した警官が、作業員を襲う得体の知れない怪物の群れを目撃。拳銃も通用しない怪物に叩きのめされていく警官隊だが、バイクで飛び込んできた真っ赤なズボンの青年が怪物を轢きまくってヒーローの通過儀礼を済ますと、今度は異空間から銃を取り出し乱射。
 「銀の銃弾……貴様、魔法使い」
 牛の怪人の火球攻撃を受けると、逆にその炎を吸い込みながら青年は仮面の戦士に姿を変え……
 「さあ――ショータイムだ」
 からOPに合わせてバトルに入るのは格好いい導入。
 仮面の魔法使い・ウィザードは銃と足技を駆使して怪物どもを蹴散らしていくと剣技も披露。華麗に宙を舞い、最後は火炎放射でまとめて殲滅したところでタイトルが入り、主人公ヒーローのバトルと基本の能力見せを掴みとする、ちょっと劇場版ぽい作りのプロローグ。
 戦闘員はグール、怪人はファントムと呼称、指輪とベルトで使い魔を召喚し、冒頭からどんどんギミックを見せながら固有名詞も明確にしてくる作り。
 その一連の行動を女刑事・大門凛子が見ており、ウィザードへの変身を解除した派手なシャツの青年・操真晴人は、魔力の高い人間――《ゲート》の命を奪って生まれる魔力の塊が《ファントム》であると、詰問されるままに基本設定を説明する。
 「我々ファントムのなすべき事は、ゲートを絶望の淵に追い込み、新たなファントムを生み出す事。ワイズマンが再び、サバトを開く為にね」
 ファントムサイドの幹部格らしき存在も姿を見せて行動目的を語り、矢継ぎ早の情報開示から、晴人はファントムを追ってその場を立ち去る……前に見事に逮捕され、平成ライダーの、宿命みたいなものです。
 「魔法があるから絶望しないんじゃない。絶望しなかったから、魔法を手に入れる事ができたんだ」
 晴人は正義感と責任感のやたら強い女刑事に突っかかられ、女性に対して割と軽いアプローチを見せるのは、シリーズの主人公としては珍しいでしょうか……今作以後の作品を含めても、ハーフボイルド探偵とエース様ぐらい……? 後、ダブル主役として数えるなら、紅音也。
 サポート役の少女コヨミからの情報で、牛ファントムの正体が先輩刑事で、《ゲート》として狙われていたのは凛子だと判明すると、晴人は小型化の魔法と使い魔のユニコーンを駆使して牢を脱出。
 変身ベルトは、普段から身につけているベルトのバックルに手を当てるとドライバーが召喚されるシステムで、持ち運び型と内蔵型を“魔法”の力で融合した面白い一工夫となりましたが、お陰で晴人は、常に手の形のバックルを腰に巻いている男に。
 ……シャツとズボンが派手なのは、カモフラージュだったのか。
 やかまし路線のドライバーにより、シャバドゥビタッチ変身し、火ぃ、火ぃ、火ぃ火ぃ火ー。
 ……なんだか、火あぶりされる側のような効果音。
 「さぁ、ショータイムだ」
 冒頭に示されたように、初回時点で既に仮面ライダーとしての戦闘経験を積んでいるという事で、アクションは最初から慣れと洒落っ気たっぷり系。
 黄色い指輪でどどどしてエレメント変化を行い、今度は緑色でふっふっふ。再び赤くなると右手に指輪をはめて足下に魔方陣を生み出し、アギトの紋章キックを想起させたところから、側転と伸身ひねりを加えての必殺キックは面白い動きでした。
 とにかく、足回りのひらひらを活かす為の回転へのこだわりが強く見て取れ(宇都宮Pは、ひらひらが好きらしく)、ヒーローの“格好良さ”を全面に押し出していく第1話。
 牛ファントムはさっくり撃破するも、絶望した凛子からはファントムが生まれそうになっており、見せるギミックの詰め込みが激しいあおりを受けてか、凛子さんの絶望がやたら早いのは、残念だったところ。
 象徴を破壊する事によりなんらかの呪術的作用が発生していたのかもですが、父親の写真入りのペンダントを破壊されたら即絶望、はヒーローが抗う「絶望」に劇的な重みが不足してしまったように思います。
 刑事を志すきっかけになった父親の写真をロケットに入れて持ち歩いているのは、既に故人という可能性もありそうですが、それならそれで、殉職した父親の形見を踏みにじられた、ぐらいわかりやすくしても良かったような。
 「約束する。俺が最後の希望だ」
 ウィザードは新たな指輪をはめると、凛子の精神世界アンダーワールドへとサイコダイブ。
 変形したバイクを荒れ狂うドラゴンと合体させて制御するのは、なんとなく『龍騎』っぽさがありますが、生まれかけの凛子ファントムとCGによる空中戦を展開すると、最後は握手ブレードで一刀両断。
 見事に凛子を絶望から救った魔法使いは、コヨミを乗せたバイクで走り去って、つづく。
 放映当時、いまいちノれずに話数1桁台で脱落した覚えがありますが、今見ると割とスッキリと見られたのは多分、その後に色々とあったから(笑)
 後、ちょうど『ガッチャード』第1話が今作と真逆といえるアプローチだったので、脳の使っていなかった部分にピタッとはまった感じもあります。

◆第2話「魔法使いになりたい」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子/きだつよし)
 OP映像は晴人とコヨミの関係性が協調され、決め台詞も「ショータイム」だけに、ウィザードの見せ方はとにかく気取ったポーズのスタイリッシュ路線。
 国家安全局零課なるいかにもな部署が出てくると、情報統制と隠蔽を行って凛子は沖ノ鳥島に飛ばされ……ずには済んで余計な事はしないように釘を刺される中、街にファントムが出現し、今日も躊躇無くバイクで轢く晴人。
 魔法に憧れるカラフルズボンの男がその変身を目撃し、基本的に包み隠さずフルオープン状態の晴人ですが、国家安全局零課とズブズブで後始末丸投げする気満々なのではこの人。
 多彩な魔法とワイヤージャンプで犬ファントムを翻弄するウィザードは、調子に乗って巨人パンチとかしていたら逃がしてしまい、
 「……やられた」
 なんか、敵の方が一枚上手だった! みたいに誤魔化した。
 とにかく狙われていたとおぼしき少年を追おうとする晴人だが、変なズボンの男に「魔法使いになりたい」と弟子入り志願され……服のセンスは、遠くないかもしれない。
 「魔法って、教えられるようなもんじゃないんだよね」
 とすげなく拒否する晴人だったが「どこまでもついていきます! 僕の熱意が伝わるまで!」と執拗な追跡を受けるといきつけのドーナツ屋の前で捕捉されてしまい、「捕まえましたよししょー」と満面の笑みで抱きついてくる男は、率直に、気持ち悪い。
 男の押しに負けた晴人が話だけは聞く事にする一方、魔法の指輪職人・輪島(おやっさんポジション)が店主を務め、晴人の拠点となっている面影堂を凛子が訪問。
 「なんだか羨ましい。あーあ……私も魔法使いだったら良かったのに」
 「それ、晴人の前で言わないでね」
 脳天気に魔法に憧れる青年と、晴人の見せる陰りが対比して描かれる一方、コヨミの口から凛子に対し、晴人とコヨミは共に《ゲート》であり、半年前の日食の日に行われた、大量のファントムを生み出す儀式の生き残りである事が明かされ、とにかくドンドン情報が開示されていく路線。
 「でも、晴人だけは、自分のファントムを体の中に押さえ込む事ができた」
 つまりデビルマンだった晴人は、コヨミを抱えた謎の白い魔法使いに助けられると手形ドライバーをぽいっと渡され、変身ベルトの渡され方としては、史上屈指の雑さでは(笑)
 「助かったのは、私と晴人の二人だけ。……私は記憶を失い、晴人は魔法使いになった。人々がファントムの犠牲になるのを、二度と見たくないから、晴人は自分の命を懸けて、戦う事を決めたの」
 魔法使いとはすなわち改造人間として置かれ、ヒーローの宿す光と影を早い内に明示する事で、表向きは軽薄さを見せる晴人の陰影を掘り下げ。
 また、前回の先輩刑事に続いて、半年前のファントム誕生祭(大量殺人)が描かれ、表舞台のトーンは明るめながら、ファントムによる取り返しのつかない死、が暗く背景に横たわる世界観に。
 そしてだからこそ、二度とそれをさせまいとする晴人の行動原理とヒーロー性が輝く、という構成。
 「子供じゃなくてこいつがゲートだったって事か」
 ちちんぷいぷい野郎がグールに襲われたところを助けた晴人はファントムの狙いに気付き、そこに飛び込んできた凛子は、身を挺して一般市民を救助。
 「凛子ちゃん、わざわざ出てきて、懲りないねぇ」
 「魔法使いじゃなくても、誰かの命を守りたいって思いは、あなたと同じだから」
 「ふん……成る程」
 ウィザードはマントシールドから炎の回し蹴りでグールをまとめて撃破し……晴人、半年前まで一般市民だったのだとしたら、必要以上に格好つける事によって、意識的に“ヒーローを演じている”タイプの可能性はありそう。
 グール軍団を蹴散らしたウィザードは逃げる犬ファントムをバイクで追い、恒例の、序盤のバイクアクションのノルマ消化ですが、追撃戦からバイク上での回転キックはなかなか格好良く、後ろを取られたウィザードは銃を取り出すとひらりと身を翻し、ファイアーボールを連射。
 犬ファントムが爆炎の中に消える一方、ちちんぷいぷい男は魔法に目覚め……? 次回へつづく。