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ダッシュ! ダッシュ! オーレンジャー!

超力戦隊オーレンジャー』感想・第1話

◆第1話「襲来!!1999」◆ (監督:東條昭平 脚本:杉村升
 「地球侵略を企む、マシン帝国バラノイア。人類最大の危機を救えるのは、超文明のパワーを身につけた、彼らしかいない!」
 本放送時に視聴していたものの、中盤以降の記憶はだいぶ薄い『オーレンジャー』ですが、個人的に第1話は、ヒーロー初登場エピソードとしては最高峰の一つだと、思っております。
 物語の開始時点で既に月が占領されており、地面を埋め尽くす大量の兵士と、スチームパンク風の建造物の偉容により外宇宙から飛来した侵略組織バラノイアの軍事力を示すと、地球へ向けて送り込まれていく歯車型巨大円盤と戦闘機部隊。
 冒頭「西暦1999年」とクレジットされるように、世紀の終わりを間近に控えた1995年、一世を風靡した「ノストラダムスの大予言」を彷彿とさせる仕掛けが時代を感じさせますが、地上へ降下してくる巨大円盤を真下から見せるカットにサブタイトルが入るのが、大変格好いい入り。
 逃げ惑う市民にかなりのエキストラを動員し、凄まじい勢いでビルが吹き飛び、街が紅蓮の炎に包まれる中、UA(国債空軍)基地に降り立つ大尉・星野吾郎。
 バラノイアは全世界の主要都市を、毎日正午にランダム空襲する事で地球人類に精神的重圧をかけながら全面降伏を迫っており、80年代の侵略組織を踏まえる形でか、侵略規模の表現が、かなり大がかり。
 まあ《スーパー戦隊》の場合、最初に風呂敷を広げすぎると、その後の局地戦への移行に際して整合性を取りにくくなりがちな面はありますが。
 吾郎が待つ、特別部隊に配属予定だった4名――四日市昌平・二条樹里・三田裕司・丸尾桃は、敵機に遭遇してドッグファイトを演じるも撃墜されてしまい、戦隊以前のメンバーが普通の戦闘機で戦うシーンというのは、かなり珍しいかも。
 「ただちに乗組員の救援を!」
 「それは自分に任せて下さい。彼らは既に、オーレンジャーのメンバーですから」
 不時着に成功した4名は、ドラミングをアピールしてくるバラノイア戦闘員に追われて山野を逃げ回る事になり、大規模な特撮から人間大の追撃戦まで、とにかくバラノイアの脅威を強調。
 追い詰められた昌平らは、咄嗟のターザンアクションで谷を乗り越えるも、雷雨に打たれ、戦闘員の攻撃を受けて斜面を転がっては思い切り放水を浴びせられ、第1話から、だいぶ過酷。
 一方、4人の救援に急ぐ星野吾郎は、基地内を闊歩しながら軍服を脱ぎ、ネクタイを外し、シャツを脱ぐと真っ青な制服姿となり、サングラスオフ。
 雪山に偽装された秘密基地から戦闘機サンダーウイングで出撃し、久々の軍人戦隊という事もあってか、〔大規模侵略×秘密基地×秘密兵器〕がこれでもかと詰め込まれ、特に前3作とは大きく雰囲気を変えた見せ方(『ジェット』は一応、公的組織の基地破壊から始まって、巨大な基地はありましたし)。
 ……この辺り、前作『カクレン』におけるキッチンバス放浪生活って切り口としては割と良かったと思っているのですが、その面白さを引き出す為には当時のシリーズはまだ、キャラ物として弱かったのかなと。
 疲労困憊の昌平らはそれとなく自己解説しながら薪を集め、蛇に絡まれた桃の髪逆立ち描写はちょっとコミック的に過ぎた感じではありますが、直後の樹里の
 「ぎゃーぎゃーぎゃぎゃーうるさい女!」
 が、細かい感情表現のまだ達者ではない女優さんにより“ダイレクトに物凄く嫌そうな感じ”になってしまい、強烈なインパクトに(笑)
 再び戦闘員に囲まれた4人は、軽々と吹き飛ばされ、打撃も通用せず、何とか敵の武器を奪ってバラバラにするも腕だけに迫られたり、内部機構が剥き出しになっても執拗に攻撃してきたり、とバラノイア兵のマシンらしさが強調されて、大変、戦闘員の見せ場の多い第1話。
 投げ槍から光線攻撃を受け、逃げ回る4人は初回から滝ダイブを敢行して川流れの実績を解除し、第1話から随分と過酷な撮影ですが、これは、「近い! ナパーム近いよ!!」の故事に則ったものでありましょうか(笑)
 なんとか追撃を逃れたかと思った4人だが束の間の安息も与えられず、今度は地中から巨大なドリルが出現すると、浮上した台形から手足が伸びてマシン獣バラドリルになるのは、印象的な映像。
 ドリルだけどいきなり火炎放射! で吹き飛ばされ、戦闘機と兵士も山ほど現れていよいよ4人が追い詰められたその時、駆けつけたサンダーウイングの地上攻撃が兵士を蹴散らし(ここ完全に、昭和ヒーローの出方)、機首に搭載された新兵器・超力砲が敵機を吹き飛ばすと、基地でスタッフが歓声をあげるのもここ数作になかった切り口となり、黒服にサングラスの三浦参謀長(大佐)が登場する。
 「人間は弱い。だが我々は違う。マシンは永久に死なない。不滅の命を持つ、神と同じなのだ。この宇宙を支配できる唯一の存在なのだ。愚かな人間ども、徹底的に痛め付け、それを思い知らせるのだ」
 人間の好む愛や優しさを否定するバラノイア側のシーンが挟まれ、ベテラン・大平透さんによる、自らを神に擬するマシンの理屈の言い回しが、素敵。
 ところで今作の主題歌ですが、


 ダッシュダッシュオーレンジャー! ダッシュダッシュオーレンジャー
 大地の鼓動が消えかかる 急げ! オーレンジャー
(※オーレンジャーの事)

 から急に、


 熱い血流れぬ鋼のマシン 平和の願いを凍らせる
(※バラノイアの事)

 に切り替わるので、毎度聞く度に一瞬、オーレンジャーって、ジャッカー電撃隊みたいな「熱い血流れぬ鋼のマシン」だっけ……? と考えます(なにぶん参謀長が参謀長なので、密かに改造されている可能性が否定できな……)。
 多分マシンではない星野吾郎は、戦闘機から直接バイクで地上に降下すると疾走し、マシン獣への体当たりでフレンドリーファイアを誘発すると、敵戦闘機(火星人兵器的な地上制圧モードに変形可)を撃破。
 バイクを止め、ヘルメットを脱いだ吾郎は、雲霞の如き敵兵を見据えると天に向かって拳を掲げ――
 「超力変身!」
 特殊スーツに身を包んだ星型ゴーグルの赤の戦士へと姿が変わり、一斉にドラミングする敵兵の姿を挟んでカット切り替わると、挿入歌インストが流れ出しながら無言のまま天に向かって手を広げた決めポーズにカメラが寄っていくこの瞬間がとにかくもう、ニューヒーロー登場からヒーロー反撃のターン開始として、最高の格好良さ。
 名挿入歌『虹色クリスタルスカイ』インストに乗せて、拳を固めて駆け出した赤の戦士によるバラノイア百人組み手がスタートし、あちゃあ! とりゃあ! はいやーっ!
 初回の変身をレッド一人に絞って必要な情報量を絞り、肉弾戦から、剣(呼称は「バトルスティック」)・銃・銃+剣、のオーソドックスな基本装備を見せていくと、昌平らが逃げ惑うしかなかったバラノイア兵を、圧倒的能力で殲滅。
 さすがにマシン獣には苦戦を強いられ巨大ドリルで吹き飛ばされるが、鮮やかな回避行動により、生き残りのタコ足メカとバラドリルの同士討ちを発生させる知略を見せると、即座に損傷箇所を見定める判断力から、個人武器のスターライザー(顔面に手を当てると武器が出てくるのは『ゴレンジャー』オマージュでしょうか)により、急降下攻撃。
 観客に回っていた昌平らも、俺達はモブじゃない、と拾った槍を投げつけてメンバー候補らしいところをしっかりと見せ、マシン獣とタコ足マシンが折り重なるように倒れて大爆発を起こすと、爆炎の向こうから無事な姿を見せる、謎すぎる戦士。
 「いったいあなたは、誰なの?」
 「超力戦隊・オーレンジャー所属、隊長、オーレッド!」
 「オーレッド?」
 多分それ、聞きたい事と微妙に違う、と4人が首をひねる中、敵兵多数・中型兵器3体・怪人ポジション、を実質単騎で壊滅させてみせた、ほぼほぼ日輪の化身な赤の戦士――オーレッドは、太陽をバックに意思疎通度外視のポーズを決める狂気を見せつけ、ラストまでキレキレ(笑)
 とにかく、
 「強大な悪の侵略組織と、それを覆すヒーロー」
 に全ポイントを割り振った第1話、この時期のシリーズ作品は尺の短さに対する情報の選別に難儀している節が見受けられますが、扱う要素を大胆に絞った構成により生まれた、危機また危機からニューヒーロー(一人で)大暴れに至るハイテンション・ハイテンポの進行が、かなり巧くはまった第1話であったと思います。
 戦隊シリーズ20周年記念作品の位置づけで、初代『ゴレンジャー』を意識したと思われる記号モチーフ(星・四角・三角・二本線・円)のマスク、『電撃戦隊チェンジマン』以来となる公職にして軍人戦隊、長官/博士ポジションに宮内洋・ナレーションに田中信夫・敵首領に大平透、とシリーズと縁の深いキャストが起用され、秘密兵器に秘密基地、繰り返されるドッグファイト、原初的な快感構造を追求したヒーロー、などやや古風な作りへの意識が見える今作、冒頭に書いた通り放映当時に視聴しているのですが、一部エピソードを除いて内容はほとんど覚えていないので、改めてゼロから感覚で見ていきたいと思います。
 ……ただ、折に触れ述べているように、星野吾郎/オーレッドが、我が最愛の戦隊レッドなので、隊長が活躍し始めるとテンションがおかしくなるかもしれませんが、その場合は、そっと生暖かい視線を送ってやって下さい。
 次回――超力変身! オーレ!!