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マージ・マジ『スマイルプリキュア!』

スマイルプリキュア!』感想14・笑顔はフェニックス

●第30話「本の扉で世界一周大旅行!!」
 「うわぁ! ホントに来ちゃったー! フランス・ヴェルサイユ宮殿!」
 二学期開始早々、補習地獄からの現実逃避を図るみゆき達は、夏休みのやり残しとしてメルヘン図書館を利用した観光旅行に繰り出し……なんだか、色々ざっくりした感じ(モブ観光客9人)すぎて、行ったつもりで図書館を一歩も出ていない、全て本の生んだ幻なのではと不安になります(笑)
 台湾で食い倒れ、モンゴルの大平原、万里の長城、ニューヨークは自由の女神……と世界各地を飛び回り、
 資料写真を撮り続けるやよい
 全自動観光ガイド状態のれいか
 ひたすらツッコみ続けるあかね
 コスプレ担当のキャンディ
 そして、ただただ食べ続けるなおは、もはや、みゆきと同じフォルダに入りつつあった。
 普段は子だくさん家庭の長女として面倒を見ないといけない相手が多そうなので、自由を満喫できる旅行にテンションが天元突破してしまったのか、なおの行動が「走る」か「食べる」かの二択になって完全に“アホの子”ゾーンに突入しており、お陰で、みゆきが目立ちません(笑)
 旅の終わりにアマゾン川でクルーズしていた5人だが、ジョーカーにリストラを仄めかされた赤鬼さんが現れると、スーパーピラニアアカンベェを繰り出し、ぱっくりと飲み込まれるキャンディ。
 画面を歪ませての水中戦は面白い映像となり、動きも鈍り呼吸も続かない水中では不利、と水面に顔を出して「何か、いい手を考えなければ」と呟くビューティーに迷わず全員が視線を向け、作戦は、軍師様に潔く丸投げです。
 ここでキャンディが体内で自発的にデコルを使うのは、キャンディなりの戦士としての成長、プリキュアを助けデコルも守ろうとする意識が明確に感じられて良かったところで(遊園地に続いて軍師様で解決も回避)、イルカのパワーを注ぎ込まれたプリキュアは、下半身が魚と化した、アマゾンのプリキュア半魚人モードにフォームチェンジすると、キャンディの救出に成功。
 ピラニアアカンベェを撃破してデコルが16個揃うとロイヤルクイーン組長が遂に出所……せずに謎のマジックアイテムが出現する一方、ジョーカーはなにやら打倒プリキュアの秘策の準備を完成させて、つづく。

●第31話「ロイヤルクロックとキャンディの秘密!!」
 「遂に現れてしまいましたか。でも、完全なる復活は阻止してみせますよ。必ず……ふふふふ」
 バッドエンドランドでグラビアポーズを決めるジョーカーが、黒い球体を指先で弄びながら邪悪な笑みを浮かべていた頃、みゆきの部屋に集まったプリキュア一同は、謎のアイテムの扱いに困っていた。
 また女王様の出る出る詐欺なの……? と首をひねっているとキャンディが空腹を訴え、手元に持っていたクッキーを六等分するみゆき。
 「一人より、みんなでハッピーって感じる方が、ウルトラハッピーになれるもんね」
 「クールー!」
 最初は不満げだったキャンディも、みんなでハッピーに納得し、勿論この後の展開への布石なのですが、旅先の山中でもあるまいし、ちょっとコンビニ行くとか、そうでなくても階下に降りれば買い置きのお菓子の一つや二つぐらい出てこないのかとか、幾ら何でも無理のある置き方に。
 そこへポップが飛び込んできて謎のアイテムはロイヤルクロックと説明すると、文字盤に12の数字(ピエロ様復活までの残り目盛りと同じであり)が浮かび上がってロイヤルクイーン様と通話できるようになるが、ジョーカーにクロッパナを渡された狼さんがペガサスバースト無効のハイパーアカンベェを作り出し、狼さんが直接内部に乗り込む新スタイルの、ハイパーショベルアカンベェ(狼耳付き)が誕生。
 「行くぜぇ! ウルっフぅ!」
 イメージ映像の無駄に格好いい動きで狼さんがジャンプするとアカンベェも飛び上がり、大地を抉るパンチ、そして風圧だけでプリキュアをまとめて吹き飛ばすショベル!
 ハイパーアカンベェの圧倒的な力を前にプリキュアを助けようとするキャンディだが、クロックの力がキャンディと関係していると知ったジョーカーに捕まってしまい、
 「ブラボーわたし! お疲れみなさーん!」
 は、今回の妙に気に入った台詞(笑)
 ただ、前半戦の集大成だった第23話で大きな一山を作った後、夏休み編を挟んで8話後にまたプリキュア大ピンチから「キャンディを返して!」になってしまったのは、ちょっと忙しい&ワンパターンになってしまった印象(これは私が、8話分の視聴を3週間に圧縮しているからもありそうですが)。
 作り手もその意識はあったのか、怠惰と欲望に満たされ退廃的な停滞に閉ざされた怠け玉空間を、クッキーのくだりを思い出したキャンディが自力で突破する形にはしてくるのですが……
 「誰だって楽な方がいい……難しい事は考えたくないし、逃げたくなる。でも! 本当に楽しく笑う為には、踏ん張って頑張らないといけない時だってあるの!」
 それを外部から補うプリキュアの言葉が、ヒーローフィクション補正があるにしても、さすがにいきなり、出来が良すぎでは。
 優等生キャラとはいえないスマイル組だけに、物語の積み重ねを活かしてエンターテイメントの一幕の中に落とし込めていない、だいぶ強引なテーゼの持ち込みに思えますし、何よりそう叫ぶハッピー自身がほんの2話前、夏休みに遊び呆けて宿題を提出できなかった罪で有罪だったわけで、丁寧に前振りまで行った自分たちで撒いたギャグによる、致命的な地雷の踏み抜き。
 「せやな。いっつもおもろい事ばっかなわけないもん!」
 そうだね、夏休みの宿題とかね……。
 「でも、どんな時でも逃げちゃ駄目だと思う!」
 そうだね、夏休みの宿題からもね……
 「うん! どれほど大変でも、自分の足で前に進んでいく」
 そうだね、夏休みの宿題もね……。
 「そうしないと、本当の笑顔にはなれない」
 軍師様だけ、無罪。 (これはこれで、一人だけ例外だと据わりは悪いのですが……)
 「どんな時でも全力でやるから、心から楽しいって思える。キャンディもきっとそう……だから、キャンディはそんな世界には負けない!」
 強引なテーゼの持ち込みと、定番ギャグに足を取られての自滅による、壮絶な爆破炎上を遂げ、明るく楽しく瞬間最大風速重視の作風にしても、これはさすがに監督が全体の流れを見てもう少し調整しなくてはいけなかったのでは。
 怠惰と悦楽の世界から脱出したキャンディが不死鳥の炎を放つと黒っ鼻が赤鼻に戻り、気合いシャワーを浴びると浄化されて、プリキュアは新たなるデコル(以前集めたものとデザインは同じ……?)を入手し、体調不良を訴えた狼さんは撤収。
 スーパーアカンベェは強い事は強いけれどペガサスが発動すると瞬殺だし、バッドエンド側のやる事が前半戦と全く変わらい物足りなさがあったのですが、ハイパーアカンベェは融合型になった事で戦闘スタイルから明確に変化し、真っ正面から消滅させるには愛嬌が付きすぎている3幹部退場に向けた布石にもなっているのは、終盤戦へ向けた良いバージョンアップ。

●第32話「心を一つに! プリキュアの新たなる力!!」
 キャンディを助け、狼さんが撤収したのも束の間、ジョーカーの不意打ちにより、あかね・やよい・なお・れいかの4人が怠け空間に吸い込まれてしまい、4人を救出するべく自ら怠け空間に飛び込んでいくみゆき、そしてキャンディだが……ハイライトと瞳の焦点を失ったみゆき達の作画が遠慮無くて凄い。
 「頑張ってもしょうがないよ」 「頑張るのって辛いし面倒だし」 「しんどいだけなら、最初っから頑張らん方がええやん」 「何より、楽ですし」
 あかね達に続いて怠け空間に囚われてしまうみゆきだがキャンディの助けで自我を取り戻し、上述したようにクッキー六等分のくだりは強引に感じていたので、2話に渡る覚醒のキーとしてはノリにくかった要素。
 マスコットポジションだったキャンディが、プリキュアと共に戦う(抗う)姿勢を見せていくのは、良い積み重ねにはなっていますが。
 ハッピーは、世界まるごとハッピーシャワーで怠け空間を内側から浄化・消滅させてしまおうと気合いを充填し、前回今回、一つの山場で主人公が「気合いだ気合いだ気合いだ気合いだ」を連発するのは、凄い作品ではあります(笑)
 だが、そういう根性で全てを解決しようとするみたいなのは不許可です、とジョーカーの妨害が入ると、毛先についていた黄色い玉で黄色っ鼻のアカンベェを作り出し、今明らかになる、ジョーカーの信号ヘアの秘密。
 「私は負けない。みんなを元に戻すまでは!」
 孤軍奮闘、ハッピーはジェットコースターアカンベェに立ち向かい、全体重を乗せた渾身の頭突きィ!
 「何故です? 皆さんこの楽な世界を楽しんでいるのに」
 「心の底からは楽しんでないよ! 私の知ってるみんなの笑顔は、あんなんじゃないもん!」
 ここで、感情論だけではなく、友達と育んできた繋がりから、今作の主要なテーゼを根拠に持ってきたのは、良かったところ。
 しかし戦力差は歴然、アカンベェの猛攻の前に、とうとう尻尾に叩き潰されたかに思われたハッピーだが、気合いで踏ん張ってみせると、スマイルプリキュアにとってのターニングポイントとなった第22-23話を引いて、悩みや苦しみと向き合いぶつからなければ進歩もない、とジョーカーが理想郷として語るバッドエンドを永遠の停滞として否定。
 「答を出すのは大変だし、面倒だし、苦しいし、でも……辛いかもしれないけど、私たちはそうやって、少しずつでも前に進んでいきたい! ……不器用かもしれないけど、私たちは、みんなと一緒に未来に向かって、歩いていきたい! みんなで進む未来はきっと、キラキラ、輝いてるからぁ!」
 第23話の時もでしたが、ハッピーの声優さんのここぞの場面での台詞へのパワーの込め具合は素晴らしく、なんというか、「鼻水すすりながら絶叫する」みたいな演技が非常に巧い。
 ある意味では、前回の壮絶な自爆炎上が生贄の踏み台になったともいえますが、個別の回想シーンを挟んで今作としての積み重ねを描き、その土台にしっかり足を踏みしめた上でのバッドエンド否定に声優さんの好演も加わって、皆の瞳が光を取り戻していく流れに、今回はしっかりと説得力が生じてくれました(BGMも良かった)。
 だが、アカンベェの連続ビームで吹き飛ばされたハッピーが、カバーに立ったキャンディとまとめて消滅寸前――大地に突き刺さる紅蓮の炎。
 「届いたで、二人の気持ち」
 ……サニーさん、格好良すぎでは。
 に続いて、次々とアカンベェのレーザー攻撃を防ぐ形で、スマイルプリキュア総員復活。
 「そんな、バカな……全員戻るなんて」
 「あんたの言う通り、疲れた時は休憩も必要や。でもなぁ……!」
 「ずっとそのままじゃ、いつまで経っても前に進めない!」
 「どんなに辛くても、私たちは一歩一歩、自分の足で進んでいきたい!」
 「一人で越える事が難しい困難も、友達と一緒なら、きっと乗り越えてゆけます!」
 「頑張ったその先にあるのが、本当の笑顔だと思うから!」
 「みんなと一緒に、頑張るクル! そしたら絶対、ハッピーになれるクル!」
 「「「「「「輝け!! スマイルプリキュアぁっ!!!」
 キャンディも含めた5人と1匹で啖呵を切ると、キャンディを中心にスクラムを組んだプリキュアは不死鳥の炎を放って怠け玉の世界を内側から破壊し、おぅおぅおぅ おぅおぅおぅ きめるぜー。
 社会人殺しのバッドエンド空間でしたが、これが、若さの力だ!!
 ジョーカーがジェットコースターアカンベェをハイパー化すると、プリキュアはペガサス召喚でプリンセスフォームを発動。
 「開け、ロイヤルクロック」
 「みんなの力を一つにするクルー!」
 その状態からロイヤルクロックを起動しキャンディがスイッチをぽちっとなする事でペガサスがバーニングし、新必殺技・ロイヤルレインボーバーストで黒鼻アカンベェを撃破するのであった。
 「クロッパナが……まさかロイヤルクロックの力まで解放されるとは。これは、早くミラクルジュエルを見つけねば……」
 スマイル・友達・ハッピーを三本柱に、心を一つに新たな力を得たスマイルプリキュア、第22-23話で一つの完成形を見せたところからは半歩ほど前進となり、ロイヤルクロックと繋げながら、この先どこまで進めるか、最終盤に向けて期待したいです。
 次回――太秦