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力と技と高笑い

仮面ライダーV3』前半戦・簡易まとめ

 V3誕生から、ドクトル・ゲー退場までの、戦いの軌跡。太字は、前後編の構成において、前編ラストでV3が絶体絶命ないし生死不明に陥ってつづいた場合を示します。

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◆第1話「ライダー3号 その名はV3!」◆ (監督:山田稔 脚本:伊上勝
 V3誕生。
◆第2話「ダブルライダーの遺言状」◆ (監督:山田稔 脚本:伊上勝
 ダブルライダー先輩、西の海に消える。
◆第3話「死刑台のV3」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:伊上勝
 V3、火葬寸前。
◆第4話「V3の26の秘密!?」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:伊上勝
 V3・26の秘密の一つ、ライダー円心キック!
◆第5話「機関銃を持ったヘビ人間!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:鈴木生朗)
 V3・26の秘密の一つ、鋼鉄の銃弾をも跳ね返す強化された筋肉!
◆第6話「ハンマークラゲ出現! 放て、V3の必殺わざ!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:鈴木生朗)
 V3キックは豆鉄砲。
◆第7話「ライダーV3怒りの特訓」◆ (監督:山田稔 脚本:島田真之)
 V3、クレーン鉄球で急所を潰されそうになる。
◆第8話「危うしV3! 迫る電気ノコギリの恐怖」◆ (監督:山田稔 脚本:島田真之)
 V3・26の秘密の一つ、肩の特殊スプリング筋肉! もう一つ、V3ドリルアタック!
◆第9話「デストロン地獄部隊とは何か!?」◆ (監督:田口勝彦 脚本:内藤まこと/佐伯俊道)
 V3、漁港で大爆発。
◆第10話「ダブル・タイフーンの秘密」◆ (監督:田口勝彦 脚本:内藤まこと/佐伯俊道)
 V3・26の秘密の一つ、レッドランプパワー! 
◆第11話「悪魔の爪がV3をねらう!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:鈴木生朗)
 V3・26の秘密の一つ、V3バリアー!
◆第12話「純子が怪人の花嫁に!?」◆ (監督:塚田正煕 脚本:鈴木生朗)
 V3キックは豆鉄砲! と見せて反転キック!
◆第13話「恐怖の大幹部 ドクトル・ゲー?!」◆ (監督:山田稔 脚本:伊上勝
 V3・26の秘密の一つ、逆タイフーン!
◆第14話「ダブルライダー秘密のかたみ」◆ (監督:山田稔 脚本:伊上勝
 V3、滝壺に転落。
◆第15話「ライダーV3 死の弱点!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:伊上勝
 ダブルライダー先輩の暗黒駄メンター化。
◆第16話「ミサイルを背おったヤモリ怪人!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:鈴木生朗)
 V3回転フルキック!
◆第17話「デビルスプレーは死神の武器」◆ (監督:田口勝彦 脚本:島田真之)
 V3、教会ごと爆発。
◆第18話「悪魔の裏切り あやうしV3!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:島田真之)
 祝・V3キック、怪人撃破!
◆第19話「ハリフグアパッチの魚雷作戦!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:滝沢真理)
 V3・26の秘密の一つ、レッドボーンパワー!
◆第20話「デストロン四国占領作戦」◆ (監督:山田稔 脚本:伊上勝
 V3、ギロチン処刑の危機。
◆第21話「生きていたダブルライダー」◆ (監督:山田稔 脚本:伊上勝
 V3・26の秘密の一つ、細胞強化。
◆第22話「恐怖のキャンプ 地底運河のなぞ!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:島田真之/塚田正煕)
 少年ライダー隊は死ぬ。死ぬために我々は存在する。だが仮面ライダーは永遠である。つまり――貴様らも永遠である!
◆第23話「恐怖! 墓場から来た吸血男」◆ (監督:山田稔 脚本:鈴木生朗)
 志郎、セクシーな開襟シャツを着る。
◆第24話「怪奇! ゴキブリ屋敷!!」◆ (監督:山田稔 脚本:滝沢真里)
 純子さん、潜入工作に挑む。
◆第25話「怪奇!! デストロンレインジャー部隊」◆ (監督:塚田正煕 脚本:伊上勝
 V3、人質の扱いが雑になり始める。
◆第26話「怪人ヒーターゼミのミイラ作戦!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:伊上勝
 「デストロンのミイラ作戦は失敗した」……の?!
◆第27話「生きかえったゾル・死神・地獄・ブラック」◆ (監督:山田稔 脚本:伊上勝
 4大幹部復活。
◆第28話「5大幹部の総攻撃!!」◆ (監督:山田稔 脚本:伊上勝
 4大幹部リタイア。
◆第29話「ドクトル・ゲー 最後の挑戦!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:伊上勝
 デストロンハンター・佐久間現る。
◆第30話「ドクトル・ゲー! 悪魔の正体は?」◆ (監督:塚田正煕 脚本:伊上勝
 V3きりもみ反転キックにより、ドクトル・ゲー殉職。
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 脚本〔伊上勝:15本 鈴木生朗:6本 島田真之:5本 滝沢真理:2本 内藤まこと/佐伯俊道:2本 塚田正煕:1本〕
 監督〔山田稔:12本 塚田正煕:12本 田口勝彦:4本 奥中惇夫:2本〕

 脚本は当時、伊上勝が複数の作品のパイロット版に関わって大忙しだった為か、前半2クールは概ね、節目の回を伊上勝が担当し、他をサブライターで、という布陣となり、演出は、山田稔と塚田正煕が両輪。

 ……率直なところ現状、面白いのか? と聞かれれば、それほどでもない、というところなのですが、『仮面ライダー』と地続きの正統続編として、“『V3』の歩くところこそが王道である”とでもいった位置づけ、いわば今作の姿が一つのスタンダードという認識に基づいて、その後の50年における“より洗練された形”を見てしまう為に、現代の視点からは難の目立つ部分が、突き抜けた面白さよりも物足りない引っかかりに感じやすいところはあるのかな、と。
 その点で、後継作品において王道から排除されていき、後の洗練との比較が成立しづらい「少年ライダー隊」が、狂気の組織として良くも悪くも前半戦で最大のインパクトとなりました(笑)
 物凄く根本的なところで、(なあなあになりがちにしても)「デストロンの秘匿性」と、「少年ライダー隊の扱い」がバッティングしているわけですが、前者はヒーローのオリジンに関係しているにも拘わらず、後者の方が優先されてしまう(せざるを得ない)のが、「少年ライダー隊」の凄まじいところ(笑)
 前半は、主に鈴木生朗脚本において、「仮面ライダー」の都市伝説的扱いと、その都市伝説にアクセスする回路しての「少年ライダー隊」といった位置づけが模索されて、物語の中にどうにか無理の起きにくい範囲で「少年ライダー隊」を落とし込もうとする意図も見えたのですが、どだい無理があった事もあり、少年ライダー隊とはこういう存在である、という認識の方が勝つ事に。
 デストロンの目撃情報を伝え、その存在の認識を広げ、無線さえ傍受してしまう少年ライダー隊、劇中では個々の隊員の姿を取っていますが、その実態は「デストロンに反発する世界の法則」みたいなもので、今作において一番オカルトな存在は「少年ライダー隊」なのかもしれません。
 『ストロンガー』の頃に藤兵衛があんなになってしまったのは、ある日ふと、少年ライダー隊が“存在しなかった”事に気付いてしまったからなのかも……。
 『V3』の独自性としては、“未熟な後輩ヒーローが自身の能力を解き明かしながら戦う”事が挙げられるかと思いますが、劇中で明確に「26の秘密の一つ」として登場したのが9個ほどで(キック技などで漏れがありそうな気はします)、第21話の細胞強化によるギロチン破りの後は全く言及が無くなり、ダブルライダー先輩からオーストラリアパワーを注がれて以降は、V3も 東映ヒーローらしく人質の扱いが雑になる もとい、怪人に歯が立たないまま致命的なピンチに陥る機会は減少傾向に。
 V3といえば危うし、危うしといえばV3ですが、絶体絶命ないし生死不明で後半に続いたのは30話中の6話で5分の1。20話台に入ると路線が明確に修正され始める事もあって、勝率はだいぶ改善されておりました(笑)
 “26の秘密”はコンセプトとしては非常に面白かったと思うのですが(単純にワクワクしますし)、当時の作劇もあって、ほとんどの場合で能力解明のプロセスを経ずに、ただ逆転の理由として突然飛び出して来る形になりがちだったのは、惜しまれる要素。
 まあ毎回、分析やら特訓やらを繰り返すと、それはそれでテンポが悪くなったので難しいところですが……今作を意識していたのかはさておき、《仮面ライダー》シリーズとしては後の『クウガ』が、そこに上手く「チーム」の要素を繋げて展開していたのが、光ります。
 『V3』作劇の目立つ欠点としてはもう一つ、“悪役の罠にはまってピンチになるが、それを力や機転で突破するヒーロー”ないしは“強大な敵を策略で欺くヒーロー”のセオリーをあまりに繰り返しすぎて、「逆転に次ぐ逆転」がエピソードの目的化してしまう点で、これはメインライターを務めている伊上脚本における諸刃の剣でもありますが、今日見ると、もう少しトータルの整合性が欲しくなる部分ではあり。
 そこにプリミティブなヒーロー性、活劇の面白さ、が出る部分はあり、バランスの問題ではありますが、その辺りも『V3』はどうしても、後の“洗練”と引き比べてしまう作品だな、と。
 ただ、風見志郎=宮内洋の魅力は時代を超えて唯一無二であり、今ならSNSが沸騰しそうな開襟シャツで、死と再生を繰り返すヒーロー像を外連味たっぷりに演じるその姿は、抜群の存在感。
 それを彩る菊池俊輔の音楽も実に軽快で、後半もその高笑いの格好良さに期待したいと思います。