東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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天へと繋ぐ光は牙狼

牙狼<GARO> -炎の刻印-』簡易感想12

●第23話「月食-DOOM-」
 「まったく……魔戒騎士というのはこれだからなァ。後始末も自分たちでやれよー」

 「アルフォンソ王子、皆様、ここまで来てしまったのですね。困りましたわ」
 あ、顔が出た。
 メンドーサから授けられた力により異形の魔人と化したオクタビアは、ホラーではなく魔獣装甲と語られ、初代TVシリーズにおける、コダマさんのポジション、という趣向でしょうか。
 「レオン、この先何があっても……決して自分を見失っては駄目よ」
 そしてガロの方も、便利にメットオフできた!
 アルフォンソとエマが魔獣オクタビアを担当し、レオンはいよいよ神殿の深層に至るが、そこで待ち受けていたのは、完成間近の魔戒千年パズルと、その最後のピースとされたヘルマン。
 前回のヘルマンの死闘が凄まじくえげつない形で組み上げられると同時に、母の死と父の死を繋げて、メンドーサがレオンに向けて第12話をリフレインするという、とことん厭らしい鬼畜の趣向(スタッフが!)。
 「惜しかったな……もう少し早く来ていれば、父親の死に様を見られたものを」
 ヘルマンが最期の場面さえ描かれないまま真紅の結晶になっているのは衝撃でしたが、それもあってか前回のややくどいほどのバトルかと納得(あそこから更に念押しすると痛々しいばかりになるところでありますし……)。
 「――言いたいことはそれだけか?」
 煽りまくるメンドーサに対して無言を貫いていたレオンは、けしかけられたホラーを一蹴する事で、精神的な成長を刃と共に突きつける。
 「俺はもう迷わない。おまえの言葉に惑わされる事もない。護りし者として、メンドーサ、おまえを討滅する!」
 一方、メンドーサの仕込んでいた結界術を利用してビル空間で魔獣オクタビアと闘っていたエマ&アルフォンソは、エマによるロープアクションでのターザンキック連打から、敢えて剣を手放す事によりソウルメタルの超重量を敵に浴びせるアルフォンソのトリックプレイでオクタビアを退けたかに思えたが、オクタビアはオクタビアで高層ビルリターンを放って結界を強制破壊し、オクタビア大暴れと共に、何故かエマと呼吸バッチリのアルフォンソの高性能が光ります(笑)
 なんとなく<牙狼>感のある、回転する柱の上での激突から、エマとの連携攻撃で今度こそ魔獣オクタビアを沈黙させるガイアだったが、地下ではガロの剣に体を貫かれながらもメンドーサがアニマを復活させ、王都の上空には、ホラーの大量殲滅を図る番犬所が迫る。
 空に浮かぶ天空逆さ城、いったい何かと思っていたら、この後のアルフォンソの台詞によると、番犬所そのもののようで、つまりこれは、番犬所落とし(笑)
 「この国の人々を護れずして、何が魔戒騎士かと」
 「そういう馬鹿みたいに頑固なところが、魔戒騎士の嫌いなところだわ」
 エマお得意の台詞の意味が反転して二人はいい笑顔を浮かべ合い、たかが番犬所一つ、ガイアの鎧で押し返してやる! と雄々しく立つアルフォンソの背後が、迫り来る番犬所の影響という事でか真っ白な光に輝いているのが、凄くアルフォンソという感じで良かったです(笑)
 エマの助力でアルフォンソが番犬所の直下へと跳ぶ一方、しぶとく生きてきたオクタビアの刃がエマに迫るが、魔戒法師の本領は、足技ぁ! が一閃。
 刃を砕かれ、糸でねじ切られそうになるオクタビアだが、義足に仕込んだ隠し武器のマグナムが至近距離からエマの土手っ腹を貫き、ここだけ急に、極道の妻たち
 しかしオクタビアの心身はそこで限界に達すると、魔獣武装のコアに飲み込まれたところをエマにトドメを刺されて自らが見出した神への狂信に殉じた最期を遂げ、世界そのものを憎むが故に、ホラーとはまた別の形で最後まで全くわかり合えないままの悪役、を貫いてくれて最終的に良い存在感となりました。
 今の世界を肯定しない人間、として、使い切ってくれたな、と。
 物語の因縁としては、改めて母の(間接的な)仇としてアルフォンソに討って欲しかったような気もしますが、それをやるとかつてレオンが犯した因果の過ちに囚われる事になるので、「この国の人々を護れずして、何が魔戒騎士かと」に跳べるのが、アルフォンソの、魔戒騎士の在り方として示される形になったのも、お見事。
 全身全霊を振り絞ったガイアはアクシズ落とし返しを成功させるも力尽きて地に墜ち、エマは土手っ腹に風穴開けられて血の海に沈み、地下では立ち上がったアニマが、巨大なゲートから現世に湧いて出た大量のホラーを無造作に吸収していた。
 メンドーサの作り出した剣のような器に体を貫かれた、青白い首無し巨人とでもいった姿のアニマはやはり女性型で、初代『牙狼』オマージュの取り込みも徹底されましたが、そこから一手加えて本歌取りの形にしていったのは、通して今作の秀逸な部分となりました。
 アニマの巨体から滑り落ちかけたレオンが、咄嗟に伸ばした手が掴んだのはヘルマン愛用の短剣で、今回凄く、Z印=ヘルマンの象徴! が随所で存在感と安心感をもたらす見せ方なのですが、剣の柄にイニシャル刻むのはそれはそれでどうか感も漂い、思春期の息子とはこじれて仕方がありません。
 メタ的にはやはり、名前といいZ印の強調といい、“仮面のヒーロー”の源流としての「怪傑(奇傑)ゾロ」への視線はあったのだろうなと改めて。
 短剣を手に、散華した父の存在を感じ取るレオンだが、超巨大ホラーにぺしっとはたき落とされて、瀕死の目白押しで、つづく。
 次回――受け継がれる想い、それは永遠。消えることない、炎の刻印。
 何故ここで、華麗に韻を踏むのか、番犬所。

●第24話「光芒-CHIASTOLITE-」
 「――この想いこそが、永遠だ」

 OP無しではなく、アバン抜きでOP、という趣向になり、ともに行く道はさぁどっちだ!
 「哀しいな、これほどのホラーであっても、絶対ではない。およそ、まがりなりにも生きている者は、命の終焉からは逃れられぬ。哀しいな、黄金騎士よ」
 「残念だったな。おまえも終わりだ」
 ……意外と元気だった、レオン。
 「いいや! 私だけは違う! この私だけが、今! その哀しみから逃れるのだ!!」
 レオンの前で自らの体を引き裂いたメンドーサは、特殊な術式を発動してアニマと融合する事で白く輝く半裸メンドーサとして再誕し、年老いた姿を一度挟んでいた事により、新生メンドーサのビジュアルによりインパクトが出るのが効果的で、成る程。
 初手頸動脈で首を刎ねるレオンだが、メンドーサは溢れる筋力であっさりと再生。
 「ほほはははは。これこそ私が求めた力……私は遂に、永遠となった」
 「馬鹿な。おまえのような奴に、この世界に居座られてたまるか!」
 繰り返しメンドーサに斬りかかるレオンだが、筋肉こそがこの世の真理。
 虚空から生じる巨大な拳骨が次々とレオンを打ち据え、元魔戒法師が、最後は素手で強い奴が勝つ事に辿り着いていた頃、意識を取り戻したアルフォンソは今にも崩れそうな剣へと手を伸ばし――
 「――立て! アルフォンソ! ひとたび剣を握ったなら、死ぬまで歩みを止めるな! 鼓動の止まる、最後の瞬間まで!」
 「師匠!」
 「立て! 我らの戦いは、まだ終わってはいない! ガイアの鎧を継ぐ者として、魔戒騎士の務めを果たせ!」
 「……師匠、ありがとうございます」
 ガイアの剣を通して、ラファエロさんが喝を入れに出てくるのは師弟要素の補完として大変嬉しいと同時に、ヘルマン×レオンの回想シーンを挟んでいた事で、魔戒騎士スピリットというのは基本このノリなのだな、と裏付け。
 「この不滅の体こそが、永遠だ」
 「違う!」
 鍛えれば鍛えるほど、人の体は永遠に近づくのだ、と無数の拳骨にレオンが手も足も出ないまま、“完成した究極の個”と“命を繋ぎ、想いを受け継いでいく連なり”とが激突する中、レオンの元へ向かおうとしていたエマは、魔界へのゲート付近に漂う、ヘルマンの二刀のもう一振りを発見。
 そこにアルフォンソも合流すると、エマが糸で引き寄せた剣をアルフォンソがロングスローし、メンドーサの鉄拳をかわすと共に中空へ落下したと思われたレオンが、それをキャッチ。
 レオンは父の遺した二つの剣を合体させると、右手でガロ、左手でゾロ、空中で同時に二つの鎧を召喚する離れ業を演じ(この世界のルールとしては、アルフォンソの主役強奪が布石に)、誕生したのは、背には緑の焔の翼とひよこリングを生やし、左肩には銀の狼の頭が輝く、融合召喚・双影のガロ!

「――この想いこそが、永遠だ」

 そう、想いとは、束ねられるものなればこそ。
 究極的な個に対し、父と子の、そしてそこに至るまでの無数の命の輝きの結晶としての鎧が“永遠の形”を示し、両肩と頭部、三つの狼の面の存在が、第12話における暴走魔獣形態を彷彿とさせながら全く違う意味を持っているのも、決戦仕様鎧として、見事な美しさ。
 それは復讐の炎ではなく、護り繋ぐ金色の光――想いを紡ぎ、天へと繋ぐ光は牙狼
 「行くぞ、親父……!」
 懐かしの輪っかもアクションに組み込みながらメンドーサの体ごと魔界へと突入していったガロは、ゾロ譲りの鎖も活用すると、自らの体ごとメンドーサに剣を突き刺す事で、閉じつつあるゲートの向こうへと、メンドーサを封じ込めようとする。
 人の世の営みがある限り、陰我を招く悪意も永遠なら、それを打ち砕く希望の光もまた永遠、と二つの永遠はぶつかりあったまま、決着を未来へと託そうとするガロは、エマがゲートを保持する糸を自ら断ち切ろうとするがその時――炎の刻印が再び発動すると、レオンの心ではなく、メンドーサの体を焼き尽くす……!
 「あなたはこの子に、闘う力を……私は、炎の護りを」
 火刑に処された母の、最後の想いをレオンは感じ取り……
 「……あれは……あれは復讐の炎なんかじゃ、無かった」
 レオンにとっては、加護であると同時に呪いともなっていた刻印から真実の想いが掬い取られ、涙をこぼすレオン。
 道中、無償の愛の負の面(少なくとも、受け取った側が常に真っ当に受け取るとは限らない)を差し挟んで、父殺しならぬ一種の母殺しをレオンのジャンプ台とした今作ですが(マザー・コンプレックスからの脱皮、という意図はあったと思っています)、母の腕の中から飛び立ったからこそ、その本当の想いを汲み取る事が出来たとレオンの中の最後のわだかまりが浄化され、炎の刻印がだいぶ強すぎるような気はしますが、世界女神といえる、地母神と結合した聖母的存在こそが最終的に強いという、(私が見た限りの)《牙狼》シリーズ的な説得力はあって、結局最後に、聖母的概念が勝った(笑)
 ……お母さんちょっと、白ワンピース概念も入っていますしね!
 設定としては、騎士と法師の魂をアニマ復活の鍵とし、それをメンドーサが取り込んだ事で付け目になったとかありそうですが、永遠の再生を続けるメンドーサは永遠の炎に灼かれ、母に背中を押されたレオンは、護りし者としての戦いを続けるべく、ゾロの馬に乗って、現世へと駆ける。
 ヘルマンの魂も形を取ってレオンとくつわを並べると、こっそりヒメナについて頼み、
 「親父……おまえ……最後まで」
 最後の最後でちょっと情けない顔になるのが、この父子らしくはあり(笑) また、生前には実現しなかった父子の最後の会話があったのは、嬉しかったところです。
 メインテーマ的なものをバックに、格好良くレオンは脱出に成功し、溢れる炎を飲み込んで、メンドーサと共に魔界へのゲートは再び消えるのであった……。
 かくして力に溺れ、“永遠”となる事を求めたメンドーサの野望は費え、壊滅を逃れたバリアンテで、王子はまた、復興事業を頑張る事になっていた(笑)
 割と最近、どこかの誰かのやらかしから王都を立て直していたばかりの気もしますが……決戦時の避難誘導シーンに続き、ガロ人28号の姿があるのが、おいしい。
 自らも肉体労働に参加するアルフォンソが、作業途中に目にした貴族の娘に目を奪われて転倒する姿が少々コミカルに描かれて、王子にも春の予感が到来すると共に少し気の抜けたところが描かれたのは、張り詰め続けていた戦いからの一段落としてホッとする一幕で、とても良かったです。
 とにかく、最後までキラキラしまくっていた王子ですが、レオンと決定的に対立する事もなく、メンドーサに取り込まれる事もなく、終盤に前座ーズにされる事もなく、諸々の不安要素を全て回避すると異常なまでの懐の大きさと戦闘力を見せつけて、王子と魔戒騎士の在り方を両立させながら宿命の従弟と手を取り合い、最後まで見せ場もキープされて、とても良い王子でした!!
 これが主人公だったら、さすがに出来すぎで面白みが減じていたかもしれませんが、あくまで副主人公の立場から、起伏の激しいレオンと、光と影の王子として準ダブル主人公体制を組んだのが、物語の緊張感も保つ事に繋がり実に上手い差配でありました。
 ヘルマンやエマの扱いも含め、ヒーローサイドの戦力をどう使い分けるかの目配りが最後まで秀逸で、余り物感が出なかったのもお見事(この点では重ねて、Z印の剣の存在が光ります)。
 「……ララ……カミツレの花が咲いたよ。おまえが言っていた通り、本当に綺麗だ。見えるか?」
 レオンはララの墓標の傍らで一面の白い花を見つめ、ララの存在を拾ってくれたのも、抜かりなし。
 エマは、「いい男になりなさい、レオン」と告げて故郷に一度戻っていき、人の世の営みが続く限り、魔戒騎士の戦いは終わる事がない宿命ではありますが、生き残った主要キャラにそれぞれ、一時の休息が描かれたのは気持ちの良かったところ。
 レオンはヘルマンの子を身ごもったヒメナを義理の息子として助ける為に街に残り、多分この後、アルフォンソがレオンに恋愛相談を持ちかけるも、全く役に立たないアドバイスとか送られるのかと思うと胸が躍ります(笑)
 ……はさておき、いずれレオンが、ヒメナの子の師となりそうな未来が示唆され、子育てを手伝うのは、レオンの情操教育としてとても重要かもしれません。
 「繋いでいく……今度は俺が。護りし者として!」
 と足下の街並みに向けてレオンが宣言し、今作冒頭でゾロが告げていたのは、復讐の始まりではなく、それでも護るべき世界の姿だったのだ、と繋げられてエンド。

 特撮ヒーロー作品としてシリーズを重ねていた作品のアニメ版、「繋ぐ」という原典『牙狼』のコアテーマを中心に据え、本歌取りを随所に散りばめながら、思い切った舞台設定などアニメならではの工夫を加え、悪役の掲げる「永遠」との激突も綺麗に収まって、面白かったです!
 またその中で、<牙狼>シリーズとして外せない、「ヒーロー」の姿をきっちり描いてくれたのも良かったところ。
 アクション面でも見応えがあり、最終決戦に至るまで様々な工夫で飽きさせない作りが秀逸でしたが、MVPを挙げるとすると、鎧を使わず糸を操るアクションが全体に大きな変化を付け、アニメの利を活かした好き放題感が最も高そうだったエマさん。
 レオンやアルフォンソより年長(経験豊富)な事もあり、最終的にパワーーーーーに落ち着きがちな頭の固い魔戒騎士とは違う立ち回りの説得力がお見事でした。
 個人的には、とにかくアルフォンソがツボで、ひたすらアルフォンソ贔屓の目線でしたが、こういうキャラが濁る展開はあまり好きではないので、とにかく最後までキラキラを貫いてくれたのが、最高に良かったです!
 レオンの方は、少し目が死ぬ方が輝くキャラだったと思うので、そういうところでも、キャラ配置が実に上手くはまった作品であったなと。
 一番好きなエピソードは、回想ヘルマンの台詞がとても良かった、第21話「父子-KNIGHTS-」。
 決戦前の今作集大成といえるエピソードでしたが、今作で積み重ねてきた要素と、メタ的なヒーロー論との結合が、お見事でした。
 「手が届かなくて、守り切れない時もあるかもしれない。けどな、それを受け入れちまったら終わりなんだよ」
 から、息子がメインテーマに乗って大上段に振りかぶった剣を父にさっくりかわされるのも、素晴らしかったです(笑)
 お薦めして下さったガチグリーンさん、ありがとうございました!