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弾け飛ぶ砂浜

仮面ライダーV3』感想・第26話

◆第26話「怪人ヒーターゼミのミイラ作戦!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:伊上勝
 「ヒーターゼミの鳴き声を聞けば、喉が渇くのだ」
 見所は、苦しむ市民に水筒を差し出すデストロン怪人・ヒーターゼミ。
 まあ勿論、その中には人間ミイラ薬が混入されており、飲むと体が干からびてしまうのですが。
 「ミミガーーー!」
 「ふふははははは……今度という今度は、ラーイダーV3も、手も足も出まい。一千万東京都民を一人残らずミイラにしてやる」
 作戦失敗続きで胃腸でも悪くしているのか、今日はいつも以上に顔がどす黒いような気がするドクトル・ゲーは、カマキリメランを囮に東京から引き離した筈の風見志郎が舞い戻ってきている事を知ると、内心、出張費を出して日本海沿岸まで連れ出せば良かった! と焦りつつ、足止めと時間稼ぎを指示。
 ミイラ化被害者を餌に、警察官に変装していたレインジャー第二部隊に手錠をかけられた志郎は水筒を突きつけられ、怪人ではなく戦闘員が、作戦の詳細をべらべら説明してくるのは珍しい展開な気がします(笑)
 血清を作り出せる博士の情報を知った志郎は高笑いすると手錠を引きちぎり、多少展開が滞っても、キザな笑いで空気を切り替えられるのは、ヒーロー役者として圧倒的な強み。
 開始当初は、垢抜けきらない部分も残しつつ、といった感じでしたが、2クール目の半ばぐらいから、宮内洋という役者をどう使うのか、が安定してきた感があります。
 その頃、藤兵衛と純子は隊員から連絡のあった巨大団地に向かっていたが、団地はまるで人の気配がなく静まりかえっており、部屋に入ると干からびきった人が倒れ込んでくる、前回よりも怪奇な展開。
 そして、ミイラ化作戦の促進の為にのみ開発されたと思われるヒーターゼミの鳴き声を聞いた藤兵衛は水を求めずには居られなくなり、死を呼ぶ水×呪いの鳴き声、の組み合わせが、回りくどいながらも、なかなか効果的なサスペンス。
 ……まあ、悪の組織の作戦というより、古代文明の呪いみたいになってはいますが(笑)
 藤兵衛を気絶させて水分補給を止めた志郎の前にはHゼミが姿を見せ、V3と激突すると、逃走。
 団地に戻った志郎には、正気を取り戻した藤兵衛から、純子がさらわれたと連絡が入り……なんか段々、志郎のシャツの前がはだけてきているのですが。
 白いセダンをバイクで追って、砂浜での迫力あるチェイスシーンとなり、爆発! 大爆発! 更に爆発!
 画角を広く取り、疾走感を出しつつ横方向に大きな爆発、は割と珍しい印象で、砂浜だから遠慮はいらない、みたいな勢いの爆発が本当に遠慮がいらないのかは不明です。
 画面が激しく揺れすぎてまともに見られなかったのが残念ですが、走るバイクから走る車に乗り移り、屋根の上で戦闘員を殴り倒した後、運転席に乗り込んでいく一連の流れも、力の入ったアクションシーン(画面を上下に揺らす事で、走っている感を出している……?)。
 しかし車の中に居たのは純子ではなく自称「博士の娘」で、ミイラ血清を作れる博士が自力でデストロンの手を逃れて横浜の別荘に潜んでいると知らされた志郎は、その娘の案内により、シゲルと共に横浜へ。
 だがそこに博士の姿はなく……勿論いつものように(志郎が察知済みの)デストロンの罠なのですが、東京でミイラ薬の被害が広がっている状況で志郎が受け身になると「水」に関わるサスペンスも消滅し、罠また罠で上書きしていく内に前半のサスペンス要素が消し飛んでしまったのは、伊上脚本の短所が強く出てしまって残念でした。
 釣り天井で抹殺されそうになった志郎が変身V3で脱出すると、自称博士の娘はHゼミの正体を現し、見た目格好いい系ではない怪人ですが、割と今回、市川治さんの演技が後の美形悪役演技寄りなのは、面白い(笑)
 V3回転フルキックでヒーターゼミは大ばくは……
 「V3! 俺と一緒に死ね!」
 と思いきや、V3を道連れにしようと最後の足掻きで飛び道具を放つもかわされると、改めて、木っ葉微塵。ヒーターの放熱部分を目に取り込んだデザインは面白く、能力を除くとセミっぽかったかはともかく、なかなか良い怪人でした。
 条件にはめて倒す系のスタンドみたいな能力なので、後半、折角の能力を使う機会が全くないまま終わってしまったのは残念でしたが。
 かくして、
 ナレーション「デストロンのミイラ作戦は失敗した」
 …………の?!
 志郎が打つ手のないまま横浜の別荘で過ごした時間だけで一晩経っていますし、博士の消息は不明で、血清を入手したくだりも省略されるので、なんとか対策できましたにしても相当な被害が出ている気はするのですが、後半、その場その場のアトラクション的面白さを重視する余りに、全体の構成要素が雑な扱いになってしまったのが、勿体ないエピソードでありました。
 次回――え、ええっ?!
 予告の画も凄いですが、サブタイトルのやけっぱちぶりも凄い(笑)