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永遠の形

牙狼<GARO> -炎の刻印-』簡易感想10

●第21話「父子-KNIGHTS-」
 「たとえ俺が死んでも、おまえが必ず俺の戦いを引き継いでくれる。そうだろ? レオン」

 「てめーの剣は、語る事も出来ねぇなまくらか? 鼻っ柱へしおられて、ちったぁ色々見てきたんだろ? それとも相変わらず、何も護れないガキのままか?」
 ……まあ、レオンのあれこれは、お父さんの教育の失敗の面もあるといえばあるわけですが……(本人も、内心反省していないわけではないのでしょうが)敢えて悪し様に挑発してくるヘルマンと、レオンはとうとう真っ正面から剣を打ち合わせて激突。
 長剣と双剣、三つの刃のぶつかり合いは、途中に蹴りと頭突きを挟んだ男と男の意地の張り合いに突入し、途中で一度、互いの武器を手にして切り結ぶのが、良いアクセント。
 「二人とも……本気だ」
 「ほっんとに馬鹿なんだから」
 やはり魔戒騎士って、外部からツッコミを入れてくれる人が居ると輝くので、エマさんの重要さが身に染みます(笑)
 「ふざけるなよ、くそ親父」
 「やってみろよ、ばか息子」
 礼拝堂の屋根を突き破って飛び出した二人が、いよいよ鎧召喚しかねくなったところで番犬所からガルムの声が割って入り、メンドーサの計画を逆に利用してホラーを大量に討伐しようという(なんか駄目そうな)番犬所の狙いが明らかになる。
 「今宵は月食。全ての光が消えるこの夜に、バリアンテの地下深く眠る巨大なホラーが復活を遂げる」
 番犬所は巨大ホラー復活と共に開く魔界へのゲートから、現世に出現する大量のホラーの一挙殲滅を計画しており……より大きな世界を救う為の小さな犠牲、とバリアンテを見殺しにしようとする番犬所のもくろみと、それを是とするヘルマンの言葉が納得できないレオンは、黄金の鎧を召喚。
 「なんの力もない人々を、ただ一人でも救う為に、俺はこの鎧を継いだんだ!」
 ヘルマンもそれに鎧で応え、ガロとゾロの激突に、父子の修業時代を重ねるのが良い演出。

 ――護る者の為に、俺たちの剣はあるんだよ。

 そこから、スパルタ魔戒騎士教育と、幼いレオンと色ボケ親父の道中が描かれ……回想シーンのホラーは、さすがにちょっと雑(笑)
 「そりゃな、俺達だって神様じゃねぇ。手が届かなくて、守り切れない時もあるかもしれない。けどな、それを受け入れちまったら終わりなんだよ。ただ一人も見過ごす事なく戦って、戦い続けて死ぬ。それしかないんだ」
 戦いの中、“なんの為に戦うのか”を幼いレオンに諭したヘルマンは、魔戒騎士としての信念を語り聞かせる。
 「俺らのことなんか誰も知らない。死んだところで墓もない。それでいいんだ。俺らはただ、ホラーを断ち切り続ける、一振りの剣。笑って暮らす人たちが一人でも多く、一日でも長く続くように。一つの命が尽きたとしても、誰かがその鎧を繋いで、また戦い続ける。だからなレオン、俺達は死なない。続くんだよ――俺達の護る世界がある限り、ずっと……」
 かなり長い台詞で、<牙狼>シリーズが持つ主題の一つとしてのメタ要素(過去から未来への「ヒーロー」の継承と、その賛歌)も含んだ直球のヒーロー論になっていますが、「護る」「剣」「繋ぐ」といった魔戒騎士の在り方として示してきたテーゼを盛り込み繋げる事で、しっかりと今作なりのヒーロー像の集約になっており、ヘルマン(堀内賢雄さん)の言葉にも力が入っていて、響きます。
 世界背景がハードな事もあり、やたらめったら死にたがるのは、やや古めかしくはありますが(ヘルマン自身が、旧世代のヒーロー寄りの立ち位置とはいえますが)、ヒーローが伸ばせる手にも限りがある事について、
 「手が届かなくて、守り切れない時もあるかもしれない。けどな、それを受け入れちまったら終わりなんだよ」
 はヒーロー論としてのブラッシュアップも感じて、特に好きな箇所。
 (――そうだ。どんな目的があったとしても、あの親父がたった一つの命でも、犠牲を許すはずが無い)
 死線における刹那の回想から、保護者としての父に「甘える」のではなく、魔戒騎士としての父を「信じる」事で、更なる一歩を踏み出した黄金騎士ガロが剣を突き出すのに合わせてメインテーマ的なものが流れ出すのは大変格好良く、互いに闘気を放出する、金と銀。
 ゾロを圧倒するかのような剣気を放つガロは、空中戦で頭上を取ると裂帛の気合いと共に大上段に剣を振りかぶり――
 「親父ぃぃぃぃぃぃ!!」
 「……フッ」
 ……よ・け・ら・れ・た(笑)
 完全に来ていた勝ちの流れを見事にいなされたガロは、背中に肘を叩き込まれて眼下の川へと転落し、テーマ曲タイム、慈悲なく終了(笑)
 …………真のヒーローへの道のりは、まだちょっと長い。
 鎧を解除したヘルマンが荒い息をつくことで死力を尽くした戦いだったよホントだよと、この期に及んで川に突き落とされたレオンの扱いにフォローが入り、真意の見えぬまま番犬所の指示に従うヘルマンはメンドーサにより、城の地下に封じられ続けてきた、超巨大ホラーの姿を見せつけられる。
 それは、まだ番犬所が出来るよりも遠い昔、古代の魔戒騎士と魔戒法師によって厳重に封印された、人のなりかけのような魔物――アニマ。
 「――その力をこの手に収めた時、私は永遠となるのだ」
 アンチテーゼとしてのメンドーサのこだわりもしっかりと拾われて、巧い。
 川落ちレオンはアルフォンソとエマに拾われ、その手には、父から託された魔道具が。月食が近づく中、それぞれの思惑でそれぞれを利用しようと魑魅魍魎が貪り食い合う王都で、魔戒騎士と魔戒法師は、力なき人々を護り、明日の光を、その先へと続く世界を切り拓く事が出来るのか……最終決戦を前にした親子対決としては文句なしの面白さで、つづく。