東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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冬の向こうへ

牙狼<GARO> -炎の刻印-』簡易感想8

●第17話「雪夜-SNOW FALL-」
 「……ありがとうな。きっと、そう思えるようになったのは、ララのお陰だ」

 戦いを離れ、豊かではないが和やかな村での生活が続く内、すっかり険が取れて職業:ファーマーにジョブチェンジしたレオンはある日、村に伝わる伝承の丘で、番犬所出入り口の名残を発見。
 (必要ないんだ……だから忘れられたんだ……。俺と……同じだ)
 緩やかに、穏やかに、大地の実りと共に巡り行く日々に落ち着くかと思われたレオンだが、村の領主の元をアルフォンソが訪れた事で、宿命は再び、若き狼の元へと舞い降りる。
 「やっとわかったんだ……親父にずっと言われてた事が。俺たちはなんの為に剣を取り、戦うのか……護りし者として。でも俺には、護りたいものが無かったんだ」
 ここまで積み重ねてきた「魔戒騎士とは?」の命題を肌で感じ取り、自分と向き合い直したレオンの言葉に対し、もし自分が同じ立場だったら復讐に飲み込まれていたかもしれない……と語る王子、出来が良すぎて怖いよ王子!
 「結局、我が身に起きてみない限り、私たちは、本当には何も理解できないかもしれないな」
 「でも、だからこそ、護りたいと思うのかもしれないな。この哀しみは俺だけで終わらせる……二度と、他の誰にも味わわせないと」
 「……レオン、違っていたなら、許してほしい。おまえにも……護りたいものが出来たのか?」
 「……そうかもな」
 すっかり、いい顔をするようになったレオンの心情も慮り、レオンの分までガロの使命を果たし続けると宣言すると、ララと共に去って行くレオンを微笑ましそうに見つめる王子、キラキラすぎて怖いよ王子!!
 ……だが、束の間の平穏とぬくもりは、雪の夜、巨大なホラーにより蹂躙される。
 アルフォンソが追いかけていた、地中を移動する巨大なウナギホラーが村を襲い、辛うじて手斧を叩き込んだレオンは、ララ一家を元番犬所入り口へ逃がそうとすると、自身はアルフォンソの元へと走る。
 ――レオン、おまえにも護りたいものが出来たのか?
 「今の俺には、何もできない!」
 アルフォンソを呼びに走るレオンの姿に、アルフォンソの言葉とレオンの血を吐くような叫びを重ねるのが劇的で、ようやく護りたいものを得ながら、しかしその為に何も出来ない己の因果の報いに苦しむレオンから、ホラーの出現を伝えられたアルフォンソは巨大なウナギホラーを前に空中ガロ召喚。
 「貴様ぁ、今まで一体どれだけの村人を喰ってきた!」
 金狼の面が激怒に震えると、開脚でホラーの顎を割いたり、咄嗟に剣でホラーを地面に縫い止めたり、トドメはステゴロによるファイアーガロ百烈拳で完封勝利だったり、王子ガロが、強すぎます。
 ……しかし、来年へ向けた蓄えを捨てきれなかったララの一家は燃え盛る家に戻って全滅しており、屋根の下敷きとなって瀕死のララは、その短い生涯を、レオンの腕の中で終えるのだった……。
 ……うーん……そっちに行ったか……。
 レオンの中に「生命」を注ぎ込んだ農夫の一家は、それ故にこそ、明日へ繋がっていく「生命」の源を捨てる事ができずに非業の結末を迎え、サブタイトルに「雪」が入っている時点で不幸な予感20%増しでしたし、ララが「外」には動きにくいキャラだし、OPでは陽炎のように消えているし、でもEDはレオン@新コートと一緒に並んでいるしな、と一縷の望みを抱いてはいたのですが、
 「※映像は本編の内容と異なる場合があります」
 でしたよ!
 ララの亡骸を抱えるレオン、その姿に悲痛な視線を向けるアルフォンソの姿で、つづく。

●第18話「幻炎-SCAR FLAME-」
 (ララ……約束する。お前が見れなかった花、光――必ず守る)

 「来年……いや、今日にさえ、おまえの手は、届かなかった。二度と届かない。俺が守れなかったから。力が無ければ何一つ守れない」
 ララの亡骸を抱えるレオンの体に久々に炎の刻印が浮かび上がり、第18話にして、再起どころか更に駄目な方向へ引っ張られそうになっているレオンはララの墓を作り、真ヒロインの土葬シーンという凶悪な映像から、レオンの心の隙間に忍び寄る黒い炎。
 (おまえの中は憎しみで溢れている。いや、憎悪と復讐こそがおまえの本心だ。全てを、根絶やしにしろ! おまえから全てを奪うホラーを、ホラーを、ホラーを憎めぇ!)
 「黙れぇ!!」
 再び剣呑な目つきになったレオンは、力が欲しい、とアルフォンソに黄金の鎧の返却を求め、復讐に囚われたのかと身構えるアルフォンソだが……
 「俺が欲しいのは、復讐の為の力じゃない。誰かを守るための力だ。たった一人でもいい。明日へ、その先へ繋げていける力だ。護りし者としての戦いを、俺も」
 ララを喪い、だが、ララに教わった心を得て、今日を生きる事が明日へ、明日を生きる事が次の明日へ、来年へ、再来年へ、未来へ……と繋がっていくからこそ、今この世界と繰り返される日々は美しく、価値があるのだと知ったレオンは、遂に、護りし為に戦う事の意味を見出し、憎しみのまま全てを滅ぼそうとする己の内の炎の因果を断ち切る事に成功。
 (俺は二度と俺の中の炎を見る事はない!)
 「レオン! 二度とくすぶる事がないよう、火の粉一つまで消し去れ!」
 レオンとアルフォンソは、再びレオンが黄金の鎧をまとう資格を持てるか否かを互いの剣にゆだねて激しくぶつかりあい、レオンをがっぷり四つで受け止める王子の、器が大きすぎる(笑)
 何この、魔戒騎士界の超逸材。
 もういっそ、アルフォンソの血統が黄金騎士の本家として伝えられた方が、未来の黄金騎士は「クールと呼ばれたいお年頃」と気取る事もなく、超フレンドリーで超紳士的で超有能に育つのではないか……。
 裂帛の気合いと共に両者の剣が交差し……森でホラーから逃げる姉弟を救う、レオンとアルフォンソ。
 ここは、新生レオンガロがヒーロー登場からホラーを圧倒して、ある意味最終回、みたいな復活劇として描いても良かった気はしますが、ガロ@レオンと、ガイア@アルフォンソの共闘で打ち破り、終盤戦へ向けて、両者の関係性を描くのを優先した方が良い、という判断だったでしょうか。
 ホラーを退治し、姉弟の命を明日へと繋いだレオンとアルフォンソだが、その前に、ヒメナと心を通い合わせるも、白い花を置いて宿を去ったヘルマンが現れる。
 番犬所の指示でメンドーサに協力するが、それは護りし者として意味のある行為、と不可解とも思われる理由を告げてヘルマンは姿を消し……呆然と取り残された二人で、つづく。
 アルフォンソ漫遊記とレオン彷徨編は、ララの退場と黄金騎士レオンの復活により後半戦の前半分で幕を閉じ、今作らしい“使い切り”方ではあるものの、如何にも悲劇に見舞われそうなキャラが結局命を散らしました……というのはあまり好きな展開では無いのですが、登場から死後まで、ララを丁寧に扱ってくれたのは良かったところ。
 これは前半からラファエロやベルナルドの退場劇を描いているからもありますが、そこに生きていたキャラクターの“生き様”について誠実であろうという姿勢が見えるのは、今作におけるキャラの退場劇を比較的受け止めやすい部分。
 また、市井の人々の生活に触れる事で当たり前の日常の意味を知る定番に、「来年の実りの為に」種を繋ぐ農夫の生き様を当てたのは、今作にふさわしい要素の連動で物語全体の説得力を巧く引き上げてくれました(それ故にこそ、一家は全滅せざるを得なかったのが、実に非情でありますが……)。
 大きな転機を迎え、加護であると同時に呪いであったものを自ら断ち切ったレオンですが、ヘルマンが出てくると相変わらずヤンキーで、そのヘルマンの動きを終盤への楔としつつ、次回――なんか、凄くテンションの高いエマ。