『忍者戦隊カクレンジャー』感想・第41-42話
◆第41話「はぐれゴースト」◆ (監督:小笠原猛 脚本:曽田博久)
カクレンジャーの訓練シーンから始まり、ひとりベンチで眠りこけているセイカイ、第7話から成長が無い……かと思いきや、飛んできたリンゴを鮮やかにキャッチ。
そんなセイカイを、男の鑑、と褒め称える少女が、祖父が亡くなって元気のない弟を鍛えてほしいとセイカイに頼み込み、調子の良いセイカイが押しつけ弟子を引き受ける事になる一方、街には妖怪・提灯小僧が現れると、此の世に未練をもった珍妙なゴースト達を世に放ち、神出鬼没のゴースト達にカクレンジャーは大苦戦。
「此の世で果たせなかった欲望を満たす為、選び抜かれた最強ゴースト達が暴れ回り、此の世を地獄と化すのだ~」
だがそこに、孫を心配するあまり甦ってしまった少年の祖父が混ざっていた事から、大魔王様のお叱りを受ける提灯小僧。
本来は凶悪な殺人鬼のゴーストを呼び出す予定だったとの事ですが、大事な孫の為とはいえ、見ず知らずの青年の頭を手にした杖で気絶するまで殴りつけられるお爺さんには、素養は充分あるのであながち間違ってはいない気もします。
慌てた提灯小僧が祖父ゴーストを回収しようとする一方、孫との再会を望む祖父ゴーストに肩入れするニンジャマンだが、間に入ったセイカイは、脱・おじいちゃんを果たさない限り、少年はいつまでも弱虫のままだ、と二人を止める。
牛鬼回に続き、ニンジャマンを人間サイズのドラマに絡めて性格を出していくのは良かったのですが、その余波を受ける形でセイカイと少年の交流は物凄く雑になり、冒頭は少年に逃げ回られていたのに急に話を聞いてもらえるセイカイ、色気とも食い気とも関係ないところで祖父とニンジャマンに真摯な説得を行うセイカイ、本当の勇者とは何かを少年に語り出すセイカイ、の全てに説得力が欠落。
初登場回でしか触れられていませんがセイカイなら弟は居ますし(ゲーセン友達の弟分、であって実の弟では無いとの事)、その辺りを拾って線を延ばせればまだもう少しなんとかなったかもしれませんが、今作の弱点であるキャラクターの積み重ねの弱さが如実に出てしまいました。
……この辺りを見ると、90年代後半の《スーパー戦隊》は、メンバーの色分け、に対する意識がかなり強くあったのは窺えるところ(特に『メガ』は、『ジェット』を踏まえた上で、アニメ的な文法と実写の間の新しい落としどころを探る部分があったのだろうなと)。
祖父の形見である懐中時計を取り戻す為に少年がダッシュし、勇気を手に殻を破るのは曽田さんの得意パターンといえますが、物語の積み上げが巧く行っていない為、劇的にはならず。
また、メインのゲストキャラが(幽霊だから)ずっと顔が土気色、なのと、4クール目にもなって珍妙な仮装軍団に苦戦するカクレンジャーの図は、映像的に辛かったところ。
孫の成長を目の当たりにした祖父ゴーストは、カクレンジャーの危機に立ち上がると、開眼ゴーストダイナマイトにより、提灯小僧とゴースト軍団の動きを止め……やはり、最強の殺人鬼の素養があったのではないか。
或いは、一人暮らしだった祖父の家の地下室には、孫をいじめたり、馬鹿にした人たちの……(以下略)
真相はさておき、動きの止まったゴースト軍団に赤が雷鳴剣を浴びせるとゴースト軍団は消滅し、巨大化した提灯小僧を大将軍とサムライマンで成敗。
思い出の懐中時計が再び動き始め、未来へ向けて歩き出すんだ、とオチは綺麗にまとめて、つづく。
◆第42話「強奪忍者パワー」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升)
大魔王様は、分身である妖怪ダラダラを生み出すと、ニンジャマンを手中に収め、カクレンジャーと三神将をまとめて壊滅させようと動き出し、それを覗き見していた白面郎は、三太夫の弟子少年ブンと接触。
「大魔王は、自らの手でカクレンジャー打倒に動き出した」
「殿、なにか打つ手を考えなければ」
「……しかし大魔王は私を疑っている。いや……既に私が妖怪を裏切っている事に、気がついているかもしれん」
え(笑)
そ、そりゃそうですよね……! という台無し発言が飛び出して目が点になりましたが、大魔王様の復活以降、白面郎が妖怪軍師らしい仕事を全くしていないので当然すぎる帰結であり、いったいぜんたいなんの為に、三太夫と示しあわせて、カクレンジャーの青春を弄んできたのか。
元より白面郎、後から何でも書き込めるフリーなカードの意味合いはあったのでしょうが、退場劇も利用してのカクレンジャーに対する念入りな隠蔽工作に比べ、妖怪サイドでの対応は杜撰の一言なので、何を言っているのだろうこの人感が物凄い事に。
勿論、劇の外での10年間の貢献はあるのでしょうが、やはり劇の中で妖怪軍師らしいところを見せておかないと、そもそも立ち位置に説得力が生まれないですし……白面郎の最終目的は、大魔王の「封印」を続ける限りは戦いが終わらないので、敢えて解放した大魔王を倒す事で血の因縁を終わらせようとしているとかそんな感じになるのかなと推測はしていますが、どう転ばせるにせよ、大魔王復活直後にカクレンジャーと敵対する一幕ぐらいは、ポーズとして描いておいてほしかったところ。
そして、ブン少年の芝居が特筆レベルできつい。
大魔王が策謀をめぐらす一方、親しくなった少女の父親が単身赴任で子供の側に居ない事に憤るニンジャマンが、鶴姫を気遣う男衆に口を塞がれるのは今作にしては珍しく点と点を繋げた心情描写なのですが、空に浮かぶイメージお父様が駄目人間モードの真っ最中の為、なかなかいいシーンになりません(笑)
罠にはまったニンジャマンはダラダラに取り憑かれて妖怪パレスに拉致され、忍者のパワーを吸収されたニンジャマンがダラダラに殴り飛ばされるのを見て露骨に狼狽する白面郎、隠す気無いの……?!
「餌だ。おまえを餌にして、今度こそ三神将もカクレンジャーも倒してやる」
作戦の第二段階として巨大ダラダラが街で大暴れを始めると、罠を警戒するサスケが一度は制止するものの、ビルが吹き飛ぶと鶴姫の音頭で「一か八か、やるしかないでしょ!」カクレンジャーはスーパー変化から大将軍。
スーパー隠大将軍が急降下爆撃パンチを打ち込むとダラダラはあっさり爆発するが、強奪した忍者のパワーを用いたダラダラマンとして復活し、遠隔操作で分身ダラダラを操る大魔王様は、妖怪トレースシステムで大暴れ。
この日の為に、数百年間、イメトレを重ねてきました!!
見た目半分ニンジャマンの敵に困惑したカクレンジャーは連続攻撃を浴びてしまうが、そこに無敵将軍が現れると、躊躇なく、顔面を殴った。
更に、久方ぶりの火炎将軍剣がダラダラマンをずばっといくが、突然ビルの屋上に現れたニンジャマンが苦しみもがき、ダラダラマンに与えたダメージはニンジャマンが身代わりに受ける事が明らかに。
「卑怯は妖怪の特権だ」と高笑いする大魔王様、手も足も出ないまま倒れた三神将の力も吸収しようとするダラダラマンで、つづく。
妖怪軍団にスカウトするを通り越して完全無欠の人質となってしまったニンジャマンですが、過去の師弟関係は語られているとはいえ、ニンジャマンの解放後、三神将からのコメントが一切無いとか、カクレンジャー搭乗の大将軍に対して連呼される「師匠!」に感じる微妙なすれ違い感とかが積み重なって、「ニンジャマンと三神将の関係性を利用した人質作戦」そのものが、劇的さの欠ける展開に。
またそこに、鶴姫の父に対する想いを加えているのですが、三太夫退場回の後は白面郎の出番が少なすぎる事もあって、鶴姫と白面郎の絡みや心情の掘り下げも不足しており、あっちもこっちも、枝葉は伸ばしたけど肝心の幹がしっかりしていないといった状態。
後、一応ニンジャマンに刀を突きつける係の白面郎は、一緒に高笑いぐらいはして下さい……!