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アイツが噂のヒルマゲント

ウルトラマンブレーザー』感想・第1話

◆第1話「ファースト・ウェイブ」◆ (監督:田口清隆 脚本:小柳啓伍
 「そして全員、無事に帰還するんだ」
 物語は揺れる狭い室内での兵員輸送シーンから始まり、若手隊員を使っての簡易ブリーフィングで状況を視聴者に伝えると、怪獣災害の続発する地球に飛来した宇宙怪獣が、対怪獣の実戦経験を重ねてきた部隊の想定をも上回りながら街を火の海に変えている事をTVリポートで説明。
 怪獣映画的な画作りを好む田口監督ですが、抑えた照明、地味な色彩の軍服、大規模な都市破壊といった映像に加え、ブリーフィングとTV中継、指揮所の描写、目まぐるしく進行する作戦……と、話運びも合わせて“超濃縮された怪獣映画文脈の煮込み”といった作り。
 ……「体内活動を非活性化させる特殊弾頭」は恐らく『ゴジラvsビオランテ』の抗核バクテリアのオマージュでしょうし。
 何かと軽口を叩き続けやかましい男所帯で慕われる、主人公ヒルマ・ゲント率いる第一特殊機動団が地上に降り立つと、ビルの谷間から人間が怪獣と出くわすとこんな風に見えるだろう、という画から、怪獣の攻撃による周囲の被害を臨場感たっぷりに見せるのは、田口監督の十八番、といった印象。
 司令部の口出しで急遽作戦が変更される中、慌てず騒がず他部隊と連携を取ったゲントは、部下を助けつつ特殊弾頭を打ち込む事に成功するが、切り札となるかと思われた特殊弾も効果を発揮せず、怪獣の猛威の前にさらされる。
 「言っただろ。全員無事に帰還する」
 なんとか部下と共に離脱を図ろうとするも絶体絶命のその時、ゲントの左腕に光り輝くデュエルディスクが突然はまると、右手には同じく光るメダルが生じ、ゲントの意志を完全無視して、強・制・起・動。
 まばゆい光と共に現れた巨大な腕が倒れかけたビルを支えると、怪獣に向け、高層ビルの陰から顔を半分出してこんばんわする、レッドマン登場。
 「…………すげぇ。なんなんだあの巨人」
 赤と青のラインが複雑に体を走る銀色の巨人が池袋に立ち、ちょっと、自分自身に戸惑っていたところから、ビルを利用してのターザンニードロップを宇宙怪獣へと叩き込む!
 「……ウルトラマンだ」
 「は?」
 「何十年も前から宇宙飛行士たちの間で噂されていた、未確認大型宇宙人のコードネームだ。……本当に居たとは」
 劇中における「ウルトラマン」の名称は、規模は宇宙ですが、つまるところ“都市伝説”として取り込まれ、2010年頃の《仮面ライダー》で持ち込まれていた文脈が入ってきているのが、ちょっと面白い(笑)
 闇の中で青白く輝く顔の左半分(名前からすると、炎のイメージでしょうか)と胸のコアが目立つ都市伝説ウルトラマンは、猛然と怪獣に肉弾戦を仕掛け、
 「Wh! ほぁー! ほぁーーーー! Rhhhhhhh!」
 ……うるさかった。
 登場当初の戸惑い方を見るに基本はゲント人格が主体かと思われますが、どんな形でどれぐらい人格が混ざっているのかちょっぴり不安になるウルトラマンは、背後の部下を守る為、威嚇を繰り返しながら怪獣を後ずさりさせ、
 「UhーーーるぅぉぉAhーーー!」
 ここの視線の動きで、隊長の意志や性格を示しているのは、野獣の咆哮が支配する戦闘の中で、巧い。
 体勢を入れ替えながら、ウルトラいよいよの時は口の中を狙うのよパンチを叩き込む光の巨人だが、怪獣の反撃を受けて地面に転がると胸のパーツが真っ赤に点滅し、とても主張の激しいカラータイマー。
 だがその時、追い打ちをかけようとした怪獣の左側頭部に、地上から短パン女の放った特殊弾頭が突き刺さると怪獣は飛び道具を使えなくなり、その隙に立ち上がった巨人が試しに拳を振ってみると、あ、なんか、光線出た。
 再び取っ組み合いとなると、ウルトラマンは関節への攻撃から肘打ち、そして回し蹴りを叩き込み、基本的に今回、“怪獣映画をウルトラマンでぶん殴る”といった構造なのですが、巨人の中の人からまだ怪獣映画が抜けきっていないので、ジャンピング威嚇からがっぷり四つのバアハッグに持ち込んでの腕パーツもぎ取りが、実に怪獣ファイト(最初、腕もいだのかと思ってちょっとビックリしました(笑))。
 エビ怪獣に大ダメージを与えた巨人は、突き出した手の平の真ん中に生じた穴から光の槍を取り出すと、力一杯投げつけて貫くちょっと怖い技で、凶悪宇宙怪獣を葬り去るのであった。
 そして、隊長は思った。
 ……ところでこれ、どうやって戻るんだろう。
 気合いで……飛んだ。
 空の彼方へウルトラマンが消え去った後、ゲントは現場でハッと目を開き、現時点ではメカニズムは不明ですが、とりあえず、作戦行動中行方不明からの除隊処分にならずに済みました。
 だがゲントの右手には呪いのメダルがしっかりと握りしめられており(穴……?)、怪獣災害の頻発する地球、ゲントが手に入れた力はいったいなんなのか?! で、つづく。
 途中脱落した『トリガー』以来で視聴するTVシリーズの新作《ウルトラ》、そういう仕掛けにしても、個人的には“怪獣映画の文脈”に頼りすぎではというか、一つ一つのシーンにおける文脈の比重が大きすぎるのは気になりましたが(『vsビオランテ』大好き人間の為、ちょっと面倒くさいスイッチが入っている自覚はあります)、次回、「怪獣映画」を土台とした《ウルトラ》(ちょっとメタ構造への意識はあるのでしょうか……?)を、どう描いてくるのかは、楽しみです。
 新ウルトラマンは、宇宙都市伝説として「ウルトラマン」の名前を持ち込んだ今回を踏まえて、個体名をどういう形で名付けてくるかがまず気になるところですが、背中は骨格、前面は血管、なデザインは人体模型っぽいなと思ってみたり。
 後、「ヒルマゲント」が微妙に「ハルマゲドン」のアナグラムめいているのは、意味があるのか無いのか。今回は完全にプロローグだったので、次回以降のキャラクターの描き方も、楽しみにしたいところです。