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簡易レビュー企画3:『ウルトラマン80』

 全話視聴済みの作品を、簡便に一つずつまとめてみようという、手探り気味の企画です。

君は誰かを愛しているか

◆『ウルトラマン80』 (1980年4月2日~1981年3月25日) 全50話

演出〔湯浅憲明:22本 外山徹:8本 深沢清澄:6本 東條昭平:4本 野長瀬三摩地;3本 広瀬襄・合月勇・宮坂清彦:2本 満田かずほ:1本〕
脚本〔阿井文瓶:15本 石堂淑朗・平野靖司:8本 若槻文三:5本 山浦弘靖:4本 水沢又三郎:3本 広瀬襄・土筆勉:2本 田口成光・南川竜・吉田耕助:1本〕

 「僕は、怪獣の生まれてくる根本を叩き潰したいんです。僕は、怪獣と戦うのと同じような気持ちで、先生になったんです」
 『ウルトラマンレオ』から5年ぶりとなる、TV特撮作品での《ウルトラ》(前年に、アニメの『ザ☆ウルトラマン』放映)でしたが、初期コンセプトからの大幅変更などもあり、残念ながら良く出来ていたとは言い難い一作。
 今度のウルトラマンは中学教師だ! と教師兼防衛隊員として学園ドラマ要素を取り込んでスタートしたものの、周囲に秘密の隊員活動・生徒たちの抱える問題と怪獣要素が噛み合わない・防衛組織サイドの掘り下げに手が回らない、などの無理が重なった末、第12話をもって、学園要素が消滅。
 (※なおこの「存在しなかった事にされた」学園生活、は後の『ウルトラマンメビウス』「80」編の題材とされ、一定の決着が付けられる事に)
 寓意的表現としての「怪獣」を、どうすれば生まない世界を作れるのか? そんな悪意の存在から目を逸らし、忘れようとしている世界を背景に、「生徒達を導く事」=「怪獣とのもう一つの戦い」と置き、主人公が教師である事にしっかりと意味を持たせた立ち上がりは鮮やかだっただけに、その後の話作りが巧くいかなかったのは残念でしたが、今作最大の問題は、路線の大幅変更に際して、教師ではなくなった主人公の、信念・行動原理の再設定、を怠った事。
 第14話からはシビアな鬼軍曹ポジションが増員され、防衛組織UGMの引き締めが意識されると共に、シリーズ従来作同様の、防衛組織vs怪獣/敵性宇宙人の構図に組み立て直されるのですが、新たな状況下における(なにぶん、学園要素は新番組が始まったレベルで唐突かつ完全に消滅する)「ウルトラマン80(矢的猛)が地球で戦う理由、及び地球人へのスタンス」が再設定されなかった事により、以後延々と、主人公の行動原理とアイデンティティが溶けて崩れ去ったままになり物語の軸を見失うのが、致命的な失点となってしまいました。
 シリーズの持ち味である巨大特撮は総じて迫力があり、惚れ惚れするような空戦も随所に見られる一方、(この時代には実際ままあったようですが)本編班と特撮班の意思疎通が微妙に取れていない気がする分断に、周期的にそれらしい事を言うが、すぐに自分の位置づけが曖昧になり、ひたすらあやふやに生きる主人公、しばしば設定が行方不明になる防衛組織(隊員)、が爆発的な負の化学反応を引き起こして、物語は完全に迷走。
 その中では、平野靖司(平野靖士)が、掛け合いでキャラの掘り下げを行って愛嬌を付け、矢的のアイデンティティの再設定も試みる、と後にアニメ畑などで活躍する手腕で光るものを見せるのですが、全体の状況を覆すには至らず。
 第34話から脚本に石堂淑朗が加わってメインライターが交代すると、ホームドラマ的な要素の追加など更に迷走が加速され、基本中の基本設定すら忘れ去った歴史の捏造など雑な作りが極まった末に、あまりにも今作らしいカタストロフに辿り着き、いくら一話完結性が強いにしても、“壊滅的な一貫性の無さ”が作品最大の特徴となってしまいました。
 数話おきに別のユニバースに説明なく移動している、とでも解釈しないと主要人物の言行を受け止めきれず、ひとりマルチユニバース、みたいな作品(笑)
 初期コンセプトが大々的に崩壊した事情はありますが、その後の抜本的立て直しが出来ずじまいだったのが、とにかく残念でした。

一番好きなエピソード:
 ●第32話「暗黒の海のモンスターシップ」(監督:外山徹 脚本:平野靖司)

印象深いポイント:
 ●打点の高い飛び蹴り。
 ●ひたすら女性関係で好感度を下げ続けていく矢的先生の駄目男ぶり。
 ●超絶格好いいオオヤマキャップ。
 ●回によってはほぼ全ての内容を喋る次回予告(なお、最終回にも炸裂)。

口に出して読みたい名台詞:
 ●「これからはね、UGMと学校、二ヶ所で一生懸命頼むよ」
 ●「こっちが好きだって言ってるんだもの、そっちだって好きにならないわけないさ。明日から毎朝迎えに行くぞ」
 ●「ジョウノ隊員は一ヶ月、ハラダ隊員は半年間、休みなしで勤務につくこと」
 ●「メダカは何を着たってメダカさ! 金魚にはなれやしない!」
 ●「おまえの命は一万円か! 離せ!」
 ●「ウルトラマン80、おまえの勇気は死んだのか。肉体よりも早く、おまえの精神は、死に果てたのか。ウルトラマン80よ、立て! 立って戦え! おまえの勇気を、正義の矢として、悪を倒すのだ!」