東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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人は空ばかり見てる

牙狼<GARO> -炎の刻印-』簡易感想7

●第14話「武勲-GESTE-」
 「ホラーが騎士道を語るな!」

 王子は……とっても働いていた。
 働き過ぎて……逃げ出していた。
 第12話であまりにも大暴れしてレオンとの待遇格差が開きすぎた王子を、軽く玩具にする事で愛嬌をブーストするのは、巧いバランス。
 忍び込んだ馬車でうたた寝してしまったところ盗賊騒動に巻き込まれた王子は無駄にヒーロー登場を決めてみせるが、魔戒騎士免許を取得したので人間を殴れないのはやや面倒なところ……と思っていたら、何故か盗賊の砦にはヘルマンが食客となっており、街側と盗賊側、両者の言い分の食い違いを確認してわかった事は、
 ((……どう聞いてもこいつが悪い))
 盗賊団が占拠している城砦には、騎士道伝説と表裏をなす魔女の噂が語り伝えられていてホラーの関与が仄めかされ……
 「さすがです伯父上!」
 「い?」
 「呪いの噂を知って、もしやホラーが居るのではと、調べにいらっしゃたのですね」
 「な、お、おう」
 「女性のために花を摘みに来たとは、風雅な嘘を思いつかれたものです」
 「お、い、いや……ン、ンン……」
 すぐ暴力に訴えてくるヤンキー体質の息子と違い、何事も肯定的に判断してキラキラした眼差しを向けてくる天然な甥っ子への対応にヘルマンは難儀し、前半から変化したキャラの関係性を描きつつ、両者の愛嬌になっているのが、上手い。
 行き倒れを拾ってくれたシーツの女・ヒメナ(たぶん劇中では初めて名前が登場)に渡す花を探しに来ていたヘルマンだが、甥っ子と共に城砦を調べる内に、隠し部屋を発見。伝説に謳われた二人の騎士こそが、武勲を求めた末にホラーに取りこまれた存在であり、魔女の噂で語られる領主の妻イザベルは、実は魔戒法師であり命がけで両者を封印していた事が判明する。
 「どちらがイザベルの血をすするのにふさわしいか、ハッキリさせようか」
 くしくも二体のホラーが同時に甦ると、過去の妄執に囚われたまま激突を開始し……頭部にカブトとクワガタのモチーフが入っている発想が、ちょっと戦隊怪人ぽいデザイン(笑)
 ゼロがクワガタを、ガロがカブトを討滅し、イザベルの残した封印であった白百合が役割を終える舞台において、騒動の遠因だった街の青年が盗賊娘を救っていいところを見せて綺麗に丸く収まり、今まで見た村井さだゆき脚本では、一番面白かったかも。
 同じ村井脚本の第7話はここまでワーストクラスの一編でしたが、「伝説(伝承)」に一ひねりを加える、という点が共通しており、脚本がこだわったモチーフだったりしたのでしょうか。
 その頃レオンは、ばったりエマと再会し、出番が終了していた。
 次回――は、いったい……?

●第15話「職人-PROJECT G-」
 「私は、マフラーをしていたと思うわ。確か、赤色だったかしら」

 鍛冶屋弟子が再登場すると、なぜかビデオ撮影によるドキュメンタリー映像みたいな作りになり、今、工房では機動戦士・光の騎士を作ろうとしていた……。
 「ここに集いしマイスター達。遂にその禁断の実験が、ベールを脱ぐ」
 き、禁断なの?!
 王都を邪悪な怪物から救った光の騎士を、人力で再現しようとする職人集団の試みがコミカルに描かれつつ、
 「ジョルディ……見てるか。おまえの弟子は、立派なもんだぞ」
 と、ホラーによって大切な人間を失った者が再び歩き出す姿を描くアフターフォローを行って、ちょっといい話要素をプラス。
 紆余曲折と試行錯誤を繰り返し、とうとう完成したスチームエンジン搭載の、ガロ人28号、起動……しちゃった。
 背中に動力を補助するエンジンを搭載した、強化外骨格形式のガロードアーマーを着込み、自警団の真似事を始めた職人集団は、村に現れるという化け物退治を請け負って、巨大熊と激突。
 世界観なにするものぞ、とスチームパンクの領域に突っ込んでしまった今回、必殺ガローンパンチはさすがにどうか……と思ったのですが、熊の攻撃を受けてエンジンが壊れた事で、半身が炎に包まれる……までやってくれたので、アリで(笑)
 「今だ! 組み付いて一気に自爆だ!」
 怪物の噂を聞いて村を訪れたヘルマンとアルフォンソは、怪物がただの熊である事を確認すると、ガローンダイナマイトからの脱出だけを助け、最後は王子パワーで全て丸く収め、凄いぞ、王子のキラキラ力(笑)
 「俺たちが護るべき人たちは、決して弱いわけじゃない。むしろ人の世の事になら、俺たちよりたくましいぐらいさ」
 「はい! だからこそ私たちは……護りし者として」
 結局、冒頭におけるビデオ撮影的な演出については回収されませんでしたし(今作におけるハイテク描写はだいたい、魔戒法師の魔道具、という事で説明はつけられますが……)、悪ふざけじみた部分もありましたが、アニメでこその手法を用いつつ、今作世界における“人間”とは何か、を掘り下げてくれたのは良いアプローチでした……面白く見せる為に若干ぶっ飛び気味でしたが、やはりそこをしっかり抑えておかないと、メンドーサの理屈の方が強くなってしまいかねないので。
 次か――……あ、鎧が無い方の主人公は、傷だらけの体を見せる入浴シーンで、出番がありました。
 ……まさかここまで完璧に主役剥奪されるとは思いませんでしたが(序盤のアルフォンソと同様、鎧が無いと実際問題どうにもならないのがありますが)、後はもう、十字架に磔にされたところを処刑寸前に助けられるヒロインムーヴをキメるしかないのか?!
 真面目な話としては、それだけレオンの炎上事件を重く置いて、その再起の過程には時間をかける必要があるという判断なのでしょうが(必要な階梯はしっかり踏んでおり)、既に3話を使っている事を考えるともしかして、中途半端に他の鎧を継承する事なく、魔法少女になるのかどうかギリギリまで引っ張るのか……?
 
●第16話「医術-CURE-」
 「暴飲暴食は体に悪いですからね!」

 諸国で名を馳せる放浪の医師・ファビアンに取って代わろうとした男が、医書に宿ったホラーに取りこまれ……後半戦に入り、復興していく王都の空気に合わせてか比較的明るいタッチで進んでいたのですが(第14話は、内容はともかく、ゲストキャラを始め諸々の見せ方が明るかった)、久方ぶりに陰惨な空気での導入。
 ヘルマンが世話になっている、宿の娘・ヒメナが伝染病に倒れて偽ファビアンの治療を受けるが、医書ホラーの目的は、自己治癒力を最大限に発揮した、完治寸前の患者を喰らう事。
 「私が喰らう人間の数よりも、私が病や怪我から助ける人間の数の方が、遙かに多い。それでも私を?」
 「おまえの力を借りなくとも、人は自ら困難を克服していくさ。それを信じて護り続ける。それが――魔戒騎士ってやつなんだよ!」
 「その頑固な頭は治療できそうにないですね!」
 王都に出没するホラーの正体を見抜いたヘルマンがそれを止め、レオンの再起へと繋げるスプリングボードになるのでしょうが、前回今回と、「人間とは?」「魔戒騎士とは?」を繰り返し明示。
 自らの傷を治療できるドクターホラーは、更にドーピングパンチを繰り出すと、劇中ここまで不敗だったゾロに変身解除級のダメージを与えるが、その妄執ゆえに怪我をさせたヘルマンの治療を始め……ここからちょっと、空気が緩く(笑)
 「マジか!? 力がみなぎる!」
 「私に治せぬものはない。さあ仕切り直しです」
 「……後悔すんなよ?」
 ファイト一発したヘルマンは再び鎧を纏うと、ドリル技(……ヘルマンとベルナルドの二人が使えるという事は、ラファエロさん直伝の必殺技なのでしょうか)から一気呵成の攻撃で今度こそホラーを倒し、お遊びの後はあっさり決着となるのですが、導入は前半戦を思わせる暗さで始まったので、エピソードの雰囲気は統一して欲しかったのが正直。
 個人的にちょっと、ヒメナがピンと来ないというか、作品全体のトーンから、声優(須藤祐実さん)が浮いている印象なのですが、調べたら《ハリー・ポッター》シリーズでハーマイオニーの吹き替えを担当しており、割と洋画吹き替えっぽさもある今作のキャスティングからすると、単に私の苦手な系統の声質なだけか……。
 「ゾロ~~、おまえにはこれから、メンドぅーサに協力してもらう」
 「……今、なんつった?」
 ヘルマンを呼び出した番犬所がとんでもない事を言い出したところで、つづく。
 そして息子さんはとうとう、出番が無かった。
 次回――そんなレオンにいよいよ宿命の奔流が迫りそうで、刃の断ち切る運命はなにか。