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東映暗黒駄メンターとは

暗黒駄メンター私論

 「暗黒駄メンター」とは、東映ヒーロー作品にしばしば登場する、いわゆるメンター(主人公ら若者を導いたり助言を与える存在)のポジションに居ながら、導くどころか害悪を撒き散らしているのでは? 或いは、自己の都合で他人の人生をいいように弄んでいるのは? との疑いが濃いキャラクターを指す個人的な用語です。
 このほど、『仮面ライダーV3』第15話において、ダブルライダー先輩が暗黒駄メンター資格を得たのをいい機会に、よく使うけど、そもそも暗黒駄メンターとはどんなキャラクターなのか? 言うほど登場しているのか? を、主な暗黒駄メンターをピックアップして検証してみようという小ネタとなります。
 なお、キャラによっては所業の全てに触れようとすると物語終盤のネタバレに繋がる場合もある為、具体的な言及は避けてぼかした表現や、要素の抽出だけに留めた紹介もあるのでご了承下さい。
 また、「その要素がある」を言い出すと際限なく広がりかねないので、これは、というキャラクターを選抜しています。

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●コプー (『超人バロム・1』/1972)
 大宇宙的正義の化身を自称すると、小学生二人を正義のエージェントに強制指名・呪いをかける・呪いの詳細を語らないまま爆死退場と、第1話からパーフェクトすぎる暴れっぷりをキめてくれた、1972年にして、東映暗黒メンター成分の結晶。
 宇宙的存在なので地球人とは倫理観が違うところはあるのでしょうが、終盤には更なる追い打ちを放ち、何もかもがハイレベルな暗黒駄メンター。

仮面ライダー1号&2号 (『仮面ライダーV3』/1973)
 自分たちで作り出した後輩の致命的弱点を、持って回った方法で隠した録音テープに吹き込んでおく悪魔の所業で、雄々しく暗黒駄メンターの会への入会資格を得た伝説のヒーロー。振り返ってみれば、詳しい説明を一切しないまま第2話で退場、もキめており、高い芸術点。しれっと生きていそうなところ(そもそも暗号地図は、カメバズーカ戦が終わった後に流したのではないか……)も、見る側の不信感を高めます。

●古賀博士 (『超人機メタルダー』/1987)
 自分の息子に似せて作った超人兵器の封印を諸事情により解いたが、その目覚めたばかりでポンコツな頭脳に、一般常識とか基礎教養ではなく、 生と死について「ワシが、この身を持って教えよう」と飛び出していくと実質的な自殺により一発退場をキめた、わかりやすい例。
 お陰で息子さんは初回から、「風よ、雲よ、太陽よ、心あらば教えてくれ。なぜこの世に産まれたのだ」と絶叫する事になりました。

●柳田(&五十嵐博士) (『機動刑事ジバン』/1989)
 警察組織におけるジバンの政治的後ろ盾だが、正義の味方の後援者としてはあまりにも“大事の前の小事”を地で行く性格であり、美辞麗句を散りばめて若者を戦場へと駆り立てる、「メンターとして暗黒だった」というより「良きメンターになりえる立場の人物が、どす黒かった」タイプ。
 また、物語開始時点では故人となっているジバンの開発者、五十嵐博士が、勢いで禁忌を乗り越える人体改造に手を染めた・孫の脳に何か仕込んでいたなど、数々の黒い疑惑を抱えており、大変困った合わせ技。

●道士カク (『五星戦隊ダイレンジャー』/1993)
 気力の達人にして五星戦隊の指導者…………?
 拉致・脅迫による強制的な戦士選抜をしておきながら、事前に何も言わないで後からネチネチ「私がなんで怒っているのか考えてみろ」と駄目出しをしてくるやり口に加え、隠し事も多い、三拍子揃った暗黒駄メンター。
 とにかく終始胡散臭いのに加えて、メンバーの自主性に期待するのが格好いい指導者のあり方、みたいなスタンスを貫いてメンバーとの精神的距離感がちっとも縮まらなかった事により、後半いくつもの大惨事を生み、90年代を代表する存在といえます。

ガリ (『忍者戦隊カクレンジャー』/1994)
 ジライヤの育ての親にして武術の師匠、というゲストキャラですが、悪事の隠蔽・復讐の押しつけ・にっちもさっちもいかなくなるまで粘った末に「最初からそのつもりだった」みたいな事を言い出すと、当の相手の気持ちは全く考えない自己満足の限りを尽くして退場とハイスコアを叩き出し、ここ最近のインパクトある大物キャラとして。

●小山内博士 (『ビーファイターカブト』/1996)
 2億年の眠りから醒めた、メルザード一族と戦う、コスモアカデミアの偉い人。
 実働部隊の上官としての驚くべき無能さはまだともかくとして、生死を賭けた戦いに巻き込んだ高校生戦士の私生活には他人事を決め込み、学業と戦士業の両立になんのフォローもしようとしない仕事しない系の駄・メンター。キャスト的には、ある程度コメディリリーフの役割を意図していたのでしょうが、場の状況からズレる事で笑いを生み出すコメディリリーフは、一歩間違えると物凄く人間味が薄れて見える事がある、というこれ以上無い例となりました。

●花形 (『仮面ライダーファイズ』/2003)
 スマートブレイン前社長。
 適当にマジックアイテムを送りつけてくる・思わせぶりな事ばかり言ってまともな会話が成立しない・言行はともなわないが一方的に愛情をアピール・自己本位な視点が激しく節穴……と、ほぼ完璧といっていい典型的暗黒駄メンター。
 かつて道士カクを演じた中康次、というキャストもあまりに会心で、暗黒駄メンター界の芸術品的存在。

●マスター・シャーフー (『獣拳戦隊ゲキレンジャー』/2007)
 「暮らしの中に修行あり」な獣拳マイスター。
 基本、長命の獣人(仙人的な位置づけ)なので、人間としての倫理観が危うくなっている部分がゼロでは無さそうなものの(そんな人に指導させていいのかはさておき)、同輩・兄弟子・元弟子、に対する各種反応(無反応)は多数の人格的問題を感じさせる上に、物語後半には口を開くほどに目が節穴になっていき、トドメは、重大な秘密を隠していた、どころか、秘密でもなんでも無かった頃に何故かその情報を伝えられていなかった、という史上空前の節穴案件を炸裂させ、宇宙一信用できない猫の座を勝ち取るのでありました。ちーん。

●島護 (『仮面ライダーキバ』/2008)
 人類の天敵ファンガイアと戦う、素晴らしき青空の会、会長……その実態は、「面白いから」という理由で若い命を死地に投げ込み、新装備開発の為にさらりと人体実験を行い、気分で部下を使い捨てる、どうひいき目に見ても、極悪人。
 『ジバン』の柳田に近い、「メンターとして問題がある」というより、劇中におけるメンターポジションに立っていたのが「吐き気のするほどの邪悪」パターンなのですが、キャラとしては、露悪的なアンチテーゼをやりすぎたところがあったでしょうか。

レインボーライン総裁 (『烈車戦隊トッキュウジャー』/2014)
 だいたい、諸悪の根源。
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 以上、作品数で割るとなんともですが、1970年~現在までの約50年間で11人、「5年に1人の逸材」と考えるとそれなりのペースでありましょうか。
 主な要件としては、
 育成(責任)放棄
 重大な隠し事
 人格的問題(目が節穴)
 といった辺りが、駄メンタースコアを稼ぎます。
 わかりやすく目立つところを挙げていったらこの10年のキャラがほとんど入りませんでしたが、追加で駄メンター度の高そうな名前を挙げると……
 ・ベルトさん (『仮面ライダードライブ』/2014)
 ・伊賀崎好天 (『手裏剣戦隊ニンニンジャー』/2015)
 ・石動惣一/ブラッドスターク (『仮面ライダービルド』/2017)
 ・飛電是之助 (『仮面ライダーゼロワン』/2019)
 ・桃井陣 (『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』/2022)
 といったところで。
 ベルトさんは、駄メンター云々以前に、駄目な生命感が強くて、意外と私の中でのスコアが伸びず(笑)
 ブラッドスタークは「本人にその意識はないが結果的に暗黒になっている」のではなく、「狙って悪の道に引きずり込もうとしている暗黒」なのですが、種明かしを済ませて物語中盤を越えてもまーだ戦兎さんからメンターポジションとして扱われていた点では、暗黒駄メンターパロディとしての成功例といえる気がします。
 飛電是之助は、劇中に登場が無いのでスコアを稼げませんでしたが、劇中に残されたあれやこれを見るに完全にヤバい人なので、もし登場していたら、ほぼ確実に暗黒駄メンターであったろうなと(笑) 1000%社長への影響や、ヒューマギア関連のあれこれを見るに、“世界に対する駄メンター”といえるのかも。
 《ライダー》系で大森P作品が目立つのは、大森Pが「父性」テーゼにこだわりがある為の必然といえますが、『エグゼイド』においてその中心が檀父子にスライドしていなかったら、日向先生はだいぶ危なかった気はします(笑)
 父といえば、主人公の育ての親ポジションである桃井陣は、獣人関連が有耶無耶になった為に駄メンター化を回避したキャラ、といった感。
 こうして並べてみると、80年代戦隊からの選抜がありませんでしたが、これは曽田-鈴木体制が割合と、「父性」「母性」を肯定的な作劇にまとまるからかな、と。
 夢野司令(『科学戦隊ダイナマン』)や太宰博士(『高速戦隊ターボレンジャー』)は危うい部分がありましたが、なんだかんだ戦隊メンバーとの繋がりが生まれていく流れには最低限の説得力を持たせる作りになって最終的な着地に至っていましたし、それと比べると、80年代へのカウンター意識はあっただろうにせよ、90年代前半の杉村戦隊は、相互の距離感が縮まる過程が欠落する事で、信頼関係の醸成に説得力が生まれない傾向があり、今回は名前を挙げなかった大獣神(『恐竜戦隊ジュウレンジャー』)や三神将(『忍者戦隊カクレンジャー』)が暗黒寄りに見える原因になっているとは思います。
 後、『カクレン』感想で触れましたが、杉村脚本における「父性」が、ちょっとぶっ飛びがち(笑)
 ……さて特にオチは無いのですが、「メンターの使い方」の工夫でいえば、『超獣戦隊ライブマン』における、如何にもなメンターポジションのキャラが早々に退場する事により、“野生の(メンバーの自発的な)戦隊”であるライブマンの特質を強調すると共に、敵サイドを“悪のメンターに率いられた存在”として明確な対比とし、それを物語全体のテーマと繋げてみせたのは、シリーズ屈指の巧さであったなと改めて。