『忍者戦隊カクレンジャー』感想・第37-38話
◆第37話「唐傘ダンス女王(クイーン)」◆ (監督:坂本太郎 脚本:杉村升)
「ふふはははは、そうかカクレンジャーめ。子供の他愛ない悪戯に引っかかりおって。情けない」
大魔王様! 大魔王様! 気を確かに持って下さい大魔王様!
今、大魔王様の満足のハードルが、某暴魔大帝ばりの危険水準まで下がっています大魔王様!!
《スーパー戦隊》シリーズの歴史上でも、屈指の駄目組織である暴魔百族の幻影が妖怪王国(仮)にちらつく中、悪戯小僧たちを利用しようとひらめキングした大魔王様は、ボディコンダンサーを人間体とする妖怪唐傘を招聘。
唐傘は悪戯小僧たちを巧く利用すると、サスケ・サイゾウ・ジライヤの3人に、履いたものを自在に操る妖怪シューズを履かせる事に成功し、女優さんの顔をそのまま使い、レースクイーン的な色彩で表現された妖怪唐傘のデザインとアイデアは強烈で、一周回って、《不思議コメディ》的なご町内の変人路線を彷彿とさせるのも凄い(笑)
ニンジャマンが助っ人に入ってジライヤはなんとか救出するが、サスケ・サイゾウ・悪戯小僧×2は妖怪に捕まって、大魔王様1200歳(という事は、今の大魔王様は二代目……?)の誕生パーティの見世物とされる事に。
全身タイツでEDダンスを送るサイゾウとセイカイはちょっと面白かったですが、白面郎さんは仏頂面で立ってないで、面白がるフリぐらいしてみせたらどうなのか。
クールと呼ばれたいお年頃なキャラ作りなのかもしれませんが、貴公子ジュニアならずとも疑いの目を向けたくなります。……というか、多少は劇中で“出来る”“信用される”“さすが軍師様”なところを見せてくれないと、ただでさえ不安定な大魔王様の格が、全自動で下降していくわけなのですが。
パーティ会場に突入したサスケ達はまんまと罠にはまって檻に閉じ込められ、わさび醤油でぺろりと食べられる危機に陥るが、ミクロ化したニンジャマンと、ブレーカーを落とした白面郎の助けで脱出に成功し、ニンジャマンが超有能。
「おのれ小癪なぁ、叩きつぶしてくれるわ!」
まさかの、大魔王様いきなり巨大化により大将軍とニンジャマンがまとめて危機に陥ったその時――超唐突に無敵将軍が出現。
「無敵将軍! 生きていたのね!」
一応、カクレンジャーからは生死不明の認識だったと白からフォローが入りましたが、“人格の有る仲間”という位置づけにしている割にはヌエ戦の茶番劇の後、一言も触れずに「新戦力・隠大将軍が仲間になりました!」で進んでおり、1号ロボと2号ロボの出入りを利用した再構築のチャンスだったにも拘わらず、“共に戦う仲間”意識が全く盛り上がらないまま、再登場はまたもや雑な奇跡要員として処理されて、巨大ロボと戦隊の関係をどう位置づけるのか、に関する今作の目配りの悪さは、酷い、の一言。
たぶん、一ヶ月ほど南仏プロヴァンス辺りでバカンスしていた無敵将軍はツバサ丸と合体してスーパー化。無敵キャノンを大魔王へ叩き込むと直撃を受けた大魔王様は撤収し、大魔王様ー?! 大魔王様ーーー!! 妖怪王国の国債が債務不履行を起こしそうです大魔王様ーーー?!
残った巨大唐傘は「青二才」発言でニンジャマンの逆鱗に触れると、サムライ激怒ボンバーで弱り切ったところに隠大将軍の必殺パンチを浴び、カクレンジャーはトドメだけ刺させてもらうのであった。
以前にもちょっと触れましたが、作り手の側としては“超越的存在の助力も含めてカクレンジャー”という意図なのかもですが、その超越的存在とカクレンジャーの間に、見ていて好感や愛着の持てる関係性が特に構築されていないので、全体的に出鱈目な助っ人(序盤における「忍術」の扱いに相当)に面白みが感じられないのが、劇的な盛り上がりに欠けるところ。
そこに楔を打ち込むのがニンジャマン(能力は三神将に近いが、人格はカクレンジャー寄りで、壺からの解放でカクレンジャーに恩義を感じている)の役割の一つなのでしょうが、そうなるともう1クールは早く出して欲しかったなと。
勉強に落ちこぼれ、こんな世の中を作った大人が悪い、と割と洒落にならないレベルの悪戯を仕掛けていた子供たちは疑似妖怪の位置づけだったのでしょうが、因果応報で散々な目には遭うも、特にカクレンジャーが寄り添ったり正道を示すくだりは存在しない精度の甘い脚本で、当然のように反省したと見せかけて悪戯をして走り去っていくのは、ドタバタオチ、とするにはあまりにもヒーローの存在が空虚で(くしくも『イナズマンF』的)、とにかく今作、前半からずっと杉村さんが“書けていない”のが、苦しい。
次作『超力戦隊オーレンジャー』までメインライターを務める杉村さんですが、杉村升×《スーパー戦隊》のピークは、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』中盤~終盤、に辿り着いたところで終わってしまった印象になります。
サイゾウ・セイカイ・ジライヤ(とうとう同じ箱に)が、鬼の形相で子供たちを追いかけていくと、距離を取った鶴姫とサスケは、OPとアイキャッチで先行していた巨大戦力揃い踏みを見上げ、中盤からその気配はあり、レッド補正といえばレッド補正でもあるのですが、今回やたらとサスケが、俺は、ヨゴレじゃないからとサイゾウたちと机の位置を離そうとするのは、どういう目で見ればいいのかちょっと悩みます(笑)
基本、巨大ロボ扱いな模様のニンジャマンは、
「あれ? おまえ、体を小さくできるのか?」
「あたぼうよ。俺の体は伸縮自在だぜ」
と思った以上に適当な存在で、まあこの辺りも、ウルトラセブン……ではなく、孫悟空要素であり、三神将ともども、神仙に近い存在だと思っておけば良さそうです。
そういえば、超忍獣を出す時に、なぜ稲妻を象った紋様が浮かぶのか首をひねっていたのですが、ニンジャマンの胸のマークを見て、「N」の字と掛けていたのか! と、ようやく納得(笑)
◆第38話「モオ~ッ嫌な牛」◆ (監督:坂本太郎 脚本:曽田博久)
「素晴らしいぞ! 世界征服を成し遂げた暁には、その鬼ヶ島ランドで遊び暮らそうぞ!」
大魔王様ー! 大魔王様ー! 株価が上場停止しそうな勢いです大魔王様ーーー!!
いやまあ、身勝手な欲望に忠実な姿は“悪”らしくあるのですが、現状、あまりにも画餅すぎて、今、大魔王様の野心の全てが、某帝王バンバばりのイメトレ状態になっています大魔王様!!
ジープに乗って街で暴れ回る妖怪・牛鬼のライフルで撃たれた人間は、牛鬼遺伝子の影響で牛鬼人間と化すと、銀行や貴金属店を次々と襲撃。
ローラースケートガンマンとしてジープの牛鬼に対抗しようとするジライヤは、帽子投げから卑怯千万の不意打ちを仕掛けるも敗北したところをニンジャマンに助けられるが、そのニンジャマンも慢心から不覚を取り、頼れる追加ロボだった前回と比べると、今回はだいぶコミカルな扱い。
鬼退治に邁進するあまり、他人を突き飛ばしても止まらないニンジャマンは、ジライヤに強引に捕獲されると自分のしでかした事を突きつけられて、反省会。
子供に嫌われ大ショックのニンジャマンは、ジライヤに慰められると
(俺、優しくされるの弱いんだ……!)
と明後日の方向に走り出し、あー……千年前はそれでコロッと転がされたのですね(笑)
恐らく師匠の元では、「このグズが! ミカンの筋は全部綺麗に取っておけと言っただろ! スクワット1000回!」と理不尽な仕打ちを受ける日々だったのでしょう……。
再びローラーガンマンで挑んだジライヤは、今回は早撃ち対決に勝利するとスーパー変化するが、ニンジャレッドの赤い色に大興奮した牛鬼がパワーアップし、連動して街の牛鬼人間たちもパワーアップ! はちょっと面白かったです(笑)
街にはマッスルな暴徒たちが溢れて世紀末の様相を呈し、ニンジャレッドを蹴散らした牛鬼は、鬼ヶ島ランドの建設用地として、沖の島を占領。
「みんな! ここはニンジャマンにチャンスをやってくれ」
「ニンジャマンに?」
「なんであんなおっちょこちょいに!」
……いや君たち前回、だいぶ一方的に助けられたよね……?
「あいつは本当はいい事をしたいんだ! でも……失敗ばっかり……」
なにやらニンジャマンが、熱意が空回りしがちな暴走ドジっ子キャラに書き換えられて、制作タイミング的にまま起こるズレではありますが、前回のニンジャマンとはほぼ別人。
日本語が不得手で、他人に巧く気持ちを伝えられない体験をしてきたジライヤにはニンジャマンの気持ちがわかる、とキャラの掘り下げと繋げ、ジライヤとニンジャマンは沖ノ島へ上陸。ニンジャマンが忍法マタドールの舞いで牛鬼にダメージを与えると、カクレンジャーボールが17話ぶりの有効打となって、牛鬼は巨大化。
冷酷非情なライフルマンロールプレイにより精神抵抗に成功した巨大牛鬼がマタドールの術を破ると、「青二才」発言からニンジャマンは怒り爆発し……「初代バルイーグルと二代目バルイーグルの区別もつかんのか、この青二才! 校庭50周!」と修業時代に受けた理不尽な仕打ちの数々により、深い深いトラウマがあるに違いありません。
そのサムライマンもライフル構えた牛鬼に苦戦すると、カクレンジャーが大将軍で参戦して左右の鉄拳とサムライジャベリンの合わせ技で牛鬼を撃破し、核の炎に灼かれた人々は、元の体格と人間性を取り戻すのであった。
「これだから、正義の味方はやめられねぇんだ。これからも頑張るぜぇ!」
ニンジャマンは、調子に乗りやすい粗忽者だが、子供好きの気の良い仲間、といった位置づけに収められましたが、キャラの方向性が安定するのかは、次回以降を見てみないとなんともいえない感じ。
そして次回――甦るあいつ。