東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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実質的アイドル回と懲役1000年のニンジャ

忍者戦隊カクレンジャー』感想・第35-36話

◆第35話「おしおき三姉妹(シスターズ)」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久
 鶴姫の幼なじみであり、同じく忍者の血統に連なる、山咲雪代・山咲月代が登場し、今作では鶴姫を演じる広瀬仁美さんが、かつて山吹花子としてヒーローを務めた『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(1993)からの、三姉妹本人出演スペシャル。
 雪子ならぬ雪代、月子ならぬ月代、の妹として新たに設定された花子ならぬ花代の通う小学校の様子がなにやらおかしく、そこでは妖怪カマイタと花のくノ一組による、人間妖怪化計画が密かに進行していたのだった! ……と洗脳塾パターンになっているのは、荒川脚本だけに、『シュシュトリアン』パロディ(というのか今回も?)だけではなく上原正三オマージュも組み合わさっていそうではあります。
 「かまかまかまかまかまかまかまかま……」
 イタチの札を貼られ、妖怪栄養ドリンクを摂取した子供たちは徐々にイタチ人間と化していき、フェードアウト気味だった花のくノ一組メンバーが教師役などで登場するのが、女幹部コスプレ回的な目配りといえますが、画としては、視察に来ている大魔王様が一番面白い(笑)
 カクレン一同と山咲姉妹は手分けして学校の様子を窺い……
 サスケ「なんで俺だけこいつとかな……」
 鶴姫「なんか言った?」
 サスケ「あ、いや、なんでも」
 と挟むのが、実に荒川さんテイスト(笑)
 なお今回から、男性陣は秋服(スタート時とはまた違う衣装)になっているのですが、バンダナ外して顔立ちの少しシャープになったサスケが、だいぶ二枚目度アップ。鶴姫だけはスタート時と同じ衣装なのですが、これは、この衣装の完成度の高さ、ゆえでありましょうか?(歴代でも、私服タイプにおけるキャラとの紐付けとしては、会心の衣装だと思います)
 学校の様子を探るも、イタチ人間化が進む子供たちを盾にされて一時撤退を余儀なくされたカクレンジャーは、山咲姉妹と協力して再突入すると、立ちふさがるくノ一組を前にスーパー変化。
 再びイタチ小学生をけしかけられて白がピンチになるが、それは人形による囮であり、雪代&月代と共に校長室を強襲した鶴姫が、カマイタチの洗脳妖術を打ち破って子供たちを解放すると、屋上に立つ三姉妹!
 「乙女の純真、雪のごとく」
 「月に煌めく三姉妹」
 「折り鶴よ舞え、花と咲け!」
 「三人揃って――」
 「「「お仕置きセーラーシスターズ!」」」
 「お仕置きセーラーシスターズだとー?!」
 竹本昇監督のツイートによると、三人の衣装は実際に使われていたもの、口上は渡辺監督のアイデアとの事で、一応、子供の頃は3人でいじめっ子を成敗したりしていた、と今作中で成立させる為の布石を置いているのが、荒川さんらしい目配りと組み立てではあり。……まあ、どう転んでも力業でのパロディなのですが(笑)
 「クレヨンしんちゃん曰く、じゃ、そいう事で」
 「「じゃ、そいう事で」」
 パロディ元がどうだったのかはわかりませんが、やたら無表情に言うのが妙な面白みを出し、カマイタチ校長を《不思議コメディ》時空に引きずり込む三姉妹。
 「子供達を操り、妖怪の手先にしようとしたその罪! 許しがたい!」
 「天に代わって!」
 「お仕置きよ!」
 鶴姫がかの有名なポーズを決め(これは竹田アクション監督との事)、《スーパー戦隊》シリーズの影響があったとされる『美少女戦士セーラームーン』(今作放映当時、アニメ『美少女戦士セーラームーン』は第3期にあたる『S』を放映中)のパロディが本家の中に持ち込まれる、混沌ぶり。
 三姉妹は新体操装備を身につけると連続攻撃でカマイタチ校長を叩きのめし
 「「「お仕置き! ファイナル!!」」」
 が炸裂。
 弾け飛んだカマイタチとくノ一組が合流し、鶴姫がスーパー変化して改めてカクレンジャーの戦闘となると当然のようにイメージソング的なものが流れ出し、『シュシュトリアン』2話ほどしか見た事が無い為、筋立てや映像面でどの程度パロディになっていたのかはわかりませんが、今回、パロディ要素をパロディだと認識しないと実質的にアイドル回といえる中身であり、図ったようにローテが回ってきている渡辺監督は、実際のところ図っているのですか東映上層部様。
 脚本も監督も、さすがに約15年後にもタッグで《スーパー戦隊》でアイドル回をやっているとは考えていなかったのではと思うのですが、白鶴の舞いにより空中戦に敗れたカマイタチは、巨大化も許されずにくの字斬りで成敗されるのであった。
 くノ一組は撤収して学校は元の平穏を取り戻し、あの野郎どもが鬱陶しくなったら、いつでもシスターズ復活よ、で大団円。

 波にはじけた 笑い声が
 私の心を キラキラ つつむ
 この瞬間を いつまでも
 忘れずにいたい・・・
 つるひめ 16才

 鶴姫手書きポエムが空に浮かんで、やはりこれはアイドル回だったに違いない、と念押しされて、つづく。
 次回――予告を持っていく矢尾一樹

◆第36話「暴れん坊忍者!!」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:杉村升
 「奴が来る……隕石に乗って千年ぶりに地球へ戻ってくる……ニンジャマン!」
 やたら重々しい大魔王様の言葉と共に地球に飛来したのは……凄く、不気味なデザインの、壺。
 「カクレンジャーニンジャマンが現れた 大魔王も狙ってる 隕石が墜ちた附近にいる筈だ 早く会いに行け」
 一方、差出人不明の矢文がネコ丸に突き刺さって今日もカクレンジャーの青春を弄び、射手である白面郎は一ヶ月ほどお休みしている間に、視聴者に対して真意をぼかすのはやめた模様。
 不気味な壺(外に声は聞こえる)は通りすがりの兄妹に拾われ、壺の中に居たのはバンドーラ一味……ではなく、千年もの間、壺に閉じ込められて宇宙漂流刑を受けていた青ずくめの謎生命体・ニンジャマン
 かつて三神将の弟子として妖怪と戦っていたニンジャマンは、人情家ゆえに大魔王にころっと騙されて人間を傷つけた事から、罰として宇宙を延々と彷徨っていたのだった…………これどちらかというと、封印を解いた瞬間に、「おのれ三神将! 我が身に受けたこの屈辱! 恨み晴らさずにはおくものかぁ!!」と大魔王と本格的に手を組んで関東忍者会の事務所にカチコミかけてきそうですが、壺の中で真面目に反省していた姿で、善人ぶりをアピール。
 ……まあ、罰の妥当性云々というよりも、若き神が罪を犯して追放と放浪の末に帰還する、貴種流離譚のパターンが背景にあると思って良いのでしょうが、今作企画段階のコンセプトに『西遊記』があったそうなので、孫悟空のモチーフが改めて取りこまれた部分もあるのかもしれません(鶴姫の血統でないと壺の封印を解けない辺り)。
 かくして、矢文に踊らされるカクレンジャーと、ニンジャマンを取りこもうとする大魔王による、壺を拾って巻き込まれた兄妹を間に挟んでのニンジャマン争奪戦が開始され、妖怪バクキの幻覚に囚われたカクレンジャーが街中で黒服集団に追われ、扉をくぐると海岸で、人相の悪い偽カクレンジャーに襲われる、魔空空間×コピー展開。
 前半のこれを踏まえると、後半の幻術映画館は、『宇宙刑事ギャバン』第36話「恨みのロードショー 撮影所は魔空空間」のオマージュめいていますが、サスケ達が「今だ!」と変身してスクリーンに突っ込んでいくとあっさり術が敗れる意味不明の展開で片付けられ、だいぶこっそりではない白面郎の助勢もあって取り戻した不気味な壺の封印をホワイトが解くと、ニンジャマン参上。
 「……青二才だと? 青二才だとーー?! うぉぉぉぉぉ!! 怒り爆発ーーー!!」
 丸みを残したフォルムで人とメカの中間的な、ちょっと変わったデザインのニンジャマンは雲に乗って自在に空を飛び回るが(書いていて気付きましたがこれが完全に孫悟空モチーフでした)、巨大バクキの「青二才」の言葉に反応すると、胴体に収納されていた別の顔が飛び出し、アーマーが肩と脛にスライドした姿へと、怒りのスーパーチェンジ。
 「これが俺の本当の姿、サムライマンだ!」
 ……ええっ?! ニンジャじゃないの?!
 『カクレンジャー』の根幹を揺るがしかねない爆弾発言と共にサムライの方がジョブレベルが高い追加戦士が誕生し、ニンジャとサムライを臆面もなく一つに詰め合わせてしまったその姿には、出会った年齢によっては好きになっていたかもしれません(笑)
 またこの二面性も、荒ぶる神霊の性質といえそうです。
 サムライマン大暴れを見ているだけになりそうだったカクレンジャーも隠大将軍で参戦すると、サムライだけど波動拳と急降下爆撃パンチの連携攻撃でバクキを葬り去るが、イメージ映像で出てきた大魔王様が、ニンジャマンは必ず我が軍にスカウトしてみせる、と妙なこだわりを見せて、つづく。
 情に脆くて直情径行、感情表現がストレートで子供には優しい、とパブリックイメージなヒーロー属性の盛られたニンジャマン、《スーパー戦隊》としては案外珍しいパターンとはいえますが、生身の姿を持たない為に(ずっと“変身後”というか)より戯画化されたキャラクター性、とはいえそうでしょうか。
 また、この当時の《スーパー戦隊》は、商業的にライバルであった《勇者》シリーズへの意識が強かったらしいので、《スーパー戦隊》というよりもロボットアニメ的なキャラクター性が意識されていたのかもしれません(《勇者》シリーズぽい、という意味ではなく)。
 『恐竜戦隊ジュウレンジャー』から本格的に組み込まれるようになった「6人目の戦士」としては、ドラゴンレンジャー、キバレンジャーの初登場が共に第17話だったのと比べるとだいぶ遅く、00年代戦隊なら終盤の追加武装が登場するぐらいの時期に、「追加戦士」にして「追加ロボ」の新機軸となりましたが、果たして如何なる旋風を巻き起こせるのか。
 次回――「儂がムショに居る間に、無敵将軍のオジキが死んだって? 馬鹿言うんやない!」「そう、無敵将軍会長は、カクレンジャーの卑劣な騙し討ちにあったのです」「なんやとカクレンジャー! オジキの仇は儂がとっちゃる!」(嘘予告)