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異色の白昼夢

イナズマンF』感想・第17話

◆第17話「青い瞳のインベーダー」◆ (監督:塚田正煕 脚本:山田哲久/楢岡八郎
 ゴムボートで海岸に辿り着いた後、何故かデスパーの襲撃を受けた女を救った五郎と荒井。
 なにやらおぼつかない様子の女は、円盤で地球を訪れたイグアス星人を自称すると、3ヶ月ほど前に消息を絶った先の友好使節・ジェットを探しにやってきたと語り……どう消化すればいいのか120%わかりません。
 「イナズマン!」
 おもむろに女が叫ぶのに合わせて妙にファンタジックなBGMがかかり……どう消化すればいいのか150%わかりません!
 「……どうしてその名前を?」
 「イグアス星を出発する時、大統領である私の父に言われました。もし、危ない目に遭遇したら、イナズマン、と叫びなさいと。彼は、地球で最も勇敢な男なんだ。必ず助けに来てくれるんです」
 いや本当にもう……どう消化すればいいのか1000%わかりません!
 自称イグアス星人の女・クリスティーヌに頼まれた中年同盟は、ジェットが行方不明となった東京に向かうと、ジェットからの接触を待つクリスティーヌが一人歩きする姿がしばらく描かれ、思惑通りに接触してきた青年の髪型とファッションが、大葉健二風(笑)
 恐らくこういうファッションがあったのでしょうが、バトルケニア×一乗寺烈みたいな雰囲気(特に上半身)の衣装に加えて髪型のシルエットが似ていて、実は予告の映像時点では、ゲストが大葉健二……? と思い込んでおりました(顔立ちはだいぶ違う)。
 婚約者だという二人が抱擁し合うと、やたらたどたどしいやり取りが始まり、両者の演技力に難があるのか、地球人ではないという芝居なのか、悩ましいところ。
 クリスティーヌの護衛として尾行を続けていた五郎は、ジェットの案内で二人が洋館に入っていく姿を確認するが、実はジェットは、デスパー軍団と繋がっていた!
 「あんな平和で退屈な星が嫌で嫌でたまらなかったんだ! ……俺はこの国でデスパーと手を結んで、悪の限りを尽くしてやるんだ!」
 盗んだバイクで走り出す、みたいな事を言い出したジェットはサイボーグ手術によって得た力でジェットデスパーへと姿を変え、ジェットデスパーを再利用するからゲストの名前がジェット、という捨て身の再生怪人ギャグ(笑)
 ジェットがデスパー怪人の姿を「正体」と称するのは、自らの本質は、他者を傷つける事を厭わない悪だと気取りたい、歪んで肥大した自己の現れかと思われますが、ナイフデスパーならもっと面白かったのに。
 「貴様を倒して俺は参謀に出世してみせる!」
 クリスティーヌ救出の為に洋館に侵入した荒井はサデスパーに制圧され、剛力招来した五郎はジェットデスパーの銃撃を受けて生死不明となり、勝ったぞーーー! とアジトに戻ってきたジェットデスパーに、力強いサムズアップを送る総統。
 囚われの荒井とクリスティーヌは処刑されることになるが、ジェットデスパーの号令でデスパー兵士の銃が火を噴く寸前、ガイゼルがそれを静止すると、いきなりジェットデスパーにその矛先を向ける。
 「私は、純粋なデスパーの血筋を受けたものだけは信頼できる」
 ん? ……んん?
 ……ガイゼル総統(新人類帝国)のモチーフを考えると、恐らくナチズムにおける人種イデオロギーを意識しての台詞と思われるのですが、ミュータントの怪人化にこだわっていたバンバ時代と比べて、怪人の出自が不明瞭になっている(そこで特色を出す事を捨てた)今作で、突然「デスパーの血」を言い出されても、設定はともかく物語の流れとして、だいぶ困惑。
 だからどこの馬の骨とも知らぬおまえはデスパー軍団ではデカい顔は出来ぬのだぁとジェットに折檻を加え、立場を思い知らせるのはまだしもタイミングもあまりに悪く、せめてサデスパー市長の私的な制裁か、増長したジェットの発言にカチンと来たみたいな起伏があればまだ良かったのですが……。
 「デスパー兵士よ! 私のように自分の肉体を張って戦える者だけが、戦いに勝利をする! 強い者だけが、全てを思いのままに動かせるのだ」
 ジェットデスパーを適度に痛めつけた後(途中で市長に交代)、総統は居並ぶ戦闘員に訓示を垂れ、いや総統、確かに杖で怪人の首とか飛ばせるけど、普段は部屋でチェスやってますよね……とツッコんだら蜂の巣にされる鉄の忠誠心が試され、内容の唐突さ加減からすると、これも『わが闘争』辺りに元があったりするのでしょうか(恥ずかしながら未読)。
 演説をしたら満足したのか、総統は痛めつけたジェットデスパーを横に立たせたまま銃殺刑を続行し……一緒に始末するわけでもなんでもない間の抜けた空気が処刑場を覆い尽くすと、そこに勿論、イナズマンが登場。
 本来なら、助けを求める人の呼び声に応えてヒーロー復活! の原初的な気持ちよさが発生していい筈なのですが、
 1,これといって好感度の上がるところのないゲストヒロイン
 2,総統による変な時間稼ぎで間延びしきった展開
 3,今作の特質を捨てたいきなりイナズマン
 と三拍子揃えて、こんな、“劇的”の殺し方があるのかと、悪い意味で刮目。
 三つ目については、一応、サナギマンになったところで行方不明になったから……と理由をつけてはいるのですが、根本的なところで今作、クライマックスにおいて「いきなりイナズマン」で出てくるのは、作品としてのルール違反なので、“ルールに則った段取りでの盛り上がり”を諦めてしまっているのが、つくづく残念。
 イナズマンは荒井とクリスティーヌを磔から颯爽と解放し、総統とサデスパーが引っ込むと、組織に切り捨てれられた哀しいチンピラのサガ、それでもデスパーの一員として戦おうとするジェットデスパーの銃弾が……なんか後ろの方に居たクリスティーヌに当たった(え)
 血糊も何もなく、額、それから後頭部を押さえる謎演技でクリスティーヌが倒れると、怒りのイナズマンは本物のチェストを見せてやると連続パンチからきりもみキックを浴びせ、ジェットデスパーは大爆死。
 なんか今になって額から血を流し始めたクリスティーヌが、イナズマンに一緒にイグアスで暮らしてほしいと告げると、その手を取ったイナズマンは頷き、この女は何を言い出し、イナズマンはなぜOKしているのか(そこは「私にはまだ、この星でやるべき事がある」とか云うところではないの……?)と思っていたらクリスティーヌは事切れ、その言葉は瀕死の女にヒーローが手向けた優しさだったのだ。
 ……となるのですが、女優さんの演技に死にそう感が全く無い為、銃で撃たれたので死ぬのか……と思ったらすっごく普通に喋っているな……と思ったらやっぱり死んだ、と、不必要なジェットコースターが生まれ、スポットの当て方からすると女優さんありきの回に見えるのですが、大変残念な出来でした。
 クリスティーヌとジェットの正体はハッキリしないまま両者死亡で立件されず、今作世界に宇宙人が存在して地球を訪れているのかどうかは有耶無耶にされて「そうであったのかもしれない」で処理されるのですが、もし「そうでなかった」場合、五郎も荒井もデスパーも、自分を宇宙人だと思い込んでいる狂人カップルに振り回されていた事になり、そちらの方が色々と問題が多い気がしないでもありません。